大判例

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仙台高等裁判所 昭和62年(ネ)335号 判決

控訴人

日本電信電話公社訴訟承継人 日本電信電話株式会社

右代表者代表取締役

真藤恒

右訴訟代理人支配人

寺西昇

右指定代理人

三輪佳久

二木良夫

下山政利

大内忠康

平井和男

白沢徹

松川清

高館陸雄

被控訴人

花田俊博

右訴訟代理人弁護士

高橋耕

鈴木宏一

主文

弁護士費用についての損害賠償請求に係る部分の本件控訟を棄却する。

前項の請求に係る部分の控訴費用(差戻前の分を含む)及び上告費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決中、弁護士費用の損害賠償請求に係る部分のうち、控訴人敗訴の部分(一〇万円の支払を命じた部分)を取り消す。右部分の被控訴人の請求を棄却する。右部分に関する訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却、控訴費用控訴人負担との判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠の関係は、次項以下のとおり、当審における補足主張を追加し、当審における証拠関係が当審記録中の証拠目録のとおりであるほかは、原判決の事実摘示のとおりである(ただし、原判決八頁四行目の「本件戒告処分」の前に「不法行為に基づく損害の賠償として、」を加え、同行の「と右未払賃金」から同五行目の「五〇万円、」までを「を訴求するための」に改め、同六行目の「並びに」から同九行目の「遅延損害金」までを削る外「被告」は、すべて、「承継前の控訴人公社」に改める)から、ここに、これを引用する。

三  控訴人の補足主張

1  年休時季指定者の代替勤務者を決定するのは本件の場合竹本課長である。即ち、代替勤務の申出があったときは、工事係長から直接に、或いはデスクの係長を通して竹本課長に報告され、その報告を受けて同課長が勤務割変更の可否を決定し、右係長らに伝達していたのであり、かかる手続がとられる以前の、工事係長以下の現場作業要員段階の内々の話があったことをもって代替勤務予定者が決定されていたとすることはできない。

2  また、過去において工事係長らの報告どおりに代替勤務希望者の勤務割が変更されていたとしても、それはそのとおりにしても特に問題がないと竹本課長が判断したからであるのにすぎず、同課長の知らない時点で代替勤務者が予定され勤務割変更決定がなされていたとするのは早計である。工事係長らからの右報告は所属課長が勤務割変更を行うべきかどうかを判断するに当って一資料にすぎないのである。

本件の場合、被控訴人の年休請求のために週休者を代替勤務者として充てるのは承継前の控訴人公社(以下単に「公社」ということがある)の服務規律上問題があり、また代替勤務をしてもよいと表明していた赤城社員が後日その意思を撤回したので、被控訴人のために、あえて代替勤務者を予定してまで勤務割変更を命じなかったのである。

3  赤城が代替勤務意思の撤回をしたのは昭和五三年九月一一日であって、同月六日ではないし、それも自発的に同人と話合った坂本係長に対してなされたのである。同係長は当時の機械課内の総意、即ち成田空港再開港反対闘争参加のために休暇をとろうとする被控訴人の代替勤務はしたくない、すべきではないという職場の総意を受けて右の話合いをしたのであった。従って、赤城が代替勤務意思を撤回した以上、他にこれを希望する者はいなかったから、被控訴人の指定日には公社弘前局市外担当の所要最低配置人員を欠き、「事業の正常な運営を妨げる事情」が存在したというべきである。

4  勤務割の変更権は使用者たる公社の固有の権利であって、これを行使するか否かはその合理的な裁量に委ねられている。本件において竹本課長が被控訴人の代替者確保のため勤務割変更をしなかったことに合理的理由があったことは本件の各訴訟資料、証拠資料の上から明らかである。勤務割変更を控訴人の義務であるとする見解は誤りである。

四  被控訴人の反論

赤城は九月一一日より前に竹本課長からの説得によって代替勤務の意思を翻したのである。

また竹本課長は、赤城が翻意すると否とにかかわらず勤務割変更を命ずる意思はなかったのである。即ち、右翻意があったから勤務割変更をしなかったのではない。

年休の時季指定に伴う勤務割変更は使用者の自由裁量であるとの控訴人の主張は、労働基準法三九条の趣旨目的に適合しないものである。

五  控訴人日本電信電話公社は、昭和六〇年四月一日、日本電信電話株式会社法(昭和五九年法律八五号)附則四条一項の規定により解散し、日本電信電話株式会社が本件訴訟を承継した。

