大判例

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京都地方裁判所 昭和45年(ワ)1464号 判決

原告

上田栄吉

代理人

増田仁

太田稔

鬼追明夫

吉田訓康

辛島宏

被告

松野幹太郎

主文

当裁判所昭和四五年(手ワ)第二九六号為替手形金請求事件の手形判決を、次のとおり変更する。

被告は、原告に対し金五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四六年三月二四日から支払済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決は仮に執行できる。

事実《省略》

理由

一、原告が左記為替手形一通(本件手形)を所持している事実は、当事者間に争がない。

金額 五〇〇、〇〇〇円

支払期日 昭和四三年一〇月一〇日

支払地、振出地 京都市

支払場所 株式会社京都銀行大宮支店

振出日 昭和四三年八月一〇日

振出人 加藤義春

支払人 松野幹太郎(被告)

ただし、「加藤義春」という記載が、二本の線で抹消された後、「松野幹太郎」と記載されている。

引受人 松野幹太郎(被告、記名捺印)

受取人 加藤義春

第一裏書裏書人 加藤義春

第一裏書被裏書人(白地)

第二裏書裏書人 門田実

第二裏書被裏書人(白地)

ただし、被裏書人欄の「取立委任に付株式会社協和銀行」という記載が、二本の線で抹消されている。

第三裏書裏書人 上田栄吉(原告)

第三裏書被裏書人(白地)

二、証人加藤義春の証言によれば、被告は、支払人、振出人、受取人、振出日、振出地の各欄白地の本件手形に、引受人として記名捺印したうえ、本件手形を加藤義春に交付し、本件手形の引受をした事実を認めうる。

三、〈証拠〉によれば、原告は、支払人、受取人の各欄白地、第二裏書(被裏書人欄抹消済み)まで記載の本件手形を、平井トヨから取得し、原告訴訟代理人増田仁は、本件手形の支払人欄に、「松野幹太郎」と記載して白地補充すべきを誤つて「加藤義春」と記載したうえ(受取人欄は白地未補充のまま)、昭和四五年九月八日、被告に対し本件為替手形金請求訴訟(手形訴訟)を提起し(ただし、訴状には、支払人松野幹太郎、受取人加藤義春と記載した。被告は、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の進備書面を提出しなかつたため、昭和四五年一〇月二六日、請求認容の手形判決が言渡された。)、昭和四六年三月一二日の本件口頭弁論期日(被告の異議申立後の期日、被告出頭)において、本件手形の支払人欄の「加藤義春」という記載を二本の線で抹消した後、「松野幹太郎」と訂正記載し、受取人欄に「加藤義春」と記載した事実を認めうる。

四、支払人欄の補充の訂正について。

甲引受、支払人欄白地の為替手形の所持人丙が、支払人欄に、甲(引受人の氏名)と記載して白地補充すべきを誤つて、乙(振出人兼第一裏書人の氏名)と記載した場合、丙が、右誤記のまま、甲に対し、右為替手形金請求訴訟を提起しても、丙は、右誤記を訂正する権限を失わない、と解するのが相当である。けだし、丙が右誤記をした場合、丙は、当然、右誤記を訂正する権限を有するのが、丙の右誤記訂正権限が、甲に対する右為替手形金請求訴訟提起によつて消滅すべき理由がないからである。

したがつて、原告訴訟代理人増田仁が本件口頭弁論期日においてなした本件手形の支払人欄の誤記訂正は、有効であり、被告の本件手形引受は、失効(支払人以外の者のした引受の理由により失効)することはない。

五、裏書の連続について。

手形の取立委任裏書の取立委任文句および被裏書人の氏名のみが抹消されているとき、右裏書は、裏書の連続について白地式譲渡裏書としての効力がある、と解するのが相当である。

したがつて、本件手形第二裏書は、裏書の連続について白地式譲渡裏書としての効力がある。

六、手形の最後の裏書まで裏書の連続があり、最後の裏書が白地式裏書である場合、白地式裏書をした裏書人が現に右手形を所持するとき、右裏書人は右手形の適法の所持人である、と解するのが相当である。

したがつて、現に本件手形を所持している原告は、本件手形の適法の所持人である、と認めうる。

七、よつて、本件手形金五〇〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和四六年三月二四日から支払済まで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める原告の本訴請求は、正当としてこれを認容すべく、本件手形判決を変更し(原告は、本件手形金に対する昭和四三年一〇月一〇日から昭和四六年三月二三日まで年六分の割合による金員支払請求部分について訴えの取下げをした。)、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、仮執行の宣言について同法第一九六条を適用し主文のとおり判決する。 (小西勝)

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