大判例

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京都地方裁判所 昭和38年(わ)123号 判決

被告人 三木益三

明四四・七・二四生・会社役員

松原産業株式会社 代表取締役 廉東弼

主文

本件はいずれも管轄違。

理由

本件公訴事実の要旨は

被告会社はコンクリート製品の製造販売業を営むもの、被告人三木は被告会社の支配人の地位にあるものであるが

第一  被告人三木は被告会社の業務に関し、昭和三十五年五月初旬頃京都市伏見区石田大山町五番地において、被告会社を建築主として、木造及びコンクリートブロツク造り鉄板葺工場一棟を建築するに際し、右敷地が都市計画区域内であるにもかかわらず、京都市建築主事に対し、確認申請書を提出してその確認を受けることなく工事に着手し

第二  被告会社の代表者代表取締役廉東弼は被告会社の業務に関し、同三十六年九月二十一日頃京都市長より、前記工場が建築基準法に違反するため同日以降同工場の使用禁止を命ぜられたにもかかわらず、同三十七年九月中旬頃までの間同工場を使用し

たものである。

というにある。そして、右第一は、被告人三木に対する訴因であつて、被告会社のそれを含まないことは、起訴状記載の罰条並びに検察官の当公判廷における釈明の趣旨に照して明らかである。

そこで、職権をもつて、本件が当裁判所の事物管轄に属するかどうかについて調査するに

第一  被告人三木に対する公訴事実第一の点は、建築基準法第九十九条第一項第二号、第六条第一項に違反し、罰金の刑にあたる罪であるから、本件は簡易裁判所の専属管轄に属し、地方裁判所の管轄には属しない。

第二  被告会社に対する公訴事実第二の点は、同法第百一条の適用により、被告会社の従業者が、その業務に関し同法第九十八条、第九条第一項に違反した違法行為に随伴して、業務主である被告会社に負荷された同法条違反の罪にあたることは疑いをいれないところである。

そこで、被告会社に適用される同法第百一条の規定をみるに、その趣旨は、法人の代表者または法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人または人の業務に関して、同法第九十八条乃至第百条の違反行為をした場合においては、その行為者を罰するほか、業務主である法人または人に対して右各本条の罰金刑を科する旨を定めたいわゆる両罰規定であつて、業務主である法人または人に対しては、同法第百一条の規定が根拠となつて右各本条の規定のうち罰金刑に関する部分が適用されるものとされているのである。すなわち、業務主である法人または人は、同法第百一条により、行為者の刑事責任とは別個独立の刑事責任を負い、その法定刑は罰金刑とされているのである。されば、業務主である法人または人に対する事件の管轄は、特別の規定がないかぎり、右の法定刑に準拠してこれを定めるべきであつて、各本条の行為者に科せられる刑によるべきではないと解する。

そうだとすれば、被告会社に対する本件もまた罰金の刑にあたる罪として簡易裁判所の専属管轄に属し、地方裁判所の管轄には属しないものといわなければならない。

よつて、本件はいずれも当裁判所の事物管轄に属しないことが明らかであるから、被告人三木及び被告会社に対し、刑事訴訟法第三百二十九条本文を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 橋本盛三郎)

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