大判例

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函館地方裁判所 昭和43年(む)226号 決定

主文

本件請求を却下する。

理由

被疑事実第一(以下これを単に甲罪という。)(但し、「四月」とあるのは「二月」の誤記と認める。)については、すでに昭和四三年一〇月二三日、森簡易裁判所裁判官より、捜索すべき場所、差し押える物が本件捜索差押許可状請求とほぼ同一(本件請求中差押えるべき物の「五、その他金銭の出入に関する書類」を除けば全く同一)である捜索差押許可状が発せられ、翌二四日右許可状に基き、地方公共団体の職員を立会人として捜索差押がなされたことは、一件記録により明らかである。

被疑事実第二(以下単にこれを乙罪という。)は甲罪とほぼ同様の犯罪であり、甲罪について差し押えるべき物が事件の性質上単に昭和四一年四月頃についてのみ記載された書類だけでなく乙罪のなされた昭和四〇年九月から昭和四一年一二月頃までの期間について記載された書類を含む可能性が多い以上、乙罪について差し押えるべき物についても当然甲罪についての一〇月二四日の執行の際一応の点検程度はなされたはずである。そして、その際に乙罪について差し押えるべき物を発見したから改めて乙罪について捜索差押の許可を求めるというような事情が認められないから、乙罪について独自に捜索差押をする必要性は乏しく、本件請求を認容するか否かは、甲罪について再度の捜索差押を認めるか否かによって決定すべきものと考える。

捜索差押が被疑者やその家族のプライバシーを著しく侵害するものである以上、これを安易に認めるのは相当でない。本件において、被疑者の妻が一〇月二四日の執行に立ち会わなかったこと、被疑者らの貯金通帳等の存在が明らかになったことが認められるが、まず立ち会いの点については、被疑者の家族らが立ち会って説明し任意提出に近い方法が取られることは、望ましくないことではないし、被疑者やその家族が不在の場合に捜索をくまなく行うことも望ましいことではない。然し、被疑者やその家族が立ち会ったとしても沈黙を守った場合には、立ち会わない場合に比較して、せいぜい心理的に細かい所まで捜索しやすいという程度にすぎないから立ち会いの点は再度の捜索を認める決定的な理由とはなりえない。次に、貯金通帳等の点については、森郵便局長の回答によれば、函館地方貯金局保管の貯金原簿によって詳細は判明するというのであるから、貯金通帳等を差し押える必要は必らずしも存しない。

一般論としては、例えば執行の際には執行の場所には存在せず或いは発見できなかったが後に差し押えるべき物がその場所に存在することが明らかとなったような場合には、再度の捜索差押を認めても必らずしも違法又は不当とは思われないが、本件程度の事情の下においては、再度の捜索差押を必要とする特別の事情に乏しく、特に甲罪につき被疑者がほぼ自白し被疑者の妻がさしたる抵抗もなく任意提出の求めに応じることが十分に考えられるのであるから、再度の捜索差押を認めることは、いたずらに被疑者やその家族のプライバシーを侵害する危険性が大きく、相当でないと言わなければならない。

よって、本件請求を却下する。

(裁判官 高野昭夫)

〈以下省略〉

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