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仙台高等裁判所 昭和52年(ネ)121号 判決

控訴人(被告)

高山木材工業株式会社

被控訴人(原告)

佐藤文子

ほか三名

(補助参加人)

日本火災海上保険株式会社

主文

原判決が被控訴人佐藤文子の請求を認容した部分のうち、「金八三五万五二三七円及び内金七一五万五二三七円に対する昭和五一年一月二九日以降、内金一二〇万円に対する原判決確定の日の翌日以降、各完済まで年五分の割合による金員」をこえる金員の支払請求を認容した部分を取り消す。

右取り消した部分に関する被控訴人佐藤文子の請求を棄却する。

被控訴人佐藤徳弘、同佐藤光弘及び同佐藤隆久に対する本件各控訴を棄却する。

被控訴人佐藤文子と控訴人との間に生じた訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五分し、その一を同被控訴人の、その余を控訴人の、各負担とする。

被控訴人佐藤徳弘、同佐藤光弘及び同佐藤隆久に対する控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者の主張並びに証拠の関係は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

一(1)  原判決二枚目表末行の「(一)葬儀費五〇万円」の次に「右費用は被控訴人文子が負担した。」と、同二枚目裏七行目「(三)慰藉料一〇〇〇万円」の次に「右金額は被控訴人ら各自の精神的損害に対するもので、その割合は法定相続分と同一である。」と、同八行目「(四)弁護士費用二五〇万円」の次に「右費用は被控訴人文子が訴訟委任契約をしたものである。」と付加する。

(2)  原判決別紙「原告の主張」一枚目裏三行目「これを確認せず。」以下同七行目までを削り、次のとおり付加する。

「漫然根張り丸太の上に二本の丸太を置いたままリフトの爪を抜き後退した。右フオークリフトが後退しはじめたので、訴外亡光久は普通貨物自動車から約七メートル離れていた位置から、丸太を整理結束させようとして、普通貨物自動車に近付き、運転席の方から右自動車の上に登ろうとして体重をかけたところ、その振動のため右自動車に積んであつた丸太が落下し、それとともに、光久も転落し、落下した丸太の下敷きとなつて光久は死亡した。」

(3)  原判決別紙「原告の主張」二枚目表五行目に、「フオーリフト」とあるのを「フオークリフト」と訂正する。

(4)  控訴人及び補助参加人の、本件事故が自賠法三条にいう運行によつて生じたものではない旨及び仮に運行によつて生じたとしても亡光久は同条の「他人」に該当しない旨の各主張は、争う。

控訴人主張の労災保険からの給付を受けたことは認める。

二(1)  原判決二枚目裏最終行の後に次のとおり付加する。

「しかし本件事故は自動車のエンジン装置その他走行に必要な装置によつて生じたものではなく、自動車の走行とは無関係な積荷作業中に発生したものであつて、かかる事故は自動車損害賠償保障法(以下自賠法と略記する。)第三条にいう「運行」による事故ではない。仮に本件事故が貨物自動車の運行によつて生じたものとしても、亡佐藤光久は本件事故当時材木の積込み作業に従事中であつたから、自賠法二条にいう運転者又はその補助者にあたり、同法三条の「他人」にあたらず、同法の保護対象から除外される。」

(2)  原判決三枚目表七行目の次に次のとおり付加し、同八行目冒頭の「1」を「2」と改める。

「1 本件事故発生については、運行供用者及び訴外高山貞弘が積荷について十分な注意をしたにもかかわらず、別紙「被告の主張」記載のとおり亡光久の過失により発生したものであり、本件トラツクには構造上機能上の欠陥もなかつたのであるから、控訴人はこの点でも免責される。」

(3)  原判決三枚目表一〇行目及び一一行目を次のとおり訂正する。

「3 被控訴人文子は本件事故につき、労災保険より葬祭料以外に一時金一〇〇万円、年金として少くとも一八五万四〇七五円を受領しているので、右金額を賠償額から控除すべきである。」

