大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(う)119号 判決

被告人

照井守

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三月及び罰金五千円に処する。

但し右懲役刑についてはこの裁判確定の日から二年間、その執行を猶予する。

右の罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人菊地養之輔の控訴趣意第一点について。

(イ)  昭和二十二年政令第百六十五号第一条第一項違反の罪は、その所持する物資が連合軍自体の財産たると、軍の附属若しくは隨伴する者の財産たるとにより、規定上何等差別がないものであるから、右違反の罪についてはその審理においても、右いずれかの財産であることを明確ならしむれば足り、その所有者の軍或は將兵個人であることまで必ずしも特定する必要はないと解すべきである。原判決挙示の証拠によれば、被告人の本件所持の物資が右森止に該当するものであることが優に認められるのであるから、特に該物資の所有者が米軍自体なりや、米軍將兵個人なりやにつき審理を盡さなかつたとするも違法ということはできない。また原判決が被告人の本件所持物資につき、米軍自体の財産であると認定するについて、その証処がなく、却つて右所持物資は米軍將兵個人の財産であることが認められるとするも、前段説明の如く、軍自体の財産なりや、將兵個人の財産なりやにつき差別のない以上、原判決はその挙示する証拠により、被告人の本件所持物資につき所持禁止の財産に該当するものであることを認定していることに変りはないというべきであるから、原判決に証拠によらずして事実を認定した違法があると認められない。なお將兵個人の財産を、軍自体の財産と認定した誤があるとするも、この誤は判決に影響を及ぼすものではない。

同上第三点について。

(ロ)  しかしながら本件不法所持の罪については、社会通念上一個の所持と認められる以上、原判決に起訴状に記載された物と異る他の物資の所持を認定した部分があるからとて、起訴されない事実を認定した違法があるということができない。本件においては起訴状記載の剃刀所持の部分を、その一個につき認定を異にし、剃刀の匁四枚と認定したものであることが明らかであつて、公訴事実の一個の所持中に含まるべきものなることは論を俟たないから何等原判決にこの点の違法がなく、右認定のため特に訴因の追加変更を要するものと解すべきものでもない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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