大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

仙台高等裁判所 昭和62年(行ケ)1号 判決

原告

櫛田一男

右訴訟代理人弁護士

大谷好信

右同

三島卓郎

右同

真田昌行

右同

小野寺康男

被告

福島県選挙管理委員会

右代表者委員長

白石義夫

右訴訟代理人弁護士

土屋芳雄

右同

今泉圭二

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

1  昭和六二年四月一二日執行の福島県議会議員一般選挙における、いわき市選挙区の当選の効力に関する青木稔外五名の異議申立について、被告が同年七月二八日にした決定は、これを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二  当事者の主張

一  原告の請求の原因

1  原告の地位

原告は、昭和六二年四月一二日に執行されたいわき市選挙区福島県議会議員一般選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補し、当選人になったものである。

2  異議申出及びそれに基づく決定

訴外青木稔外五名は、原告の右当選の効力に異議があるとして、昭和六二年四月二二日、被告に異議の申出をしたところ、被告は、同年七月二八日、本件選挙における原告の当選を無効とする旨の決定(以下「本件決定」という。)をし、右決定書は同月二九日原告に交付された。

3  本件決定の理由

本件決定の理由の要旨は次のとおりである。

(一) 本件選挙において、選挙会は、原告(最下位当選人)の得票数を一万一一一二票、訴外青木稔(落選者中最上位者)の得票数を11095.76票と決定した。

(二) ところが、右訴外人外五名からの異議申出に基づき、被告が審理した結果によれば、原告の得票数は一万一一〇九票、訴外青木稔の得票数は11119.999票となった。

(三) そのため、訴外青木稔の得票数は原告の得票数を上回ることとなるから、被告は本件選挙の選挙会において当選人とされた原告の当選を無効とする旨決定した。

4  本件決定の違法性

しかし、本件決定の基礎となった別表(一)の番号一ないし五一、五三ないし五八、六〇ないし八一、八三ないし一〇九、同表(二)の番号一一〇ないし一二一、一二三ないし一三二、同表(三)の番号一三三ないし一六三、同表(四)の番号一六四ないし二一七、同表(五)の番号二一八ないし二六三、二六五ないし二九七、同表(六)の番号三〇〇ないし三一二、三一四ないし三三九に各掲記の投票の効力に関する被告の判定は誤りであり、訴外青木稔に対する有効票とされた同表(一)の番号三ないし五一、五三ないし五八、六〇ないし八一、八三ないし一〇九、同表(二)の番号一一一ないし一二一、一二三ないし一三二、同表(三)の番号一四五ないし一六三(ただし、同番号一四七は按分有効)、同表(四)の番号一七三ないし二一七、同表(五)の番号二二七ないし二六三、二六五ないし二九七、同表(六)の番号三〇二ないし三一二、三一四ないし三三九の各投票は、すべて無効票と、また、無効票とされた同表(一)の番号一、二、同表(二)の番号一一〇、同表(三)の番号一三三ないし一四四、同表(四)の番号一六四ないし一七二、同表(五)の番号二一八ないし二二六、同表(六)の番号三〇〇、三〇一の各投票はすべて原告に対する有効票と、それぞれ認められるべきものである。その理由は、次のとおりである。

(一) 別表(一)の番号一の投票について

被告は、この投票は、秘密投票主義の原則に反し、意識的に特異な記載をしたものであるから、他事記載の存するものとして無効であると判断している。しかし、候補者名を仮名で書いた投票が有効であることはもちろんのこととして、候補者名をローマ字等の外国文字を用いて記載した投票が有効であることは、幾多の判例の認めるところであるが、これらの投票に比して、右番号一の投票が格別特殊な文字を使用したものとは解することができないから、右投票は他事を記載したものではなく有効とみるべきである。

(二) 同表の番号二の投票について

(1) 右投票は、被告において、原告の氏と訴外沼田一之の名を混記した投票として無効と判断されたものである。

(2) しかし、右投票は、全部平仮名で記載され、その記載された七文字中五文字までが原告の氏名と同じであり、氏において原告を指していることはもちろん、名においても二文字までが原三の名と一致しているのであるから、同票が原告を指向していることは明白である。

(3) 従って、右投票は、原告に対する有効投票と解されて然るべきである。

(三) 別表(一)の番号三、五、七、一一、一二、一五ないし一七、二〇ないし二三、二五、二七、二八、三〇、三一、三七、四〇、四四、四九ないし五一、五四、五七、六〇ないし六二、六七、六八、七二、七三、八〇、八一、八六、八九、九一、九二、九四、ないし九六、九九、一〇〇ないし一〇二、一〇六、一〇七、一〇九、別表(二)の番号一一六、一二〇、一二五、一三〇ないし一三二、別表(三)の番号一四五、一四六、一五〇、一五四、別表(四)の番号一七三、一七四、一八〇ないし一八三、一八七ないし一九一、一九七ないし二〇〇、二〇八、二〇九、二一五、別表(五)の番号二二八ないし二三八、二四〇、二四一、二四四、二四五、二四七ないし二五〇、二五二ないし二五五、二六六、二七三、二七八、二八三、別表(六)の番号三〇二ないし三一一、三一四、三一六、三一八、三二〇、三二一、三二五、三二六、三二八ないし三三〇、三三二、三三三の各投票について

(1) 被告は、右の「青木実」、「青木實」、「青木実(みのる)」(ただし、別表(六)の番号三二五は「青木実(みのる)」)と記載された各投票は、いずれも本件選挙の候補者であった青木稔(以下「訴外青木」という。)を指向したものであって、名の部分を誤記したものに過ぎず、同じく右選挙の候補者であった訴外塙実(以下「訴外塙」という。)との混記投票ではないとして、右各投票を訴外青木の有効票であると判断している。しかし、右判断は次のとおり失当である。

(イ) 本件選挙は、本件議員定数一〇名のところに、保革一六名が立候補する、かつてない激戦であった。そして、右立候補予定者は、昭和六二年四月三日の公示日前から判明していたため、必死になって自己への支持・支援を取り付けるため後援会活動など活発な事実上の選挙戦を展開していた。この事情は、新聞・テレビ等の報道機関においても十分把握しており、右公示日の一か月前には、相当詳しい予測記事が新聞に掲載されるような状況であった。このような公示前の選挙戦において、当時、立候補予定者であった訴外青木は、「青木稔」または「青木みのる」と表示して運動していたが、一方、同じく立候補予定者であった訴外塙は、「塙実」または「はなわ実」と表示して運動しており、この両者の名の近似性はすでに報道機関においても充分に把握し、両者の混同が生じないように報道されていた。従って、選挙権者にも、「実」という名の立候補予定者は、訴外塙であることが充分に理解し得る状況であった。さらに、右公示後における選挙運動に関する報道や各候補者へのアンケート等報道機関が選挙権者のため各候補者を紹介する報道においても、候補者となった訴外青木と同じく候補者となった訴外塙とは、明確に区別して報道されており、両者の氏名が混記されて報道されたことは一度もなかった。

(ロ) また、当時、訴外青木及び訴外塙は、いずれもいわき市における著名人であったうえ、その経歴・思想・地盤が全く異なっており、両者を支持する選挙権者も全く異なっており、選挙権者が両者を混同するおそれは全くなかったものである。従って、本件選挙において投票された「青木実」、「青木實」、「青木実(みのる)」なる投票は、訴外青木または訴外塙のどちらか一方を指示する投票とは認め得ない投票なのである。もし、これをどちらか一方の投票とするなら、姓と名の一方を他方より不当に重視することにならざるを得ないし、訴外青木と訴外塙が当選を争うような場面を仮定するなら、一方の政治的思想を優先する結果さえ招来しかねない。従って、「青木実」等の投票は、無意味な投票であるといわざるを得ない。

(ハ) 以上のとおりであって、右の各投票をすべて訴外青木に対する有効投票とした被告の判断は誤っていることが明らかであり、右各投票は、混記投票としていずれも無効である。

(2) 次に、被告は、右各投票のうち、「青木実(みのる)」と記載された投票について、他事を記載した投票にも当たらないと判断しているが、この判断も左記のとおり失当である。

(イ) 本件選挙に関し、訴外青木が公職選挙法施行令八八条六項により「青木みのる」という通称を使用していたことに鑑みると、「青木実(みのる)」と記載された投票の本来的な部分は「青木みのる」と記載した部分と解すべきであり、「実」という部分は右の本来的な投票としての部分に対する他事記載部分といわざるを得ない。

(ロ) 被告は、右投票について、「みのる」という文字の位置が「実」という文字より小さいことを根拠に「青木実」こそが右投票の本来的な投票としての部分であり、「みのる」という文字は「実」という文字に付された振仮名に過ぎないと主張する。しかし、いかなる投票がなされたのか、その投票が有効か無効か、等の判断は、公職選挙法の趣旨を考慮して法的観点から決すべきであって、単に投票用紙に記載された字面だけで右判断をするのは誤りというべきである。しかして、「青木みのる」と記載された投票と「青木実」と記載された投票とを比較した場合、前者が青木に対する有効投票であることは論を待たないところ、後者については、前記のとおり混記投票として無効とすべきであるから、その法的価値は前者にしかないことが明らかである。従って、「青木実(みのる)」と記載された投票につき、被告が行った右判断は法的観点を看過し、誤りを犯しているものといわざるを得ない。それ故、「青木実(みのる)」と記載された投票は、「青木みのる」と記載した投票に意識的に「実」なる他事(混記投票と判断されるおそれを招来しかねないような他事)を付記したものと認めざるを得ないから、右投票は他事を記載した投票として無効というべきである。仮に、「青木実(みのる)」と記載された投票について、「青木実」が本来的な投票としての部分であり、「みのる」は「実」に付された振仮名に過ぎず、「青木実」と記載された投票が混記投票に該たらず有効である、という解釈が正しいとしても、右投票はやはり他事を記載した投票として無効と解すべきである。

(四) 別表(一)の番号四の投票について

(1) 右投票は、訴外青木の氏名が記載されたものではなく、「青木穂」と記載されたものである。

(2) しかし、「稔」と「穂」とでは、同じ禾偏であっても読み方も意味もまったく異なる文字であり、到底同一人物の名を記載したもの、あるいは誤記したもの、としては扱えないものと考えられる。

(3) 従って、右投票は、明白に候補者でない者の氏名を記載した投票として無効と判断されなければならない。

(五) 同表の番号六の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載されたものではなく、「青木みるる」と記載されたものであり、訴外青木を指向したものとは判断し得ない。

(2) 従って、右投票は、候補者以外の者に対してなされた投票として無効とされるべきである。

(六) 同表の番号八の投票について

(1) 右投票は、「青木」の「木」の左側に「青木みのる」という記載とはまったく関係のない「」という文字のようなものを記載し、それを抹消しているものであって、単なる誤記抹消と見ることはできない。

(2) 即ち、右抹消は、何等かの有意的な他事記載であり、右投票は無効と判断されるべきである。

(七) 同表の番号九、三三ないし三五及び七四、別表(二)の番号一一七、別表(三)の番号一四八、一四九及び一五一、別表(四)の番号一八六及び二〇二、別表(五)の番号二八一の各投票について

右各投票は、いずれも投票者が訴外青木の戸籍上の氏名である「青木稔」という文字を記載しておきながら、「稔」という文字の右側にのみ「みのる」と振仮名と思われる文字を記載した投票であるが、氏名の一部にのみ付した振仮名は、他事記載と言うべきであるから、右各投票はいずれも、他事記載のある無効な投票と言わざるを得ない。

(八) 別表(一)の番号一〇の投票について

右投票も「青木稔」と記載された文字のうち「稔」という文字にのみ振仮名と思われる「みのる」という文字が付された投票であり、無効と解すべきことは右(七)に記載したとおりであるが、さらに右投票は、右「みのる」という文字がわざわざ欄外に記載され、有意性が顕著であるから、右(七)に記載した各投票よりも無効と解すべき必要性は大きいと言わざるを得ない。

(九) 同表の番号一三の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青」という文字の左上に「」という長さ約一センチメートルに及ぶ力強い線が記載されているが、その長さ及び力強さ、並びに抹消しようとした形跡がまったくないことから言って、右線は、有意的な他事記載に当たるものと思料される。

(2) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一〇) 同表の番号一四の投票について

右投票は、片仮名で訴外青木の氏名が記載されたもので、それ自体非常にめずらしい投票であるうえ、氏と名との間に「、」なる点が記載されているところ、右点は、右投票が何者によってなされたものであるかを示す有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事の記載された投票として無効とされるべきである。

(一一) 同表の番号一八の投票について

(1) 右投票は、「青木」という氏と「みのる」という名の間に「」なる文字のようなものが記載された投票である。

従って、右「」なる記載を氏名の一部と解するならば、右投票は候補者でない者の氏名を記載した無効な投票と言わざるを得ない。

(2) また、右「」なる記載が氏名の一部ではないとするなら、右投票は有意的な他事記載のある投票であり、無効であると言わざるを得ない。なぜなら、もし右「」なる記載が投票者において誤って記載したものならば、当然抹消されなければならないところ、そのまま何等手を加えることなく放置されていることからすれば、右「」なる記載は有意的な記載と考えられるからである。

(一二) 同表の番号一九の投票について

(1) 右投票は、「アオキミルノ」と記載された投票であり、「アオキミルノ」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は候補者でない者の氏名を記載した投票として無効とされるべきである。

(2) また、右投票の右記載を善解して、訴外青木に対する投票と解するとしても、「ミ」という文字の左側に記載された長さ約八ミリメートルの「―」なる線は、その長さ及び力強さから言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、この点からも無効とされるべきである。

なぜなら、右線が投票者において誤って記載したものならば訂正のための何等かの処置がなされて然るべきであるのに何等の処置もなされておらず、また、その位置、力強さ等から言って記載の際の勢いからたまたま線がはねる等したものとも思えないからである。

(一三) 同表の番号二四の投票について

右投票は、「青木ゆのる」と記載された投票であるが、「青木ゆのる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は無効とされるべきである。

(一四) 同表の番号二六の投票について

右投票は、投票者が「青木しげる」と一旦記載しておきながら「しげる」という文字を抹消し、「みのる」と訂正したものであるが、「木」という文字が「青」という文字の左下に記載されており、「青木」という文字の配列において極めて不自然であるところ、右のごとき不自然な文字の配列がなされた理由は、右投票が何者によるものかを知らしめるためと認められるから、右投票は秘密投票の精神に反するものとして無効とされるべきである。

(一五) 同表の番号二九及び四〇の各投票について

右各投票は、「青木」という文字の上部に「」なる記号のような記載等がなされた投票であるが、右の記載は、その位置、形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず、有意的な他事記載と認められるから、右各投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一六) 同表の番号三二の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうちの「る」という文字の上部に「」なる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、「」という文字のようなものを抹消したもののようであるが、「」なるものを記載すること自体不自然であり、投票者において右投票が何者によるものかを知らしめるべくなしたものと認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効と言うべきである。

(一七) 同表の番号三六、並びに別表(四)の番号一七九及び二一〇の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも、候補者名の右側あるいは左側に「無所属」なる所属政党の肩書が記載されたものである。

(2) 選挙会及び被告は、正しく記載された所属政党の肩書は他事に該当しないと解したうえ、訴外青木がいわゆる無所属候補であり、その点で肩書に誤りのないことから、右「無所属」なる記載は他事記載に該当せず、右各投票はいずれも有効であると解しているようである。

(3) しかし、選挙会及び被告は、肩書として記載された所属政党が候補者の所属するそれとは違っていた場合とか、所属政党の肩書でなく例えば会社名等の肩書がなされていた場合にまで、投票を有効と解するのであろうか。もし、右のような場合には投票を無効と解するならば、候補者の肩書による投票の有効、無効の判断は極めて曖昧にならざるを得ず、著しく選挙の公正を害することになることは明らかである。

(4) 従って、肩書もまた、他事記載に該当すると解するべきであり、右各投票は、いずれも他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一八) 別表(一)の番号三八、四一、四二及び八七、並びに別表(五)の番号二八五の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも、投票者において「青木稔」と訴外青木の氏名を正確に記載しておきながら、右「稔」という文字を抹消し、その左側あるいは右側に「みのる」と同訴外人の通称を記載した投票である。

(2) せっかく正確に候補者の氏名を記載しておきながら敢えて正式な氏名を抹消し、通称を記載した点において極めて不自然であり、何等かの有意性をもって右のごとき書換がなされたものと認められるから、右各投票は、いずれも秘密投票の精神に反する無効な投票と言わざるを得ない。

(一九) 別表(一)の番号三九の投票について

(1) 右投票は、素直に読む限り「青木完」と記載された投票であるが、「青木完」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないから、右投票は、候補者以外の者を記載した投票として無効とされるべきである。

(2) また、仮に右投票が、「青木実」と判読され、訴外青木に対する投票と善解できたとしても、訴外塙実候補との混記投票として無効である。

(二〇) 同表の番号四三及び八三、別表(三)の番号一五五、別表(五)の番号二五九及び二八四、並びに別表(六)の番号三三四の各投票について

右各投票は、いずれも、「あおきみのり」、「青木みのり」あるいは「アオキミノリ」と記載された投票であるが、そのような氏名の候補者は本件選挙の候補者中には存しないから、右各投票は、いずれも候補者以外の者に対してなされた投票として無効と言わざるを得ない。

(二一) 別表(一)の番号四五の投票について

右投票は「青木」と記載された投票であるが、「」なる文字は存しないから、右投票は、何人に対してなされたものか不明な投票として無効とされるべきである。

(二二) 同表の番号四六、別表(四)の番号二〇七、並びに別表(五)の番号二六〇の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも、「青木稔」と記載された文字のうち「稔」という文字の左側に「みのる」という文字が記載された投票である。

(2) 「青木稔」という文字のうち「稔」という文字のみに振仮名と思われる「みのる」という文字が付された投票が無効であることは前記(七)に記載したとおりであるが、さらに右各投票の右「みのる」という文字は、その位置から言って単なる振仮名とは認められず有意性が顕著であるから、右各投票はいずれも前記(七)に記載した各投票よりも無効と解すべき必要性は大きいと言わざるを得ない。

(二三) 別表(一)の番号四七の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に、「石田」あるいは「石岡」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 「石田」、「石岡」なる候補者は、本件選挙の候補者中には存せず、「石田」あるいは「石岡」なる文字を記載すること自体極めて不自然であるから、右記載は、単なる誤字抹消とは思われず右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(二四) 同表の番号四八の投票について

(1) 右投票は、「青木」という文字と「みのろ」という文字の間に、意味不明の「」なる記号が記載されたものであり、右記載は有意的な他事記載に該当すると認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(2) また、「青木みのろ」なる候補者は本件選挙の候補者中には存在しないから、右投票は、候補者以外の者に対してなされた投票としても無効とされるべきである。

(二五) 同表の番号五三の投票について

右投票は、「青木」と記載された投票ではなく、「中田木」と記載された投票であり、訴外青木を指向した投票とは解することはできないから、候補者以外の者を記載した無効な投票と言わざるを得ない。

(二六) 同表の番号五五の投票について

(1) 右投票は、投票用紙の候補者氏名を記載する欄にはまったく何の記載もなく、欄外に「青木みのる」との記載がある投票である。

(2) 右投票は、投票者が殊更に候補者の氏名を欄外に記載し、何者による投票であるかを示すものであるから、秘密投票の原則に反する無効な投票と解すべきである。

(二七) 同表の番号五六の投票について

右投票は、「みのる」と記載された文字の右側に意味不明の記号が記載された投票であるが、右記号は、その形状等からして「み」という字を誤ったために抹消したものとは到底みることはできないものであり、有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(二八) 同表の番号五八の投票について

右投票は、「木」という意味不明の文字の記載された投票であり、訴外青木を指向した投票でないことから明らかであるから、何人を記載したのか不明の投票として無効とされるべきである。

(二九) 同表の番号六三の投票について

(1) 右投票は、「アオキミロル」と記載された投票である。

(2) 「アオキミロル」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は候補者でない者の氏名を記載した無効な投票である。

(三〇) 同表の番号六四の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に、「青」という文字上に「」なる線が引かれたと思われる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、「青」と正しく記載しながらあえてその上に「」なる線を引き、右文字を極立たせるようにしたものであるから、単なる誤字抹消ではなく右投票が何者によるかを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(三一) 同表の番号六五、八五及び九八、別表(二)の番号一二四、並びに別表(五)の番号二五七の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも「青木稔」と記載された文字のうち「稔」という文字の右側に「みのる」という文字が大きく記載された投票である。

