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名古屋地方裁判所 昭和43年(ワ)3321号 判決

原告

稲葉重春

稲葉みち子

代理人

高木修

被告

合資会社鈴鉦運輸

右代表者

鈴木鉦市

被告

鈴木鉦市

被告ら代理人

富島照男

復代理人

熊崎みゆき

主文

一、被告らは各自原告稲葉重春に対し金七五万七〇三〇円、同稲葉みち子に対し金四七万七〇三〇円及びこれらに対する昭和四三年七月二八日以降各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告らのその余を被告らの各負担とする。

四、この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一、申立

一、原告ら

「被告らは各自、原告稲葉重春に対し金三五〇万円、同稲葉みち子に対し金三〇〇万円及びこれらに対する昭和四三年七月二八日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。」

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

二、被告ら

「原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。」

との判決を求める。

第二、請求原因

一、訴外天野正雄は、昭和四三年七月二七日午後一時頃、市内北区駒止町二ノ九一路上に停車していた大型八トン積貨物自動車(名古屋一う第三六八一号)―以下加害車という―に乗り、エンジンをかけて発進した際、同車左側付近にいた稲葉行重(昭和三九年一一月二三日生)を後車輛にまき込み、このため行重を即死させた。

二、天野は、被告会社の従業員であり、本件事故は、被告会社の運送業務に従事して被告会社所有にかかる加害車を運転中惹起されたものであるから被告会社はその運行供用者として、本件事故により生じた損害を賠償すべき責任がある。又、被告会社は本件事故により生じた後記損害を賠償すべき資力がなく、被告鈴木は、被告会社の無限責任社員であるから、被告鈴木は被告会社と連帯して後記損害を賠償すべき義務がある。

三、損害

(一)  行重

(1) 本件事故により、行重は多大なる肉体的精神的苦痛を蒙つたことは勿論、その前途洋々たる人生を失つた無念さを考えるとこの慰藉料としては、二〇〇万円が相当である。

(2) 又行重は死亡当時三才八カ月の男子であるところ厚生大臣官房統計調査部編の第一一回生命表によれば、三才の日本男子の平均余命年数は六五年であり、行重は健康な男子であつたから平均余命の一般的伸長、医学の進歩、衛生思想の普及等の点からすれば、行重は事故により死亡しなかつたとすれば、少くとも六八才に達するまで生存すること、又、同人は通常以上の知能と健康を有していたのであるから、同人の両親の学歴、健康状態、現在の職業等から考えて、義務教育制度にしたがい、一五才で中学を卒業後以来六三才に達するまでの間就職して稼働することは、いずれも経験則上明らかである。

この間の賃金については、将来の収入の上昇、下降を考慮するとともに、最少限度に見積つて算定するとして、行重は、最低の条件下でも、従業員一〇人以上、二九人以下の中小企業に就職すること、しかして右企業内での平均賃金に即応して昇給、降給すること、いずれも経験則上容易に推定でき、この点につき、労働大臣官房労働統計調査部賃金統計課作成にかかる昭和四一年度賃金構造基本統計調査結果報告の産業別の企業規模および年令階級別給与一覧表によれば、前記規模の中小企業における男子の平均賃金は、別紙(一)の年令欄及び月給欄のとおりとなつていることが認められる。

とすれば、行重においても、最少限に見積つて、右一覧表に従い一五才から六三才に達するまでの間の全収入を算定し、これを行重が死亡した時の価額に計算するため、別紙(一)に従い、中間利息を年五分の割合によりホフマン式計算法年毎方式によつて控除すれば、その額は七五二万四九七八円となる。同時に又右の金額より行重、及び同人が将来結婚して、一家の主人となり、将来出生するであろう子供らの生活費、及び妻の生活費を控除しなければならないが、これら生活費については、行重の年令、都市生活者の全平均生活費等から綜合して勘案するに、全稼働期間を通じて、全収入の三分の一を超えるとは予想できない。

