大判例

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名古屋地方裁判所 昭和42年(借チ)8号 決定

申立人 後藤良雄

右代理人弁護士 田島好博

相手方 早川きやう

右代理人弁護士 浅野隆一郎

同 祖父江英之

主文

申立人の別紙第一目録記載の土地上の建物の同第二目録記載のとおり増改築を許可する。

申立人に対し相手方に金二〇万円の支払を命ずる。

本件賃貸借期間を昭和六一年三月四日まで延長する。

賃料は本裁判送達の日の翌日から三・三m2当り一ヶ月三三八円とする。

理由

一、申立人は主文第一項記載のとおりの増改築許可を求めた。

二、本件資料によれば、次の事実が認められる。

(1)  即ち、本件土地は昭和一一年三月四日後藤藤太郎が相手方から非堅固建物所有の目的で期間を昭和三一年三月四日(乙第一号証には同年三月三日までとなっているが初日を算入しないから同年三月四日までと認める。)までの約で賃借し、その后、申立人がこれを引ついで賃借して今日に至っている。地上建物の増改築については賃貸人の承諾を要することが特約されていた。賃貸借期間は一旦更新されて終期が昭和五一年三月四日となっている。賃料は現在三・三m2当り一ヶ月一〇三円である。

(2)  本件土地上には東側部分に母屋があり、そこに申立人とその家族が居住し、申立人が改築申立をしている本件家屋は西側の一戸で、申立人はこれを改築して申立人が経営している後藤熔接所の従業員の宿舎および長男の居住にしたい意向である。

(3)  申立人の後藤熔接所は愛知県海部郡大治村にあるが、そこは狭いので従業員寮を建設する余地がない。

(4)  本件家屋は粗末なもので外観も悪く、名古屋市内の一等道路に面する建物としては近隣発展の上から見てむしろ改築が望ましく、近隣に悪影響を及ぼすことはない。なお、本件建物は粗末なものであるが朽廃の状態にはない。

(5)  申立人の建築計画は建築諸法規に違反するものでない。

以上の事実が認められる。そして、右事実によれば、申立人の本件増改築許可の申立は「土地の利用上相当とすべき」ものであって、許可するを相当と考える。

なお、相手方は本件賃貸借終了后中日病院の医師をしている長男のため本件土地に病院を建設したい意向であると主張し、本件資料によれば右事実が認められる。然しながら、借地法第八条の二第二項の土地の利用上相当とする増改築であるかどうかの判定はもっぱら土地の客観的事情によって判定すべきであって、右のような主観的事情を考慮すべきものではないから相手方の主張は理由がない。

三、附随処分

以上認定の事情と鑑定委員会の意見を考合せて本件賃貸借期間を一〇年延長し昭和六一年三月四日までとする。(意見書には同年三月三日までとなっているが、期間計算については初日を算入しないから同年三月四日までとする。)賃料を本裁判送達の日の翌日から適正賃料である三・三m2当り一ヶ月三三八円と改訂する。なお、申立人は相手方に対し期間延長に伴う不利益の穴うめをなす意味で本件土地の更地価額である一一七〇万円の約二パーセント弱である二〇万円の財産上の給付を命ずることとする。

鑑定委員会は相手方に対し契約終了のときに返還することを条件として二六〇万円の給付を命じ、しかも賃料を三・三m2当り一ヶ月一三〇円に値上げすべきものとする。然し、このような給付を命ずると前記適正賃料から右二六〇万円の一ヶ月の法定利率に相当する部分を控除した賃料を申立人に支払わしめることとなり(鑑定委員会の意見書添附の評価書一、(Ⅱ)、(ハ)の記載参照)期間延長に伴う相手方の不利益を何等穴うめしないこととなるわけであるから右鑑定委員会の意見は採用しないこととする。

以上の理由により主文のとおり決定する。

(裁判官 奥村義雄)

〈以下省略〉

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