(2) 「青木稔」の「稔」のみに振仮名と思われる「みのる」という文字が付された投票が無効であることは前記(七)に記載したとおりであるが、さらに右各投票の右「みのる」という文字は、その大きさから言って単なる振仮名とは認められず有意性が顕著であるから、右各投票は、いずれも前記(七)に記載した各投票よりも無効と解すべき必要性は大きいと言わざるを得ない。

(三二) 別表(一)の番号六六の投票について

右投票は、「青木」という文字と「みのる」という文字の間に、「」という漢字の「衿」に酷似した文字のようなものが記載された投票であり、右記載が有意的な他事記載に該当することは明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効といわざるを得ない。

(三三) 同表の番号六九の投票について

右投票は、投票者が「アヲキ」という文字と「ミノル」という文字の間に意味不明の記号のようなものを記載し、その右側には「」という記号のようなものを記載し、更に左側には「ミノル」と記載したうえ=線で抹消するなどした投票であるが、右記号等は単なる誤字を抹消したものとは考えられず、有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載のある無効な投票と言わざるを得ない。

(三四) 同表の番号七〇の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票である。

(2) そこで、右投票に記載された文字を最大限善解しても、「青本ゆのる」としか解することができないのであり、本件選挙の候補者中には「青本ゆのる」なる候補者は存しないのであるから、従って右投票は候補者でない者の氏名を記載した投票として、無効な投票と言わざるを得ない。

(三五) 同表の番号七一の投票について

右投票は、「あおきみのる」と記載された文字のうちの「の」という文字の右側に、「の」という文字が併記された投票であって、右「の」という文字は有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載のある無効な投票である。

(三六) 同表の番号七五の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された文字のうち「青」という文字と「木」という文字との間にあたる部分の右側に、長さ三ミリに及ぶ「一」という線が記載されているが、右線は、その位置、力強さ等から言って単に筆がすべったり、はねたりしたために記載されたものとは認められず、有意的な他事記載と認められる。

(2) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(三七) 同表の番号七六、別表(二)の番号一一二、別表(三)の番号一五二、別表(四)の番号一七八、一九三及び二〇四、並びに別表(六)の番号三三九の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも「青木」という文字に、「あおき」あるいは「アオキ」という振仮名と思われる文字が付されている投票である。

(2) 青木という氏は、とりたてて読み方の難しいまた珍奇なものではなく、何人も間違わずに読めるものである。更に、右各投票の「青木」という字の記載の仕方が、他の者にとって読解することが困難な書体で書かれているものでもない。

(3) このような平易な漢字に、わざわざ振仮名を付して投票することは投票に有意的な他事を記載するに等しく、秘密投票の精神に反するから、右各投票はいずれも無効な投票であるといわざるを得ない。

(三八) 別表(一)の番号七七の投票について

(1) 右投票は、「青木ミソル」と記載された投票である。

(2) 「青木ミソル」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票であり、無効と言わざるを得ない。

(三九) 同表の番号七八の投票について

(1) 右投票は、「木」と記載された投票であり、素直に読む限り誰に対してなした投票か不明な投票である。

(2) 従って、右投票は、何人を記載したか不明の投票として無効とされるべきである。

(四〇) 同表の番号七九の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に「」なる記号のような記載が存する投票である。

(2) 右の記号のような記載は、その位置、形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず、有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四一) 同表の番号八四の投票について

(1) 右投票は、「青木しける」と記載された後、右「しける」が抹消されて、その右側に「みのる」と記載された投票である。

(2) ところで、本件選挙には、「しける」なる候補者はおらず、「しける」と記載すること自体奇異であり、右記載は、右投票が何者による投票か知らしめるべくなされたものと認められるから右投票は、秘密投票の精神に反する無効な投票と言わざるを得ない。

(四二) 同表の番号八八の投票について

(1) 右投票は、「青木稔」と訴外青木の正式名称を記載した後に、「みのる」との通称を記載したもので、訴外青木の名である「みのる」という文字を重複して記載した投票である。

(2) 右「みのる」という記載は、振仮名とは解されず(たとえ振仮名と解することができるとしても投票を無効とすべきことは、前記(七)のとおりである)、有意的な他事記載であることは明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四三) 同表の番号九〇の投票について

右投票は、「青木」という文字と「みのる」という文字の間に、「」という一見片仮名の「ネ」に似た記号が記載された投票であり、右記号は有意的な他事記載に該当することが明らかであるから、右投票は他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四四) 同表の番号九三の投票について

右投票は、「青」という文字の左上に、長さ約四ミリに及ぶ「」という記号が記載された投票であり、右記号はその位置及び力強さから言って有意的な他事記載に該当することが明らかであるから、右投票は他事記載のある投票として無効である。

(四五) 同表の番号九七の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青木」という文字の左側に、「」なる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、投票者が本件選挙の候補者である訴外四家啓助の氏名を書きかけて途中で訴外青木に投票すべきであったことに気が付いてやめ、書きかけた文字を抹消したものとも思えるが、訴外青木と同四家啓助とではその氏名においてまったく類似性がないばかりか年令、選挙地盤等、諸々の点で異なっており右両訴外人を取り違えて記載するということは考えられないので、右記載は、右のごとき単なる誤字抹消とは考えられず右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四六) 同表の番号一〇三の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された文字の上部に、「」なる記号のような記載が存する投票である。

(2) 右の記号のような記載は、その位置、形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず、有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四七) 同表の番号一〇四並びに別表(四)の番号二〇六の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも「青木みのる」と記載された文字のうち、「青木」という文字の左側に「鈴木」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、投票者が本件選挙の候補者である訴外鈴木光雄あるいは訴外鈴木久の氏名を書きかけて途中で訴外青木に投票すべきであったことに気が付いてやめ、書きかけた文字を抹消したものとも思われるが、訴外青木と、訴外鈴木光雄及び同鈴木久とではその氏名においてまったく類似性がないばかりか思想、選挙地盤等諸々の点で異なっており、右各訴外人を取り違えて記載するということは考えられないので、右記載は、右のごとき単なる誤字抹消とは考えられず右各投票が何者によるものかを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右各投票は、いずれも他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(四八) 別表(一)の番号一〇五、別表(四)の番号一九四及び一九五、並びに別表(五)の番号二七〇の各投票について

右各投票は、「あきみのる」あるいは「アキミノル」と記載された投票であり、そのような氏名の候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右各投票は候補者でない者の氏名を記載した投票として無効とされるべきである。

(四九) 別表(一)の番号一〇八、別表(三)の番号一五六、一六二、別表(四)の番号一七六、別表(五)の番号二五八、二八二の各投票について

(1) 右各投票は、「青木しげる」、「青木かおる」、「青木みつる」と記載された投票であるが、これらの記載と訴外青木の姓名とでは、たかだか、その姓と名の表音の一部(一音又は二音)が同一であるのみであって、その類似性は極めて薄いといわざるを得ない。また、本件選挙時において「青木稔」または「青木みのる」という名は、いわき市民間に広く知られており、選挙権者がその氏名を誤る可能性は全くなかったものである。他方、いわき市には、少なくとも、「青木茂」なる者が六名以上(そのうち、一名は雑貨商を営み、一名は米穀商を営んでいるものである。)、「青木繁」なる者が一名以上、「青木薫」なる者が一名以上、「青木馨」なる者が一名以上、「青木満」なる者が一名以上、それぞれ居住しているものである。

(2) 従って、「青木茂」なる投票が無効であることはもちろん、「青木しげる」、「青木かおる」、「青木みつる」なる各投票も、すべて候補者でない者の名を記載した投票(公職選挙法六八条一項二号の投票)として無効と解されて然るべきである。

(五〇) 別表(二)の番号一一〇の投票について

右投票は、「はしもと一男」と記載された投票であるが、仮に、別表(一)の番号四、一八の投票等を訴外青木に対する有効投票と解するのであれば、本件選挙の候補者中に「はしもと」なる氏の候補者はおらず、また「一男」なる名の候補者は原告だけであるから、右投票は原告に対する有効投票と解されて然るべきである。

(五一) 同表の番号一一一の投票について

(1) 右投票は、候補者の氏名の記載の仕方が横書きであるという極めて珍しい投票であるが、更に、「青」という文字の左側、即ち、右候補者の氏名の記載を縦書きに直すと、「青」という文字の上部に該当するところに「アオ」と記載されたものであり、この「アオ」との記載はその形状等から言って有意的な他事記載に該当することが明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(2) 即ち、振仮名ならば、氏または名の全部に振られるべきものを、「青」の一字だけに、しかも通常振仮名を付する位置とは異なった箇所に記載されていることから、右「アオ」との記載は判例上許容されている単なる振仮名とは判断し得ないものである。

(五二) 同表の番号一一三の投票について

(1) 右投票は、訴外青木の戸籍上の氏名を正確に記載しておきながら、「稔」という文字の下部に「みのる」という文字を横書きに記載した投票であり、このような記載が他事記載に該当することは明らかであるから、右投票は他事記載のある無効な投票と言わざるを得ない。

(2) 右「みのる」の記載は、その記載の位置からして、振仮名に該当しないことは言うまでもない。

(五三) 同表番号一一四の投票について

右投票は、「あおき」と記載された文字の上部に長さ五ミリの「−」なる線が引かれ、そのまわりを右から左へうすく帯が引かれたような記載が存する投票であり、右記載はその位置、形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載のある無効な投票と言わざるを得ない。

(五四) 同表の番号一一五の投票について

(1) 右投票は、「青山みのる」と記載された投票であり、「青山」という候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名が記載された投票として無効と言うべきである。

(2) ところで、選挙会及び被告は、右投票のように記載されている氏名と特定の候補者の氏名とが氏の一部及び名において合致している投票をその候補者の有効投票と解しているようであるが、もしそうだとすれば、後記(八〇)の「沼田一男」なる投票は、原告への有効投票と解されて然るべきものと考える。

(五五) 同表の番号一一八の投票について

(1) 右投票は、「はなわ実」という記載を抹消し、「青木みのる」と記載し直した投票であるが、訴外塙と訴外青木とは、その経歴も、思想も、地盤もまったく異なっていたのであるから、「青木みのる」と書くべきところを「はなわ実」と書き損じたと考えることは不可能である。

(2) 従って、右「はなわ実」なる記載は、右投票が何者による投票かを知らしめるためになされたものと認められ、有意的な他事記載と言うべきであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(3) なお、右投票から一見して判明するように、本件選挙の各投票者は、「実」と「みのる」とを明確に区別し、「実」は「はなわ」候補を、「みのる」は「青木」候補を指向するものとして投票していたものであるから、従って、「青木実」なる投票は、両候補者名を混記した無効な投票と言わざるを得ない。

(五六) 同表の番号一一九の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に「」という形状の鉛筆でこすったような記載の存する投票である。

(2) 右記載は、その位置及び形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(五七) 同表の番号一二一の投票について

(1) 右投票は、「みのる」と記載された文字のうち「の」という文字の左側に「み」という文字が記載された投票である。

(2) 右「み」という文字は、有意的な他事記載であることが明らかであるから、右投票は他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(五八) 同表の番号一二三の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に「」なる記号のような記載が存する投票である。

(2) 右の記号のような記載は、その位置、形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(五九) 同表の番号一二六の投票について

右投票は、「青」という文字の左側に、一旦記載された文字が抹消されたものとは考えられない意味不明の記号が付された投票であり、右記号は、有意的な他事記載に該当することが明らかであるから右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(六〇) 同表の番号一二七の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青」という文字の左側に「」なる記載の存する投票である。

(2) 右の記号のような記載は、その位置、形状等から言って有意的な他事記載であると認められるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(六一) 同表の番号一二八の投票について

右投票は、「アワキ」と記載された投票であるが、「アワキ」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者以外の者の氏名を記載した無効な投票である。

(六二) 同表の番号一二九の投票について

(1) 右投票は、「青田稔」と記載された投票であり、「青田」という候補者は本件選挙の候補者中にはいないとされるべきである。

(2) なお、選挙会及び被告は、右投票のように特定の候補者と氏の一部が違っているだけの投票は、右候補者への有効投票と解しているようであるが、だとすれば、後記(八〇)の「沼田一男」なる投票は、原告の有効投票であるとされるべきものである(前記(五四)参照)。

(六三) 別表(三)の番号一三三の投票について

被告は、右投票中の「◎」は意識的に記載されたものであるから、右投票は他事を記載した投票として無効と解すべきであると主張している。

しかし、東京高等裁判所昭和二七年九月二二日判決(選挙関係実例判例集(1)六四五頁)は、投票中に「◎」のような記載があったとしても、それが有意的記載であることが明らかである場合を除いては、右投票を無効とすべきではないと判示しているが、本件の場合、右の記載を、特段有意的と認むべき事由はなんら存在しない。それ故、右投票は有効と解すべきである。

(六四) 同表の番号一三四の投票について

被告は、右投票中の「」という個所は、他事記載であるから、右投票は無効であると主張している。しかし、いわゆる書損訂正は、意識的な他事記載と認めないとするのが判例の立場である(最高裁判所昭和三〇年四月二七日判決、民集九巻五号五八二頁等)ところ、右投票も書損訂正と解すべきものであるから他事記載には当たらず有効と認めるべきである。

(六五) 同表の番号一三五の投票について

被告は、右投票は何人に投票したか確認できないから、公職選挙法六八条一項七号に該当し無効であると主張する。しかし、右投票のはじめの文字が「く」、三番目の文字が「し」、五番目の文字が「か」であることはいずれも明らかであり、「か」の次の記載は判然とはしないが、その形状から「男」と書こうとしたものであろうと認められるところ、本件選挙の候補者中には、その姓名が「く」、「し」、「か」、「男」という字を含み、かつ、その順で並んでいる者はもちろん、類似の文字によって氏名が構成されている者は原告以外には存在しない。従って、右投票は、同法六七条に基づき、原告に対する有効投票と認められて然るべきである。

(六六) 同表の番号一三六の投票について

(1) 右投票は、候補者でない者の氏名を記載したものとして、被告が無効と判断した投票である。

(2) しかし、右投票に、候補者の氏名として記載された「くたたかを」という文字と原告の氏名とが、その表音において類似性を有しており、かつ本件選挙の候補者中他に類似の表音を持つ者がいなかったことからすれば、右投票が原告を指向した投票であることは明らかであるから、右投票は原告に対する有効投票として扱われるべきものである。

(六七) 同表の番号一三七及び一四〇の各投票について

(1) 右各投票は、いずれも「さかもと一男」と記載された投票であり、右(六六)と同様の理由で選挙会及び被告が無効と判断した投票である。

(2) 確かに「さかもと一男」なる候補者は、本件選挙の候補者中には存しないが、「一男」という名は原告と同一であって他に「一男」という名の候補者はおらず、また「さかもと」という氏は原告の後援者である訴外坂本剛二の氏と同一であって他に「さかもと」という氏の候補者はいないのであるから、右投票は、「くしだ一男」と記載すべきところを誤って「さかもと一男」と記載してしまった投票と認められる。

(3) 従って、前記一〇八等の投票「青木しげる」と記載された投票を訴外青木に対する有効投票と解するのであれば、右各投票も原告に対する有効投票と解されて然るべきである。

(六八) 同表の番号一三八及び一四一の各投票について

(1) 右各投票も右(六七)の各投票と同様の理由により選挙会及び被告が無効と判断した投票である。

(2) しかし、右各投票は、候補者の氏名として記載された五文字のうち、原告の氏名と一文字しか違わないのであり、全体として考察すれば、原告を指向した投票であることは明らかであるから、原告の有効投票として扱われるべきものである。

(六九) 同表の番号一三九の投票について

(1) 右投票は、右(六七)の各投票と同様の理由により、選挙会及び被告が無効と判断した投票であるが、右投票の氏の記載から明らかなように、右投票は原告を指向した投票であり、原告の有効投票として扱われるべきものである。

(2) もし、右投票を無効とするなら、被告が、「青木しげる」や「青木かおる」と記載された投票を訴外青木の有効投票と判断していることと矛盾すると言わなければならない。

(七〇) 同表の番号一四二の投票について

(1) 右投票は、二人以上の候補者の氏名を記載した投票として、選挙会及び被告が無効と判断した投票である。

(2) 確かに右投票中の「まさよし」なる文字は、本件選挙の候補者である訴外吉野正芳の名と表音を同じくするが、「まさよし」なる名が比較的陳腐な名であるのに対して、「櫛田」なる氏はいわき市においても珍しい氏であるから、全体的に考察すれば、右投票は、原告を指向した投票であると認められる。

(3) 従って、仮に、「青木実」と記載された投票を訴外青木に対する有効投票と解するのであれば、右投票も原告に対する有効投票と解されて然るべきである。

(七一) 同表の番号一四三及び一四四、別表(四)の番号一六五乃至一七一、並びに別表(六)の番号三〇〇の各投票について

右各投票は、右(七〇)と同様の理由により選挙会及び被告が無効と判断した投票であるが、「青木実」と記載された投票を訴外青木に対する有効投票と解するのであれば、右各投票も原告に対する有効投票と解されて然るべきである。

(七二) 別表(三)の番号一四七の投票について

(1) 右投票は、素直に読む限り、何人に対してなされたのか不明の投票として無効と言わざるを得ない。

(2) 仮に、右投票中に「ミノる」なる記載が存すると善解できたとしても、右記載の上部に「」なる記号のような記載が存し、右の記号のような記載は、その位置、形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載のある投票として無効と言わざるを得ない。

(七三) 同表の番号一五三の投票について

右投票は、候補者の氏名が横書きにされた珍しい投票であるうえ、更に、「みのる」と記載された文字のうち「み」の文字の上に重ねて「み」という文字が記載された投票であるが、右「み」という文字が有意的な他事記載であることは明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(七四) 同表の番号一五七の投票について

(1) 右投票は、「青木けのる」と記載された投票である。

(2) 「青木けのる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した無効な投票である。

(七五) 同表の番号一五八の投票について

(1) 右投票は、「青木みろる」と記載された投票である。

(2) 「青木みろる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した無効な投票である(なお前記(二九)参照)。

(七六) 同表の番号一五九及び一六三、別表(五)の番号二五八、二六七の各投票について

(1) 各投票は、「青木みつる」と記載された投票である。

(2) 「青木みつる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右各投票は、候補者でない者の氏名を記載した無効な投票である。

(七七) 別表(三)の番号一六〇の投票について

(1) 右投票は、「アキミノ」と記載された投票である。

(2) 「アキミノ」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した無効な投票である。

(七八) 同表の番号一六一の投票について

(1) 右投票は、「みのル」と記載された投票であり、素直に読む限り、何人になされたものか意味不明の投票であると言わざるを得ない。

(2) 従って、右投票は、何人の氏名を記載したか不明の投票として無効とされるべきである。

(七九) 別表(四)の番号一六四の投票について

(1) 右投票は、候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして、選挙会及び被告において無効と判断した投票である。

(2) しかし、右投票は、原告の氏の「くしだ」と三文字中上位二文字までが同じであり、素直に読む限り、原告を指向した投票であることは明らかであるから原告に対する有効投票とされるべきである。

(3) むしろ、被告が訴外青木を指す投票として有効とした前記(六一)の「アワキ」なる投票や後記(九五)記載の「フオキ」なる投票と比するなら、右投票が原告を指向する投票であることは、より一層明白であると言うべきである。

(八〇) 同表の番号一七二、別表(五)の番号二一八乃至二二五、並びに別表(六)の番号三〇一の各投票について

(1) 右各投票は、二人以上の候補者の氏名を記載したものとして無効とされた投票である。

(2) しかし、右各投票をみるといずれも氏名として記載した四文字のうち三文字までが原告の氏名とまったく一致するのであり、原告を指向した投票と判断することができる。

(3) 従って、右各投票は原告への有効投票として扱うべきものと思料される(なお、前記(四二)参照)。

(八一) 別表(四)の番号一七五の投票について

被告は、右投票を「青木実」の誤記と認定したうえ、訴外青木への有効投票と解したが、この投票の記載を「青木実」と読みとること自体が誤りであるうえ、仮に右のように読みとることが許されるとしても、右投票は同法六八条一項五、七号により無効とされるべきである。

