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仙台地方裁判所 昭和30年(行)14号 判決

仙台市高砂田子字寺一五二番地

原告

加藤辰太郎

右訴訟代理人弁護士

菅原秀男

佐藤達夫

長田弘

塚田十一郎

仙台市北一番丁

被告

仙台国税局長

右指定代理人検事

滝田薫

法務事務官

同 照井清到

同 三浦鉄夫

同 橋本清夫

大蔵事務官

同 三浦吉光

同 成瀬格

同 斎藤正男

右当事者間の昭和三十年(行)第一四号所得税審査裁決取消請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が、訴外仙台北税務署長の原告に対する所得金額および所得税額の更正を相当としてなした昭和三十年四月二十六日附審査請求棄却決定を取り消す。右税務署長が原告に対し原告の昭和二十八年度所得金額を金四八六、〇九四円と更正した昭和二十九年四月四日附決定のうち、金二三九、四一〇円を越える部分を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする」との判決を求めると申し立て、請求原因として、

(一)  原告は、肩書地に居住し、農地三町三反五畝を耕作して農業を営み、かたわら仙台市高砂農業協同組合長の職にあるものである。

原告は、昭和二十九年三月三十日、昭和二十八年度分所得額につき金二三九、四一〇円と申告したところ、仙台北税務署長は昭和二十九年三月三十一日所得額金四八六、〇九四円と更正決定し、右決定を同年四月四日原告に送達した。そこで原告は同年五月三日右署長に対し再調査の請求をしたところ、同署長は同年八月三日右更正決定と同旨の決定をしたので、原告は同年九月二日被告に対し審査の請求をしたのであるが、被告は昭和三十年四月二十六日右請求を棄却する旨の決定をし、この決定を同年四月二十七日原告に送達した。

(二)  しかしながら、原告の昭和二十八年度所得額は、別紙(一)収支計算書記載のとおり農業所得金五三、一四四円六四銭、給与所得金一九二、一〇〇円、合計金二四六、二四四円六四銭にすぎない。

原告は、本件再調査申請に際し、仙台北税務署に対し、(1)原告の農家簿記(2)資産負債明細表(3)棚卸資産明細表(4)保有米説明書(5)収支計算書を提出したが、これにより原告の前記所得額は明らかである。

よつて、被告および訴外仙台北税務署長のなした前記決定は違法であるから、その取消を求めるため本訴請求に及んだ。と述べ、被告指定代理人の主張事実に対し、原告の田畑の耕作反別が被告指定代理人主張のとおりであることは認めるが、その他の事実は否認する。と述べ

立証として甲第一号証、第二号証、第二号証の一の(一)ないし(一二)、二の(一)ないし(一二)、三の(一)ないし(一二)、四の(一)ないし(三)、五の(一)、(二)、六の(一)ないし(五)、七ないし八、第三号証の一ないし九、第四号証の一ないし五、第五号証の(一)ないし(十)、第六ないし第十一号証、第十二号証の一ないし六、第十三号証、第十四、第十五号証の各一、二、第十六号証を提出し、証人加藤国寿、阿部護の各証言、原告本人尋問の結果を援用し、乙第一号証、第二、第三号証の各一、二、第四号証、第七号証の一ないし三、第八号証、第十、第十一号証の各成立を認め、その余の乙号各証の成立は不知と述べた。

被告指定代理人は「原告の請求を棄却する」との判決を求め、原告の請求原因に対し答弁として、

請求原因(一)は認める。

請求原因(二)の中、原告が係争年度中、年雇賃金二六、三〇〇円、雇人酒代金一、四一〇円、雇人米代金九、〇八七円を夫々支出したこと、原告の係争年度における給与所得が金一九二、一〇〇円であることは認めるが、その他の事実は否認する。と述べ、さらに、

(一)  原告は、係争年度において、仙台市高砂田子において水田二町九反五畝歩普通畑三反五畝、そさい畑六畝を耕作し、かたわら仙台市高砂農業協同組合長の職にあり、家族八人、年雇二人および馬二頭を所有して相当の生計をたてていたものである。

