大判例

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名古屋地方裁判所 昭和30年(行)22号 決定

原告 合資会社 松岡商会

被告 名古屋国税局長 外一名

訴訟代理人 宇佐美初男 外三名

主文

本件中被告大垣税務署長長野富志男に対する請求を岐阜地方裁判所に移送する。

理由

本件請求の趣旨は

一、原告の自昭和二十六年五月一日至昭和二十七年四月三十日事業年度分の法人税の審査請求につき、被告名古屋国税局長が昭和三十年六月二十三日附なした審査請求棄却決定(名局直法審第一〇七号)は之を取消す。

一、右法人税の再調査請求につき、被告大垣税務署長が昭和二十九年二月六日附なした再調査請求棄却決定(大垣直第九三号)及び右法人税につき同税務署長が昭和二十八年十二月四日附なした更正(これにより納付すべき税額金二十四万五千五十円)はいずれもこれを取消す。

一、訴訟費用は被告等の負担とする。

とあつて、その請求の原因の要旨は、

一、被告大垣税務署長は昭和二十八年十二月四日附原告の自昭和二十六年五月一日至昭和二十七年四月三十日事業年度の確定申告書の所得金額及び法人税額につき、左の如き内容の更正をした。

所得金額         六五七、六〇〇円

法人税額         二七六、一九〇

納付確定基本税額      四二、七九〇

差引法人税額       二三三、四〇〇

過少申告加算税額      一一、六五〇

更正により納付すべき税額 二四五、〇五〇

二、しかしながら右更正は不当であるから原告は昭和二十九年一月十六日同署長に対し再調査を請求したところ、同署長は同年二月六日附これを棄却した。(大垣直第九三号)

三、そこで原告はこれに異議があつたので昭和二十九年三月十三日被告名古屋国税局長に対し審査請求をしたところ、同局長は昭和三十年六月二十三日附「請求人(原告)の申立ての根拠が薄弱でありその理由は認められない」との理由を附して棄却した(名局直法審一〇七号)

四、しかし右審査請求棄却決定は不当であるから請求趣旨第一項の如き請求をなすと共にこれに関連し右の再調査請求棄却決定及び更正もまた不当であるから同第二項の如く請求する次第である。

と主張されている。

依つて案ずるに行政庁の違法な処分の取消又は変更を求める訴はその行政庁の所在地を管轄する裁判所の専属管轄に属すること明らかであるところ本件中被告大垣税務署長に対する請求は同署長の処分に対する取消を求めているものであるから大垣税務署長の所在地を管轄する裁判所の専属管轄に属し当地方裁判所にその管轄がないこと明白である。

原告訴訟代理人は、行政事件訴訟特例法第六条に関連請求の併合が認められており、大垣税務署長に対する請求は名古屋国税局長に対する請求と関連しているから右法条により大垣税務署長に対する請求についても当庁に管轄があるものであり、かかる見解は有力に支持せられている。なお応訴の便宜などの点からみても裁決庁のみを相手どつた場合でも裁決庁におそらく処分庁と緊密な連絡を必要とし、処分庁においても裁決庁と共に相手どられた場合と事務上の負担は甲乙ないであろうし被告の代理人も法務大臣のいわゆる一元的訴訟遂行指揮権の活用によつて適切な指定又は選任が行われる等被告等の負担は何等加重されないからむしろ適当である。他方原告はこれによつて審理重複の負担を省かれ、しかも一挙に実効のある裁判をうけ得る可能性がありもとより利益であり更に又裁判所全体としては重複審理の煩を省かれ負担軽減となる。

若し反対の見解に立てば叙上の利便は変じて不利不便となるのみでなく双方の判決が矛盾しないことは保し難いし、仮に処分庁と裁決庁を別個に相手どつた場合は後の訴を重複起訴として却下し得るとしても(村崎満、税法に関する争訟二二一頁)本件につき移送のある場合はもともと本件各請求は一の訴として提起せられたものであるから各請求の前後を判別できず従つて重複起訴禁止の規定(民事訴訟第二三一条)に抵触しないから重複起訴として却下できず、従つて移送後において矛盾した判決の生ずる余地を残すこととなる。と主張するが利便の点については所説の通りとしてもいわゆる本件の場合にも関連請求の併合が認められるとする見解は到底是認できず、不利不便克服のためには将来右特例法の改正に俣つべきものと信ずる。

よつて本件中被告大垣税務署長長野富志男に対する請求を管轄庁たる岐阜地方裁判所に移送すべきものとし主文の通り決定する。

(裁判官 西川力一)

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