(八二) 同表の番号一七七、別表(五)の番号二八九、同表(六)の番号三三六の各投票について

被告は、裏面に候補者の氏名を記載した右投票は、秘密投票の精神に反する無効な投票ではないと主張しているけれども、投票用紙の裏面に殊更に候補者の氏名を記載し、それが何者による投票であるかを示すような投票は、無効な投票と解されて然るべきである。

(八三) 別表(四)の番号一八四の投票について

(1) 右投票は、「おおきみのる」と記載された投票であって、「青木みのる」を指向した投票ではない。

(2) 「おおきみのる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効とされるべきである。

(八四) 同表の番号一八五の投票について

右投票は、「あき」と記載された投票であり、正しく記載した「お」という文字の右側に意味不明の「」なる記号が記載されているものであって、右記号は抹消されておらず、有意的な他事記載に該当することが明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(八五) 同表の番号一九二の投票について

右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青」という文字の左側に「」なる記載の存する投票であるが、右記載はその位置及び形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず、有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(八六) 同表の番号一九六の投票について

(1) 右投票は、横書きで記載された投票であるが、左右いずれから読んでも「アラ(ミ)キ」、あるいは「キラ(ミ)ア」としか読むことができず、何人に投票したか意味不明の投票と言わざるを得ない。

(2) 従って、右投票は、何人の氏名を記載したか不明の投票として無効とされるべきである。

(八七) 同表の番号二〇一の投票について

右投票は、「アキ」と記載された意味不明の投票であり、右(八六)の投票と同様の理由で無効とされるべきである。

(八八) 同表の番号二〇三の投票について

(1) 右投票は、「青木稔」と記載された文字の上部に「木村」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 「木村」なる候補者は、本件選挙の候補者中には存せず、「木村」なる記載をすること自体極めて不自然であるから、右記載は、単なる誤字抹消とは思われず右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(八九) 同表の番号二〇五の投票について

右投票は、投票用紙の候補者の氏名を記載する欄の右上隅に「青木」と記載され、その右側の欄外に長さ約1.5センチの長さの「」という記号が力強く記載された投票であり、右記号は有意的な他事記載と認められるから右投票は他事記載のある無効な投票であると言うべきである。

(九〇) 同表の番号二一一の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち、「み」という文字の左側に「」なる記号のような記載が、「の」という文字の上部に「」なる点が、それぞれ存する投票である。

(2) 右の記号のような記載は、その形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず有意的な他事記載と認められ、また右の「」なる点は、その位置、力強さ等から言って筆の勢い等によって誤って付けられたものとは思われず有意的な他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(九一) 同表の番号二一二の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の右側に「小泉たけし」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、投票者が本件選挙の候補者である訴外小泉毅の氏名を書きながら訴外青木に投票すべきであったことに気が付き、その氏名を抹消したものとも思われるが、訴外青木と同小泉毅とではその氏名においてまったく類似性がないばかりか、年令、選挙地盤等諸々の点で異なっており、右両訴外人を取り違えて記載するということは考えられないので、右の記載は、右のごとき単なる誤字抹消とは考えられず、右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(九二) 同表の番号二一三の投票について

右投票は、「あをきさ丸」と記載された投票であり、候補者でない者の氏名が記載された投票として無効とされるべきである。

(九三) 同表の番号二一四の投票について

右投票は、「青木」と記載された投票であり、候補者以外の者の氏名が記載された投票として無効とされるべきである。

(九四) 同表の番号二一六の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された投票である。

(2) 「」なる記載は、「稔」の略字と見ることはできず、何等かの有意的な他事記載であることは明らかであるから、右投票は、他事記載のある無効な投票と言うべきである。

(九五) 同表の番号二一七の投票について

(1) 右投票は、「フオキ」と記載された投票である。

(2) 「フオキ」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者以外の者の氏名を記載した投票として無効とされるべきである。

(九六) 別表(五)の番号二二六の投票について

(1) 右投票は、候補者の何人を記載したかを確認し難い投票として選挙会及び被告が無効と判断した投票である。

(2) しかし、右投票は、素直に見る限り、逆さに「」と記載された投票であり、下三文字が原告の氏と酷似しているから原告を指向する投票であることは容易に判断できるものである。

(3) もし、右投票が選挙会及び被告主張の理由で無効であるというのであれば、なぜ前記(六一)等の投票が有効なのであろうか、理解に苦しむところである。

(九七) 同表の番号二二七の投票について

右投票は、「青木完」と記載された投票であるが、「青木完」なる候補者は、本件選挙の候補者中に存しないから、右投票は候補者でない者の氏名を記載したものとして無効とすべき投票である。

(九八) 同表の番号二三九の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された投票である。

右投票に記載された文字を無理に読み取ろうとすれば「青木しげる」と読めないことはない。しかし、「青木しげる」なる候補者は存在しないのであるから、無効な投票であることは言うまでもない。

(2) また、右投票の「る」という文字の右側に長さ四ミリの「」という記号が付されており、右記号は、力強く、しかもかぎ形に記載されているから、意識的になされた記載であると言わざるをない。

(3) 従って、右投票は、他事記載という点からも無効な投票であると言うべきである。

(九九) 同表の番号二四二の投票について

右投票は、「青木みのる」と記載された文字の上部に「」なる記載が存する投票であるが、右記載は、その位置、形状等から言って単なる誤字抹消とは思われず有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一〇〇) 同表の番号二四三の投票について

右投票は、「る」の左側に長さ五ミリに及ぶ弓形の記号が付された投票であるが、右記号は筆の勢い等によって生じたものとは見ることができず、有意的な他事記載に該当することが明らかであるから、右投票は他事を記載した無効な投票というべきである。

(一〇一) 同表の番号二四六の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された文字の左側に「草野」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 「草野」なる候補者は、本件選挙の候補者中には存せず、「草野」なる文字を記載すること自体極めて不自然であるから、右記載は、単なる誤字抹消とは思われず右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一〇二) 同表の二五一の投票について

(1) 右投票は、「青木稔」と記載された文字の上部に「久64」なる文字上に「」なる線が引かれた記載の存する投票であるが、「久64」なる文字は本件選挙とは何等関係のない意味不明なものであることから、右のような記載がなされた理由は、右投票が何者によるものであるかを知らしめるためになされたものであると思料される。

(2) そればかりか、「久64」なる文字と「青木稔」という文字とはその筆筆運筆の力強さ等が明らかに異なっており、右投票において「久64」なる文字を記載した者と「青木稔」という文字を記載した者とが別人である疑いも強いと言い得る。

(3) 従って、右投票は、秘密投票の精神に反する他事を記載した投票としてて、あるいは、候補者の名を投票者が自署していない投票として、無効と言わざるを得ない。

(一〇三) 同表の番号二五六の投票について

右投票は、「青木実」と記載されている点で混記投票に該当し無効と言うべきであるばかりか、「実」の文字の右側に力強く「」なる記号が付されており、右記号がその位置、力強さ等から言って単なる読点とか運筆上の点とかとは認められず、有意的な他事記載と認められる点で他事記載のある投票に該当し無効と言うべきである。

(一〇四) 同表の番号二六一の投票について

右投票は、候補者名の上部に、「」なる、その形状等からして単に誤字等を抹消したとは思えない有意的な記号が存する投票であり、右記号は他事記載に該当すると認められるから、右投票は他事記載のある無効な投票と言うべきである。

(一〇五) 同表の番号二六二の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票である。

(2) 「き」という文字の下に六ミリの「」なる線、右上に三ミリの「」なる線が引かれているが、右の二箇所の棒線は、その位置、力強さ等から言っていずれも運筆の勢い等によって記載されたものではなく、意識的に記載されたものと認められる。

(3) 従って、右各棒線は明らかな他事記載であるから、右投票は、他事記載のある無効な投票と言うべきである。

(一〇六) 同表の番号二六三の投票について

(1) 右投票は、「青木みかお」と記載された投票であり、「青木みかお」なる候補者は本件選挙の候補者中には存在しないのであるから、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(2) 特に、右投票に記載された氏名は、「青木みのる」候補者の氏名と五字中二字までも違っているのであり、右投票は同候補とは似ても似つかない者の氏名を記載したものであると言わざるを得ない。

(一〇七) 同表の番号二六五の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「る」という文字の右側に「く」なる記号が付された投票である。

(2) 右「く」なる記号は、運筆の勢いにより自然についたもの、あるいは筆やすめとして自然についたものではなく、意識的に付されたものであると認められる。

(3) 従って、右投票は、他事が記載された投票として、秘密投票の原則に反する無効な投票といわざるを得ない。

(一〇八) 同表の番号二八六の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載されているが、その文字の形態がきわめて特徴的である。

(2) 即ち、右文字の線のすべてが波形を呈しており、極めて特色ある記載方法であり、このような記載方法は、右投票が何者による投票かを明らかにするためのものである疑いが濃厚であると言うべきである。

(3) 従って、右投票は、秘密投票の原則に反する無効な投票とされるべきである。

(一〇九) 同表の番号二六九の投票について

(1) 右投票は、「あおきみのる」と記載された投票である。

(2) 右の「お」という文字の右側に長さ約二ミリの「」点が付されているが、これは、その位置、力強さ等から言って有意的な記号と認められるから、右投票は、他事の記載された無効な投票とされるべきである。

(一一〇) 同表の番号二七一の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票であり、素直に読む限り何人を指向したものか不明な投票である。

(2) 右の「」は「青」の略字とは到底解せない字であり、従って、右投票は、候補者の何人を記載したかを確認し難い投票として無効とされるべきである。

(一一一) 同表の番号二七二の投票について

(1) 右投票は、「あおきみのる」と記載された文字のうち「あお」という文字の左側に「」という記載の存する投票である。

(2) 右記載は「青」という文字を抹消したものとも思われるが、「青」という文字自体正しく記載されており抹消の必要があるとは思われないこと、その抹消方法も不完全であること、等から考えると右記載は、単なる誤字抹消とは思われず、有意的な他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一一二) 同表の番号二七四の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青」という文字の右側にのみ「アヲ」なる振仮名と思われる文字が記載された投票である。

(2) 右投票には、「青木」と漢字が二文字記載されているが、振仮名を付するのであれば「アヲキ」と漢字全部に付すべきところ、「青」一字についてのみ「アヲ」なる振仮名と思われる文字を付したのは、投票者において右投票を自己のものであることを示すため、即ち、右投票がある特定の投票者によることを示すために意識的になしたものであると推測される。

(3) 従って、右「アヲ」なる文字は他事記載に該当するから右投票は他事記載のある無効な投票と言わざるを得ない。

(一一三) 同表の番号二七五の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票である。

(2) 「」なる記載は、肩書でもなければ氏名でもないが、有意的になされた記載であることは明らかである。

(3) 従って、右投票は、仮に、「青本みのる」なる記載を「青木みのる」と善解することができたとしても、候補者の氏名のほか、他事を記載した投票であり、無効であることは多言を要しない。

(一一四) 同表の番号二七六の投票について

(1) 右投票は、「武田義亮」と記入された文字が「」線で抹消されたうえで、左側に「青木みのる」と記載された投票である。

(2) ところで、「武田義亮」なる候補者は、本件選挙においてはいなかったのであるから、右投票は、投票者が候補者以外の者(おそらく投票者自身)の名を記載し、これを抹消したうえで「青木みのる」の氏名を記載した投票と認められるところ、抹消が線でなされているところから、候補者以外の者の名が明瞭に読みとれるのであり、この点から、右投票は、秘密投票の原則に反する無効な投票と言わざるを得ない。

(一一五) 同表の番号二七七の投票について

右投票は、「青木みるろ」と記載された投票であり、「青木みるろ」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として、無効である。

(一一六) 同表の番号二七九の投票について

右投票は「青木みの」と記載された文字の下部に「」なる記載の存する投票であるが、右記載はその方法において誤字抹消とは言えず、有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一一七) 同表の番号二八〇の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「木」という文字と「み」という文字の間に「」なる記載の存する投票である。

(2) 右記載は、その形状、位置等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一一八) 同表の番号二八六の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「木」という文字のすぐ右側に「」なる点が存する投票である。

(2) 右「」なる点は、その位置、力強さから言って、筆の勢い等により誤って付されたものとは思われず有意的な他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一一九) 同表の番号二八七の投票について

(1) 右投票は、「青木」と記載された投票である。

「青木」なる候補者はいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(2) 「」なる記載が仮に「一」という文字ではないとしても、右記載はその位置、力強さ等から見て有意的な記載であることが明らかであるから、右投票は、他事記載のある投票として無効である。

(一二〇) 同表の番号二八八の投票について

右投票は、「あをきみのる」と記載された「を」の字の左側に、「を」の字が併記された投票であって、右「を」の字は他事記載に該当するから右投票は無効な投票である。

(一二一) 同表の二九〇の投票について

右投票は、「青木みつろ」と記載された投票であり、「青木みつろ」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(一二二) 同表の番号二九一の投票について

(1) 右投票は、「アナキみのル」と記載された投票であり、「アナキみのル」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(2) また、右投票は、「アナキ」という文字と「ル」という文字が片仮名で、「みの」という文字が平仮名で記載された投票であるが、投票者が右のごとき記載方法をとった理由は、右投票が何者による投票かを意識的に知らしめるためと認められるから、右投票は、秘密投票の精神に反する投票として無効と言うべきである。

(一二三) 同表の番号二九二の投票について

(1) 右投票は「キオア」と記載された投票である。

(2) なるほど、下から逆に読めば「アオキ」と読めるが、そのようなことまで善解して判断する必要があるのであろうか。右投票は、極めて不謹慎な投票であり、無効とすべきものと解する。投票者が本当に誤って逆に記載してしまったものであるのならば、記載した字そのものが逆に記載されて然るべきものである。

(一二四) 同表の番号二九三の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の左側に「いわき光英」という文字が抹消されたと思われる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、投票者が本件選挙の候補者である訴外岩城光英の氏名を書きながら訴外青木に投票すべきであったことに気が付き、その氏名を抹消したものと思われるが、訴外青木と訴外岩城光英とではその氏名においてまったく類似性がないばかりか、選挙地盤等諸々の点で異なっており、右両訴外人を取り違えて記載するとは考えられないので、右の記載は、右のごとき単なる誤字抹消とは考えられず、右投票が何者による投票かを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一二五) 同表の番号二九四の投票について

右投票は、「アオオ」と記載された投票であり、「アオオ」なる候補者はいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(一二六) 同表の番号二九五の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票である。

(2) 右投票を素直に判読する限り、右投票は「おおきみのる」と記載した投票であり、「おおきみのる」なる候補者はいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(一二七) 同表の番号二九六の投票について

(1) 右投票は、「高木みのる」と記載された投票である。

(2) 「高木みのる」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である。

(一二八) 同表の番号二九七の投票について

(1) 右投票は、「青木のぼる」と記載された投票である。

(2) 「青木のぼる」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者以外の者の氏名を記載した投票として無効である。

(一二九) 同表の番号三一二の投票について

右投票は、「あほきみのる」と記載された投票であり、「あほき」なる候補者は本件選挙の候補者中にはいないのであるから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票であり、無効である。

(一三〇) 同表の番号三一五の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「木」という文字と「み」という文字の間に「」なる記載の存する投票であるが、右記載は、その位置、形状等から言って右投票が何者によるものかを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(2) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一三一) 同表の番号三一七の投票について

右投票は、「青木みのる」と記載された文字の字上部に「」なる記載の存する投票であるが、右記載は、その位置、形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事記載の存する投票として無効とされるべきである。

(一三二) 同表の番号三一九の投票について

右投票は、「青木」の上部に「」という記号を付した投票であるが、右記号は、その位置、形状等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は無効とされるべきである。

(一三三) 同表の番号三二二の投票について

(1) 右投票は、「青」の字の右上に長さ二ミリに及ぶ「・」点が付された投票である。

(2) 右「・」点は、その位置、力強さ等から言って有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事の記載された投票として秘密投票の原則に反するものであり、無効である。

(一三四) 同表の番号三二三の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字の左側に「」なる記載が存する投票である。

(2) 右記載は、誤記を抹消したものとも考えられるが、その位置、大きさ等から言って単なる誤字抹消とは考えにくく、右投票が何者によるものかを知らしめるためになされた他事記載と認められる。

(3) 従って、右投票は、他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一三五) 同表の番号三二四の投票について

(1) 右投票は、「おきみの」と記載された投票である。

(2) 右投票の記載を善解すれば、「おおきみのる」と判読できるが、「あおき」とは判読できない。

(3) 「おおきみのる」なる候補者は本件選挙の候補者中には存しないのであるから、右投票は、候補者以外の者の氏名を記載した投票として無効である。

(一三六) 同表の番号三二七の投票について

(1) 右投票は、「青木み」と記載された投票である。

(2) 最後の「」なる記載は、到底「る」とは判読できないのはもちろん、何等かの文字とさえ解することはできず、何等かの有意的な記号であると解される。

(一三七) 同表の番号三三一の投票について

右投票は、「あおき美のる」と「み」の字のみ当て字の「美」と漢字で、しかも真中に「美」と目立つ形で記載された、非常に特色のある投票であるが、右投票の投票者が右のごとき記載方法をとった理由は、右投票が何者による投票かを意識的に知らしめるためと認められるから、右投票は、秘密投票の精神に反する投票として無効と言うべきである。

(一三八) 同表の番号三三五の投票について

(1) 右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「青木」という文字の右側に振仮名と思われる「あおき」という文字が存するばかりか、右「青木」という文字の上部に「」なる記号のような記載が存する投票である。

(2) 「あおき」なる文字が他事記載と認められるべきことは前記(三七)に記載したとおりであるばかりか、右の記号のような記載もその位置、形状等から言って他事記載と認められるべきであるから、右投票は、いずれの点からするも他事記載のある投票として無効とされるべきである。

(一三九) 同表の番号三三七の投票について

(1) 右投票は、素直に読む限り、何人に対する投票か判読し難い意味不明な投票として無効と言うべきである。

(2) また、仮に、右投票中の「」なる記載が「青木」という文字であると善解できるとしても、右記載の上部には単なる書き損じとは認められない意味不明な記載が存し、右記載は有意的な他事記載と認められるから、右投票は、他事が記載された投票として無効と言うべきである。

(一四〇) 同表の番号三三八の投票について

(1) 右投票は、「」と記載された投票であり、かつ、右「」なる記載の右側に「アホ」という文字が記載された投票である。

(2) 「青(アホ)木みのる」なる候補者は、本件選挙の候補者中には存しないばかりか、右「アホ」という文字は、人を侮辱する意味での有意的な他事記載であることが明らかである。

(3) 従って、右投票は、候補者以外の者に対してなした投票であるばかりか他事記載も存する投票であるから、無効とされるべきは当然である。

5  以上のとおり、本件選挙における投票の効力に関する被告の認定、判断には誤りがあり、右選挙における原告、訴外青木及び訴外塙のそれぞれの有効投票数は、別表(七)の「加減後の得票数」欄記載のとおりとなり、訴外青木の有効投票数が原告の有効投票数を上回ることにならないのであるから、原告は本件決定の取消しを求める。

二  請求の原因に対する被告の認否及び主張

1  請求の原因1ないし3の事実は認める。同4の事実中、被告が別表(一)の番号三ないし五一、五三ないし五八、六〇ないし八一、八三ないし一〇九、同表(二)の番号一一一ないし一二一、一二三ないし一三二、同表(三)の番号一四五ないし一六三、同表(四)の番号一七三ないし二一七、同表(五)の番号二二七ないし二六三、二六五ないし二九七、同表(六)の番号三〇二ないし三一二、三一四ないし三三九の各投票を訴外青木稔に対する有効(ただし、同表(三)の番号一四七の投票は按分有効)票と、同表(一)の番号一、二、同表(二)の番号一一〇、同表(三)の番号一三三ないし一四四、同表(四)の番号一六四ないし一七二、同表(五)の番号二一八ないし二二六、同表(六)の番号三〇〇、三〇一の各投票を無効票と判断したことは認めるが、その余の事実は否認する。