ところで、原告が本件農業所得を明確にするため、本件審査に際し、提出した資料は、わずかに農家簿記、資産負債明細表、棚卸資産明細表、収支計算書、公租、公課納付書、電力料金受領書等の断片的なものに過ぎない。

右農家簿記(甲第十六号証)に記載されてあるものは、経費支出日記および作業日誌関係のみで、すべての現金の出納に関する事項、売掛金および買掛金に関する事項、固定資産に関する事項、収穫および収入に関する事項および棚卸に関する事項等が記載されてないのであり、又家事関連費および資本的支出の区分が明確にされていない。そしてこれらの事項の収支を明らかに証明する資料は提出されなかつた。

又資産負債明細表は、原告が固定資産について整備された記録を保持しておらず、単に恣意的な金額を計上したにすぎず又流動資産および棚卸資金の計上が脱漏しており、原告が係争年分において所有すると計上した流動資産は出資金六〇四円八〇銭にすぎないのであるが、係争年度分において現金および預貯金等の流動資産をも所有していないものとは考えられない。

棚卸表は原告は係争年度期末の米の所有高を硬米一石六斗二升と計上しているのみであるが、原告がこの外にも糯米を所有していたことは明らかであり、又、米以外の収穫物についての記載も米と同様信用するに足りないばかりでなく、農業用品関係(飼料、農業、薬剤、肥料、俵、縄等)についての記載がない。

保有米説明書は本件係争年分は提出されなかつた。

収支計算書は基礎となる資料が前記のとおり不完全で恣意的に作成されたにすぎないものであるので、そのまま信用することはできないものである。

原告提出の資料によつては原告の農業所得を算出することは不可能であり、原告の正確な農業所得を算出するに足る充分な資料がなかつたので被告はやむを得ず収支調査にかえて推計により原告の農業所得金額を算出することを余儀なくされたものである。

(二)  (推計による原告の農業所得の算定)

被告は、本件農業所得算出の基礎を農業所得標準に求めた。

農業所得標準とは農家が完全な記帳を記つていない場合、所得税の確定申告に当り、その農業所得金額を計算する基準として税務署が算定した各種農産物の一単位当りの所得金額であつて、税務署が統計学における推計理論の方式を基礎とし標本調査法により多数の標本農家について行つた所得計算の結果に基いて作成したものである。

すなわち、一税務署管内町村を三地帯に区分し、各地帯ごとに地力状況中庸と認められる一ケ町村を基準として選定しその基準町村については、各五戸、その他の町村については二戸の農家を任意選定する。詳述すれば、基準町村については、前年分所得税について納税義務ある農家の平均耕作反別に近似するものの中から二名、平均耕作反別より五反歩程度少いものの中から一名、五反歩程度多いものの中から一名、一町歩程度多いものの中から一名計五名を、又基準町村以外の町村については前年分所得税について納税義務ある農家の平均耕作反別に近似するものの中から二名を任意に選択する。その各選定農家について、坪刈、刈束、せろ籾および在庫高を調査して収穫高を実額調査し、又、作付状況および帳簿等をできるだけ精密に実額調査し、これらの調査資料を基礎として一毛田については石当り、普通畑およびそ菜畑については反当り所得(収入金額より必要経費を控除したもの)を算出し、これをもつてその地方における農家の田については石当り、又、畑については反当り標準所得としたものである。

そして、この標準率に各農家の田については収穫量(供米の生産割当量)および畑については耕作面積を乗じて得られた所得金額から、平年作に対し三〇%以上減収した災害田については同様にして作成した減算所得標準率を控除すれば、各農家の当該年中の田畑所得を推計することができる理である。

なお、右農業所得標準率の作成に当つては、事前に関係農業団体と資料に基いて充分な意見の交換を行う等標準の一般的妥当性を尊重する方途を講じているのであり、かくして作成された標準率は一般に公開されるものである。原告の居住する高砂地区において昭和二十八年度農業所得の確定申告者は二三九名であるが、この標準率により同年分の農業所得金額を算出し申告した者は二三八名でこれによらなかつたものは原告一名のみである。