(4)  原判決別紙「被告の主張」一枚目表四行目「第五回目の積み込み」以下同二枚目表末行までを削り、次のとおり付加する。

「第五回目の積み込みを終つて原木からツメをはずして後退させ始めた。それとほぼ同時に、訴外佐藤光久はトラツクの運転席ステツプからアオリ付近を経て杉丸太上に登り材木を動かそうとしたとき、足をすべらせてトラツクから転落し、同人が足をすべらせたはずみで同人の上に木材が落下して同人は死亡した。同人がトラツクに登り始めてから転落するまでは約五秒間時間があつたから、亡光久はゆうに丸太の上に登りかつ丸太を動かす余裕があつたのである。亡光久は材木をトラツクに積み込みこれを運搬するのが仕事であり、又トラツクに積んだ材木が不安定なことは通常あることであり、本件においては不安定といつても丸太に力を加えなければ落下しない状態にあつたのであるから、訴外高山貞弘の丸太積込みには何らの過失もない。従つて本件事故発生については控訴会社には何ら過失はなく、訴外亡光弘の一方的過失があるだけであるから、控訴会社には何ら責任がない。

仮に控訴会社に何らかの過失責任があるとしても、本件事故発生については前記の如く、訴外亡光弘の重大な過失があり、その過失割合は控訴会社三に対し訴外亡光弘七であるから、七割の過失相殺をすべきである。」

三  補助参加訴訟代理人は、次のとおり述べた。

(1)  本件事故当時、貨物自動車はエンジンを停止し、運転者訴外高山貞弘は運転席を離れ、フオークリフトを運転して伐採原木を右自動車の荷台に積載しようとしてその荷台上に伐採原木を置いてフオークリフトのツメを引いた直後に伐採原木の転落を見たというのであるから、本件事故は貨物自動車の運行によつて起きたというより、フオークリフトの運行によつて発生したとみるのが相当である。

(2)  仮に本件事故が貨物自動車の運行によつて生じたものとしても、訴外亡光久は自賠法二条四項の運転補助者であるから、同法三条の「他人」に該当せず、同条項に基づいて控訴人会社の責任は問えない。

すなわち、光久は訴外高山貞弘の運転する貨物自動車の運転助手として伐採原木の貨物自動車への積み込み作業をしていたのであるが、右積み込みが自賠法三条の「運行」に該るとするならば、亡光久はまさに右訴外貞弘とともに運行業務に携わつていたものであり、次のとおり亡光久の過失もあつて本件事故の発生を見たのであるから、亡光久は自賠法三条の「他人」に該らない。

(3)  亡光久は、控訴会社において原木木材の運搬並びに製材の業務に継続従事していたもので、原木の積載作業中積み上げた原本が荷崩れ落下する恐れがあるので、フオークリフトで原木を貨物自動車に積み上げた際は積み上げられた原木が安定し落下する恐れがないか否か十分確認し、積載原木の整理並びに縄掛け作業をしなければならないことを十分承知しておるにもかかわらず、同人は本件事故当時右の安全確認を怠り、フオークリフトで貨物自動車に原木が積み上げられるや否や貨物自動車に近付くか、積み上げられた原木の上に乗つた過失がある。

四  〔証拠関係略〕

理由

一  被控訴人ら主張の日時場所において、訴外佐藤光久が杉丸太材をトラツクに積載する作業に従事中トラツクから転落した原木の下敷きとなり死亡したことは、当事者間に争いがない。