理由

一  原判決に対する控訟事件(当庁昭和五八年(ネ)第一二三号)について、当裁判所が先に昭和五九年三月一六日言い渡した判決が、上告審判決(最高裁判所昭和五九年(オ)第六一八号事件、昭和六二年七月一〇日言渡)により破棄され、その破棄にかかる部分のうち弁護士費用についての損害賠償請求に係る部分のみが差し戻されて当審の審判の対象となったので、以下に、右損害賠償請求権の存否及び範囲について検討する。

二  被控訴人の承継前の控訴人公社(公社)に対する右損害賠償請求の根拠は、要するに、被控訴人が、公社の機械課長に対し、昭和五三年九月一七日に年次有給休暇(以下、年休という。)の時季指定をし、当日の勤務をしなかったところ、公社の職員である弘前電報電話局長は、被控訴人の右年休時季指定に対して右機械課長により時季変更権の行使がなされて年休の時季指定の効力が失われたものとし、被控訴人の当日における勤務の欠如が公社の就業規則五八条三号及び一八号に該当する就労命令違反及び無断欠勤行為であるとして、これを理由に本件戒告処分をするに至ったが、右機械課長の時季変更権の行使も、右電報電話局長の本件戒告処分も違法かつ無効であって、公社の右職員らがした右各処分行為は一連の不法行為に当るから、被控訴人が本件戒告処分の無効確認等の訴えを提起し、控訴を追行するに要する弁護士費用は、右不法行為の結果の除去のために必要な費用として、相当因果関係に立つ損害に当る、というのである。

1  被控訴人主張の右年休の時季指定とこれに対する公社の職員である機械課長、電報電話局長らがした、時季変更権の行使及び本件戒告処分に至る一連の経過並びにその背景として考慮すべき機械課の業務内容、組織と勤務体制、時季指定当日の勤務予定等についての事実認定は、次のとおり、附加訂正をするほか、原判決が三五頁一行目から四六頁三行目までにおいて説示するとおりであるから、ここに、これを引用する。

(1)  (略)

(2)  原判決三五頁一〇行目の「被告」を承継前の控訴人公社(以下単に「公社」ということがある。)に、三七頁七行目、四〇頁五行目、四一頁四行目、四四頁四行目の「被告」をいずれも「公社」に、それぞれ改める。

2  そして、被控訴人の年休の時季指定が適法、有効であって権利の濫用に当らず、機械課長がした時季変更権の行使が無効であり、ひいてはこれを反対に解し有効なことを前提にしてなされた本件戒告処分もまた違法、無効であることは、前記上告審判決において、前記認定の事実関係と、一部訂正、附加を加えたほかは殆んど同一の事実関係を基礎にして判示するとおりであって、とくに、本件戒告処分が違法であって無効であることは、右確定判決である上告審判決によっての既判力をもって確定されているところである。

3  公社の不法行為責任の有無については次のとおり付加訂正するほかは、原判決が五二頁三行目から五四頁九行目までにおいて説示するとおりであるからここに、これを引用する。

(1)  原判決五二頁四行目の「違法であると解される」を「違法かつ無効であることは前述のとおりである」に改め、同七行目の「判決」の次に「(民集二七巻二号二一〇頁)」を加える。

(2)  同五三頁四行目の「推認される」を「いうべきである」(なお、竹本課長の時季変更権の行使がなされた当時は、前記一6に認定説示した如く、公共企業体職員の成田空港反対闘争への参加とこれによる違法行為発生の防止に関して、内閣官房長官通達等により公社に対して所属職員の管理監督の強化が要請され、公社もその要請に応じてその強化をしていたという内外の客観情勢があり、また、本件の如き事情ないし背景のもとでなされる年休の時季変更権の行使が必ずしも違法ではないとする一部の法的見解もありえないわけではなかったのであるが、このような事情では、いまだ、右時季変更権の行使とこれに続く本件戒告処分による不法行為について、その処分行為の担当者たる右職員らに少なくとも過失がなかったとまではいえない。)」に改め、同五四頁七行目の「本件の場合、」の次に「右1に掲記した内閣官房長官通達等に由来する当時の公社の置かれた内外の客観的な情勢や時季変更権行使についての一部の法的見解等をも含めて」を加える。

(3)  原判決五二頁九行目、五三頁五行目、同六行目、同九行目の「被告」はいずれも「公社」に、同五四頁八行目の「被告」は「公社、したがってその承継人である控訴人に」に改める。

(4)  原判決五四頁九行目のあとに「よって公社、したがってその承継人である控訴人に対して本訴弁護士費用についての損害賠償請求は一〇万円の支払を求める限度で理由があるから、これを認容すべきである。なお、被控訴人からこの点については不服申立がない。」を加える。

三  以上のとおりであって、右の結論と同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから民事訴訟法三八四条一項に従いこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法九六条後段、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奈良次郎 裁判官 伊藤豊治 裁判官 石井彦壽)

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