大判例

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名古屋地方裁判所 平成9年(わ)509号 判決

被告人

氏名

新美昭康

年齢

昭和九年三月三〇日生

職業

無職

本籍

愛知県知多郡東浦町大字藤江字大坪一八番地

住居

愛知県知多郡東浦町大字藤江字六反田四二番地

検察官

新河隆志

弁護人

城野雄博(国選)

主文

被告人を懲役八月及び罰金三五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県知多郡東浦町大字藤江字六反田四二番地に居住し、繊維製品の製造販売業を営んでいたもの、松本忠昭及び長谷川哲也こと金炳大は、被告人から依頼されて同人の所得税の申告手続に関与したものであるが、被告人、松本忠昭及び長谷川哲也こと金炳大は、共謀の上、所得税を免れようと企て、架空の経費を計上するなどの方法により所得を秘した上、別紙修正損益計算書のとおり、被告人の平成六年分の実際の総所得金額が、一三〇万五三七五円で、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が一億〇七六二万五五七二円であったにもかかわらず、平成七年三月一四日、愛知県半田市宮路町五〇番地の五所在の所轄半田税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一三〇万三三七五円、分離課税による長期所有土地にかかる譲渡所得の金額が六二一四万六〇一七円で、これに対する所得税額が一六五八万五二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、別紙脱税額計算書のとおり、同人の正規の所得税額三〇二二万八六〇〇円と申告税額との差額一三六四万三四〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

括弧内の数字は証拠等関係カードの検察官証拠請求番号を示す。

一  被告人の

1  公判供述

2  検察官調書(乙二、三)

一  松本忠昭の検察官調書(謄本、甲一六、一七)

一  長谷川哲也こと金炳大の検察官調書(謄本、甲一八)

一  外園茂の検察官調書(謄本、甲一三)

一  黒田茂の検察官調書(謄本、甲一四)

一  梅木衛の検察官調書(謄本、甲一五)

一  半田税務署長作成の証明書(謄本、甲一、一二)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(謄本。甲二ないし八)

(法令の適用)

罰条 所得税法二三八条一項、平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下「改正前刑法」という)六〇条

刑種の選択 情状により懲役刑及び罰金刑

労役場留置 改正前刑法一八条

刑の執行猶予 改正前刑法二五条一項

訴訟費用の不負担 刑事訴訟法一八一条一項ただし書

(量刑の理由)

本件は、被告人がいわゆる脱税請負人と共謀のうえ、所得税を脱税した事案であるが、被告人は、自己の利益に目がくらみ、被告人の従兄弟で、いわゆるえせ同和団体である全日本同和事業連盟の活動をしていた松本忠昭らに依頼し、本件犯行に及んだもので、格別酌量すべき事由はない。また、犯行態様も、六三〇〇万円もの架空経費を計上する等大胆かつ計画的なもので、脱税額も一三〇〇万円余りと多額で、ほ脱率も約四五パーセントであり、犯情は悪質である。

しかし、他方で、被告人が本件犯行を認め反省していること、本件犯行後の税務調査に対しては素直に架空経費の計上を認めていること、延滞税、重加算税等を納付していること、二〇年以上前の罰金刑以外の前科はないこと、被告人の健康状態が良くないこと等被告人にとって、斟酌すべき事情もある。

当裁判所はかかる諸事情を総合考慮した上、被告人に対しては、懲役刑についてはその執行を猶予して社会内更生の機会を与えるのが相当と判断し、主文のとおり量刑した。

(求刑 懲役八月及び罰金四〇〇万円)

(裁判官 長倉哲夫)

修正損益計算書

〈省略〉

〈省略〉

脱税額計算書

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

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