2  本件各投票の効力に関する被告の主張は、次のとおりである。

(一) 別表(一)の番号一の投票について

この投票は、意識的に特異な記載をしたものであり、秘密投票主義に違背し、他事記載の存するものとして無効とすべきものである。

(二) 同表の番号二の投票について

この投票については、公職選挙法一七五条に基づき選挙の当日、投票所内の投票を記載する場所に掲示した候補者の氏名及び党派別の掲示(以下「氏名等掲示」という。)は、当該第一開票区においては訴外沼田一之が右から一二番目、原告が同一五番目に掲示されていて、原告の隣りの氏名を誤記した等特別の事情があったものとは認められない。また、確かに投票に記載された「くしだかづゆき」は原告の姓に一致し、名も四文字中二字が一致して語感上は類似性があるといえるけれども、「かずお」の音数が三音であって、「かずゆき」の音数は四音であり、他にこれと名の一致する右沼田がいる以上、選挙人が原告に対して指向していたものとは断定し難いから、無効投票と解すべきものである。

(三) 別表(一)の番号三、五、七、一一、一二、一五ないし一七、二〇ないし二三、二五、二七、二八、三〇、三一、三七、四〇、四四、四九ないし五一、五四、五七、六〇ないし六二、六七、六八、七二、七三、八〇、八一、八六、八九、九一、九二、九四ないし九六、九九、一〇〇ないし一〇二、一〇六、一〇七、一〇九、別表(二)の番号一一六、一二〇、一二五、一三〇ないし一三二、別表(三)の番号一四五、一四六、一五〇、一五四、別表(四)の番号一七三、一七四、一八〇ないし一八三、一八七ないし一九一、一九七ないし二〇〇、二〇八、二〇九、二一五、別表(五)の番号二二八ないし二三八、二四〇、二四一、二四四、二四五、二四七ないし二五〇、二五二ないし二五五、二六六、二七三、二七八、二八三、別表(六)の番号三〇二ないし三一一、三一四、三一六、三一八、三二〇、三二一、三二五、三二六、三二八ないし三三〇、三三二、三三三の各投票について

(1) 原告は、「青木実」「青木實」「青木実(みのる)」と記載された投票は、すべて訴外青木稔と訴外塙実の氏と名を混記した投票と認められ、公職選挙法六六条一項七号により無効と判定されるべきであると主張するが、右主張は、次のとおり失当である。すなわち、選挙人は、常に候補者の氏名を正確に記憶しているわけではなく、選挙に際して候補者の氏名をはじめて知る者もあり得ることであって、その場合に、二人の候補者氏名を混同して一人の候補者の氏名として記憶することもあり得るものである。その場合も、特段の事由のある場合を除き、選挙人は、一人の候補者に投票する意思をもってその氏名を記載するものと解すべきであるから、投票を二人の候補者氏名を混記したものとして無効とすべき場合は、いずれの候補者氏名を記載したか全く判断し難い場合に限るべきものであって、そうでない場合は、いずれか一方の氏名にもっとも近い記載のものはこれをその候補者に対する投票と認め、合致しない記載はこれを誤った記憶によるか、または、単なる誤記によるものと解すべきである。本件選挙においては、候補者中に青木稔と塙実が存在するが、「青木実」「青木實」「青木実(みのる)」と記載された投票は、青木稔と姓は完全に一致し、名の部分において同音異字である点が一致しないのみであり、字音においてはいずれも「あおきみのる」と読めるものである。また、青木稔候補は、選挙運動期間中、「青木みのる」という通称を使用しており、「みのる」を漢字をもって書こうとすれば、「実」またはその異字体の「實」という漢字を連想するのが通常である(なお、「青木実」等と記載された投票は青木候補の有効投票として一〇〇票、無効票として二七票合計一二七票存した。)、さらに、また、姓の「青木」と「塙」は字形、字音ともに全く類似性が認められないのである。従って、「青木実」「青木實」「青木実(みのる)」と記載された各投票は、いずれも青木稔候補を指向したものであって、右各投票の名の部分は、青木稔候補の誤記と認められ、いずれも青木稔候補の有効投票と解すべきものである。

(2) 次に、原告は、「青木実(みのる)」と記載された投票は、訴外青木稔が同法施行令八八条六項により「青木みのる」という通称を使用していたことを考えると、「みのる」以外の「実」をあえて記載したものであって、同法六八条一項五号による他事を記載した無効投票である旨主張するが、右主張も失当である。すなわち、右投票は、漢字で記載された氏名の名の右側に平仮名を記載したものであるが、右平仮名は、その位置及び大きさからして、氏名の名の部分に限り仮名を付したものと認められる。原告は、振り仮名を投票の本来の記載とし、振り仮名が付された名を他事記載とするものであり、本末を転倒するものといわなければならない。しかして、「青木実」の記載は、前記のとおり、青木稔の有効投票と認められるところ、これに振り仮名を付したのは、右投票が青木稔候補に対することを明確にする趣旨で記載したものであって、他事記載と認むべきではなく、同候補の有効投票とすべきものである。

(四) 別表(一)の番号四の投票について

この「青木穂」と記載された投票は、姓が「青木」の候補者は訴外青木だけであり、また、名の部分に禾偏を記載していることから「稔」と書こうとして造り部を誤って記載されたものと推認できるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五) 同表(一)の番号六、二四、四三、四五、六三、七〇、七七、八三、同表(三)の番号一五五、一五七ないし一五九、一六三、同表(五)の番号二五八、二五九、二六七、二七七、二八四、二九〇、二九七、同表(六)の番号三二七、三三一、三三四の各投票について

原告は、右投票に記載された「みるる」「みのり」「ゆのる」「のる」「ミロル」「ミソル」「のり」「ミノリ」「けのる」「みつる」「みつろ」「みるろ」「美のる」「のぼる」「みの」等の名を有する候補者は存在せず、訴外青木を指向したものとはいえないから、候補者以外の者に対してなされた投票として無効であると主張するが、立候補制度を採用する現行法の下においては、選挙人は、候補者の何人かに投票するのを通例と認めるべきであるから、たとえ投票に記載された文字に誤字、脱字があり、又は正確さが欠けていたとしても、その記載された文字の全体的考察によって当該選挙人の意思がいかなる候補者に投票したかを判断し得る限りにおいては、これを当該候補者の有効投票と認めることが法の根本理念に合致するから、右投票はいずれも「みのる」を誤記して記載したものと認められ、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(六) 別表(一)の番号八、三八、四一、四二、五六、六四、六六、七九、八七、九〇、一〇三、同表(二)の番号一二三、一二六、同表(四)の番号一九二、二一一、同表(五)の番号二四二、二七二、二八〇、二八五、二八八、同表(六)の番号三一五、三一七、三一九、三三五の各投票について

原告は、右各投票は、訴外青木の戸籍名を正確に記載していながら、抹消して平仮名で記載したこと、「青」と正確に記載していながら第一字の上に存する記載を抹消していること、氏名の一部を抹消して訂正していること等は、有意性をもって書換えしたものであって他事記載であると主張するが、右各投票を仔細に観察すると、記載された筆跡、運筆の状況等から推定すれば、「稔」という漢字が書けないために平仮名で記載したり、「稔」と書いたが氏名等掲示が「青木みのる」と表示されていたため書き直したり、一旦記載した文字が誤っていたために書き直したり、あるいは、書き順を誤ったために当該部分を抹消して書き直したものであるから、有意の他事記載と認めることができない。なお、別表(五)の番号二八〇の投票は、「稔」を□で囲んで抹消しているが、これは抹消部分を明確にするために□を付したものであって有意の他事記載と認めることができない。また、原告は、別表(四)の番号二一一の投票について「み」の左側に記号のようなものが、「の」の上部に「、」が付されているのは他事記載であると主張するが、記号のようなものは「み」を書こうとして誤って「の」を書いたために抹消したものであり、さらに、「、」は、抹消後に「み」を書こうとして止めたか、あるいは誤って書いた「の」に引続いて「る」を書こうとして止めたかのいずれかであると推認できるから、いずれも他事記載にあたらないものである。

(七) 別表(一)の番号九、一〇、三三ないし三五、六五、七四、七六、八五、九八、同表(二)の番号一一二、一一七、一二四、同表(三)の番号一四八、一四九、一五一、一五二、同表(四)の番号一七八、一八六、一九三、二〇二、二〇四、同表(五)の番号二五七、二八一、同表(六)の番号三三九の各投票について

原告は、右各投票の「青木」の右側に「アオキ」又は「あおき」、「稔」の右側に「みのる」と振仮名が記載され、さらに、右番号一〇の投票について、その記載が候補者氏名欄の欄外になされているから有意の他事記載であるとするが、振仮名が付された投票が有効投票として認められるべきであることは幾多の判例の示すところであり、たとえ、これが候補者氏名欄の枠外に記載されたとしても、有意の他事記載とは認められないものであるから、訴外青木の有効投票と解すべきである。

(八) 別表(一)の番号一三の投票について

原告は、右投票の左上に斜めに記載された長さ一センチメートルの線を他事記載であると主張するが、投票用紙に記載された位置・運筆の順からして、イ偏もしくは金偏の候補者名を書こうとして意思を翻して訴外青木の氏名を記載し、当該部分を抹消するのを失念したものと推認されるから単なる書き損じであり、他事記載に当たらないと解すべきである。なお、氏名等掲示においては、訴外青木の右隣りが訴外佐川正元である。

(九) 別表(一)の番号一四の投票について

原告は、右投票の「アオキ」と「ミノル」の間に付された「、」が他事記載であると主張するが、候補者の氏と名の間に付された「、」は読点であり、慣用的又は不用意に付された読点は他事記載に当たらないから訴外青木の有効投票である。

(一〇) 別表(一)の番号一八の投票について

原告は、右投票の「青木」と「みのる」との間に記載された「」を他事記載であると主張するが、投票用紙に記載された文字が稚拙であることから推察すると漢字で「稔」と記載しようとし、禾偏を記載すべきところを誤ってネ偏を書いて途中で止め、これを抹消するのを失念して、思い直して平仮名で「みのる」と記載したものと推認できるから他事記載には当たらないと解すべきである。

(一一) 別表(一)の番号一九の投票について

原告は、右投票の「ミ」の横に付された約八ミリメートルの線は他事記載に当たると主張するが、右投票は比較的稚拙な文字で記載されており、平素文字を書くことに慣れ親しんでいない選挙人が「ミノル」と記載すべきを「ミルノ」と記載したことに気がつき、「ミ」の左側斜め下に「ノ」を記載したものと推認できるから他事記載に当たらないものと解すべきである。なお、原告は、「アオキミノル」という候補者は存在しないから何人を記載したかを確認し難い投票であるから無効投票であると主張するが、右のとおり記載された文字が稚拙であり、また、「ミルノ」と「ミノル」は語順が異なっているのみであって、姓は訴外青木と一致しているから右訴外人の有効投票と認めるべきである。

(一二) 別表(一)の番号二六、八四の各投票について

原告は、「しげる」又は「しける」と記載したものを抹消し、右側に「みのる」と記載した投票は、「しげる」又は「しける」と称する候補者が存在しないから秘密投票の精神に反すると主張するが、「青木しげる」と記載された投票は有効投票であると解せられるところ、右各投票は、「しげる」又は「しける」を抹消して氏名等掲示と同じ「青木みのる」と記載したのであるから、有意の他事記載と認めることができない。また、原告は、同表(一)の番号二六の投票につき「青」の左下に「木」と記載されているため文字の配列が不自然であるから秘密投票主義に反すると主張するが、抹消された「しげる」の記載と総合して判断すると、右文字の配列が整然と記載されているから、意識的に記載されたものとはいえない。

(一三) 別表(一)の番号二九、四〇の各投票について

原告は、右投票の「青」の上部に記載された部分を他事記載であると主張するが、その位置・態様からみて、書き損じを「×」等で抹消したものであつて、有意の他事記載とは認められないから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(一四) 別表(一)の番号三二、四八の各投票について

原告は、右番号三二の投票は、「る」という文字の上部の記載が、抹消したとしても不自然な記載であるから他事記載のある無効投票であり、右番号四八の投票は、「青木」と「みのろ」との間に意味不明の記載があるからこれが他事記載にあたり無効投票であると主張するが、右番号三二の投票は、文字全体が続け字で記載されており、筆勢から判断すると「る」を書き誤ったために抹消し、改めて「る」を記載したものであり、右番号四八の投票は、投票に記載された文字から判断すると、平素文字を書くことに慣れ親しんでいない選挙人が記載したものと推定され、「みのる」と書こうとして先に「の」を記載したために、「の」を「×」で抹消したものと推認できるから有意の他事記載と認めることはできない。

また、原告は、「青木みのろ」という候補者は存在しないから、右番号四八の投票は、候補者以外の者に対してなされた無効投票であると主張するが、「ろ」と「る」は、字形においても字音においても酷似しているというべきであるから、「みのる」と書こうとして「みのろ」と記載したものであり、訴外青木を指向していると推認できるから、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(一五) 別表(一)の番号三六、同表(四)の番号一七九、二一〇の各投票について

原告は、候補者の右側あるいは左上に「無所属」と記載された肩書は無効投票であると主張するが、政党名等が同法六八条一項五号によって他事記載から除外されている「身分」に該当することは幾多の判例が示すところであり、また、氏名等掲示の所属党派名が無所属と表示されていることを考え合せると、右投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(一六) 別表(一)の番号三九、同表(五)の番号二二七の投票について

原告は、右各投票は、「青木完」と記載された投票であるから、候補者以外の者を記載したものとして無効であると主張するが、投票用紙に記載された文字の筆勢・運筆状況から判断すると、「実」のくずし字であって「みのる」と読める。また、氏は「青木」と明瞭に判読できるので訴外青木を指向していることは明白であるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(一七) 別表(一)の番号四六、八八、同表(二)の番号一一三、同表(四)の番号二〇七、同表(五)の番号二六〇の各投票について

原告は、「稔」の左側あるいは下側に記載された「みのる」は、その位置からいって単なる振仮名とは認められないから無効投票であると主張するが、「稔」の左側に「みのる」と振仮名を付された投票は、「青木稔」の氏名を候補者氏名欄に記載し、筆勢上「稔」の造り部「心」が候補者氏名欄枠一杯になってしまったため、左側にその振仮名を記載したものであり、「稔」の下に付された「みのる」は、氏名等掲示が「青木みのる」と表示されていたため重複記載をしたものであって、有意の他事記載と認めることはできない。

(一八) 別表(一)の番号四七、同表(四)の番号二〇三、同表(五)の番号二四六、二七六の各投票について

原告は、候補者以外の記載をして抹消した投票は、単なる誤字抹消とは認められないから他事記載として無効であると主張するが、右投票は選挙人が投票用紙に自己の氏名を記載して抹消し、又は記載された文字が判読できないほどに抹消したもので、単に記載を訂正したに止まるものであるから有意の他事記載と認めることはできず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(一九) 別表(一)の番号五三、五八、七八、同表(五)の番号二七一、二九一、二九五、二九六の各投票について

原告は、右各投票に記載された訴外青木の「青木」又は「あおき」が誤って記載されているから、候補者以外の者に投票されたものと主張するが、投票用紙に記載された文字全体から推察すると、いずれも右各投票は訴外青木の姓の一部である「青」又は「あお」の誤記と認められ、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(二〇) 別表(一)の番号五五の投票について

原告は、投票の候補者氏名欄に記載がなく、殊更に候補者の氏名を欄外に記載することは秘密投票の原則に反すると主張するが、右記載から特定の候補者に投票する選挙人の意思を知ることができるときは、このような記載が選挙の自由公正を害しない限りその投票を無効と解すべき理由がないということは幾多の判例が判示しているところであるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(二一) 別表(一)の番号六九の投票について

原告は、「アヲキ」と「ミノル」との間に意味不明の記号のようなものを記載し、その右側に「」のようなものを記載し、更に、左側には「ミノル」と記載したうえ二本線で抹消しているが、単なる誤字を抹消したものではないから無効投票であると主張する。しかしながら、投票用紙に記載された文字を観察すると、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が記載したと思われる稚拙な文字で記載されているから、「アヲキ」に引き続いて平仮名で「み」を書こうとして抹消し、右側に同じく「み」を書こうとしたが書けなかったため、左側に「ミノル」と書き、文字の配列を整えるために「」で抹消して「ミノル」と記載したものと推認されるから、有意の他事記載にあたらず訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(二二) 別表(一)の番号七一の投票について

原告は、「の」の右側の「の」は有意的な他事記載であると主張するが、右投票においても平素文字を書くことに慣れ親しんでいない選挙人が記載したものと推定され、左側の「の」を正確にできなかったために右側に再度「の」を記載し、左側の「の」を抹消することを失念したものと推認できるから他事記載に当たらないと解すべきである。

(二三) 別表の番号七五の投票について

原告は、「青」の「木」の間の右横に付された長さ三ミリメートルの「」を他事記載であると主張するが、右「」は投票所に用意している鉛筆ではない他の筆記具で記載したものと推定される。そうすると、「鉛筆で記載した候補者氏名のそばに墨痕のある投票は、その投票所に墨筆の設備がなかったとしても、その投票のうちに地方自治法施行令四〇条四項(現行公職選挙法四九条二項)による選挙人の「現存する場所」において記載した投票が混在する事実があるならば、これを投票所外で汚染したこの種の特別投票とみるべきであって、その汚染が過失によるものと認められる限り、他事記載ある無効の投票とすべきでない。」との名古屋高等裁判所昭和二五年三月二八日判決(行裁集一巻一号四頁)があり、本件においても同様に解されるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(二四) 別表(一)の番号九三、同表(二)の番号一一四、一一九、一二七、同表(六)の番号三二三の各投票について

原告は、右各投票は、単なる誤字抹消ではないから有意的な他事記載であると主張するが、投票に記載された抹消部分から判断して明らかに単なる誤字抹消であるから有意の他事記載と認めることができない。

(二五) 別表(一)の番号九七、一〇四、同表(二)の番号一一八、同表(四)の番号二〇六、二一二、同表(五)の番号二五一、二六一、二九三の各投票について

原告は、候補者の氏名を書いて抹消した投票は、抹消前の候補者と抹消後の候補者とが、その経歴・思想及び地盤が全く異なっているから有意的な他事記載であると主張するが、他の候補者氏名を抹消して改めて候補者氏名を記載した投票の抹消部分について、経歴・思想及び地盤が異なっているようなこととは全く関係なく判断すべきものであり、このような投票については意識的な他事記載とは認められないから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。また、原告は、右番号二五一の投票に「久64」と記載して抹消したものは、なんら意味のない記載であって、選挙人が自署しない疑いもあると主張するが、右投票は訴外鈴木久(候補者の一人)の名「久」と年齢「64」(なお、右鈴木は四六歳である。)を記載してこれらを抹消したものであると推認でき、また、選挙人が自署しないという証拠もないのであるから有意の他事記載とは認められないものである。

(二六) 別表(一)の番号一〇五、同表(三)の番号一六〇、同表(四)の番号一九四、一九五、同表(五)の番号二七〇の各投票について

原告は、右番号一〇五、一九四、一九五、二七〇の各投票は「あきみのる」又は「アキミノル」と記載され、右番号一六〇の投票は「アキミノ」と記載されているから、候補者でない者を記載したものとして無効であると主張するが、投票に記載された文字に脱字があったとしても、選挙人の意思が推定できるから訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(二七) 別表(一)の番号一〇八、同表(三)の番号一五六、一六二、同表(四)の番号一七六、同表(五)の番号二三九、二五八、二八二の各投票について

原告は、被告が、「青木茂」と記載された投票を無効としながら、「青木しげる」「青木かおる」「青木みつる」と記載された投票を有効としているが、そのように区々に取扱う合理的理由はなく、従って、右各投票はいずれも無効とすべきものであると主張する。しかし、原告の右主張は次のとおり失当である。すなわち、前記のとおり、候補者制度を採る現行法のもとにおいては、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票を記載したものと推定すべきであり、また、選挙人は適法・有効な投票をしようとする意思で投票を記載したと推定すべきものであるから、投票の記載が候補者氏名と一致しない投票であっても、その記載が候補者氏名の誤記と認められる限りは当該候補者に対する投票と認めるべきものである。もっとも、このように投票を有効とする推定に対しても合理的限界があり、投票の記載によっては必ずしも投票意思を明確にしがたいものを、特定の候補者の氏名との間に若干の類似性を手がかりとしてたやすく右候補者の有効投票とすることは許さるべきではないというべきである。

