大判例

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京都簡易裁判所 昭和33年(ハ)514号 判決

原告 国

訴訟代理人 平田浩 外二名

被告 焼山徳太郎 外四名

主文

被告等は原告に対し各自金十万円及びこれに対する昭和三十三年六月十四日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決は原告において金四万円を供託するときは仮にこれを執行することができる。

事実

原告指定代理人は主文第一、二項同旨の判決並びに担保を条件とする仮執行の宣言を求め其の請求の原因として原告国(所轄庁中京税務署長)は訴外有限会社松島屋に対し昭和三十二年十月十八日現在における納期の経過した法人税等合計金五十万四千六百六十七円の滞納国税の徴収権を有するものなるところ被告等は鮮魚類等の小売を目的とする出資総額十万円の右訴外会社を設立するため昭和二十八年三月十五日法定事項を記載した定款に発起人として各自記名捺印し同年四月二十二日設立登記を了し該会社を設立したものであるが出資の払込が全額未済であるから右訴外会社は被告等各自に対し金十万円の出資払込債権を有している、そこで原告国は国税徴収法第二十三条に基いて前記滞納出資の徴収として昭和三十二年十月十八日該出資払込債権を差押え且つ同年同月二十四日頃第三債務者たる被告等に其の旨通知した。

よつて原告国は被告等に対し各自右差押債権額金十万円及びこれに対する本件訴状が被告等に送達せられた最後の日以降完済に至るまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだと陳述し被告等の抗弁事実を否認し仮に被告等において出資の払込をなしたとしても右は払込を仮装するため設立登記完了までの所謂見せ金として昭和二十八年四月二十日被告井筒理介において他より金十万円を借受け同日被告等より払込があつたように被告焼山徳太郎名義で該金を訴外京都中央信用金庫に預金し同じように其の旨の保管証を受取り法定の手続を進めて前記記載の日に設立登記を了したのであるが同年同月二十七日被告井筒理介は右預金を全額引出して借人先に返済したのであるから右出資払込は未済である仮に然らずとするも右訴外会社の定款には現物出資の規定を定めず資本全額を現金により出資したように仮装し実質的には現物出資の方法で出資したもので右は脱法行為であつて無効であると述べ。〈省略〉

被告等訴訟代理人は原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として原告主張の事実中訴外有限会社松島屋が原告主張のように法人税法等の国税を滞納していること(但し金額は除く)訴外会社の出資金が十万円であつたこと設立当初の役員が原告主張のとおりであること、原告主張の借用金を訴外京都中央信用金庫に預金し其の旨の保管証を受け手続を進めて其の主張の日時設立登記がなされていること被告井筒理介において右預金を原告主張の日時に全額引出し借入先に返済したこと原告がその主張の日時其の主張の出資払込債権を差押えたこと、原告より被告等に其の差押の通知のあつたことはいずれもこれを認めるが其の余の事実は争う。被告等は昭和二十八年四月二十日右訴外会社に対する出資全額の払込を完了しているから同訴外会社は被告等に対し何等の出資払込債権を有するものではない、従つて原告のなした債権の差押は不当であるから原告の請求に応ずることはできないと陳述し、なお、原告の再抗弁事実を否認し立証〈省略〉

理由

訴外有限会社松島屋が原告主張のように法人税等の国税を滞納していること(但し金額を除く)被告等が出資総額十万円の右訴外会社を設立するため各自発起人となつたこと、被告井筒理介において原告主張の借用金十万円を其の主張の金庫に預金し出資額全部の払込があつたものとして手続を進め其の主張の日時に設立登記のなされていること、被告井筒理介において原告主張のように右預金を全部引出し借入先に返還したこと、原告が其の主張の日時に其の主張の出資払込債権を差押えたこと、原告より其の主張の日時頃被告等に其の旨の通知のあつたことは当事者間に争なきところであり成立に争のない甲第一号証によれば訴外会社の滞納法人税等の金額が原告主張のように合計金五十万四千六百六十七円であることが認められ右認定を覆すべき証拠はない。

そこで右十万円の預金をしたことを以て出資全額の払込があつたと解せられるかどうかについて考察するに成立に争のない甲第三乃至七号証、同第九、十号証、被告本人焼山才一の供述の一部並びに本件口頭弁論の全趣旨を綜合すると右十万円の預金は単に設立手続の形式を整えるため当初より極く短期間預け入れ設立手続完了後間もなくこれを引出し其の借入先に返済する意図の下に預け入れられたことが認められ、被告焼山徳太郎同井筒理介及び同焼山才一の各供述は前記証拠に対比して輔く措信し難く他に右認定を左右するに足る証拠はないそしてまた、右意図のとおり設立登記後僅か一週間程で右預金十万円が引出され返済されていること前段認定のとおりである点及び設立当初の役員がすべて発起人で占められている点等から考えるとこれは法の期待する資本充実の原則に反し原告の主張のとおり出資の払込を仮装したものと断じない訳にはいかない従つて原告主張のように出資の払込はなされていないものと謂わなければならない。

そこで被告等は右訴外会社の発起人として該会社に対し払込未済の出資金十万円について各自其の払込を為すべき義務あるものと謂うべきである。

果してそうだとすれば被告等は原告に対し各自金十万円及びこれに対する本件訴状が被告等に送達せられた最後の日であること本件記録に徴して明かな昭和三十三年六月十四日以降完済に至るまで商法所定の年六分の割合による遅延損害金を支払うべき義務あるものと謂はなければならない。

よつて原告の本訴請求を正当として認容し訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条仮執行の宣言につき同法第百九十六条第一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤健蔵)

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