よつて、右標準率によつて原告の農業所得を推算する。

(イ)  原告の一毛田所得は、原告の事後割当数量は五〇石四斗六升であるので、これに標準年石当八、八五〇円を乗じ、四四六、五七一円と算定し、普通畑、そさい畑所得は、耕作反別が普通畑三反六畝、そさい畑五畝であるので、夫々標準率反当普通畑一三、八四〇円、そない畑二三、五五〇円を乗じ普通畑所得四九、八二四円そさい畑所得一一、七七五円と算定した。

(ロ)  災害田減算所得については、原告の耕作田中、減算程度三〇%ないし四〇%のもの一町七反一畝、四〇%ないし五〇%のもの三反五畝、五〇%ないし六〇%のもの三反七畝、六〇%ないし七〇%のもの二反七畝、七〇%ないし八〇%のもの三反、八〇%ないし九〇%のもの一反、九〇%ないし一〇〇%のもの一畝と認定し、これに夫々右減算所得標準率、反当三〇%ないし四〇%の分一、三〇四円、四〇%ないし五〇%の分一、一七五円、五〇%ないし六〇%の分一、〇四一円、六〇%ないし七〇%の分九〇七円、七〇%ないし八〇%の分七七六円、八〇%ないし九〇%の分六四二円、九〇%ないし一〇〇%の分五九五円を乗じ合計三五、七四三円と算定しこれを(イ)の農業所得額より控除した差額金四七二、四二七円が標準率による農業所得額である。(右災害田を合計すると三町一反一畝となり、原告主張の耕作田反別二町九反五畝より多くなるが、原告の実際耕作田反別は三町一反一畝として、算出したものである)

(ハ)  前記標準率の算出の際、俵代は収入として加算されていないし、又牛馬費、土地改良費、水利費、雇人費、又は共済組合掛金は個別性が大きい経費なので、経費として控除されていないから、(ロ)の四七二、四二七円の農業所得額に俵代を加算し前記経費を控除したものが最終農業所得額である。

俵代所得、牛馬費については、原告の記帳状況からみて調査不可能であつたので前記田畑所得標準率と同様の方法で算定した公開農業所得標準率により計算すれば、俵代所得金四、三五六円、牛馬費金四五、〇〇〇円となる。

土地改良費金二、九五〇円、水利組合費金三、五三四円、共済掛金金一、六一四円は原告提出の資料によつて計上した。

雇人費のうち、賭費については、原告の農家簿記記帳は家族の消費分も含まれているのでその賭費支出ある日の家族延人員(九六二人)同年雇延人員(一八一人)および同臨時雇延人員(三四一人)の総延人員(一、四八四人)に対する雇人延人員(五二二人)の割合三五%を記帳賭費金二四、九〇〇円に乗じ賭費金八、七一五円とし、雇人世話料は、原告農家簿記記帳から金一、〇〇〇円と算定した。臨時雇人賃金については原告提出の農家簿記に記帳がなされてあつたが、人名、人員、賃金単価ともこれを裏付ける記録、資料がなく信用することができなかつたので、臨時雇人延人員については、原告の耕作反別三町四反家族従業員は税務署で定め公開している別表(三)自家労力換算表により二人とし、同別表(三)臨時雇人数速算表により二四四人と算出されるところこれを三一五人と算定し、賃金単価については仙台市高砂支所長からの訴外仙台北税務署長あて「昭和二十八年分作業別農業労銀調」(乙第四号証)を基礎とし、これに同年度下半期における賃金の上昇率および原告の農家簿記の記帳賃金単価が一七〇円、二一〇円、二二五円、二四〇円、二五〇円、三〇〇円、三二〇円、三四〇円、三五〇円であることを考慮し金二六四円と算定し、よつて、右臨時雇人数に右賃金を乗じて、金八三、一六八円と算定した。雇人酒代金一、四一〇円、雇人米代金九、〇八七円、年雇賃金二六、三〇〇円は原告主張通りこれを認めた。