以上のような見地からすると、「青木かおる」「青木みつる」「青木しげる」と記載された投票は、姓において候補者青木稔の姓と完全に一致し、名においていずれも音感上の類似性があり、特に「みつる」は「みのる」と三字中二字まで一致し、他に、「青木」と称する候補者が存在しないことからすると、これら各投票は、青木稔候補の名を誤記した同候補者の有効投票と解すべきものである。他方、「青木茂」と記載された投票は、候補者でない者を記載したものとして無効投票と解すべきものである。「青木茂」と「青木しげる」は、読み方は同じでも、一方は漢字、他方は平仮名であって差異がある以上、差異が生ずるのも当然である。

(二八) 別表(二)の番号一一〇、同表(三)の一三七、一四〇の各投票について

原告は、「はしもと一男」及び「さかもと一男」と記載された右各投票を、「一男」と称する候補者は原告だけであり、「はしもと」と称する候補者は存在せず、また、「さかもと」と称する候補者も存在しないばかりか、原告の後援者である訴外坂本剛二と同じ氏であるから原告の有効投票であると主張するが、投票用紙に記載された「はしもと」及び「さかもと」は、原告の氏である「くしだ」と音感・視感ともに異なり、また、「はしもと」及び「さかもと」は字音において四字であるのに対し、「くしだ」は三音であるから類似性に乏しいといわなければならない。投票の記載と特定の候補者の氏名とに若干の類似性があるときも、選挙人は候補者の何人かに投票するものであるという推測のもとにたやすくこれを右特定の候補者の得票と解することはできないものであるから、右投票は原告の有効投票と認めることはできず、無効投票と解すべきである。

(二九) 別表(二)の番号一一一、同表(五)の番号二七四の各投票について

原告は、訴外青木の氏名の「青」にのみ「あお」又は「アヲ」と記載したのは、通常の振仮名とは認められないから他事記載であると主張するが、投票に記載された文字が拙劣であることから「青」の漢字を明瞭に記載できないために振仮名を付したものと推認できるから有意の他事記載と認められず、訴外青木の有効投票である。

(三〇) 別表(二)の番号一一五、一二九の各投票について

原告は、「青山みのる」及び「青田稔」と記載された右各投票は、候補者以外の氏名を記載したものとして無効投票であると主張するが、候補者中に「青木」と称する候補者は訴外青木だけであり、「木」を「山」又は「田」と記載したとしても、名が「みのる」あるいは「稔」と記載されており、候補者を特定し得るというべきであるから訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(三一) 別表(二)の番号一二一、同表(四)の番号一八五の各投票について

原告は、右番号一二一の投票の「の」の左側に記載された「み」という記載及び同表(四)の番号一八五の投票の「あ」の左斜め下に記載された「お」が他事記載であると主張する。しかし、右番号一二一の投票は記載された文字の位置及び態様から考察すると、「青木みのる」と書こうとして誤記し、姓のみを抹消して「み」の抹消を失念したものであり、また、右番号一八五の投票は「お」が明瞭に書けなかったため改めて左上に記載し、抹消するのを失念したものと推認されるから、いずれも他事記載と解すべきではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(三二) 別表(二)の番号一二八、同表(三)の番号一六一、同表(四)の番号一九六、二〇一、二一三、二一七、同表(五)の番号二九四、同表(六)の番号三一二の各投票について

原告は、右各投票は、候補者以外の者の氏名を記載したもの、又は何人になされたものか意味不明の投票として無効であると主張するが、投票に記載された筆勢、運筆の状況から判断すると、右の各投票いずれもが文字を書くことに憤れ親しんでいない選挙人が記載したものと推定され、訴外青木を指向して記載したものと推認できるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

なお、原告は、同表(四)の番号二一三の投票は「あおきさ丸」と記載されているから無効であると主張するが、稚拙な文字の記載であることから判断すると、末字は「丸」と記載したものではなく、「ん」若しくは「ま」と記載したものと推認できるから、「あおきさん」若しくは「あおきさま」と記載したものであり、同法六八条一項五号において無効事由から除外している敬称の類を記載したものとして訴外青木の有効投票と認めるべきである。また、原告は、「あほきみのる」と記載された投票は候補者の何人に記載したか確認し難い投票であると主張するが、「ほ」を「お」と発音していたことは明白であり、「あおきみのる」と書こうとして「あほきみのる」と記載したものであるから訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(三三) 別表(三)の番号一三三の投票について

この投票の「」は、その位置、形状からして意識的に記載されたものと認められ、従って、他事を記載したものであるから無効と解すべきである。

(三四) 別表(三)の番号一三四の投票について

この投票の「」の記載が抹消されずにそのまま記載が存する場合にこれが他事記載と認むべきことは異論のないところと解される。しかして、「」が二本線で抹消されたとしても、抹消された記載が意識的になされた記載であることに変わりがなく、右投票は、他事を記載したものとして無効と解すべきである。

(三五) 別表(三)の番号一三五の投票について

この投票は、原告を指向しているとは認め難く、何人に投票したか確認できないものとして同法六八条七号により無効とすべきものである。

(三六) 別表(三)の番号一三六の投票について

原告は、右投票について、原告の氏名とその表音が類似するから原告の有効投票であると主張するが、姓の「くた」は類似性があるにしても、名の「たかを」は候補者中に田久たかおが存在するから、いわゆる混記投票として無効投票と解すべきものである。

(三七) 別表(三)の番号一三八、一四一の各投票について

原告は、「しるた一男」と記載された投票について、投票用紙に記載された五文字と原告の氏名とが一文字しか違わないから原告の有効投票であると主張するが、右投票に記載された「しるた」と原告の姓「くしだ」とでは、音感・視感ともに類似性が乏しく、また、一字違いとはいえ語順が異なることを考え合せると、原告の有効投票と解することはできないから、無効投票と解すべきである。

(三八) 別表(三)の番号一三九の投票について

原告は、右投票を氏の記載からして原告の有効投票とすべきであると主張するが、姓の三字については「クシダ」と読めたとしても、名の三字は意味不明のものといわなければならないから無効投票と解すべきである。また、原告は、「青木しげる」「青木かおる」と記載された投票を訴外青木の有効投票と解するのであれば、右投票を無効と解するのは矛盾があるというが、「しげる」「かおる」が「みのる」と音感及び語感に類似性を有するのに対し、右投票は、原告の名の「カヅオ」と類似性に乏しいことが明白であって同じ基準で判断するわけにはいかないから、右投票は無効投票といわなければならない。

(三九) 別表(三)の番号一四二ないし一四四、同表(四)の番号一六八ないし一七一、同表(六)の番号三〇〇の各投票について

原告は、右各投票について、原告の姓の「くしだ」に他の候補者の名が記載されたもの、又は名の「一男」に他の候補者の姓が記載された右各投票について原告の有効投票であると主張するが、右投票のいずれもが原告の姓と他の候補者の名又は原告の名と他の候補者の姓とを記載したものであるから、同法六八条一項七号の「公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」として無効投票と解すべきものである。

(四〇) 別表(三)の番号一四七の投票について

これは、「を」を書こうとしてこれを抹消し、記載された文字が稚拙であることに鑑みれば、第一字は「ミ」の横線が一本多いものの「ミ」の誤字と認められ、第二字は「ノ」、第三字は「る」を記載したものと推認できるから「ミノる」と記載された投票であると認められる。

しかして、「みのる」又は「ミノル」と記載された投票はあん分されるべき投票であるから、右投票は青木候補と塙候補にそれぞれ按分加算されるべきものである。

(四一) 別表(三)の番号一五三の投票について

原告は、候補者氏名を横書きした「みのる」の「み」の右上に記載した「み」を他事記載であると主張するが、投票用紙に記載された文字が稚拙であって、かつ、選挙人は「みのる」の「み」を明瞭に書けなかったために改めて上部に「み」を記載したものと推認されるから、他事記載と解すべきではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(四二) 別表(三)の番号一六四の投票について

原告は、「くしき」と記載された右投票について、原告の姓「くしだ」と一字違いであり、別表(二)の番号一二八、同表(四)の番号二一七の各投票と比するなら原告を指向することが明白であると主張するが、前記のとおり、投票に記載された文字により類似性を有することをもって、たやすく特定の候補者の得票とすることができないとされており、また、右投票に記載された文字が明確に記載されていることから考えると、右番号二一七、同二一八の各投票のように投票に記載された文字が不明瞭なものと同一基準で判断すべきものではないから、無効投票と解すべきである。

(四三) 別表(四)の番号一六五ないし一六七、一七二、同表(五)の番号二一八ないし二二五、同表(六)の番号三〇一の各投票について

原告は、「沼田一夫」「ぬまたかづお」と記載された各投票について、「青木実」と記載された投票が訴外青木の有効投票とするならば、右投票は原告の有効投票であり、「沼田一男」と記載された投票は原告の氏名と四文字中三文字までが一致するから原告の有効投票であると主張する。しかし、右投票と被告が有効投票と判断した「青木実」と記載された投票とを同一基準で判断することはできない。なぜなら、「櫛田」と「沼田」では字音の類似性が乏しいのに対し、「稔」と「実」とでは字音が一致しているからである。さらに、原告の主張する右投票が第五開票区に多く存在した(一三票中、八票が存在した。)ことに鑑み、同区の候補者別得票数(選挙会の得票数において訴外沼田が五、六一二票、原告が三〇五票である。)から推察すると、むしろ訴外沼田に対する指向があったものとも推認できる余地があるのであり、結局、いずれの候補者に帰属するのか確認し難い無効投票と解すべきである。

(四四) 別表(四)の番号一七五の投票について

右投票は、拙劣かつ不明瞭な記載の投票であるが、第一字は「青」の誤記と認められ、第三字もウ冠の記載が明らかであることから全体として字体が「実」と近似していると認められる。しかして、前記のとおり、選挙人は、候補者の何人かに投票するのを通例と認めるべきであるから、たとえ投票に記載された文字に誤字・脱字があり、または正確さに欠けていたとしても、その記載された文字の全体的考察によって当該選挙人の意思がいかなる候補者に投票したかを判断し得る限りにおいては、これを当該候補者の有効投票と認めることが法の根本理念に合致する。よって、右投票は、青木候補を指向して記載されたものと推認されるから、名の誤記として訴外青木候補の有効投票と解すべきである。

(四五) 別表(四)の番号一七七、同表(五)の番号二八九、同表(六)の番号三三六の各投票について

原告は、右投票は投票用紙裏面に「青木みのる」又は「アオキミノル」「あおきみのる」と記載されており、秘密投票の精神に反し、無効とさるべきである旨主張する。しかしながら、右投票は、裏面に候補者氏名が記載されたのみで、その他特別の事由は認められず、裏面に記載されたことのみをもってこれを秘密投票の精神を害するものとして無効な投票ということはできず、有効な投票というべきである。

(四六) 別表(四)の番号一八四、同表(六)の番号三二四の各投票について

原告は、右各投票を「おおきみのる」と記載された投票であって、訴外青木を指向した投票ではないから、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効投票とされるべきであると主張するが、「お」と「あ」は字体に類似性があり、また、訴外青木と一字が異なるのみであるから同人の有効投票と認めるべきである。

(四七) 別表(四)の番号二〇五の投票について

原告は、右投票の候補者氏名欄の欄外に記載された斜線を他事記載であると主張するが、第二字目の「木」の筆勢・筆圧及び運筆の状況を勘案すると、「木」の右斜めに下ろす斜線を書く際鉛筆の芯が折れて途切れたものであり、欄外に記載された投票が有効であることは前記のとおりであるから訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(四八) 別表(四)の番号二一四、二一六の各投票について

原告は、右各投票には候補者以外の氏名が記載されたもの、あるいは有意的な他事記載であるから無効投票であると主張するが、投票に記載された文字は右二票ともに続字で記載されているけれども、姓は「青木」と判読でき、名は字形から判断すると「稔」と書こうとする意思がうかがわれるから、他に青木姓の候補者が存在しないことを考え合せると訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(四九) 別表(四)の番号二二六の投票について

原告は、逆さに記載された右投票の下三字は原告の氏と酷似しているから、原告の有効投票であると主張するが、右投票は「テワツグ」としか判読できないから、何人を記載したか確認し難いものとして無効投票と解すべきである。

(五〇) 別表(五)の番号二四三の投票について

原告は、右投票の「る」の左側に弓形の記号が付されているから他事記載のある投票であると主張するが、投票用紙に記載された文字の運筆・筆勢をみると、「る」の書き終りの部分を補正すべく付記されたものであり、他事記載ではないと解すべきであるから訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五一) 別表(五)の番号二五六の投票について

原告は、「実」の右側に付された「」を他事記載であると主張するが、投票用紙に記載された文字の筆勢、運筆の状況から推定すると、「実」を記載して右斜め下に下ろす線が上に跳ねていることから勢いのおもむくままに不用意に記載された点であると推認できるから、他事記載ではないと解すべきであり、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五二) 別表(五)の番号二六二の投票について

原告は、右投票の「き」という文字の下に六ミリメートルの「」なる線、右上に三ミリメートルの「」なる線は他事記載であると主張するが、投票に記載された文字が稚拙であることから推察すると、平仮名の「き」の体裁を整えるために付されたものと推認されるから他事記載には当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五三) 別表(五)の番号二六三の投票について

原告は、「青木みかお」と記載された右投票を候補者以外の氏名を記載した投票として無効であると主張する。しかし、投票用紙に記載された文字が稚拙であり、また、「青木」姓の候補者が訴外青木だけであり、さらに、第五開票区における氏名等掲示が「青木みのる」と訴外「田久たかお」が並んで掲示されていたから、「青木みのる」と書こうとして第四字目と第五字目を田久たかおの「かお」を誤って記載したものと推認できる。従って、右投票は、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五四) 別表(五)の番号二六五の投票について

原告は、右投票の「る」の右側に付された「」なる記号を他事記載であると主張するが、筆勢から判断すると、単に不用意に付せられたものであって、秘密投票の原則に反する記号とは認められないから他事記載に当らず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五五) 別表(五)の番号二六八の投票について

原告は、右投票の線のすべてが波形を呈しているから秘密投票の原則に反する無効な投票であると主張する。しかし、これは、身体に障害のある選挙人が懸命に訴外青木の氏名を記載しようとしたものと推認されるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五六) 別表(五)の番号二六九の投票について

原告は、右投票の「お」に点が二個ついており、右側の「」が他事記載であると主張するが、記載された文字が稚拙であることから推察すれば、誤って記載したものと認めることができるから、有意の他事記載と認めるべきではなく訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五七) 別表(五)の番号二七五の投票について

原告は、右投票の右側に記載された二文字は、肩書でもなければ氏名でもないから有意的な他事記載であると主張するが、投票に記載された文字及びその位置から推察すると、右側二文字は「青」を書こうとして正確に書けなかったため「」の記載で抹消し、左側に候補者氏名を記載したものであるから、他事記載と認められず訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五八) 別表(五)の番号二七九の投票について

原告は、右投票の「青木みの」の下の第五字目の記載が他事記載であると主張するが、第五字目は一旦「の」と書き、その上に重ねて「る」を記載したものであって、他事記載に当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(五九) 別表(五)の番号二八六の投票について

原告は、右投票の「木」の下に付されている「」が他事記載であると主張するが、投票に記載された文字を仔細に検討すると、付された「」は、「木」の右下に下ろす斜線を書こうとしたところ、鋭筆が折れて点のようになったため、再度当該斜線の上部に斜線を下ろしたものであって、意識的に記載されたものとは認め難いから、他事記載に当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(六〇) 同表の番号二八七の投票について

原告は、「青木」と記載された右投票について、「青木」なる候補者は存在せず、また、「」なる記載は他事記載に当たるから無効投票であると主張するが、右投票の「」は選挙人が訴外青木の名を失念したために引いたか、漢字で名を書こうとして書き得ず、途中で断念したものと推認できるから、意識的な他事記載に当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(六一) 別表(五)の番号二九二の投票について

原告は、「キオア」と記載された右投票は、極めて不謹慎な投票であって無効投票とすべきものであると主張するが、下から逆に読めば「アオキ」と判読でき、拙劣な書き方からすると、選挙人が誤って逆に記載したものと認められるから、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(六二) 別表(六)の番号三二二の投票について

原告は、右投票の「青」の右上に記載された「」を他事記載であると主張するが、右投票に記載された形状・位置から推察して不用意に付されたものと認められるから、他事記載には当たらないと解すべきである。

(六三) 別表(六)の番号三三七の投票について

原告は、右投票は、これを素直に読む限り何人に対する投票か判断し難い意味不明な投票であり、また、上部には単なる書き損じと認められない他事記載が認められるから、無効投票であると主張するが、投票用紙に記載された文字から判断すると、平素文字を書くことに慣れ親しんでいない選挙人が記載したものと推認できるから、「青木」と判読するのが妥当であり、また、上部は単なる書き損じを抹消したものであるから意識的な記載とは認めることができない。従って、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(六四) 別表(六)の番号三三八の投票について

原告は、「青」の右側に記載された「アホ」という文字が人を侮辱する意味での有意的な他事記載であると主張するが、投票に記載された文字が拙劣であることから、「青」の漢字を明瞭に記載できないために振仮名を付したものと推認できる。また、「現代かなづかい」(昭和二一年内閣告示三三号)が施行される以前は、「ホ」を「オ」と発音していたことが明白であるから、選挙人が「アオ」を書こうと意識して「アホ」と表示したものと推認できる。従って、有意の他事記載と認めることはできないから訴外青木の有効投票である。

3  したがって、昭和六二年四月一二日執行された、いわき市選挙区福島県議会一般選挙における、原告、訴外青木及び同塙実のそれぞれの有効得票数は、被告が昭和六二年七月二八日(要旨の告示は七月三一日)になした決定書(甲第一号証)別表のとおり(加減後の得票数は別表(七)の「被告の決定得票数」のとおり。)であるから、原告の請求は棄却されるべきである。

4  なお、被告は、本件検証において指摘した投票について、次のとおり主張する。

(一) 他事記載のある投票について

最高裁判所昭和二三年七月一三日判決(民集二巻八号一八一頁)によれば、「公職選挙法六八条第一項第五号で他事記載を無効とする趣旨は、投票の秘密を守ることであることはいうまでもない。しかしながら投票の記載文字が常に正確であることは到底期待しえないことであって、記載された文字が不明確であり、或いは正しい文字に比して字画に誤りがあっても選挙人が何人を選挙しようとするのかの意思があらわれている場合は、その意思を尊重してこれを有効としなければならないとしている。さらに、投票に記載された点、字画が正確な文字に比して余分なものである場合に、若し意識的な記載と認められるならば、これを他事記載として無効な投票と判断しなければならないけれども、これら余分の点、字画をいたずらに憶測して意識的記載と解し、その投票を無効とすることは許されないものである。」と判示しているのである。本判例に徴すれば、原告主張の論旨は、いずれもいたずらに独自の見解をもって他事記載であると主張しているに過ぎず、自由な心証によって判断するべきとする右判例に矛盾するものである。

なお、原告が同法六八条第一項第五号の規定による他事記載の前記理由をもって無効と主張する投票が、原告主張のとおり一票にても無効とされるものがあるとすれば、被告が検証において指摘した別表(八)の番号四、六の投票についてはいずれも当然に無効とされるべきものである。

(二) 何人を記載したか確認しがたい投票について

最高裁判所昭和五一年六月三〇日判決(最高裁裁判集民事一一八巻一六三頁)によれば、「候補者制度をとる現行の公職選挙法(以下「法」という。)のもとにおいては、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票を記載したと推定すべきであり、また、法六七条後段及び法六八条の二の規定の趣旨に徴すれば、選挙人は真摯に選挙権を行使しようとする意思、すなわち適法有効な投票をしようとする意思で投票を記載しようとしたと推定すべきであって、選挙人が真摯でない態度で投票したのではないのではないかと推測して、その投票の効力を否定したりするようなことは許されるべきでない。もっとも、この投票を有効と推定するにも合理的限界があり、例えばその記載と特定の候補者の氏名との間に若干の類似性があるからといってたやすく右候補の有効投票と解することは許されないというべきである。」としている。本判例に徴すれば原告主張の論旨は、いずれも合理性に欠け、右最高裁判所判例に矛盾するものである。