とすれば行重の得べかりし利益の喪失額は、前記金額より生活費としてその三分の一以上を控除した五〇〇万円を下ることはないというべきである。

原告重春と原告みち子は夫婦であり、亡行重は同人らの子供である。したがつて、原告らは本件事故による行重の前記合計七〇〇万円の損害賠償請求権を法定相続分に従い、二分の一宛を相続した。

(二)  原告ら

(1) 原告らは、最愛にしてかつ余生を託すべき唯一の男児である行重を失いその精神的苦痛は夜も寝れぬ程であり、これに対する慰藉料としては、各一〇〇万円をもつて相当とする。

(2) 又原告重春は、行重の父として同人の霊を慰めるため、その負担において葬儀を行い、その他本件事故により要した諸経費一切を支弁したが、その金額は、二〇万円を下らない。

(3) 又本件事故以来、原告らは、被告らと示談折衝に努めたが、誠意ある回答が得られなかつたため、止むなく本訴提起に踏みきることとした。しかして、本件の性質上弁護士を依頼することとし、その費用は全て原告重春が負担するものとして、着手金、謝金を併せて六五万円と定め、とりあえず訴訟費用四万円の他着手金の一部として五万円を支払つた。

そして、弁護士費用としては、このうち四〇万円を請求する。

四  よつて、原告らは被告らに対し以上の各損害賠償請求権の合計から自賠責保険より受領した各一五〇万円を控除した申立記載の金員及びこれらに対する本件事故の日の翌日である昭和四三年七月二八日から各支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

第三、請求原因に対する答弁

一、第一項の事実中、原告ら主張の日時、場所において行重と加害車とが接触して行重が死亡したことを認め、その余の事実は争う。

二、第二項の事実中、被告会社が加害車を自己のために運行の用に供するものであることは認め、その余の事実は争う。

三、その余の事実は自賠責保険金受領の点を除き全て争う。

第四、被告らの主張

一、本件事故の原因について

本件事故は、天野が加害車を発進させるに際し、細心の注意を払つて、即ち左後部車輪附近から後部を廻り、トラックの周囲又は下部に人影のないことを確かめた後、右側ドアから運転台に乗り込み発進するまでの極くわずかなすきに、しかも見廻つた時には姿を見せていなかつた行重がトラック下部(左後輪前部付近)に走り込んだ為に生じた事故で、通常あり得べからざる事故としか言い様がない。

天野が運転台に乗つてから発進するまでの時間は一分足らずで、休憩したり、雑談したりなど、する余裕もなかつたのであるから、まさかその短時間の間に子供が自動車の下へ走り込むなどは予想もできなかつたことである。

右の通りであるから運転者天野には全く過失がない。

むしろ、本件事故は発車間際の加害車の下へ走り込むという危険極まりない行重自身の過失と、加害車が間もなく発車することを知りながら、行重がかかる行為に出ることを放置した原告みち子の、各重大過失に基づくものである。

二、仮に運転者天野に若干の過失があるとしても右行重の過失、原告みち子の過失をもつて過失相殺さるべきである。

(一)  行重の過失により過失相殺さるべきことについて

同人は事故当時三才八月の幼児であつたが、かかる幼児についても過失相殺は認めらるべきである。

民法第七二二条第二項のいわゆる被害者の過失とは、責任能力はもとより、事理弁識能力もない幼児等についても、その行為態様の如何を端的に幼児等の過失として斟酌さるべきである。右の如く解することが損害額の公平な分担という民法第七二二条第二項の趣旨に、より合致するからである。被害者がたまたま幼児等の事理弁識能力のない者である場合、(具体的事故の態様によつては被害者が幼児であれば運転者に、一層の注意義務が課せらるべきことは別として)幼児の行動が事故発生の原因になつていてもその行為態様を過失相殺に斟酌されないというのは不公平である。

過失相殺に関しては事理弁識能力のない幼児等についてもその行為態様から定型的に過失として斟酌し、被害者に事理弁識能力のないことは修正要素とすべきである。

(二)  仮に行重の過失を過失相殺に斟酌するには同人に事理弁識能力が必要であるとしても、近時の交通事情の悪化に鑑み、右の能力を有する年令はこと交通に関しては、極く低年令化する傾向が認めらるべきであり、本件に於て行重にも交通に関する事理弁識能力を有するというべきである。

