大判例

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京都地方裁判所 昭和34年(ワ)921号 判決

原告(反訴被告)

山崎かつ子

原告(反訴被告)

山崎京子

原告(反訴被告)

山崎美子

原告(反訴被告)

山崎淳彦

原告(反訴被告)

山崎淳夫

原告(反訴被告)

山崎順子

原告(反訴被告)

山崎淳幸

右淳幸法定代理人親権者母

山崎かつ子

右原告等訴訟代理人

杉島勇

被告(反訴原告)

東邦商事株式会社

右代表者代表取締役

森田隆三

右訴訟代理人

橋本清一郎

主文

被告は、原告等に対し、別紙目録第二の(1)、(2)記載の抵当権設定登記(本件抵当権設定登記)、仮登記(本件仮登記)の各抹消登記手続をせよ。

被告の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、本訴請求原因および反訴答弁として、

「一、山崎淳は、昭和三三年一〇月一五日死亡し、その妻である原告かつ子、その子であるその余の原告等は、共同遺産相続をした。

二、被告は、昭和三一年一二月二七日、訴外有限会社東洋ネオン(東洋ネオン)に対し、弁済期同三二年六月末日、利息月五分の約定の下に、金五〇〇、〇〇〇円を貸付け、山崎淳は、同日、同人所有の別紙目録第一記載の不動産(本件不動産)について、右債務を担保する抵当権を設定し、本件抵当権設定登記および本件仮登記をした。

三、(1) 本件仮登記は、その登記原因が存在しない。

(2) 仮りに、そうでないとしても、山崎淳は、被告と、停止条件付代物弁済契約でなく、代物弁済予約を締結した。

四、東洋ネオンは、被告に対し、本件借受以来昭和三三年四月末日分まで一ケ月金二五、〇〇〇円(月五分の約定利率)の割合による利息および損害金を支払つてきた。

五、原告かつ子は、その余の原告等をも代理して、昭和三四年一月早々、本件貸金元金金五〇〇、〇〇〇円とこれに対する昭和三三年五月一日より同三三年一二月三一日までの月三分(年三割六分)の割合による損害金一二〇、〇〇〇円との合計金六二〇、〇〇〇円を、被告のため弁済受領権限ある張火旺(被告会社の実質上の経営者)に提供したが、受領を拒絶された。

六、原告等は、昭和三四年一月二〇日、右金六二〇、〇〇〇円を被告宛弁済供託した。

七、よつて、原告等は、被告に対し、本件抵当権設定登記および本件仮登記の各抹消登記手続を求める。」

と述べた。

被告訴訟代理人は、「原告等の請求を棄却する。原告等は被告に対し本件仮登記の本登記手続をせよ。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、本訴答弁、反訴請求原因として、

「一、原告等主張の事実中、一、二、六の事実は認めるが、その余の事実は争う。

二、被告代理人張火旺は、山崎淳と、本件仮登記記載のとおり、停止条件付代物弁済契約を締結した。

三、本件貸金債権は弁済されることなく、弁済期(昭和三二年六月末日)を経過したから、停止条件が成就し、被告は、本件賃金債権の代物弁済として、本件不動産の所有権を取得した。

四、よつて、被告は、原告等に対し、本件仮登記の本登記手続を求める。」

と述べた。

証拠<省略>

理由

原告等主張の一、二、六の事実は、当事者間に争がない。

<証拠>よれば、山崎淳が本件不動産について、本件抵当権設定契約と同時に、広義の代物弁済予約を締結した事実は、明白である。(反証排斥)

抵当権設定契約とともになされた広義の代物弁済予約は、当事者の署名捺印した契約書に、「停止条件付代物弁済契約」という言葉が使用され、「登記原因停止条件付代物弁済契約の停止条件付所有権移転請求権保全仮登記」がなされ、債権者が所有権移転登記に必要な書類をあらかじめ受領したときでも、債務不履行を停止条件として所有権が移転する停止条件付代物弁済契約を締結する意思が明白でないかぎり、債務不履行ある場合に債権者の予約完結行使によつて所有権が移転する狭義の代物弁済予約がなされたものと解するのが相当である。けだし、停止条件付代物弁済契約と解すれば、火災保険金、土地収用による補償金等への物上代位を確保する意味以外に所有権設定の意味がなくなるだけでなく、一般に、狭義の代物弁済予約は、停止条件付代物弁済契約より、担保制度として、より合理的であり(債務者および他の債権者に利益であるだけでなく、債権者にも予約完結権を行使するか否の選択の自由が残される)、法律専門家でない者は、狭義の代物弁済予約と停止条件付代物弁済契約との差異に関する知識を有しないし、債権者が所有権移転登記に必要な書類をあらかじめ受領しておくことは、狭義の代物弁済予約の場合にも必要であるからである。

本件についてこれをみるに、本件不動産について、「登記原因停止条件付代物弁済契約の停止条件付所有権移転請求権保全仮登記」がなされ、債権者(被告)が所有権移転登記に必要な書類をあらかじめ受領し(証人張火旺の第二回証言)、さらに、山崎淳の署名捺印した契約書(前記乙第七号証の一)に、「停止条件付代物弁済契約」という言葉が使用されているだけでなく、右契約書に、「債務者において本証書記載の債務を其の弁済すべき時に弁済せざる時は所有権移転の効力を発生する。」と停止条件付代物弁済契約の趣旨が明白に記載されている。しかし、<証拠>によれば、右契約書は、不動文字で印刷された用紙を使用して作成されたものであり、山崎淳は、右契約書に署名する際、停止条件付代物弁済契約を締結する趣旨について説明を受けていないし、他方、被告代理人張火旺(被告会社の実質上の経営者)が山崎淳(東洋ネオンの実質上の経営者)の両洋中学の後輩であり、本件貸金が両洋中学の教員中根正親の仲介によりなされたためもあり、被告は、本件貸金に対する月五分の利息または損害金を取得することを主眼とし、したがつて、被告は、所有権移転登記に必要な書類をあらかじめ受領しておきながら、弁済期を過ぎても本登記手続をしないで、一定の期限を限つて期限の延長をすることなく漫然と、弁済期以後昭和三三年四月末日までの月五分の損害金を受領している事実が認められ、東洋ネオンの債務不履行と同時に、本件不動産の所有権が移転することなく、代物弁済予約完結の意思表示をしたとき始めて、本件不動産の所有権が移転する狭義の代物弁済予約が締結されたものと認めるのが相当である。<反証排斥>

成立に争ない<証拠>によれば原告等主張の四、五の事実を認めうる。<反証排斥>

原告等の供託によつて、被告の東洋ネオンに対する本件貸金債権は消滅した(原告等主張の四のとおり、東洋ネオンは、利息制限法超過の月五分の利息または損害金を支払つているので、原告等は、本件貸金債務完済に要する額を超えた金員を供託したことになる)。

よつて、原告等の本訴請求を正当として認容し、被告の反訴請求を失当として棄却し、民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。(小西 勝)

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