なお、原告が法六八条第一項第七号の規定による何人を記載したかを確認し難いものの前記理由をもって無効と主張する投票が、原告主張のとおり一票にても無効とされるものがあるとすれば、被告が検証において指摘した別表(八)の番号一、二、三、五、七乃至一六の投票についてはいずれも当然に無効とされるべきものである。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一請求の原因1ないし3の事実、同4の事実中、被告が別表(一)の番号三ないし五一、五三ないし五八、六〇ないし八一、八三ないし一〇九、同表(二)の番号一一一ないし一二一、一二三ないし一三二、同表(三)の番号一四五ないし一六三、同表(四)の番号一七三ないし二一七、同表(五)の番号二二七ないし二六三、二六五ないし二九七、同表(六)の番号三〇二ないし三一二、三一四ないし三三九の各投票を訴外青木稔に対する有効(ただし、同表(三)の番号一四七の投票は按分有効)票と、同表(一)の番号一、二、同表(二)の番号一一〇、同表(三)の番号一三三ないし一四四、同表(四)の番号一六四ないし一七二、同表(五)の番号二一八ないし二二六、同表(六)の番号三〇〇、三〇一の各投票を無効票と判断したことはいずれも当事者間に争いがない。

二ところで、一般的に、投票の効力を判定するに当っては、公職選挙法六七条後段の趣旨に照らして、投票の記載自体から、選挙人が候補者の何人に投票したのかその意思を明認できる限り、その投票を有効とするように解すべきである。そして、選挙人が、候補者の氏名を自署する投票方式が採られている場合には、候補者の表示に誤字、脱字その他不明確な記載の投票がなされることは避け難いところであるから、このような記載のある投票については、無効投票を定めた同法六八条の規定に反しない限り、その記載された文字の全体的考察により、当該選挙人の意思がいかなる候補者に投票したかを判断し、これを認定し得る以上、これを有効として選挙人の投票意思を尊重すべきである。

以下、このような観点にたって、原告主張にかかる右各投票の効力について順次判断していくこととする。

1  別表(一)ないし(六)の各投票中、訴外青木稔に対する有効投票とされたが、無効投票とされるべきであると原告が主張するものについて

(一)  原告が「青木みのる」と「塙実」の混記投票と主張する投票について

別表(一)の番号三、五、七、一一、一二、一五ないし一七、二〇ないし二三、二七、二八、三〇、三一、四〇、四九ないし五一、五七、六〇ないし六二、六七、六八、七二、八〇、八六、八九、九一、九二、九五、九六、九九、一〇〇ないし一〇二、一〇六、一〇七、一〇九、同表(二)の番号一一六、一二〇、一二五、一三〇ないし一三二、別表(三)の番号一四五、一四六、一五〇、同表(四)の番号一七三、一七四、一八〇ないし一八三、一八七ないし一九一、一九七ないし二〇〇、二〇八、二〇九、二一五、同表(五)の番号二二八ないし二三八、二四〇、二四一、二四四、二四五、二四七ないし二五〇、二五二、二五四、二五五、二六六、二七三、二七八、二八三、同表(六)の番号三〇二ないし三一一、三一四、三一六、三一八、三二〇、三二一、三二六、三二八ないし三三〇、三三二、三三三の各投票について

検証の結果によれば、右各投票には、「青木實」又は「青木実」と各記載されていることが認められるところ、原告は、これらの投票は、すべて訴外青木稔と訴外塙実の氏と名を混記した投票であるから、公職選挙法六八条一項七号により無効と判断されるべきである旨主張するので検討するに、〈証拠〉によれば、次のとおり認められる。

(1) 訴外青木稔は、いわき市平の出身で、かつて、福島県立磐城高校時代野球部に所属し、同校の投手として、高校野球甲子園大会に出場したことがあり、その後、昭和五四年四月いわき市議会議員に初当選して以来、本件選挙の直前である昭和六二年四月三日に本件選挙のため退職するまでの間、同議会議員を三期連続して務め、本件選挙において、自由民主党系=保守派の無所属議員として立候補した(なお、当時、他に青木姓の立候補者はいなかった。)ものであるが、その選挙期間中、本名の「青木稔」に代えて、公職選挙法施行令(昭和二五年政令八九号)八八条六項に基づき、いわき市選挙区福島県議会議員選挙選挙長に対し、「青木みのる」なる通称使用の申請をなし、右選挙長よりその旨の認定を受け、「青木みのる」と表示して選挙運動をしていた。一方、訴外塙実は、昭和三三年以来、呉羽化学株式会社労働組合書記長、同執行委員長等を経て、自治労いわき職労執行委員会、いわき地方労働組合協議会議長等を歴任し、昭和六一年八月福島県会議員に立候補し、同月同選挙に当選して、本件選挙当時、すでに同県会議員としての経験を有していたものであるが、再度立候補し、通称「はなわ実」と表示して選挙運動をしていた。

(2) ところで、本件選挙は、定数一〇名のところ、保守系・革新系を含めた一六名が立候補するという激戦であり、このような激戦になることは、本件選挙の公示日である昭和六二年四月三日以前から判明していたため、すでに、このころから、立候補予定者は、自己への支持を取付けるため後援会活動など活発な事実上の選挙戦を展開し、新聞・テレビ等の報道機関も、この間の事情を把握し、選挙権者のために、訴外青木及び訴外塙を含む各候補者の紹介や選挙結果の予測等を相当詳しく報じていた。

(3) しかし、他面、右選挙期間中、報道機関による右報道にもかかわらず、訴外青木宛の新聞代や飲食代の領収証、葉書、封書等には、「青木実様」あるいは「青木実選挙事務所様」「青木実後援会様」などと訴外青木の名の表示を間違えて記載されていた。また、本件選挙の結果、第一ないし第六の開票区において、訴外青木の有効投票とされた票中に「青木實」と記載された投票が三票、「青木実」と記載された投票が八七票、「青木実(みのる)」と記載された投票が一〇票計一〇〇票も存在していた。

(4) なお、本件選挙当時、本件選挙区内には、訴外青木とは別人である「青木實」なる人物が実在していたが、当該人物は、本件選挙には立候補しておらず、当時、同選挙区におけるいわゆる著名な人物と目されてはいなかった。

以上認定の事実によると、本件選挙は激戦であって、右選挙期間中、報道機関は、訴外青木及び訴外塙を含む各候補者の紹介等を詳細に報じており、また、右両者とも、当時、本件選挙区内における経歴・思想等を異にする著名人であって、活発な選挙運動をしていたことが認められるけれども、前記のとおり、訴外青木宛の領収証や葉書等には「青木実様」などと訴外青木の名の表示を間違えた記載がなされていたばかりでなく、本件選挙では、青木姓を名乗る立候補者は、訴外青木以外にはいなかったところ、右選挙の結果、「青木實」「青木実」「青木実(みのる)」と記載された投票が一〇〇通もあったこと等を考えると、本件選挙当時、選挙人は、すべて必ずしも、右両名の姓名を正確に区別して記憶していたわけではなかったものと認められ、これと、「青木實」「青木実」と記載された投票は、「青木稔」とは名の部分で同音異字があるものの、これらはいずれも姓の部分で一致し、字音で「あおきみのる」と読むことができること、訴外青木は、本件選挙期間中、「青木みのる」なる通称を使用しており、通常、「みのる」を漢字で表現しようとすれば、「稔」のほか「實」又は「実」という漢字が連想されてくること、「青木」姓と「塙」姓とは、字形・字音において、いずれも類似性が認められないこと及び公職選挙法六七条後段の前記趣旨等を合せ考えると、選挙人による右の「青木實」「青木実」なる各投票は、いずれも「青木稔」「塙実」の両名を混記したものではなく、訴外青木稔候補に対する投票の意思をもってなされ、単に同人の名のみが誤記されたに過ぎないものとみるのが相当であって、同人に対する有効投票(なお番号四〇の投票にある「」なる記載が有意の他事記載と認められないことは後記(4)の(ヘ)において判断するとおりである。)と認めるべきである。

(二)  原告が有意的な他事記載のあるものと主張する投票について

公職選挙法六八条一項五号がいわゆる他事記載を無効とする趣旨は、投票の記載が投票者の何人であるかを推知させる機縁をつくり、秘密投票制を破壊するのを防止するため、そのような記載を抑制することにあるから、右他事記載とは、符号、暗号等これによりその投票をした選挙人の何人であるかを推知させる意識的記載であって、しかもこれが明白な場合を指すものというべく、単に、氏名の誤記、書き損じ、余り字、これらの抹消、不完全な記載、誤って不用意に、あるいは、習慣性のものとして無意識的に記載された句読点等はいずれも意識的なものとは認められないから、右の他事記載には当たらないものと解するのが相当である。以下、これを前提として考察を加える。

(1) 振仮名の記載のある投票について

(イ) 別表(一)の番号二五、三七、四四、五四、七三、八一、九四、同表(三)の番号一五四、同表(五)の番号二五三、同表(六)の番号三二五の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、いずれも「青木実(みのる)」と記載(ただし、番号三二五の投票は「青木実(みのる)」と記載)された投票であることが認められるところ、原告は、訴外青木が本件選挙期間中、「青木みのる」なる通称を使用していたことに鑑みると、右各投票は、その本来的な部分である「青木みのる」と記載した投票に意識的に「実」なる混記投票と判断されるおそれを招来しかねないような他事を付記したものであるから、有意の他事記載として無効投票とされるべきである、と主張する。

しかしながら、右各投票は、漢字で記載された「青木実」の名の部分の右側あるいは左側に、「みのる」の平仮名を記載したものであるが、右平仮名は、その記載の位置や形状・大きさなどからして、右各投票の本来的な記載部分とは認め難く、むしろ、右の名の部分に振仮名を付したものと認めるのが相当である。そして、「青木」と記載された投票が訴外青木の有効投票であると解すべきことは前に判断したとおりであり、これに右のような振仮名を付したのは、右各投票が、訴外青木候補を指向してなされたものであることを明らかにする趣旨で記載したものと考えられるから、「青木実」の記載はもちろん、これの右の振仮名を付したのは有意の他事記載と認めることはできない。従って、右各投票は、訴外青木の有効投票とすべきである。

(ロ) 別表(一)の番号九、一〇、三三ないし三五、六五、七四、八五、九八、同表(二)の番号一一七、一二四、同表(三)の番号一四八、一四九、一五一、同表(四)の番号一八六、二〇二、同表(五)の番号二五七、二八一の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、いずれも候補者氏名欄に「青木稔」と記載され、右の「稔」の右側に「みのる」と振仮名が付記されているものであるが、このうち、番号一〇の投票は同欄の右側欄外に、番号六五、八五、九八、一二四、二五七の各投票はやゝ大き目にこれが付記されていることが認められるけれども、これら記載文字の位置・形状・筆勢等からすると、右各投票は、いずれも選挙人が訴外青木候補に投票する意思をもって、「稔」を明瞭ならしめる目的のもとに右の振仮名を付記したものであることが認められ、他に、右付記が選挙の自由と公正を害するものと認めるべき特段の事情も認められないので、振仮名の付された右各投票は、いずれも有意の他事記載のあるものに当たらず(なお、右の欄外記載がこれに当たらないことは後記(2)のとおりである。)、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ハ) 別表(一)の番号四六、八八、同表(二)の番号一一三、同表(四)の番号二〇七、同表(五)の番号二六〇の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、「稔」の左側又はその下側に、縦書き又は横書きで「みのる」と記載されたものであるが、これらの投票も、右(ロ)の投票と同様、訴外青木に投票する意思を明瞭にする目的をもって、余白のある「青木稔」の字の左側又は下側に、右振仮名を付したに過ぎないものとみられるので、右各投票は、有意の他事記載のある投票ではなく、訴外青木の有効投票とすべきである。

(ニ) 別表(一)の番号七六、同表(二)の番号一一二、同表(三)の番号一五二、同表(四)の番号一七八、一九三、二〇四、同表(六)の番号三三五、三三九の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、「青木(あおき)みのる」又は「青木(アオキ)みのる」と記載されたものであるが、平仮名又は片仮名による右振仮名は、選挙人が訴外青木候補に投票する意思を明らかにするため、これを付記したに過ぎず、他に秘密投票の精神を逸脱するような特別の事情も認め難いから、右各投票は、有意の他事記載のあるものには当たらず、訴外青木の有効投票(なお番号三三五の投票にある「」なる記載が有意の他事記載と認められないことは後記(4)の(ハ)において判断するとおりである。)とすべきである。

(ホ) 別表(二)の番号一一一、別表(五)の番号二七四の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、訴外青木の氏名の記載の仕方が縦書又は横書きのものであって、右氏名の「青」の右側(縦書きのもの)又はその上部(横書きのもの)に「アヲ」又は「アオ」の記載があることが認められるが、その筆跡からして、平素文字を書くことが不得手な選挙人が、「青木」という漢字のうち、「木」はどうやらほぼ正確に記載できたものの、「青」を正確に記載することができなかったため、これを明らかにするため、右振仮名を付したものと認められるので、右各投票は、有意の他事記載のあるものではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ヘ) 別表(六)の番号三三八の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「青木みのる」候補を指向してなされた投票であると認められるところ、原告は、このうち、「アホ」という文字は、人を侮辱する意味での有意的な他事記載である旨主張する。しかしながら、昭和二一年内閣告示第三三号による「現代かなづかい」が施行される以前においては、「ホ」を「オ」と発音していたことが認められるところ、右投票の候補者氏名欄の第一字目の記載文字は極めて拙劣であって、読み書きの能力に乏しい選挙人が「青」という漢字を書こうとしたが、正確にこれを書くことができなかったため、この右側に「アホ」という振仮名を付して被選挙人が何人かを明らかにしたに過ぎないのであって、右記載には侮辱的な意味が含まれているとは認められないから、右記載は有意の他事記載には当たらず、右投票は訴外青木の有効投票というべきである。

(2) 欄外又は裏面への記載について

別表(一)の番号五五、同表(四)の番号一七七、同表(五)の番号二八九、同表(六)の番号三三六の各投票について

検証の結果によれば、番号五五の投票については候補者氏名欄の欄外に、番号一七七、二八九、三三六の各投票については同欄の裏面に候補者訴外青木の氏名が各記載されていることが認められるところ、これにつき、原告は、選挙人が殊更に候補者の氏名を欄外や裏面に記載することは、何者による投票であるかを示すものであるから、秘密投票の原則に反し許されない旨主張する。

しかし、このように、欄外・裏面に記載された投票であっても、右各記載にかかる文字の位置・形状・筆勢等から判断すると、選挙人が殊更に、欄外や裏面に右訴外青木の氏名を記載したものではなく、不用意に、訴外青木に投票する意思をもって、これに右の記載をしたに過ぎず、他に、右記載が選挙の公正を害するものと認められる特段の事情も認められないから、右各投票は、有意の他事記載のあるものには当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(3) 候補者の氏名の書き直しについて

別表(一)の番号九七、一〇四、同表(二)の番号一一八、同表(四)の番号二〇六、二一二、同表(五)の番号二五一、二六一、二九三の各投票について

(イ) 右のうち番号二五一を除くその余の各投票について

検証の結果によれば、右各投票には、訴外青木以外の他の候補者の氏名、或いは姓が抹消され、「青木みのる」又は「青木稔」と記載されていることが認められるが、右記載から判断すると、選挙人は、一旦、訴外青木以外の他の候補者の氏名、或いは姓の全部又は一部を記載したが、その後、意を飜してこれを抹消し、「青木みのる」又は「青木稔」と書き改めたものであることが認めれるから、右抹消部分を有意の他事記載と認めることはできない。これにつき、原告は、訴外青木と右訴外人以外の他の候補者とでは、その氏名において全く類似性がないばかりか、思想・選挙地盤等諸々の点で異なっており、右訴外人を取り違えて記載することは考えられないので、右抹消部分は、右各投票が何者によるものかを知らしめるためになされた有意の他事記載である旨主張するが、選挙人が当初の意を飜して、ある候補者から思想や選挙地盤を異にする他の候補者へ投票意思を変更してその氏名を書き直すことは往々にしてあり得ることであって皆無ではなく、また、右抹消部分が有意の他事記載に当たるか否かは、思想・選挙地盤等が異なっているかどうかとは関係なく判断すべきものであるから、右主張は採用することができない。そうすると、右各投票は、有意の他事記載のあるものに当たらず、訴外青木の有効投票というべきである。

(ロ) 番号二五一の投票について

右投票には、「青木稔」と記載された文字の上部に「久64」という文字が記載され、これが「」なる線で抹消されていることが認められるところ、成立に争いのない甲第二号証の一ないし六、第八号証及び検証の結果によれば、当初、候補者鈴木久の名「久」と年齢「64」が記載されて(ただし、当時、右鈴木は四六才であったが、この数字は左右逆に記載されたものである。)抹消され、新たに、「青木稔」と加筆されたものであることが認められるが、抹消前における「久64」なる稚拙な文字と「青木稔」の文字とは、その各形状・筆勢及び運筆状況などからみて、筆者を異にするものと認められるから、右投票は、自署したものとみることはできず、公職選挙法六八条一項六号により、無効投票とすべきものである。

(4) 記載の訂正等について

(イ) 別表(一)の番号四七、同表(四)の番号二〇三、同表(五)の番号二四六、二七六の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、いずれも候補者以外の者の氏名の記載をしてこれを抹消したうえ、「青木みのる」又は「青木稔」「青木」と記載したものであることが認められるところ、原告は、これらの投票は、右抹消部分の記載が単なる誤字の抹消とは思われず、右各投票が何者による投票かを知らしめるためになされた有意の他事記載として無効である旨主張する。

しかし、右各記載に照らすと、右各投票は、選挙人が候補者でない自己又は他人の氏名を記載したものの、誤記に気付き、これを抹消したうえ、改めて訴外青木候補の氏名を記載したものであって、右抹消は、単に誤謬を訂正したに過ぎないものと認められ、有意の他事記載とは認められないから、右各投票は、訴外青木の有効投票と解すべきである。

(ロ) 別表(一)の番号二六、八四の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、当初「青木しげる」又は「青木しける」と記載されていたところ、「しげる」又は「しける」の各記載部分が抹消され、その右側に「みのる」と各記載されたものであるが、これは、選挙人が、訴外青木の名の誤記に気付いてこれを抹消したうえ、氏名等掲示と同じ「青木みのる」に書き改めたに過ぎないものであることが認められるから、右各投票は、有意の他事記載のあるものに当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ハ) 別表(一)の番号八、三八、四一、四二、五六、六四、六六、七九、八七、九〇、一〇三、同表(二)の番号一二三、一二六、同表(四)の番号一九二、二一一、同表(五)の番号二四二、二七二、二八〇、二八五、二八八、同表(六)の番号三一五、三一七、三一九、三三五の各投票について

検証の結果によれば、番号八の投票は、「青二みのる」と記載し、このうち右「二」を抹消し、その右側に「木」を記載したもの、番号三八、四一、四二、八七、二八五の各投票は、いずれも「青木稔」と訴外青木の氏名を正確に記載しておきながら、右「稔」を抹消し、その右側又は左側に「みのる」と右訴外人の通称名を記載したもの、番号五六の投票は、「青木」と記載した文字の下に判読不能な文字らしきものを記載したうえこれを抹消し、その左側ないし左斜め下にかけて「みのる」と記載したもの、番号六四、七九、一二三、一二六、一九二、二四二、三一七、三一九、三三五の各投票は、候補者氏名欄の最上部に、不完全又は判読不能な文字らしきものを記載したうえこれを抹消し、その下側に、又は右側から下側にかけて「青木みのる」と記載したもの(なお、番号三三五の投票については「青木」の横に振仮名が付されているが、この投票が振仮名の点で無効とすべきものでないことは前記認定判断のとおりである。)、番号六六、九〇の各投票は、「青木」と、その下に「衿」又は「」に酷似した文字とを各記載したうえ後者の各文字を抹消し、その下に「みのる」と記載したもの、番号一〇三の投票は、同欄の最上部に判読不能な文字らしきものを記載し、その下に「青木」と記載したもの、番号二一一、三一五の各投票は、「青木」と、その下に「の」か、又は判読不能な文字とを各記載したうえこれを抹消し、その右側から下側にかけて、又は左下から右斜めにかけて「みのる」と記載したもの、番号二七二の投票は、同欄の最上部に「青」に酷似した文字を記載したうえこれを抹消し、その右横から下側にかけて「あおきみのる」と記載したもの、番号二八〇の投票は、「青木」と、その下に判読不能な文字らしきものとを各記載したのち、抹消部分を明確にするためにこの文字らしき部分を□で囲んで抹消し、その下に「みのる」と記載したもの、番号二八八の投票は、「あをきみのる」と記載した「を」の左側に、さらに「を」を併記したものであることが認められるが、右各記載にかかる文字等の位置・筆跡・運筆状況等を仔細に検討すれば、平素文字を書き慣れない選挙人が、「青」「木」「稔」という漢字をきちんと書くことができず、不完全に書いたため、これを抹消して、改めて平仮名で右訴外人名を記載したり、当初、正確に「青木稔」と記載したものの、氏名等掲示が「青木みのる」と表示されていたため、右表示通りに記載しなければならないと思い違いをしてこれを書き直したり、誤記又は書き順の誤まりに気付いて誤記の部分等を抹消して訴外青木の氏名を正しく書き直したり、「あをき」の「を」をきちんと書けなかったため、これを抹消するのを失念したまま、さらに、その横に「を」を書き加えたものであることが認められるから、右各投票は、いずれも、有意の他事記載のあるものには当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。なお、原告は、番号二一一の投票に関し、「み」の左側に記号のようなものが、また、「の」の左上部に「」が付されているのは有意の他事記載である旨主張するが、前者については、「み」を書こうとして「の」を書いてしまい、間違いに気付いてこれを抹消したものであり、後者については、字を書きかけたが、途中でこれを止めたか、或いは筆の勢いで、誤ってこれを付したものであると認められるから、これらは、意識的になされた他事記載であるとは認められない。従って、右各投票は、いずれも訴外青木の有効投票というべきである。