従つて以上を合計し、雇人費は金一二九、六八〇円とした。

よつて、原告の昭和二十八年度農業所得は別表(四)のとおり二九四、〇〇五円である。

この農業所得金二九四、〇〇五円に、当事者間に争いのない給与所得金一九二、一〇〇円を加えれば、原告の昭和二十八年度分所得金額は金四八六、一〇五円となり、原告の同年分の所得金額を金四八六、〇九四円と認定した決定は違法ではない。

と述べ、

立証として乙第一号証、第二、第三号証の各一、二、第四ないし第六号証、第七号証の一ないし三、第八ないし第十一号証を提出し証人成瀬格の証言を援用し、甲第二号証の一、二、三の各(一)ないし(一〇)、四の(一)、五の(二)、六の(一)ないし(五)、第四号証の一ないし五、第八号証、第十一号証、第十三号証、第十四号証の二、第十五号証の一、第十六号証の各成立は認めるがその余の甲号各証の成立は知らない。

と述べた。

理由

原告が肩書地で農業を営み、かたわら仙台市高砂農業協同組合長の職にあるものであること原告が昭和二十八年度所得額について所定の期間内に上申したところ、仙台北税務署長は昭和二十九年三月三十一日右所得額につき金四八六、〇九四円と更正決定したこと、原告がこれに対し同年五月三日右署長に対し再調査の請求をしたところ、同署長は同年八月三日右更正決定と同旨の決定をしたこと、そこで原告は同年九月三日被告に対し審査の請求をしたところ、被告は昭和三十年四月二十六日これを棄却する旨決定をし、この決定は同年四月二十七日原告に到達したこと、原告の昭和二十八年度給与所得が金一九二、一〇〇円であることはいづれも当事者間に争いがない。

原告は同年度の農業所得が金五四、一四四円六四銭であるのにこれを二九三、九九四円あるとして更正した仙台北税務署の決定を是認し原告の審査請求を棄却した被告の決定は違法であると争うので以下この点について判断する。

成立の争いのない甲第十六号証、乙第一号証、第七号証の一ないし三、第十第十一号証、証人加藤国寿、成瀬格の証言によれば、原告から審査請求があつたので仙台国税局協議団本部所属協議官である大蔵事務官成瀬格が調査にあたり仙台北税務署から関係書類の提出を求め、かつ原告宅に赴き資料を照会したが、農業所得算定の資料としては農家簿記(甲第十六号証)、供米入庫伝票電力料金受領証、預金通帳一冊の提出があつただけで右資料によつて記帳の状況からみて農業所得をは握することができず推計により原告の農業所得を算出するよりほかはないとの結論に達したので被告主張の農業所得を標準方式(乙第一号証)により原告の所得を別表(四)記載のとおり算定したので、原告の審査請求を棄却する旨本件審査決定をしたものであることが認められる。

ところで、農家簿記(甲第十六号証)には、経費支出、労働日誌の一部の記載があるのみで固定資産関係事項、棚卸関係事項収穫収入関係事項の記載がなく、又、家事関連費との区分が明確にされていないため、これをもつて原告の農業所得を算出することは不可能であり、資産負債明細表(乙第七号証の三)記載は原告が係争年度において所有する流動資産は出資金六〇四円八〇銭にすぎず、現金も預貯金も所有しない旨記載されてあり、到底措信することはできず、棚卸表(乙第七号証の二)は、全資産に関する棚卸の記載ではないうえ、未処理収穫物中糯米等の記載の脱漏があり、これを以て原告の農業所得算出の資料とすることはできず、その他の証拠によつても原告の農業所得を明確に算出することはできない。

右認定のような事情のもとにおいては、具体的に原告の所得額を算出することは不可能であり、結局原告の所得金額および損失の額を推計して算出するほかないということができる。そして、被告が右推計に際し適用した被告主張の公開農業所得標準、俵代、災害減算所得標準(乙第一号証)は被告主張の方法によつて作成されたことは成立に争ない乙第十、第十一号証、証人成瀬格の証言によつて認められ、いづれも相当と考えられる。

