大判例

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仙台高等裁判所 昭和59年(く)23号 決定

少年 T・T(昭四二・五・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年が提出した抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する。

所論は、要するに、少年が本件非行を反省し、暴力団からの脱退を決意するとともに、叔父を身元引受人として真面目に社会生活を送ることを決意したことなどの事情があるのに、これらの点を酌むことなく、少年を中等少年院に送致した原決定は著しく不当な処分である、というのである。

そこで、本件少年保護事件記録及び少年調査記録を精査検討すると、原決定が少年の非行事実として認定する無免許運転、定員外乗車、信号無視、通行禁止違反の各事実は優にこれを首肯することができるのであつて、犯情甚だ芳しくなく、原決定が少年の処遇の理由として説示するところは相当として是認することができる。即ち、同記録によれば、少年は、中学校卒業後、上京して板前見習となつたが、一年足らずのうちに無断で郡山市に戻り、徒遊するうち、実兄の所属する暴力団○○組の準構成員となり、以来、その事務所や組関係の女性の所に寝泊りするなど組関係者と交遊しながら無為徒食の生活を続けていたこと、少年の実父は一家名乗りを許され、多数の前科を有する暴力団の幹部であつて、少年の所属する暴力団の組長は実父の舎弟分にあたり、少年の実兄も同組の幹部であること、少年の実母は離婚して所在等は不明であり、少年の叔父を含む親族は少年の引き取り方を拒否している状況にあることがそれぞれ認められ、以上の認定事実に現われた少年の生育歴、行状、生活環境、交友関係、家族関係、その保護能力などに鑑みると、原決定も説示するとおり、少年は、暴力団に対する親和性と帰属意識が高く容易にこれから離脱することが困難であるうえに、鑑別結果通知書等によつて認められる少年の知能、性格等を勘案すると、少年の要保護性は高く、自力による更生は期待しがたいところ、家族らの保護能力が皆無に近く、他に適切な社会資源もないことなどを併せ考えると、少年が反省し、暴力団からの離脱を決意していることなど所論指摘の少年に有利なまたは同情すべき事情を十分参酌しても、在宅保護による少年の矯正は相当でなく、この際、少年を相当期間施設に収容したうえ、専門家による十分な教育訓練を施し、法規範意識の高揚、社会への適応能力と明確な職業観を涵養するとともに、その間暴力団組織との関係を絶つなど関係機関による環境調整をはかり、もつて、少年の更生と健全な育成を期するのが最も適切な措置であり、これと同旨のもとに少年を中等少年院に送致した原裁判所の処分は相当であつて、著しく不当であるとはいえない。論旨は理由がない。

よつて、本件抗告は理由がないから、少年法三三条一項前段、少年審判規則五〇条によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 金子仙太郎 裁判官 小林隆夫 泉山禎治)

抗告申立書〈省略〉

〔参照〕原審(福島家郡山支 昭五九(少)二三七七号 昭五九・七・一七決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

司法警察員作成の昭和五九年六月二六日付少年事件送致書記載の各犯罪事実と同一であるので、これを引用〈省略〉する。

(適条)

前記送致書記載の犯罪事実(一)につき道路交通法七条、四条一項、一一九条一項一号の二、同法施行令二条一項

同(二)につき同法八条一項、四条一項、一一九条一項一号の二、同法施行令一条の二

同(三)につき同法五七条一項、一二〇条一項一〇号の二、六四条、一一八条一項一号

(処遇の理由)

少年は、昭和五八年三月郡山市内の中学校を卒業し、同年四月から東京都○○区内の寿司店で板前見習として働き始めたが永続きせず、昭和五九年二月右寿司店をやめて郡山に戻り、友人宅に泊めてもらいながら職探しをしたが、適当な仕事が見つからないでいるうち、同年三月頃福島市内の暴力団○○組に所属する実兄A(昭和四〇年五月一二日生)の誘いをうけ右○○組の準構成員となつた。以来少年は同市内にある組の事務所や組関係の女性宅に寝泊りしながら、無為徒食の生活を送つてきた。

少年は知的能力については平均以上のものを有しているが、規範意識が甘く、暴力団組織に対する親和性も高いものと認められる。

また、少年の父は暴力団幹部で、これまでも少年らの養育を怠りがちであつたうえ、先ごろ職業安定法違反事件により福島地方裁判所郡山支部に起訴され現在勾留中の身であり、少年を指導監督する能力は到底認められないし、母は長期間音信不通の状態で行万が知れず、他に少年の監護をゆだねるに足りる関係者もいない。

以上の各事実のほか、少年調査票、鑑別結果通知書に記載された少年の性格、生育歴等にかんがみると、少年を在宅保護とした場合は再び暴力団組織に戻り、より重大な再非行に至る危険性が高いものといわざるをえない。そこで、本件非行は比較的軽微な事案ではあるが、この際少年を矯正施設に収容保護し、積極的な施設内処遇を施す一方、その間に暴力団組織とのつながりを断ち切らせるなど関係機関による環境調整をすすめ、もつて少年の更生と健全な育成を図るのが相当である。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 小林敬子)

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