大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

京都地方裁判所福知山支部 昭和32年(ワ)1号 判決

原告 松本庄吉 吉田五市 外六〇名

被告 国 外一名

国代理人 平田浩 外四名

主文

原告吉田五市の訴を却下しその余の原告等の請求を棄却する訴訟費用は原告吉田五市と被告等間にあつては右原告妻の負担としその余の原告等と被告等間にあつてはその原告等の平等負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は別紙図面(説明書共)赤線(但し20、21間は点線)でかこまれた土地実測約一六町歩は福字知山市宇長田小字小野袋四六〇番地保安林三反一畝一九歩、同所四六〇番地の一山林一一町六反五畝一歩、同所四六一番地の三山林三町六反三畝一〇歩、同小字青塚二三一九番地の甲原野一町九畝七歩の大部分又は一部で原告等の所有であることを確認する被告市は同字小字青塚二三一九番地の三二原野一三町三畝七歩につき京都地方法務局福知山支局昭和二九年一二月三日受付第一三七二号でなされた所有権保存登記の抹消登記手続をせよ被告等は右土地につき同局同月一五日受付第三一三二号でなされた同月三日買収を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ被告市は原告等に対し同字小字青塚二三一九番地の甲原野一町九畝七歩につき昭和二六年一月一七日(訴状等に一二月二六日とあるのは一月一七日の誤記と善解する)無償譲渡を原因とする所有権移転登記手続をせよ訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求めその請求原因として右山林原野四筆はもと京都府天田郡下六人部村有地にして昭和二六年一月一七日の同村役場会議の決議で同日原告等の共有地となつたもので右三筆の山林については昭和三〇年二月二六日同村が福知山市に合併せられる機会に同村から暫定的に一種の信託行為として訴外和田栄一、同塩見増治に同年三月二四日所有権移転登記あり同年六月一三日原告等に所有権移転登記が完了せられ右原野はもと右小野袋四六〇番地の二山林一町五反九畝二八歩の大部分で昭和一五年陸軍省に買収せられていたが後同村に払下げられ昭和二六年二月二三日同小字青塚二三一九番地の甲原野二反六畝二八歩として保存登記せられて同村に所有権移転登記が経由せられ今なおそのままとなつて原告等に所有権移転登記未了の状態にあるものなるところ原告等共有の前示四筆の山林原野は別紙図面青線でかこまれた土地であるが昭和二九年一一月三〇日当時の右村長訴外和田栄一は右支局に対し、同図面赤線でかこまれた部分は同村字長田小字青塚二三一九番地の三二原野一三町三畝七歩として地番設定願を提出し同年一二月三日同局備付の土地台帳にその旨の登録を受け総理府はこの記載に基いて同局において同日右下六人部村に代位して所有権保存登記を又同月一五日には買収を原因として所有権移転登記を受け原告等の共有地につき新地番が設定せられその土地が総理府の所有地として登記せられた次第で右訴外和田において村長としての職権を利用してなされた右土地台帳の登録は無効でこれに基きなされた前示保存登記や所有権移転登記も無効にしてこれが抹消をまぬがれないものであるのに防衛庁陸上自衛隊は右土地について所有権を主張するに至つたので原告等は右土地が原告等の所有なることの確認を求めると共に原告等の所有地につき右青塚二三一九番地の三二原野一三町三畝七歩として別個の登記の存することは原告等の権利を侵害することとなるのでその権利義務を承継した被告市に対しては右保存登記の抹消手続を又右村の承継人たる被告等に対し前示所有権移転登記の抹消を求め更らに被告市に対し同村が原告等に対し無償譲渡した右青塚二三一九番地の甲原野一町九畝七歩につき所有権移転登記手続を求めるため本訴に及んだと述べ被告国の答弁に対し被告国は右青塚二三一九番地の三二につき対抗力ありと主張するが原告等所有地につきその地番を抹消せずに新地番を設定し登記を経由してもかかる登記は無効で対抗力の問題でないし被告国は登録が無効であつてもこれによつて登記せられた以上その登記をもつてその後になされた登記に対抗し得ると主張するけれどもこのような見解は正当でなく仮りにそれが正当としてもそれは同一所有者が二重登記を経由した場合に限られ所有権を有しない者が他人の所有地につき登記を経由してもそれが有効な登記として対抗力を有する理由なく実質的に所有権を取得した者は他人が当該物件につき先に登記を受けていても訴をもつてその抹消を求め得るのであると述べた。