そこで、右計算方法による計算の基礎となる数額についてみると、

(1)  田畑所得のうち、一毛田の総生産量は前掲第一号証成立に争ない乙第三号証の一、二によれば五〇石四斗六升であることが認められる。

同普通畑、そさい畑の耕作反別は夫々三反六畝、五畝であることは当事者間に争いがない。様式により真正に成立したものと認められる乙第九号証によれば、高砂地区を三段階に区分する場合原告の田畑は最上位の土地であることが認められる。そして乙第一号証の公開農業所得標準率によれば夫々一毛田については石当金八、八五〇円、普通畑については、反当金一三、八四〇円、そさい畑については反当金二三、五五〇円であるから、田畑による所得基本額は田四四六、五七一円、普通田四九、八二四円、そさい畑一一、七七五円合計五〇八、一七〇円ある。

(2)  災害田は前掲乙第一号証によれば農業災害補償法により原告が昭和二十八年において交付を受けた共済金によつてその災害の程度を算定するときは三〇%ないし四〇%のものが一町七反一畝四〇%ないし五〇%のものが三反五畝五〇%ないし六〇%のものが三反七畝、六〇%ないし七〇%のものが二反七畝、七〇%ないし八〇%のものが三反〇畝、八〇%ないし九〇%のものが一反九〇%ないし一〇〇の%ものが一畝であることが認められる。

乙第一号証の災害田減算標準額は被害程度三〇%ないし四〇%のものは反当金一、三〇四円、四〇%ないし五〇%のものは反当金一、一七五円、五〇%ないし六〇%のものは反当金一、〇四一円、六〇%ないし七〇%のものは反当金九〇七円、七〇%ないし八〇%のものは反当金七七六円、八〇%ないし九〇%のものは反当金六四二円、九〇%ないし一〇〇%のものは反当金五九五円であるから災害田減算額は合計三五、七四三円であり(1)の田畑所得額五〇八、一七〇円よりこれを控除した残額四七二、四二七円が田畑による標準所得となる。

(3)  右標準所得外の所得として加算せられるべき俵代については成立に争いのない乙第三号証の一、二によれば、原告の米供出高は三九石六斗であることが認められ乙第一号証によれば俵代の標準価格は一石当り一一〇円であるから、合計四、三五六円となる。

(4)  標準所得の計算において経費として控除されていない経費即ち牛馬費土地改良区費、水利組合費、雇人費、共済掛金は右標準所得から控除しなければならない。

(イ)  (牛馬費)

原告が係争年度において馬二頭を所有していたことは当事者間に争いがない。

そして乙第一号証の公開農業所得標準によれば、牛馬費は馬一頭当り金二二、五〇〇円であることが認められるから、馬二頭分金四五、〇〇〇円である。

(ロ)  土地改良区費として金二、九五〇円を支出したことは被告の自認するところである。

(ハ)  前掲乙第一号証によれば原告は係争年度において水利組合費として金三、五三四円を支出し、共済掛金として金一、六一四円を支出したことが認められる。

(ニ)  雇人費について按ずると、原告が係争年度において、年雇賃金として金二六、三〇〇円、雇人酒代として金一、四一〇円、同米代として金九、〇八七円二〇銭、雇人世話代金一、〇〇〇円を支出したことは当事者間に争いがなく、前掲甲第十六号証によれば原告は昭和二十八年度において雇人賄費として金八、七一五円を支出したことが認められる。又臨時雇人賃金については、前掲甲第十六号証の記載状況に照らしてこれを以て雇人賃金支出を確定する資料とすることはできず、他はこれを認定し得るに足る資料はないので、推計によりこれを算定するほかはないと考えられるところ、臨時雇人数については、被告主張の臨時雇人数速算表(別表(三)を適用することを相当と認め、これに前掲原告の耕作反別三町四反(反以下切上)であることおよび被告において自認するところの原告の従事者数二であることを適用したうえで、三一五人とし、又、賃金単価については成立に争いない乙第四号証、第十号証様式からみて真正に成立したと認める乙第五号証、第六号証を総合してみるときは金二六四円として被告の推定を相当と認められるから、臨時雇人賃金は、金八三、一六〇円と推計するのを相当とする。よつて雇人費として合計金一二九、六八〇円を計上した被告の推定は相当と認められる。

