大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

京都地方裁判所 平成5年(わ)354号 判決

本店の所在地

京都市東山区古門前通大和大路東入元町三八六番地

法人の名称

株式会社思文閣

代表者の住居

京都市右京区嵯峨小倉山堂ノ前町八番地の一

代表者の氏名

田中周二

代理人の氏名

田中大

本籍

京都市下京区中堂寺西寺町四番地

住居

京都市西京区下津林六反田一番地の六〇

会社役員

田中超

大正一二年八月二日生

本籍

京都市中京区寺町通竹屋町上る藤木町一九番地

住居

東京都千代田区四番町六番地メゾン四番町六〇三号

会社役員

田中自知郎

昭和一〇年二月六日生

右株式会社思文閣並びに田中超及び田中自知郎に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官矢野敬一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社思文閣を罰金一億円に、被告人田中超を懲役二年六月に、被告人田中自知郎を懲役一年に書する。

この裁判の確定した日から、被告人田中超に対し四年間、被告人田中自知郎に対し三年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社思文閣(以下「被告会社」という。)は、京都市東山区古門前通大和大路東入元町三八六番地に本店を置き、美術品、書籍の販売等の業務を行うもの、被告人田中超は、被告会社の取締役として同会社の経理全般を統括する地位にあったもの、被告人田中自知郎は、被告会社の取締役兼東京店店長の地位にあったものであるが、

第一  被告人田中超は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

一  昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が七億三〇七九万七二八二円で、これに対する法人税額が二億九八九一万九五〇〇円であるのに、被告会社の保有に係る未売却の商品を売却済みであるかのように装って期末商品棚卸高を実際よりも少なく計上するなどの方法により右所得金額のうち二億七八五六万二三九六円を秘匿した上、平成元年二月二八日、京都市東山区渋谷通大和大路東入下新シ町三三九番地の五所在の所轄東山税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が四億五二二三万四八八六円で、これに対する法人税額は一億八一九二万五一〇〇円である旨の虚偽の内容の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額一億一六九九万四四〇〇円を免れ

二  昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一二億九四八六万三七四五円で、これに対する法人税額が五億三五五一万五三〇〇円であるのに、前記同様の方法により右所得金額のうち六億〇五五七万一五〇〇円を秘匿した上、平成二年二月二八日、前記東山税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が六億八九二九万二二四五円で、これに対する法人税額が二億八一一七万七二〇〇円である旨の虚偽の内容の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額二億五四三三万八一〇〇円を免れ

第二  被告人田中超及び同田中自知郎は、共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一二億六七七一万四九三三円で、これに対する法人税額が四億九六九六万七三〇〇円であるのに、前記同様の方法により右所得金額のうち五億五七一六万三二一五円を秘匿した上、平成三年二月二八日、前記東山税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額が七億一〇五五万一七一八円で、これに対する法人税額は二億七四一〇万二九〇〇円である旨の虚偽の内容の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度における正規の法人税額との差額二億二二八六万四四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人田中超の当公判廷における供述

一  被告会社代表者田中周二の当公判廷における供述

一  被告人田中超の検察官に対する各供述調書(四通)及び収税官吏作成の同被告人に対する各質問てん末書(八通)

一  収税官吏作成の被告会社代表者田中周二に対する質問てん末書

一  高田靖の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の野沢克昌及び福井麻理(三通)に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書八通

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  京都地方法務局登記官作成の登記簿謄本

判示第一の一の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(検第1号)

一  田中周二及び田中超共同作成の法人税確定申告書の謄本(検第4号)

判示第一の二の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(検第2号)

一  田中周二及び田中超共同作成の法人税確定申告書の謄本(検第5号)

判示第二の事実について

一  被告人田中自知郎の当公判廷における供述

一  被告人田中自知郎の検察官に対する各供述調書(二通)及び収税官吏作成の同被告人に対する各質問てん末書(三通)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(検第3号)

一  田中周二及び田中超共同作成の法人税確定申告書の謄本(検第6号)

(法令の適用)

一  罰条

被告人田中超の判示第一の一、二の各所為について、それぞれ法人税法一五九条一項

被告人田中超及び同田中自知郎の判示第二の各所為について、それぞれ刑法六〇条、法人税法一五九条一項

被告会社の判示第一の一、二及び第二の各所為について、それぞれ法人税法一六四条一項(同法一五九条一項、判示第二についてさらに刑法六〇条)、一五九条二項

一  刑種の選択

被告人田中超の判示各罪及び被告人田中自知郎の判示罪について、いずれも懲役刑選択

一  併合罪の処理

被告人田中超について、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重)

被告会社について、刑法四五条前段、四八条二項

一  刑の執行猶予

被告人田中超及び同田中自知郎について、それぞれ刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、美術品の販売等を行う被告会社の取締役二名が不正の行為により法人税を免れたという事犯であるが、ほ脱に係る額が五億九四〇〇万円余に上っており、国庫収入に多額の損害を与え、租税負担の均衡をも損なったものであって、その結果は重大といわなければならず、一般予防、特別予防のいずれの見地からしても重く問擬されてしかるべき事案である。加えて、被告会社では、昭和六〇年ころから判示のような手段によって税金を過少に申告していたところ、昭和六二年五月ころに所轄税務署の税務調査を受けて在庫商品の計上漏れを指摘され、修正申告をさせられたという経緯があったにもかかわらず、その後も同じ手口で脱税を図っていたものであり、また、右のような違法行為に手を染めるようになった動機は、正規の法人税額を納付するだけの資金的余裕がなかったというに過ぎないもので同情の余地が乏しいことをも併せ勘案すると、被告会社及び被告人両名の刑責は重いといわなければならない。

しかしながら他方、本件犯行の態様は、所得金額が意図する金額となるよう計数上棚卸し商品の一部を除外するという比較的単純な手口を用いており、ほ脱率も三事業年度の平均で四四パーセント余とこの種事犯の中で特に悪質とまではいうことができないし、本件の発覚後、本税のほか、加算税、延滞税を完納しており、また被告会社において在庫商品の管理にコンピューターを導入するなどして事件の再発防止に取り組んでいるところであって、その他、被告会社が過去長年にわたり文化活動に対し一定の貢献をしてきた事実も認められるなど、被告会社及び被告人両名に対し酌むべき事情も認められるところである。

こうした中にあって、被告人田中超は、被告会社の取締役として経理全般を統括する立場にあり、判示全事実に関与し、犯行全般にわたり中心的な役割を果していたもので、その刑責は特に重いといわなければならないが、他方、近時健康を害しており、また、すでに実質的に被告会社の経営から退いているなどの状況にあることが認められる。また、被告人田中自知郎にあっては、責任を負うべき犯行は判示第二の事実のみであり、しかも、被告人田中超の突然の入院により同被告人に請われて犯行に加担するに至ったという経緯にあり、被告人田中超に比べれば関与の程度は低いことが認められる。そこで、以上のほか、被告人両名にいずれも前科前歴がないこと、反省の情が認められること及び被告会社の現時点における経営状況等証拠により認められる一切の事情を総合し、被告会社及び被告人両名につき主文掲記のとおり刑を量定した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷鐡雄 裁判官 今崎幸彦 裁判官 山本善平)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com