被告国指定代理人平田浩は原告等の請求を棄却する訴訟費用は原告等の負担とするとの判決を求め答弁として原告等主張の四筆の土地がもと下六人部村有地であつたこと、そのうち三筆の山林につきその主張の登記が経由され右青塚二三一九番地の甲がもとの小野袋四六〇番地の二の一部にして原告等主張の経緯で同村に払下げられたこと、被告国が別紙図面赤線内の地域を使用していること、同地域が原告等主張の経緯により青塚三三九番地の三二として土地台帳に登録を受けその主張の登記が経由されていること及び被告市が同村を合併しその権利義務を承継したことは認めるが右四筆の土地が原告等の共有に属することはこれを争う被告国は同図面赤線区域内の福知山市字長田小字青塚二三一九番地の三二の土地につき適法に譲渡を受けその所有権につき対抗力を有するものであり右土地が原告等主張の四筆の土地と同一であることは被告等の争うところであるがもし右山林が被告国の使用する右区域と重複し原告等がこれにつき同村から所有権譲渡を受けていたとしても後になされた旧地番による登記は無効となりその登記に基く原告等の所有権取得登記も無効で従つてこれをもつて被告国に対抗できないものである原告等はこの点に関し既に地番が設定されている土地に新地番を設定し土地台帳に登録してもあらたな登録は無効でその登録に基いてなされた新地番の所有権保存登記も無効であると主張するけれども土地台帳制度は土地の客観的状況を明らかにすることを目的とし従つて二重登録は許されず誤つて二重登録がなされた場合未登記である限り後になされた登録は土地台帳法第三八条第二項により抹消されねばならないがその一方につき登記がなされてしまうとたとえその登記が土地台帳後になされた登録によるものであつてもその登記は有効で前になされた土地台帳の登録が逆に許されなくなつたものとして抹消されねばならないのであつて登記簿上不動産の表示としていづれの地番が表示されていてもそれは単に表示方法の問題に過ぎないのであるから一定の土地が表示されていることさえ明らかであれば不適当なりや否やの問題に関係なく当該土地の権利関係を公示することを目的とする不動産登記としてなん等かけるところなく最初に登記を経由したものが対抗力をそなえた所有者として完全に保護されることになりその結果土地台帳上の登録もその順序にかかわらず右登記に合致するものが適法とされることになりたとえ先になされた登録であつても登記に合致しないときはもはやその存続が許されなくなつたものとして抹消されねばならなくなるのであると述べ被告市訴訟代理人は原告等(答弁書に原告とあるは原告等の誤記と認む)の請求は棄却する訴訟費用は原告等の連帯負担とするとの判決を求め答弁として本訴請求の趣旨中の地点及び地域の表示は不明確で請求の趣旨不明確であり又被告市に対する所有権移転登記の抹消登記手続請求はその請求自体理由がないが原告等主張の四筆の土地がもと下六人部村の所有であつたこと、そのうち三筆の山林につき原告等主張の登記のなされていること、前示青塚二三一九番地の三二原野一三町三畝七歩につき原告等主張の地番設定、登録、登記のなされたこと及び被告市が同村を合併してその権利義務を承継したことは認めるも原告等がその主張の土地を共有することはこれを否認しその余の原告等主張事実を争う昭和二六年一月一七日開かれたのは村議会議員の協議会であつてかかる協議会は村有不動産処分を決定する権限を有するものでないから同会が原告等主張の決定をしてもそれは無効であると述べた。

立証〈省略〉

理由

被告市は原告等の本訴請求の趣旨不明確なりと主張するもこの主張は認容し難いけれども右請求中所有権の確認や所有権移転登記手続請求部分は原告等においてその主張の土地の共有を主張するものなるにおいて原告吉田五市の供述によれば同原告の本訴提起はその関知するところにあらずして右はその妻がなしたに過ぎないものなることを認めるに足り原告松本の供述中右認定に反する部分は措信し難く他にこれを動かすべき証拠がないから右原告吉田の本訴は却下すべく同原告を除く原告等の右請求部分もすべて失当として棄却をまぬがれずしかして原告吉田を除く原告等の本訴請求中その余の部分につき案ずるに被告市は同被告に対する請求は請求自体理由がないと主張するもこの主張も採用し難いけれども原告等主張の土地がもと前示村の所有なりしこと、そのうち三筆の山林につき原告等主張の山林につきその主張の登記が経由され右青塚二三一九番地の甲がもとの小野袋四六〇番地の二の一部にして原告等主張の経緯で同村に払下げられたこと、被告国が別紙図面赤線内の地域を使用していること、同地域が原告等主張の経緯により青塚二三一九番地の三二として土地台帳に登録を受けその主張の登記が経由されていること及び被告市が同村を合併しその権利義務を承継したことは被告国の認めるところにして又原告等主張の四筆の土地がもと前示村の所有であつたこと、そのうち三筆の山林につき原告等主張の登記のなされていること、前示青塚二三一九番地の三二原野一三町三畝七歩につき原告等主張の地番設定、登録、登記のなされたこと及び被告市が同村を合併してその権利義務を承継したことは被告市においてこれを認めるところであるが成立に争なき乙第一、二号証、同第四号証の七、九、一〇、一一、一二、同第一〇号証の四、証人吉良佐太郎、同塩見増治、同大西勇二、同高橋太市郎、同和田憲太郎、同中井周一、同和田栄一の各証言及び原告吉田五市の供述を総合すれば前示村有にかかる原告等主張の山林等を原告等に配分しようということでその基準についてかねてより協議がなされていたがまだ実際に配分するというまでには立到つていなかつたところその後これは被告国に買収されついで昭和三〇年二月頃に至りさきの配分基準も取消され同村が福知山市に合併された後に至つてここにはじめてようやく原告等の共有地とすることが確定したものであることが認められ甲第九、一〇、一一号証や証人杉山万治、同吉見光太郎、同吉良三重郎、同芦田虔二、同芦田淳之助の各証言及び原告松本庄吉の供述中右認定に反する部分はたやすく信用し難く他にこれを覆えすに十分な証拠なく前記せる当事者間に争なき事実と右認定の事実下において前示原告等の本訴請求中前示の棄却せる部分以外の点についてもまたこれを認容し難きに帰するものである。

よつて民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文により主文のとおり判決する。

(裁判官 勝本朝男)

別紙図面、説明書〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com