(ニ) 別表(一)の番号九三、同表(二)の番号一一四、一一九、一二七、同表(六)の番号三二三の各投票について

検証の結果によれば、右各投票に記載された各抹消部分は、その位置・形状・大きさ・他の記載部分との場所的関係からして、いずれも単なる誤記、或いは書き損じの抹消に過ぎないものであることが認められるから、有意の他事記載ということはできず、右各投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ホ) 別表(一)の番号三二、四八の各投票について

検証の結果によると、番号三二の投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち「る」という文字の上に「」なる記載がある投票であり、番号四八の投票は、「青木」という文字と「みのろ」という文字との間に「」なる記載がある投票であることが認められるところ、原告は、右各抹消部分は不自然な記載であるから有意の他事記載である旨主張する。しかしながら、番号三二の投票は、その記載全体が流れ字であるところ、選挙人は、「青木みの」の下に「る」を書こうとして、勢い余って無意識的に筆が斜め右方向に走ってしまったためこれを抹消し、改めて「る」と書き直したものであり、番号四八の投票は、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が、「青木」の下に「みのる」と書こうとして、うっかり書き順を間違い、先に「の」と書いてしまってその誤りに気付いてこれに×印をつけて抹消し、さらに、その下に「みのる」と書く積りで「みのろ」と書いてしまったものとみられるが、「ろ」と「る」は字音及び字形ともに非常に類似していることが認められるから、右各投票は、有意の他事記載をしたものではなく、訴外青木を指向する有効投票であるというべきである。

(ヘ) 別表(一)の番号四〇の投票について

この投票は、候補者氏名欄の上部に記載された文字らしきものが抹消され、その下に「青木実」と記載されているものであるが、「青木実」と記載された投票が訴外青木候補を指向した投票と認めるべきであることは前記のとおりであり、また、右記載自体からすると、右抹消部分は単なる誤記、或いは書き損じの抹消であると認められるから、有意の他事記載と認めることはできず、右投票は訴外青木の有効投票というべきである。

(ト) 別表(一)の番号七一の投票について

検証の結果によると、右投票中の「あおきみのる」の記載中、「の」の右側に、さらに「の」が記載されているが、これは、平素文字に不慣れな選挙人が、当初「の」の字を記載したもののその字形が不完全であったため、改めて、正確に、その右側に「の」と記載したけれども、うっかりして、当初記載した「の」を抹消することを忘れたものであるとみられるから、これを有意の他事記載であると認めることはできず、右投票は訴外青木の有効投票というべきである。

(チ) 別表(五)の番号二七五の投票について

検証の結果によると、右投票は、「青本みのる」と記載された文字の右肩上部に、「青」の書き損じと思われる不完全な二文字が記載されて抹消されているものであるが、この二文字は、平素文字にに不慣れな選挙人が、二回続けて正確に「青」と記載しようとしたが果せなかったため、これを抹消したものであり、また、「青本」なる記載は、右選挙人が「青木」と記載しようとして「木」を「本」と誤記したものであることが認められるから、右投票は、有意の他事記載があるとはいえず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(5) 書き損じの放置・汚斑・斜線・句読点・記号等について

(イ) 別表(一)の番号一三の投票について

検証の結果によれば、右投票には、「青木みのる」と記載された文字の斜め上の余白に「」という長さ約一センチメートルの線が記載されていることが認められるが、右各記載の文字等の位置・形状・運筆状況からみて、選挙人が当初イ偏か金偏の候補者の氏名を記載しようとして書き始めたが、途中で気が変り、運筆を中止して、「」の記載部分を抹消することを忘れたまま、その右側に訴外青木の氏名を記載したものであることが認められるから、これは単なる書き損じであり、有意の他事記載には当たらず、右投票は訴外青木の有効投票であるというべきである。

(ロ) 別表(一)の番号一四の投票について

検証の結果によれば、この投票の「アオキ」と「ミノル」の各記載文字との間に「」なる点が記載されているが、その位置・筆跡・形状等からみて、習慣性の読点と認められるところ、このような記載は、有意の他事記載に当たるものということはできない。右投票も有効投票である。

(ハ) 別表(一)の番号一八の投票について

検証の結果によれば、右投票に記載された「青木」と「みのる」との間には、「」という文字様なものが記載されていることが認められるが、稚拙な筆跡であることから考え、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が、当初「稔」の禾偏を記載すべきところを誤ってネ偏を記載し、この誤りに気付いて運筆を中止し、その下に「みのる」と記載し直したものの、右誤記を抹消することを失念してそのままにしたものと認められるから、これも有意の他事記載には当たらず、右投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ニ) 同表の番号一九の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「アオキミルノ」と記載され、さらに、右の「ミ」の左側に長さ約八ミリメートルの縦線が記載されているものであるが、右各記載文字等の位置・形状・筆跡等からして、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が「ミノル」と記載すべきところをうっかりして「ミルノ」と記載し、この誤りに気付いて右の「ミ」の左側に「ノ」を記載する積りで、右の縦線を記載したものと認められるから、これは有意の他事記載であると認めることはできない。なお、原告は、「アオキミルノ」という候補者はいないから、何人を記載したかを確認し難い投票で無効投票である旨主張するが、「ミノル」と「ミルノ」とでは、第二、第三字がその語順を異にしているけれども、「アオキ」は訴外青木の姓と一致していること、右記載の経緯等に照らすと、右投票は、訴外青木を指向してなされたものであることが明らかであるから、右訴外人の有効投票と認めるべきである。

(ホ) 同表の番号二九の投票について

検証の結果によれば、右投票に記載された「青木みのる」の上部に塗り潰したような記載部分があるけれども、その位置・形状・大きさ・濃淡から考え、選挙人において書き損じた部分を×印等をもって抹消したものであることが認められるから、これは有意の他事記載とは認められず、右投票は訴外青木の有効投票というべきである。

(ヘ) 同表の番号六九の投票について

検証の結果によれば、同表中の氏名等は、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が稚拙な書き方で記載したものであるところ、右各記載文字等の位置・形状・運筆状況等からして、選挙人は、当初片仮名で「アヲキ」と書き、次いで、平仮名で「み」を書こうとしたもののきちんと書けなかったためこれを抹消し、さらにその右側に「み」を書こうとしたが再びきちんと書けなかったのでこれをあきらめ、この抹消を失念したまま、左側に片仮名で小さく「ミノル」と記載したが、文字の配列を整えるため、右の「ミノル」に二本の縦線を引いてこれを抹消したうえ、先に記載した「アヲキ」の下方に「ミノル」と書き直したものと認められ、これによると、右投票は、有意の他事記載があるとはいえず、訴外青木の有効投票であるというべきである。

(ト) 同表の番号七五の投票について

検証の結果及び弁論の全趣旨によれば、右投票には、投票所に用意された鉛筆ではない他の筆記具をもって、「青木」という記載文字の中間部分の右横に、長さ約三ミリメートルの「」という線が記載されていることが認められるが、右記載自体からみて、選挙人が故意にこれを記載したものであるとは認められず、これは所持した筆記用具により過って汚染したものとみるのが相当である。従って、右投票は、有意の他事記載があるものに該当せず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(チ) 別表(二)の番号一二一、同表(四)の番号一八五の各投票について

検証の結果によれば、番号一二一の投票は、「青木みのる」と記載され、その「青木」の左側に抹消された部分があり、また、「の」の左側に「み」という文字が記載されているものであり、番号一八五の投票は、「あおき」と記載された文字のうち、「あ」の文字の左斜め下に「お」という文字が記載されたものであるが、右各記載にかかる文字の位置・形状・運筆状況からして、平素文字を書くことが不得手な選挙人が、番号一二一の投票については、「青木みのる」と書こうとしてその氏名の一部を誤記し、氏の部分だけを抹消して「み」の部分の抹消を失念したまま、その右側に、正確に、「青木みのる」と青き直したものであり、番号一八五の投票については、「あおき」と書こうとして「お」を明瞭に書けなかったため、この抹消を失念したまま、改めて、その左斜め上に、正確に「お」と書き直したものであることが認められるから、右各投票は、いずれも有意の他事記載のあるものに当たらず、訴外青木の有効投票であると認めるが相当である。

(リ) 別表(三)の番号一五三の投票について

検証の結果によれば、右投票は、候補者の氏名が横書きにされた投票であって、記載された「青木みのる」という文字のうち「み」の文字の右上に重ねて「み」という文字が記載されたものであるが、右各記載が全体的に拙劣であることからして、読み書きの能力に乏しい選挙人が、殊更に他意をもってこれを横書きで記載したものではなく、ただ、「みのる」の文字中、「み」の文字が正確に書けなかったため、これを抹消することを失念したまま、その右上に「み」の文字を書き直したに過ぎないものと認めるから、右投票は、有意の他事記載のあるものに当たらず、訴外青木の有効投票であるというべきである。

(ヌ) 別表(四)の番号二〇五の投票について

検証の結果によれば、右投票には、候補者氏名欄の右上隅に「青木」と記載され、その右側の欄外に、長さ約1.5センチメートルの「」という線が記載されていることが認められるところ、右各記載文字の位置・形状・筆圧・運筆状況からすると、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が、鉛筆で、「木」の字のうち、右斜めに下ろす斜線を書き始めた際、鉛筆の芯が折れたため、右斜線が一部途切れ、その後書き足した右の「」の線が欄外に及んだものと認められる。そして、このような場合、欄外に記載された投票が有効であることは前記認定のとおりである。そうすると、右投票は、有意の他事記載のあるものには当たらず、訴外青木の有効投票であるというべきである。

(ル) 別表(五)の番号二四三の投票について

検証の結果によれば、右投票には、「青木みの」と記載された文字の下に「る」と思われる文字が記載され、その左側に、長さ約五ミリメートルの弓形の曲線が記載されていることが認められるが、これらの位置・形状・運筆状況から判断して、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が、「る」の字を正確に記載することができなかったため、その書き終りの部分を補正しようとして、弓形の曲線を付記したに過ぎないものと認められるから、右投票は、有意の他事記載のあるものに当たらず、訴外青木の有効投票であるというべきである。

(オ) 同表(五)の番号二五六の投票について

検証の結果によれば、同表記載の「青木実」の文字のうち「実」の右側に「」が付されているが、右文字の位置・形状・筆勢・運筆状況からすれば、「」の記載は、選挙人が「実」の文字中、右斜め下に下ろす線を最後の段階で跳ね上げた際、筆の勢いで、誤って不用意にこのような記載をしてしまったに過ぎないものと認められるから、有意の他事記載ではないものというべきである。そして、「青木実」と記載された投票が訴外青木候補を指向した有効投票と認められることは、前に認定判断したとおりであるから、右投票は訴外青木の有効投票であると認めるべきである。

(ワ) 同表(五)の番号二六二の投票について

検証の結果によれば、右投票には、「き」という文字の下に約六ミリメートルの「」なる線、右上に約三ミリメートルの「」なる線が引かれているが、これは、右投票に記載された文字が稚拙であることからして、選挙人が「き」という文字をきちんと書けず、この上に記載した「あお」の文字との関係で体裁を整えるためにこれを付したか、あるいは、筆勢上、誤って不用意にこれを付したものと認められるから、右投票は、有意の他事記載のあるものではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(カ) 同表(五)の番号二六五の投票について

検証の結果によれば、右投票には、「青木みのる」と記載された文字のうち、「る」という文字の右側に、「」が付記されていることが認められるが、その位置・形状・筆勢・運筆状況等に照らし、右の「」の記載は、選挙人が候補者の氏名を記載するに際し、無意識ないし不用意にこれを記載したものと認められるから、右記載は、有意の他事記載に当たらず、右投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ヨ) 同表(五)の番号二六九の投票について

検証の結果によれば、右投票には、「あおきみのる」と記載された文字のうち、「お」の文字の右側に長さ約二ミリメートルの「」なる点が付されていることが認められるが、その位置・形状・筆勢・運筆状況からして、文字を書くことに不得手な選挙人が誤ってこれを付したに過ぎないものと認められるから、右記載は、有意の他事記載に当たらず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(タ) 同表(五)の番号二七九の投票について

検証の結果によれば、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が、右投票中に、本来「青木みのる」と書くべきところ、誤って、「青木みのの」と書き、この誤記に気付いたため、右の第五字目の「の」の文字の上に重ねて「る」の文字を記載したものであることが認められるから、右投票はいわゆる他事を記載したものということはできず、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(レ) 同表(五)の番号二八六の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち、「木」の縦線のすぐ右側に「」なる点が存在している投票であるが、右記載にかかる文字等の位置・形状・筆勢等からすると、右の「」なる点は、選挙人が、「木」の文字のうち、右斜めに下ろす斜線を書き始めたところ、鉛筆の芯が折れた結果生じたもので、選挙人は、改めて、右斜線の上部から右斜め下に向けて斜線を下ろしたものであると認められるから、右記載は、有意の他事記載ではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(ソ) 同表(五)の番号二八七の投票について

検証の結果によると、右投票は、

「青木」と記載されたものであるが、右記載自体から判断すると、「青木」の下に記載した「」は訴外青木に投票する意思をもって、同人の名を書きかけて途中で中止し、結局名の記載を省略した趣旨と認められるから、有意の他事記載には当たらない。なお、原告は、「青木」なる候補者は存在しないから、右投票は、候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である旨主張するけれども、右記載の趣旨からすると、右投票は、候補者でない者に対してなされたものではなく、訴外青木を指向してなされたものであることが明らかであるから、訴外青木の有効投票というべきである。

(ツ) 同表(六)の番号三二二の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「青木みのる」と記載された文字のうち、「青」の字の右上に長さ約二ミリメートルの「」が付された投票であるが、右文字等の位置・形状から判断して、選挙人が誤って不用意に「」を付したものと認められるから、右投票は、他事記載のあるものには当たらず、訴外青木の有効投票というべきである。

(6) 所属党派名等の記載について

別表(一)の番号三六、同表(四)の番号一七九、二一〇の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、いずれも右各投票中に記載された「青木みのる」の右側あるいは左側に「無所属」なる記載がされている投票であることが認められるが、このように併記された投票は、前掲甲第二号証の一ないし六及び検証の結果によれば、選挙人は訴外青木が無所属として立候補したものであり、氏名等掲示にも右訴外人が無所属である旨表示されていたことから、これにならって「無所属」なる旨記載したことが認められるから、右記載は、有意の他事記載には当たらず、また、番号二一〇の投票中、上部に記載された抹消部分は、その位置・形状等からして、意識的に記載されたものではなく、単なる誤記、或いは書き損じによる抹消であると認められるから、右各投票は、有意の他事記載のあるものではなく、訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(三)  原告が、「氏名の記載が、候補者の何人を指向するものであるか確認し難いもの」或いは、「候補者でない者の氏名を記載したもの」と主張する投票について

(1) 別表(一)の番号四の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「青木穂」と記載された投票であることが認められるところ、原告は、この投票は、明白に候補者でない者の氏名を記載した投票として無効である旨主張する。しかしながら、投票の効力を決定するに当たっては、前記二冒頭のような考察が必要であると解せられるところ、前記認定のとおり、本件選挙で、氏が「青木」の候補者は訴外青木だけであること、名の部分に禾偏が記載されていることからして、選挙人は、「青木」の文字に続けて「稔」という文字を書こうとして、造り部を誤り、「穂」という文字を書いてしまったものと認められるから、右投票は、訴外青木を指向してなされたものというべく、右訴外人の有効投票と認めるべきである。

(2) 別表(一)の番号六、二四、四三、四五、六三、七〇、七七、八三、同表(三)の番号一五五、一五七、一五八、一五九、一六三、同表(五)の番号二五八、二五九、二六七、二七七、二八四、二九〇、同表(六)の番号三二七、三三一、三三四の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、「青木みるる」「青木ゆのる」「あおきみのり」「青木みのり」「アオキミノリ」「青木のる」「アオキミロル」「」「青木ミソル」「青木のり」「青木けのる」「青木みるる」「青木みつる」「青木みるろ」「青木」「青木みつろ」「青木みの」「あおき美のる」とそれぞれ記載された投票であることが認められるところ、原告は、これらの名を有する候補者は本件選挙の候補者中には存在しないのであるから、訴外青木を指向したものではなく、候補者以外の者に対してなされた投票として無効とされるべきであると主張するが、前記のとおり、青木姓を名乗る候補者は訴外青木以外には存在せず、右各記載にかかる文字の位置・形状・運筆状況等から判断すると、右各投票は、いずれも「みのる」を誤記したものである(なお、番号七〇の投票中の「」なる記載は、「青木みのる」の誤記であり、番号二九〇の投票の抹消部分の記載は単なる誤記、或いは書き損じによる抹消である。)ことが認められるから、訴外青木を指向してなされたものであって、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(3) 別表(一)の番号三九、同表(五)の番号二二七の各投票について

原告は、右各投票は、いずれも「青木完」と記載された投票であり、このような候補者は、本件選挙の候補者中に存しないから、右各投票は、候補者でない者の氏名を記載したものとして無効とすべきである旨主張するけれども、検証の結果によって認められる右各記載文字の筆跡・運筆状況等を検討すると、明瞭に記載された「青木」の文字に続く第三字は、「完」という文字ではなく、「実」という文字のくずし字であることが認められる。そして、「青木実」と記載された投票が訴外青木の有効投票であることは前に認定判断したとおりであるから、右の各投票も、訴外青木を指向してなされたものとして有効投票と認めるべきである。

(4) 別表(一)の番号五三、五八、七八、同表(五)の番号二七一、二九一、二九五、二九六の各投票について

原告は、右各投票中、番号五三の投票は「中田木」と、番号二九一の投票は「アナキみのル」と、番号二九五の投票は「おおきみのる」と、番号二九六の投票は「高木みのる」と各記載された投票であり、番号五八、七八、二七一の各投票は、姓について意味不明な記載がなされている各投票であり、いずれの投票も、候補者以外の者に対してなされたものであるから無効投票である旨主張するけれども、検証の結果によって認められる右各投票中の各記載文字を全体的に考察すると、右各投票は、いずれも、平素文字を書くことに不慣れな選挙人が訴外青木の姓の一部である「青」又は「あお」「アオ」という文字を書こうとして誤記したに過ぎないことが認められ、また、訴外青木のほかに青木姓を名乗る候補者は存在しないから、右各投票は、訴外青木を指向してなされたものであって、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(5) 別表(一)の番号一〇五、同表(三)の番号一六〇、同表(四)の番号一九四、一九五、同表(五)の番号二七〇の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、「あきみのる」「アキミノ」「アキミノル」と各記載されているものであることが認められるところ、原告は、右各投票は候補者ではない者を記載したものとして無効である旨主張するけれども、記載された右文字全体からすると、右各投票は、いずれも、一部脱字があるものの、訴外青木候補を指向してなされたものであることが認められるから、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(6) 別表(二)の番号一一五、一二九の各投票について