よつて、行重の過失をもつて過失相殺さるべきである。

(三)  仮に右(一)(二)の主張が容れられないとしても同人の監督義務者たる原告みち子に重大過失があるので、過失相殺さるべきである。

即ち、原告みち子は、運転手天野らが加害車からセメント袋を降ろす作業が終つたことを知り、同人らの所へ行つてトラックの側で荷物受領書を渡し、冷やしコーヒーをすすめ、天野らが飲み終つた後同人が家へ入る時行重は玄関付近に居たというのであるから、同原告は行重が加害車の方へ行くかも知れないことを予期でき、しかも加害車が間もなく発車することを知つていた以上、行重の行動につき加害者が走り去るまでの短時間、より一層の注意を払うべきであつたし、容易にその義務を果し得たはずである。

しかるに、その間何らの監督をするどころか、簡単な注意をも与えていないのであるから同原告には重大な監督義務違反の過失がある。

三、逸失利益について

行重の逸失利益算出の際の中間利息控除のため原告はホフマン方式を利用しているが、本件の如く就労可能年数が長期に渡る場合はライプニッツ方式が採用さるべきである。

なぜならば、理論的には今日賠償を受けた金を年五分の複利で運用し、就労可能な年令に達してから所定の年金をもらい、就労最終年限に達した時元金がゼロになるという、いわゆる年賦償却の方式によるべきであり、これにはライプニッツ計算によらねばならない。

ホフマン方式によるときは、三六年間の累計に対する年五分の利息は、年金を上回り、しかも三六年後には元金全部が残るという不合理に陥るからである。

四、行重の養育費、教育費等の損益相殺について

原告らは行重の死亡により、同人が生存していたならば扶養義務者として原告らが当然支出すべきはずの養育費、教育費の支出を免れたのであるから、これに相当する金額は原告らの損害額からそれぞれ控除さるべきである。

第五  証拠関係〈略〉

理由

一事故の発生

原告ら主張の日時、場所において本件事故が発生し、行重が死亡したことは当事者間に争いないところ、〈証拠〉を総合するとその状況につき次の事実を認めることができる。

天野正雄は被告会社の運転手として勤務していたが、セメント一六〇袋を積み、助手席にアルバイト学生の真野剛一を同乗させ、加害車を運転して事故当日正午近くに稲葉建材という名で土木工事の請負、建築材料の販売等を営んでいる原告ら方に到着した。〈中略〉。天野、真野は午後一時近くなつてセメント袋を原告ら方倉庫に納める作業を終えたが、右作業の途中原告らの子供の行重が水道の付近で遊んでいるのを見ている。天野らは右作業終了後水道で体を洗い、原告みち子がその場に持つて来た冷しコーヒーを飲み、セメントの受領証を受取つた。そして、真野は先に助手席に乗り込み天野は加害車の後方を回つて運転席に乗り込んだ。その時には天野は加害車の付近に行重の姿を全く認めていない。天野は運転席に乗り込んでからタオルで体をふいたので、その間一分間程の時を経てから加害車を発進させた。加害車の約三メートル前方に自動車が一台停車していたため天野は右にハンドルを切つて約メートル進行した時左後輪に若干の抵抗を感じたので直ちに停車し加害車から降りて後方に行つたところ、左後輪のすぐうしろに轢過されてぐつたりとなつている行重を発見した。

原告みち子は荷下しも終つたので天野らにコーヒーを持つて出て、同人らがそれを飲み終つてから受領証を渡し、コップを下げて家に入る時に行重が玄関前で遊んでいるのに気付いていたが、その後の行重の動静については特に注意を払わなかつた。そして原告みち子は家に入つてから直ぐ又玄関脇の室の事務員二人にも、コーヒーを出しておぼんを下駄箱の上におき、玄関の上り口に腰を下すと間もなく加害車の方で異常音が聞えたので駆付けると本件事故が発生していた。