二  控訴人及び補助参加人は本件事故が自賠法三条にいう「運行」による事故であることを争うので、この点につき検討する。

成立に争いのない乙第一、第四、第七ないし第九号証、原・当審における証人高山貞弘の証言及び当審における検証の結果によれば、控訴会社は建築請負業のほか、山林を買い受け、立木を伐採し同社の製材所まで搬入、又は他から原木を買い受け、これらの原木を製材のうえ販売することを業とするものであること、本件事故当日、控訴会社は本件事故現場附近において買い受けた山林から原木を伐採して相馬市内の同社製材所に搬入する業務を行い、同社取締役高山貞弘がその指揮に当たつたこと、右高山は同日午前中は従業員二名を指揮してトラツク二台分の原木を伐採、搬入したが、午後は自ら本件トラツクを運転して製材所から現場に赴き、従業員佐藤光久と二名で、伐採ずみの杉の原木を本件事故現場付近までブルドーザーで運び出し、チエンソーで適当な寸法に切り、できあがつた杉丸太をブルドーザーの前部に設けてあるフナークリフトに積んで東方に進み、南北に走る幅員約二・七メートルの林道上に南方に向かつて駐車中の本件トラツク(最大積載量三〇〇〇キログラム、全長五・七八メートル、幅員一・六メートル、荷台の長さ四・一八メートル、高さ(運転席屋根上後端付近に水平に取り付けられた鉄枠まで)一・九五メートル、荷台側板(アオリ)の上端までの高さ一・三九メートル。なお側板の内側にはアオリから三七センチメートルの高さまで両側に各二本の鉄製の支え枠が垂直に設けられている。)の西側から荷台の上に積み込む作業をしたこと、右積み込み作業の際ブルドーザーの運転及びリフトの操作には高山貞弘があたり、佐藤光久はトラツクに積み込まれた杉丸太を整理する役割を受け持つていたこと、右積み込み作業は初め荷台の長さ以内の長さに切られた杉丸太をほぼ荷台側板わきの鉄製支え枠の高さまで約三〇本位積み、次いで長さ六・〇五メートル(以下第一丸太という)、六・九二メートル(以下第二丸太という)の長さの二本の杉丸太を運転席の上の方に先端を持つて行くように積み込み、佐藤がトラツクの上に登りこれを安定する位置に動かした上降りて来たので、続いて長さ六・〇八メートル、切口直径三〇センチメートル、末口直径一八センチメートルの杉丸太(以下第三丸太という)及び長さ六・一五メートル、切口直径三一センチメートル、末口直径一九センチメートル、重量約一二〇キログラムの杉丸太(以下本件事故丸太という)をブルドーザーのリフトに乗せて先の二本の杉丸太と同じように先端を運転席上部に出すように乗せたこと、高山貞弘は右作業により本件トラツクへの杉丸太の積み込みは終つたものと判断し、ブルドーザーを西方に後退させ始めたが、そのころ佐藤光久がトラツク運転席の西側部からトラツクの上に登つて行くのを見たこと、高山はその後トラツクから目を離し、後方を見ながらトラツクから約六メートル離れた位置まで後退させ、ブルドーザーのエンジンを止めながら前方に目を移してトラツクを見たとき、佐藤光久があお向けにトラツクの荷台の前端から約三一センチメートルの付近の西側に転落中で、その上から杉材が落下中である状態を目撃し、その直後、地面に落ちた光久の上体に右杉材が当たつたのを見たこと、その後高山は光久の救出及び病院への搬送にあたつたが、もし本件事故が発生しなければ、同人はその後トラツク上に積み込まれた杉丸太を光久と協力してガツチヤ或いはロープを使用して固定したうえ、自ら本件自動車を運転して控訴会社の製材所まで運送する手筈であつたこと、以上の事実を認めることができ、右の認定を左右するに足る証拠はない。

右によれば、控訴会社は本件事故当時本件トラツクを本件事故現場から製材所までの原木運搬の用に供すべく、製材所から事故現場まで運行し、更に原木を積み込んで製材所に運搬するために事故現場に駐車させていたものであり、本件事故は、右駐車中における原木積載作業中の終了時点において、トラツク上にいた作業員が地上に転落し、更にその上から積荷の一部が落下したことに因り発生したものであるから、自賠法二条にいう「自動車を当該装置の用い方に従い用いる」状態において発生したものということができる。したがつて、本件事故は自賠法三条にいう運行による事故というべきである。

三  控訴人及び補助参加人は、本件事故につき亡佐藤光久は自賠法三条所定の「他人」に該当しない旨主張するが、前記認定事実によれば、同人は本件事故当時原木の積載作業に従事していたのみであつて、同人が当時本件トラツクの「運転又は運転の補助に」従事していた事実を認めるに足る証拠はないから、右の主張は採用することができない。