検証の結果によれば、右各投票中には、「青山みのる」又は「青田稔」との記載がなされていることが認められるところ、原告は、右各投票は候補者以外の氏名を記載したものとして無効であると主張するところ、前記のとおり訴外青木のほか青山又は青田姓を称する候補者はないこと、姓のうち「木」が「山」又は「田」と記載されているものの、名については、正確に「みのる」又は「稔」と記載されていることからすると、右の「山」又は「田」は、「木」の誤記又は誤記憶による記載であると認められ、訴外青木に対する投票意思を確認することができるから、右各投票は、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(7) 別表(二)の番号一二八、同表(三)の番号一六一、同表(四)の番号一九六、二〇一、二一三、二一七、同表(五)の番号二九四、同表(六)の番号三一二の右各投票について

検証の結果によると、右各投票に記載された各文字は、いずれも稚拙であって、平素文字を書くことに不慣れな選挙人がこれを記載したものであると認められるところ、原告は、右各投票中、番号一二八の投票は「アワキ」、番号二一三の投票は「あをきさ丸」、番号二一七の投票は「フオキ」、番号二九四の投票は「アオオ」、番号三一二の投票は「あほきみのる」と記載されているので、右各投票は候補者以外の者の氏名を記載したものとして、また、番号一六一、一九六、二〇一の各投票は何人になされたものか意味不明の投票として、いずれも無効である旨主張する。

しかしながら、右各投票に記載されている文字の位置・形状・稚拙な運筆状況等から判断すると、番号一二八、二〇一、二一七、二九四の各投票については、選挙人は片仮名で「アオキ」又は「アヲキ」と書こうとして「アワキ」「アキ」「フオキ」又は「アオオ」と誤記したものであり、番号二一三の投票については、その末字は「丸」ではなく、「ま」又は「ん」と読み取ることができるところ、選挙人は「あをき」の文字に続いて、公職選挙法六八条一項五号但書により無効事由から除外されている「さま」又は「さん」なる敬称を付したものであり、番号一六一の投票については、第二字目を除いて「あ キみのル」と読めるところ、選挙人は第二字目に「ヲ」を書こうとして「」と誤記したものであり、番号一九六の投票については、横書きであるが、第二字目を除いて「ア キ」と読めるところ、選挙人はその第二字目に「ヲ」を書こうとして「」と誤記したものであり、番号三一二の投票については、「あほきみのる」と記載されているところ、このうち「ほ」が従来「お」と発音されていたことは前記のとおりであり、選挙人は「あおきみのる」と書こうとして「あほきみのる」と書いたものであることが認められるから、右各投票は、いずれも訴外青木を指向してなされたものであって、同訴外人の有効投票と認めるべきである。

(8) 同表(三)の番号一四七の投票について

原告は、右投票は、何人に対してなされたのか不明な投票であるから無効である旨主張するけれども、検証の結果によって認められる右投票中の各記載文字の筆勢・運筆状況等をみると、右投票は、平素文字を書くことに慣れ親しんでいない選挙人が当初候補者氏名欄の上部に「を」を書いたが、これを抹消し、次いで、同欄に「ミノる」と書こうとして、その第一字を誤って「」と書いたものであることが認められる。なお、原告は、右抹消部分は有意の他事記載に当たると主張するが、右部分は単なる書き損じの抹消に過ぎないから、これには当たらないものというべきである。しかして、「みのる」又は「ミノル」と記載された投票は、訴外青木候補と訴外塙実候補にそれぞれ按分加算されるべきものであるから、右投票は、右両名に按分されるべき有効投票と認めるべきである。

(9) 同表(四)の番号一七五の投票について

原告は、右投票の記載を「青木実」と読みとることができないから、右投票は、訴外青木を指向したものではなく、仮に、然らずとしても、有意の他事記載があるから無効投票である旨主張するけれども、検証の結果によれば、右投票には稚拙で不明瞭な記載がなされているところ、右記載にかかる文字を全体的に考察すると、第一字は「青」の誤記であり、第三字は全体として「実」と近似していることが認められるので、右投票は、右のような誤字があるものの、訴外青木を指向してなされたものであって、有意の他事記載があるものとは認められないので、訴外青木の有効投票というべきである。

(10) 別表(四)の番号一八四、同(六)の番号三二四の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、いずれも「おおきみのる」と記載された投票であることが認められるところ、原告は、このような候補者は本件選挙の候補者中には存しないから、右投票は候補者でない者の氏名を記載したものとして無効であると主張するが、「おおきみのる」と訴外青木の平仮名による氏名とは、一字が異なるほかは全部同じであり、しかも、「お」と「あ」は字体に類似性が認められること等に照らすと、右各投票は、訴外青木を指向してなされたものであり、なお、番号三二四の投票の上部に記載された抹消部分は、その筆跡からして、単なる書き損じを抹消したに過ぎないものと認められる。

右各投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(11) 別表(四)の番号二一四、二一六の各投票について

原告は、右各投票は、候補者以外の者の氏名が記載されたものであり、さらに、番号二一六の投票には有意の他事記載があるから、右各投票は無効投票である旨主張するところ、検証の結果によって認められる右各投票中の記載文字の筆勢・運筆状況からすると、第一及び第二字はいずれも「青木」と判読することができ、第三字はいずれも字形上、くずし字みたいな書き方であるが、「稔」という文字を書こうとした意思が窺われるのであって、これと、当時、訴外青木以外には青木姓を名乗る候補者がいなかったこと等を合せ考えると、右各投票は、訴外青木を指向してなされたものと認められるし、番号二一六の投票について意識的な他事記載があることも認められないので、いずれも訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(12) 別表(六)の番号三三七の投票について

原告は、右投票を素直に読む限り何人に対する投票か判断し難い意味不明な投票であり、また、上部には単なる書き損じと認められない他事記載があるから、右投票は無効投票であると主張するが、検証の結果によって認められる右投票中の記載文字から判断すると拙劣な書き方であるが、「青木」と判読することができ、また、この上部は単なる書き損じを抹消したものであることが認められるから、右記載は、有意の他事記載ではなく、右投票は訴外青木の有効投票と認めるべきである。

(四)  その他原告が無効投票と主張する投票について

(1) 別表(五)の番号二六八の投票について

検証の結果によれば、右投票は、

「青キみる」と記載されているが、その文字の線のすべてが波形を呈していることが認められるところ、原告は、このような記載方法は、右投票が何者による投票かを明らかにするためのものである疑いが濃厚であるから、秘密投票の原則に反する無効投票である旨主張するけれども、右記載された文字の筆勢や運筆状況から判断すると、著しく手のふるえる選挙人が訴外青木の氏名を記載しようとしてこれを記載したものであって、意識的に波形の線を描いたものではないことが認められるから、右投票は、秘密投票の原則に反するものではなく、右訴外人の有効投票であるというべきである。

(2) 別表(五)の番号二九二の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「キオア」と記載され、その順序が「アオキ」と上下逆になっていることが認められるところ、原告は、右投票は極めて不謹慎な投票であるから無効投票とすべきである旨主張するけれども、右投票は、その筆跡が稚拙な点からして、選挙人が「アオキ」という文字の書き順を誤って上下逆にこれを記載したものであって、殊更に、このような方法を選んで意識的にこれを記載したものではないと認められる。そして、このような場合、右のように書き順が逆になっていたとしても、これにつき公職選挙法に別段の定めがない以上、同法六七条の趣旨に照らして右投票を無効とすべきではなく、選挙人は、特に反対の状況が認められない本件では、訴外青木に投票する意思をもって投票をしたものというべく、右投票は、右訴外人の有効投票と認めるのが相当である。

(3) 別表(一)の番号一〇八、同表(三)の番号一五六、一六二、同表(四)の番号一七六、同表(五)の番号二三九、二六三、二八二、二九七の各投票について

検証の結果によれば、番号一〇八、一六二、一七六、二三九の各投票には「青木しげる」、番号一五六、二八二の各投票には「青木かおる」、番号二六三の投票には「青木みかお」、番号二九七の投票には「青木のぼる」なる文字が各記載されていることが認められるところ、原告は右の「青木しげる」「青木かおる」「青木みかお」「青木のぼる」なる各投票は、いずれも候補者でない者の名を記載した投票(同法六八条一項二号の投票)として無効と解されて然るべきである旨主張するので判断するに、右の各投票はその姓において候補者「青木みのる」と一致するけれども、いずれもその名において、発音、字形が右候補者と相異しており、かつ明瞭に記載されていることからみて、選挙人が右候補者の氏名を覚え違いして誤記したものとも認められないから、右の八票は候補者でない者の氏名を記載したものとして無効と解すべきである。

なお被告の指摘する別表(八)の投票についてみるに、検証の結果によれば同表の番号三の投票は「くしだこうず」、番号一〇の投票は「田一」と記載されている投票であるところ、右投票は姓において原告の姓に一致又は類似しているけれども、名が発音、字形において原告と相異しており、選挙人が原告の名を誤記したものとも認められないから、右の二票は被告において原告に対する有効票と判定した投票であるが、候補者でない者の氏名を記載したものとして無効と解すべきである。

2  別表(一)ないし(六)の各投票中、無効投票とされたが、原告に対する有効投票とされるべきであると原告が主張する投票について

(1)  別表(一)の番号一の投票について

検証の結果によれば、右投票は、「くしだ一男」の五文字が候補者氏名欄の枠いっぱいに線で囲んだ二重文字をもって記載され、しかも、線で囲んだ部分に様々の態様の斜線や曲線等が多数画かれている投票であることが認められるところ、その筆跡が必ずしも拙劣ではない点から考えると、これらの記載は、選挙人が無意識に記載したものではなく、殊更に記載したものと認められ、かつ、本件証拠上、特にこのような特異な記載をする理由も見出し得ないから、選挙人が真面目に原告を選ぶ意思を有していたか極めて疑わしく、右投票は、秘密投票主義に違反し、有意の他事記載の存するものとして、公職選挙法六八条一項五号本文により無効投票とすべきである。

(2)  別表(三)の番号一三三、一三四の各投票について

検証の結果によれば、右投票には、候補者氏名欄に「くしだ一男」と記載され、その右上部の同欄内又は同欄外にかけて、「」又は「」が付記されていることが認められるところ、その各位置・形状・運筆状況等からみて、選挙人は、投票するに際し、殊更に、「」又は「」を記載し、後者に、縦二本線を引いてこれを抹消したものであることが認められるが、右の「」又は「」の記載は、後者が二本線で抹消されてはいるものの、いずれも何人がこれを記載したか容易に判別し得るから、右各投票は、秘密投票主義に反して、有意の他事を記載したものであって、同法六八条一項五号本文により無効投票とするのが相当である。

(3)  別表(二)の番号一一〇、同表(三)の番号一三七、一四〇の各投票について

検証の結果によれば、右各投票には、「はしもと一男」又は「さかもと一男」と各記載されていることが認められるところ、原告は、右各投票を「一男」と称する候補者は原告だけであり、「はしもと」又は「さかもと」と称する候補者は存在せず、特に、「さかもと」という氏は、原告の後援者である訴外坂本剛二の氏と同一であるから、「さかもと一男」と記載された右投票は、「くしだ一男」と記載すべきところを、誤って、「さかもと一男」と記載した投票であるので、原告に対する有効投票と認めるべきであると主張するので判断するに、前掲甲第二号証の一ないし六及び弁論の全趣旨によれば、本件選挙において、「はしもと」又は「さかもと」と称する候補者は存在していなかったことが認められ、また、右の「一男」の記載は、原告の名と同一であるけれども、「はしもと」又は「さかもと」の各記載は、原告の氏である「くしだ」と視感・音感はもとより、字音も異なっており、しかも、当時、原告が「はしもと」又は「さかもと」という通称で称呼されていた、あるいは、坂本剛二と同一人物とみられていた等特段の事情の存在も認められないから、右「はしもと」又は「さかもと」の各記載は、選挙人が原告に投票する意思をもって原告の氏を誤記したものとはたやすく認めることはできない。したがって、右各投票は、いずれも、公職の候補者の何人を記載したかを確認しがたいものとして、同法六八条一項七号により無効投票とすべきである。

(4)  別表(一)の番号一三五の投票について

検証の結果によれば、右投票には、上四字が平仮名で「くいして」と記載されており、これと原告の氏である「くしだ」とは四文字中二文字まで一致しているが、音節において、前者が四音節、後者が三音節であって、語感に類似性がなく、語順も一致していないこと、また、第五字目は「か」と判読できるが、末字は何を記載しているのか判然としていないことが認められるので、他に特段の事情の認められない本件においては、右投票は、公職の候補者の何人を記載したかを確認しがたいもののとして、無効投票と認めるべきである。

(5)  別表(三)の番号一三八、一四一の各投票について

検証の結果によれば、右各投票には、「しるた一男」と記載されていることが認められるところ、原告は、右五文字のうち、原告の氏名と一文字しか違わないから、右投票は原告の有効投票であると主張するけれども、右の「しるた」は、原告の氏である「くしだ」と音感・視感ともに類似性が乏しいうえ、語順も異なっており、しかも、原告が右「しるた」という通称で称呼されていた等特段の事情も認められないから、右記載は、選挙人が原告に投票する意思で原告の氏を誤記したものとは直ちに認めることはできない。よって、右投票は、公職の候補者の何人を記載したかを確認しがたいものとして、無効投票とするのが相当である。

(6)  別表(三)の番号一三九の投票について

検証の結果によれば、右投票には「クシダエサイ」と記載されていることが認められるところ、右の「クシダ」の記載は原告の氏と一致するもののの、右の「エサイ」の記載は、原告の名と視感・音感ともに類似性がなく、語順も異っており、しかも、原告と通称等なんらかの関係のある称呼であるとの特段の事情も認められないから、原告の名の誤記とは認められず、右投票も、公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効投票とすべきである。

(7)  別表(四)の番号一六四の投票について

検証の結果によれば、「くしき」とだけ記載された右投票は、その第一字目と第二字目が原告の氏の第一字目と第二字目とそれぞれ一致していることが認められるけれども、原告の氏名は全部で六文字であって、そのうち、わずか右二文字が一致しているに過ぎないから、右記載をもって、原告に投票する意思をもってしながら、原告の氏のうちの「だ」の一文字とその名の「かずお」の三文字を誤字又は脱字したものと解することはできず、また、原告が「くしき」という通称で称呼されていた等特段の事情も認められない本件では、原告に投票する意思でその氏名を略記したものということもできない。よって、右投票は、公職の候補者の何人を記載したかを確認しがたいものとして、無効投票とすべきである。

(8)  別表(五)の番号二二六の投票について

検証の結果によれば、右投票は、投票用紙を上下逆にして「」なる文字を記載したものであることが認められるところ、原告は、右文字のうち下三字は原告の氏と酷似しているから、原告の有効投票と認めるべきである旨主張するが、右記載にかかる文字の位置・形状・運筆状況等を仔細に検討するも、原告の氏を記載したものか明瞭ではなく、右投票が公職の候補者の何人を記載したかを確認することができないから、右投票は、同法六八条一項七号により無効投票とすべきである。なお被告の指摘する別表(八)の投票についてみるに、これらの投票はいずれも被告において原告に対する有効票と判定した投票であるが、そのうち番号一、二、七の三票は検証の結果に照し、その記載にかかる文字の位置・形状・運筆状況等を仔細に検討しても原告の氏を記載したものか明瞭ではなく、結局何人を記載したものかを確認することができないから、番号二二六の投票と同様の趣旨でこれを無効と解すべきである。

(9)  別表(一)の番号二、同表(三)の番号一四二ないし一四四、同表(四)の番号一六八ないし一七一、同表(六)の番号三〇〇の各投票について

〈証拠〉によれば、右各投票には、原告の氏である「くしだ」又は「櫛田」の記載文字の下に他の立候補者である沼田一之、吉野まさよしの名が平仮名で、あるいは、原告の名である「一男」又は「かずを」、「かづお」の記載文字の上に他の立候補者である吉野まさよし、青木みのる、小野民平、はなわ実、鈴木久又は鈴木みつおの氏が漢字又は平仮名で各記載されていることが認められる。そうすると、右の各投票は、他に特段の事情の認められない本件においては、原告と他の立候補者との氏名を混記したものであって、原告を含むいずれの立候補者を記載したのか確認し難いものというべきである。従って、右各投票は、同法六八条一項八号に該当し、無効と解するほかはない。

なお、被告の指摘する別表(八)の番号一三の投票をみるに、右投票は被告において原告に対する有効票と判定した投票であるが、検証の結果によると、右投票も別表(一)の投票と同様「くしだ一之」と記載してある投票であるから、右と同様の趣旨で無効票と解すべきである。

(10)  別表(三)の番号一三六の投票について

〈証拠〉によれば、右投票には、「くたたかを」との記載がなされているが、右のうち、「くた」と原告の氏との間には若干類似性があること、本件選挙では、訴外人田久たかおも立候補していたが、右の「たかを」は右訴外田久の名と一致していること、右投票は、第三開票区で行われたが、当時、同区における氏名等掲示は、右訴外田久の氏名が一番目、原告の氏名が右から一五番目に離れて各掲示されていて、選挙人が氏名等掲示を見誤って原告の名を誤記したといったような事情はなかったことが認められ、これによると、右投票は、他に特段の事情の認められない本件では、原告と右訴外田久両候補の氏名を混記したものであって、いずれの候補者を記載したかを確認し難いものとして同法六八条一項七号により無効とすべきものである。

なお被告の指摘する別表(八)の番号の投票をみるに、検証の結果によると、右投票は「くだたお」と記載されている投票であって、右記載から直ちに原告に対する投票とはみられないのみならず、脱字あるものと考えても、原告の「くしだ」と田久たかお候補の「たかお」を混記した投票としか考えられないので、右投票は被告において原告に対する有効票と判定した投票であるが、前の投票と同様の趣旨でこれを無効と解すべきである。

(二) 別表(四)の番号一六五ないし一六七、一七二、同表(五)の番号二一八ないし二二五、同表(六)の番号三〇一の各投票について

検証の結果によれば、右各投票は、「沼田一夫」又は「沼田一男」「ぬまたかづお」と記載されたものであるが、このうち、「沼田」又は「ぬまた」は訴外沼田候補の氏と、「一夫」又は「一男」「かづお」は原告の名とそれぞれ一致していることが認められる。

そうすると、右各投票の記載は、各候補者である訴外沼田一之の氏と原告の名とから成っているものであるから、他に特段の事情の認められない本件では、右各投票は、右両候補の氏名を混記したもので、いずれの候補者を記載したかを確認し難いものというべく、同法六八条一項七号により無効と解するほかはない。

原告は、右の「沼田一夫」「ぬまたかづお」と記載された各投票について、「青木実」と記載された投票が訴外青木の投票とするならば、右の「沼田一男」と記載された投票は、原告の氏名中三文字までが一致するから原告の有効投票であると主張するけれども、前記のとおり、「稔」と「実」とでは、その字音や語順がすべて一致しているのに対し、「櫛田」と「沼田」とでは、必ずしもこれらが一致せず類似性に乏しいこと等に照らすと、投票の効力を判断するに当っては、右の「沼田一夫」又は「沼田一男」「ぬまたかづお」と記載された投票と、有効投票と判断された前記「青木実」と記載された投票とを同じ基準で判断することは不相当であると認められるから、原告の右主張はこれを採用することができない。

三前記のとおり、本件決定によれば、訴外青木の有効得票は1万1119.999票、原告の有効得票は一万一一〇九票であるところ、以上判断したところによれば、被告が訴外青木の有効得票としたもののうち、別表(一)の番号一〇八、同表(三)の一五六、一六二、同表(四)の番号一七六、同表(五)の番号二三九、二五一、二六三、二八二、二九七の九票は無効とされるべきものであり、被告が原告に対する有効得票としたもののうち、別表(八)の番号一、二、三、五、七、一〇、一三の七票は無効とされるべきものである。

右判断に基づき、各得票数を計算すれば、訴外青木の有効得票は九票減じ、原告の有効得票も七票減じるから、これに基づき按分票を加えて計算すると、訴外青木に対する有効得票数は1万1110.839票、原告の有効得票数は一万一一〇二票となり、訴外青木の有効得票数が原告の有効得票数を八票だけ上まわることが明らかである。

四してみれば、原告の当選を無効とした本件決定は結局正当であって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官伊藤和男 裁判官岩井康倶 裁判官松本朝光)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com