二被告らの責任

本件事故は被告会社が加害車を自己のために運行の用に供していた際に発生したことは当事者間に争いない。そして、前記本件事故状況に照らすと、天野は一応加害車の後方を回つて安全を確認した後加害車に乗り込んだのであるが、発進するまでに一分間経過しておりその間に幼い行重がどのような危険な行動を取るかも知れずそれを考えて発進する際更に後方、側方の安全を十分注意すべきであつたのであり、本件事故発生につき無過失とは言えないから、被告会社は自賠法三条による責任を免れないのである。

又、被告会社がその財産を以つて本件事故による損害を完済することができないことは弁論の全趣旨によつて認められる。したがつて、被告鈴木は無限責任社員として被告会社と連帯して本件事故で生じた損害を賠償する義務がある。

三損害の算定

(一)  行重の逸失利益

(1)  〈証拠〉によると行重は本件事故当時三才八カ月であつたことが認められるが、同人は一八才から六三才まで稼働し得たと解されるところ、この間一カ月に一八才の全国労働者の平均給与額である三万〇六〇〇円(この事実は当裁判所に顕著な事実である昭和四三年賃金構造基本統計報告書参照)は少なくとも得ることができたと解され、同人の生活費は右収入の二分の一は越えないと解されるから、これらの事実によつて同人の右の期間の逸失利益総額の一時取得額を年五分の中間利息を控除するホフマン式計算方式によつて算すると三〇〇万六二四八円となる。

(2)  原告らは右の逸失利益を算出する際行重の生涯の収入が年令ごとの平均賃金に即応して変動して行くものとして扱うべきであると主張するが、行重が稼働するはずであつたのは十数年先のことであり、しかもその後四十数年間の長期にわたつて稼働するものと仮定して逸失利益を算出するのであり、実際は行重がどのような職業に就くか、その稼働し得る期間に経済がどのように変動するかは具体的に予測することはほとんど不可能に近いから、かかる場合の逸失利益は蓋然性を高めるため控え目に算出するのが妥当であり、この意味から行重が生涯一カ月に少なくとも前記の三万〇六〇〇円の収入は得ることができたとの限界にて認定を止めておくことが相当であると解されるので、原告らの右主張は採ることができない。

(3)  又、被告らは右の逸失利益を算出する際行重の死亡によつて原告らが支出を免れた養育費を控除すべきであると主張するのでこの点について検討する。

原告らは我が子行重の死亡に因り将来の養育費の支出を免がれたこと、すなわち利得したことは明らかである。

そしてまた右利得は被害者行重本人について生じたものでなく行重の両親である原告らについて生じたものであるが、原告らが親としての立場、行重の相続人としての立場などから本件のごとき損害賠償を請求する場合に、その逸失利益から養育費を控除しないことは損失の公平な分担を窮極の目的とする損害賠償制度においては公平を欠くきらいがある。

しかしながら、もともと幼児のごとき年少者の逸失利益の算定は極めて困難であるにもかかわらず慰藉料一本の算定に比し損害額に出来る限り客観性を与えるものとして逸失利益の算定に努力が払われているが、前述のごとく蓋然性を高めるためその算定方法は極めて控え目勝ちであり、本件においても前示認定のとおり初任給的な固定額から生活費としてその二分の一を控除する控え目の方法が採られている。そのため右のような算出方法は結果的には養育費を控除すると同じ機能を果していると考えられる。

それで若し右算出方法を採りながら、算出方法の論理的要求に拘泥して養育費を掲げてこれを控除することは、養育費が比較的見積り易いだけに、却つて損害額の妥当性を損うことになる。

なおいわゆる年少者としても、その年令に相当な幅があるから養育費不控除によりその間に不釣合の生ずる場合には、慰藉料算定に当つて一事情として考慮すべきである。

以上の次第であるから被告らの養育費控除の主張は採用しない。

(4)  更に、被告らは逸失利益を算出する際本件のように被害者が幼児で稼働可能年数が長期にわたる場合はホフマン方式を用いるのは不合理であるからライプニッツ方式が用いられるべきであると主張するのでこの点につき検討する。