よつて別表(四)掲記のとおり、原告の農業標準所得四七二、四二七円((1)より(2)を差引いた残額)に(3)の俵代を加算しその合計から(4)の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の標準外経費計一八二、七七八円を控除した残二九四、〇〇五円が原告の昭和二十八年度における農業所得と推計することは相当である。

してみると、原告の農業所得を金二九四、〇〇五円と認定しこれに当事者間に争いのない原告の給与所得額金一九二、一〇〇円を加算した金四八六、一〇五円をもつて課税総所得金額として所轄税務署の更正決定を是認した被告の本件決定は結局相当であり、該決定の取消を求める原告の本訴請求は理由がないから、失当としてこれを棄却し 訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 新妻太郎 裁判官 平川浩子 裁判官 磯部喬)

別表(一)

一 総収入金五拾七万四千参百四拾六円参拾銭

内訳

(1) 田作 作付反別 実収高 単価 総金額

水稲自作 二町九反五畝 五一石三八 八、〇九三、〇六 四一五、八二一、五〇

(2) 畑作 総反別 四反一畝二五歩 総金額 六九、五〇三、八〇

〈省略〉

(3) 雑収入 八九、〇二一、〇〇

1 昭和二十八年度早期供出奨励金 一九、八二〇、〇〇

2 超過供出奨励金 二、四八四、〇〇

3 完納奨励金 三〇、九四四、〇〇

4 米麦共済金 麦 一、一〇〇、〇〇 水稲 三四、六七三、〇〇

三五、七七三、〇〇

(4) 収入累計 五七四、三四六、三〇

二 必要経費総計 金五拾弐万弐百壱円六拾六銭

内訳

(1) 公租公課 金四万参千七百拾壱円五拾銭

(2) 種苗費 金壱万七千参百七拾六円九拾壱銭

(3) 肥料費 金八万四千五百円

(4) 牛馬費 金四万七千四百拾八円

(5) 雇人費 金拾九万弐千五百七拾弐円弐拾銭

(6) 衣料費 金壱万五百六拾円

(7) 農器修理代 金壱万五千百六拾参円

(8) 雑費 金四万壱千参百拾五円九拾四銭

(9) 農器具償却費 金六万七千五百七拾五円拾銭

一より二を控除したる金五万四千百四拾四円六拾四銭が農業所得の金額である。

公租公課明細書

〈省略〉

種子代明細書

〈省略〉

肥料明細書

〈省略〉

牛馬明細書

〈省略〉

雇人費明細書

〈省略〉

衣料費明細書

〈省略〉

農具修理費明細書

〈省略〉

其の他明細書

〈省略〉

減価償却明細書

〈省略〉

別表(二)

昭和28年分 仙台高砂地区 確定田所得標準表

〈省略〉

(注) 収入金単価8,633円は1石当米価8,093円(検査等級別米価の加重平均額でしんしやく後の米価)に1石当藁の収量45×単価12円を乗じて得た収入金540円を加算して算定したものである

昭和28年分 確定田畑所得標準表 普通畑の部

〈省略〉

別表

昭和28年分 確定田畑所得標準表 特殊畑 そ菜畑

〈省略〉

別表(二)

確定災害田減算所得標準表 仙台市 高砂地区

〈省略〉

(注) 1 共済基準反収および共済金

農業災害補償法(昭和22年法律第185号)の共済事故による減収により共済組合が共済金を組合員に支払うかどうかを判定する際に、同法第109条第1号による基準となる当該耕地の平年収穫量で、農林省が制定した共済基準反収の設定要領により耕地ごとに設定されており、収の収量から30%以上減収した場合に、被害程度に応じて共済金が支払われる。

2 減算所得(B―A)欄は、乙第1号証中、災害算所得の項の被害程度別減算所得と符合する。

別表(三)

臨時雇人数速算表

〈省略〉

自家労力換算表

〈省略〉

別表(四)

〈省略〉

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