四  そこで進んで訴外高山貞弘の無過失について考察すると、前掲各証拠によれば、前記認定の事実に加えさらに次の事実が認められる。

前記認定のとおり訴外高山貞弘は荷台の長さ以内の長さの杉丸太を約三〇本積み込んだ後さらに四本の丸太をその上に積み上げたのであるが、第一丸太及び第二丸太はトラツク荷台の東側に側板と平行にその後方をすでに積み込んであつた丸太の間に納まる形で積み込んだこと、次いで第三丸太と本件事故丸太が積み込まれたが、第二丸太と第三丸太との中間には、右積み込み以前から荷台後部付近で特に太くその最上部は荷台わき支柱より高い位置に達する杉丸太が積まれていたので、第三丸太はその太い部分を避けその後方をやゝ西へ振る形で積み込まれたこと、右第三丸太の西側にはすでに運転席後部の水平に取り付けられた鉄枠よりも高い位置(もとより荷台側板付近に設けられた支柱より高い位置である。)に達する太い切口の杉丸太が積み込まれており、しかもその丸太の西側と荷台西側支柱との間には本件事故丸太をさらに積み込む余裕もなかつたので、本件事故丸太は運転席後部付近でその太い切口の丸太の上に重なる不安定な形で積み込まれたこと、亡光久は本件事故丸太で胸部を抑えられる形で足をトラツクの方に向け東西に仰臥する形で倒れていたことが認められる。

以上の事実を総合すると、本件事故は、本件事故丸太が不安定な状態で積み込まれたため、亡佐藤光久が積み込まれた杉丸太の位置を直しかつロープを掛けようとして、トラツク運転席のステツプから荷台側板に足を掛け、次いで丸太の上に登ろうとする一連の動作のいずれかの段階で転落し、次いで本件事故丸太が同人の体の上に落ちて発生したものであり、右一連の経過をみるときは、積載された本件事故丸太が不安定な状態にあつたことが本件死亡事故に対し原因を与えなかつたものと断定することはできない。したがつて、本件事故現場における責任者であつた高山貞弘が本件事故につき無過失であつたと認めることはできない。

控訴人及び参加人は、本件事故が佐藤光久の過失により発生した旨主張するが、前記認定の事故の経過によつては、光久が杉丸太上に登り材木を動かそうとしたとき足をすべらせた事実は到底認められず、更に本件全証拠を検討しても、本件事故が同人の過失により発生したと認めるに足る事実は全く認められないから、右主張は採用することはできず、ひいては控訴人らの過失相殺の主張も採用するに足りない。

五  損害

1  逸失利益 一八九二万七九三八円

成立に争いのない甲第四号証、乙第三及び第一〇号証並びに原審証人佐藤安久の証言によれば、亡光久(昭和一一年一月二二日生)は年間を通じ控訴会社方で月平均二二日稼働し、昭和五〇年中に合計九五万六六五〇円の給与の支払を受けていたほか、妻と母の手伝を得ながら田一一〇アール及び畑一六アールを耕作していること、右農業による純益は相馬市農業委員会の調査によれば年間一三〇万五七三九円と推算されること、亡光久は父、母、妻及び未成年の男子三名と同居し、父安久は農業に携わらず日雇人夫として稼働していること、以上の事実が認められ、以上の事実によれば亡光久の農業収入に対する寄与率は五〇パーセント、生活費は同人の収入分に対し三〇パーセント、就労可能年数は二七年間と認めるのが相当で、右により同人の逸失利益をホフマン方式により算定すると、頭書の金額となる。証人佐藤安久の証言中農業収入につき右認定金額を越える部分は根拠に乏しく採用し得ない。

2  相続承継

成立に争いのない甲第四号証によれば、亡光久の相続人は妻である被控訴人文子とその子であるその余の被控訴人三名であることが明らかである。従つて前記亡光久の損害一八九二万七九三八円の三分の一である六三〇万九三一二円を被控訴人文子が、残金の三分の一である四二〇万六二〇八円をその余の被控訴人が各自相続承継したものというべきである。