逸失利益を算出する場合の中間利息の控除方法につきいくつかの方法が提唱されているが、現在裁判実務の大勢はいわゆるホフマン方式(年毎複式)によつていることは周知の通りである。確かにこの方法によると被告らの指摘するような論理的欠陥の生ずる場合がないではないが、中間利息の控除方法をどれによるかということは結局は適正妥当な損害額を算定する上での技術的手段の選択にすぎないと考えられ、右の論理的欠陥があるからといつて直ちにホフマン方式は採用し得ないとの結論に導くものでもないのである。しかるところ、本件の場合ホフマン方式によつて算出された結果をみても社会通念から逸脱しているとは解されず、被告らの指摘するような論理的欠陥はいまだ従来からの方法をあえて変更するほどの理由とはならないと解する。

したがつて、この点に関する被告らの主張も採用するに足りない。

(二)  過失相殺

被告らの過失相殺についての主張から先ず検討する。

被告らは事理弁識能力がない幼児が被害者の場合もその行為態様を端的に幼児の過失として斟酌するのが損害の公平な分担という損害賠償制度の理念に合致する旨主張するが、事理弁識能力のない幼児についても過失相殺の法理を適用することのほうがむしろ社会的公平に反する結果になるというべきである。ただ、近時の道路交通の急速な発展、それに不可避的に伴う交通事情の悪化に対応して交通安全教育が相当低年令層にまで及んでいると推測せられる。しかるところ行重の死亡時の年令は三才八カ月であつたが、この年令では通常いまだ体系的な交通安全教育は行なわれていないことを考えると、行重が当時事理弁識能力を有していたと解することはできない。

そこで、本件で過失相殺として考え得るものは監督義務者としての原告みち子の注意の程度だけとなる。しかして、前記認定の本件事故状況に照らすと、原告みち子は、加害車が発車する直前行重が玄関前にいるのを認識していたのであり、しかも原告ら方には仕事の関係上加害車のような大型トラックが日頃出入りしていることも考えると、本件のような事態もあり得ることを十分予測して加害車が発車する際行重を手許に置いておく等事故の発生を未然に防ぐべき注意義務があるのにこれを怠つて行重を放棄した過失があるというべきである。

原告みち子の右過失の程度は、前認定の天野の過失と比較すると両者の過失割合は天野の6.5対原告みち子の3.5というべきである。

したがつて、前記逸失利益三〇〇万六二四八円のうち被告らに求め得るものは一九五万四〇六一円というべきである。

(三)  行重の慰藉料

原告ら固有の慰藉料と共に後に判断する。

(四)  相続

〈証拠〉によると原告らは行重の父母であることが認められる。したがつて前記行重の逸失利益についての損害賠償請求権につき二分の一宛の各九七万七〇三〇円及び慰藉料請求権につき各二分の一宛相続した。

(五)  原告らの慰藉料

本件事故の態様、原告みち子の過失、行重の年令、行重と原告らの身分関係、その他諸般の事情を斟酌すると原告らに対する慰藉料は前記相続分を合わせて各一〇〇万円と認めるのが相当である。

(六)  葬儀費

原告みち子本人尋問の結果によると原告重春は行重の葬儀につき二〇万円を下らない費用を支出したことが認められる。原告みち子の前記過失を考えると右のうち被告らに求め得るものは一三万円というべきである

(七)  弁護士費用

本件の請求額、認容額、内容、その他諸般の事情を斟酌すると本件事故による損害として被告らに求め得る弁護士費用は一五万円が相当というべきである。右費用は原告重春が負担すべきものである。

以上原告らの損害賠償請求権を合計すると原告重春につき二二五万七〇三〇円、原告みち子につき一九七万七〇三〇円となる。

四自賠責保険金の受領

原告ら自賠責保険より各一五〇万円受領したことは原告らにおいて自認するところである。

五結び

よつて、原告らの被告らに対する請求は右の残額の原告重春につき七五万七〇三〇円、原告みち子につき四七万七〇三〇円及びこれらに対する本件事故の日の翌日である昭和四三年七月二八日から各支払済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用の上主文のとおり判決する。

(西川力一 藤井俊彦 岩渕正紀)

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