大判例

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千葉地方裁判所 昭和59年(ワ)649号 判決

原告

大森與市

訴訟代理人

吉田淳

被告

株式会社サンマリア

代表者

荒田茂隆

主文

一  原告が被告の取締役でないことを確認する。

二  被告は原告に対し原告が昭和五九年七月三一日被告の取締役を辞任した旨の登記手続をせよ。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は、主文と同旨の判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

一  原告は、被告の取締役であつた。

二  原告は、被告に対し、昭和五九年七月三一日の第一回口頭弁論期日において、口頭で、「被告の取締役を辞任する。」との意思表示をした。

三  被告は、原告が被告の取締役を辞任したことを争い、原告の取締役辞任による登記手続をしない。

四  そこで、原告は、被告に対し、原告が被告の取締役でないことの確認を求めるとともに、原告が昭和五九年七月三一日に被告の取締役を辞任した旨の登記手続をすることを求める。

被告は、「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求の原因について、「第一項の事実を認める。第二項の主張を争う。第三項の事実を認める。原告の取締役辞任の意思表示は、その効力を生じないから、原告は、いまもなお被告の取締役である。」と述べた。

理由

一原告が被告の取締役であつた事実は、当事者間に争いのないところであり、被告の商業登記簿謄本(資格証明のため提出されたもの)によれば、原告は、昭和五四年四月二八日被告の取締役に就任し、引き続いてその地位にあつた事実を認めることができる。

二原告の訴訟代理人弁護士吉田淳が、被告に対し、昭和五九年七月三一日の第一回口頭弁論期日において、口頭で、「原告が被告の取締役を辞任する。」との意思表示をした事実は、当裁判所に顕著である。

これによれば、原告は、代理人吉田淳を通じて被告に対し、被告の取締役を辞任する旨の意思表示をなし、その意思表示は、即時に被告に到達したものと認めることができるから、原告のした取締役辞任の意思表示は、即時に効力を生じたものというべきである。

このことは、会社と取締役との間の関係は委任に関する規定に従う(商法二五四条三項)と定められ、委任は各当事者において何時でもこれを解除することができる(民法六五一条一項)と定められていることから、明らかである。

三被告が、原告の取締役辞任の効力を争い、原告の取締役辞任の登記手続をしようとしない事実は、当裁判所に顕著である。

しかし、原告は、被告の取締役を辞任したのであるから、被告は、その旨の登記手続をなすべき義務があるのであつて、被告がこれを任意に履行しない場合においては、条理上、原告は、被告に対し、その旨の登記手続をすることを強制することができるものと解するのが相当である。

四そうすると、被告に対し、原告が被告の取締役でないことの確認を求め、かつ、原告が昭和五九年七月三一日被告の取締役を辞任した旨の登記手続をすることを求める原告の本訴請求は、すべて正当であるから、これを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(加藤一隆)

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