3  慰藉料

前出各証拠によれば、本件事故についての慰藉料は、被控訴人佐藤文子については三五〇万円、その余の被控訴人らについては各自一五〇万円と認めるのが相当である。

4  葬儀費

四〇万円を以て相当費用と認める。被控訴人らの家族構成によれば、右は被控訴人佐藤文子が支出したものと推認することができるところ、原審証人佐藤安久の証言によれば、被控訴人文子は労災保険より葬祭料として二〇万円支給されたことが認められるから、同被控訴人は残金二〇万円の請求権を有する。

5  保険による填補

労災保険より被控訴人文子が一時金及び年金として合計二八五万四〇七五円を受領していることは争いがないから、右金額を被控訴人文子の請求額から差引くと残金は七一五万五二三七円となる。

6  弁護士費用

本件記録によれば、被控訴人佐藤文子は、自己のため及び被控訴人佐藤徳弘、同佐藤光弘、同佐藤隆久の各法定代理人として、渋佐寿平弁護士に対し原審及び当審の各訴訟代理を委任したことが明らかである。

ところで前記甲第四号証によれば、被控訴人佐藤徳弘は昭和三七年二月一二日、同佐藤光弘は昭和三九年八月二三日、同佐藤隆久は昭和四一年九月一九日にそれぞれ出生したものであつて、いずれも未成年者であり、同佐藤文子は夫光久の死亡後右三名の唯一の親権者であることを認めることができ、右の事実と前記1の認定事実とを併せ考えるときは、右被控訴人佐藤徳弘、同佐藤光弘、同佐藤隆久の三名は、いずれも未だ自活能力を有しないため、前記訴訟委任に伴う弁護士費用は、被控訴人佐藤文子が単独で支払うことを約したものと推定するのが相当であり、右の推定を覆えすに足る証拠はない。

そこで被控訴人佐藤文子の主張する弁護士費用相当額の損害額につき検討すると、同被控訴人がその主張する金額の弁護士費用を支払うことを約した事実を認めるに足る証拠は顕れていないが、本件訴訟の経過にかんがみるときは、本件において、控訴人が同被控訴人に対しその損害の一部として支払うべき弁護士費用は、本件一、二審訴訟を通じて金一二〇万円をもつて相当と認める。

被控訴人佐藤文子は右弁護士費用相当の損害が本件事故と同時に発生したものとして、控訴人に対し右損害金に対する本件事故の翌日以降の民事法定利率による遅延損害金の支払を請求する。しかし、右の損害は本件事故の結果当然に発生したものではなく、被控訴人らが前記訴訟代理の委任をせざるをえなくなつた結果生じたものであり、しかも、被控訴人佐藤文子が前記弁護士費用の全部又は一部をすでに支払つたこと又はその支払期を定めた約定が存することにつきなんら立証が存しない本件においては、前記弁護士費用の支払期は原判決の確定と同時に到来するものと認めるほかない。したがつて、前記遅延損害金の請求は、原判決の確定の日の翌日以降のものに限つて理由がある。

六  そうすると、被控訴人佐藤文子の本訴請求中控訴人に対し金八三五万五二三七円及び内金七一五万五二三七円に対する昭和五一年一月二九日以降、内金一二〇万円に対する原判決確定の日の翌日以降、各完済まで年五分の割合による金員の各支払を求める部分は理由があるから、同被控訴人の請求は右の限度でこれを認容すべきであり、原判決中右の限度をこえて同被控訴人の請求を認容した部分は失当であつて、取り消しを免れない。しかし、その余の被控訴人らの請求はいずれも理由があるから、これを認容した原判決は正当であり(原判決は、控訴人は右被控訴人らに対し金一五〇〇万円の支払をすべきものとしているが、右は、右三名の被控訴人ら各自に対し金五〇〇万円宛を支払うべき趣旨であることは明らかである。)、右被控訴人らに対する控訴は理由がない。

よつて、原判決中被控訴人佐藤文子の請求を認容した部分のうち前記正当な限度をこえる部分を取り消して右取り消しにかかる部分についての同被控訴人の請求を棄却し、その余の被控訴人らに対する本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九五条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 大和勇美 桜井敏雄 渡辺公雄)

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