大判例

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名古屋地方裁判所 昭和45年(レ)67号 判決

控訴人

河合志郎

代理人

酒井祝成

被控訴人

河合光

代理人

草島万三

主文

一、本件控訴を棄却する。

二、控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一控訴人と被控訴人間の豊橋簡易裁判所昭和四三年(イ)第三一号家屋明渡請求和解事件につき、別紙和解条項を内容とする裁判上の和解が成立し、同日和解調書が作成されたことは当事者間に争いがない。

二右当事者間に争いのない事実と、〈証拠〉を総合すれば次の事実が認められる。〈反証排斥略〉。

(1)  被控訴人は昭和三五年一〇月頃訴外河合嘉平の経営する米穀商を承継するという約束で同訴外人と同居するに至り、その頃同訴外人から、同訴外人の住居並びに店舗であつた別紙目録記載の建物とその敷地の各半分を貰うという約束をした。ところが、昭和四二年二月三日右訴外人が死亡したので、被控訴人は同訴外人の相続人である控訴人と右不動産の処置につき協議したところ、昭和四三年七月二六日頃、右両名間に、右不動産を売却してその売得金を控訴人と被控訴人とで半分ずつ取得するという話し合いが成立した。

(2)  ところで、右不動産を第三者に売却するためには、右土地、建物に居住している被控訴人がその土地、建物を明渡すことが確定的であることを、買主に示す必要があつたので、その手段として被控訴人が別紙目録記載の建物を昭和四四年三月三一日限り控訴人に明渡す旨の裁判上の和解調書を作成することとなつた。よつて控訴人は昭和四三年八月七日頃その手続を司法書士倉橋正二に依頼して、和解申立書を豊橋簡易裁判所へ提出した。

(3)  被控訴人は昭和四三年八月一〇日頃豊橋簡易裁判所から和解申立書副本と期日呼出状の送達を受けたが、かねて控訴人から和解期日には裁判所へ出頭しなくてもよいと言われていたので、右指定された期日には裁判所へ出頭しなかつた。

一方訴外倉橋正二は、昭和四三年八月二四日頃弁護士長坂凱に、右和解事件につき被控訴人の代理人として訴訟行為をするよう依頼し、同弁護士は被控訴人が署名捺印した委任状(乙第五号証)を使用し、被控訴人の代理人として昭和四三年八月二六日右裁判上の和解を成立せしめた。

三以上認定の事実によると、控訴人と被控訴人間には右和解成立当時、別紙目録記載の建物の明渡に関して紛争があつたのではなく、又控訴人から被控訴人に対する右建物の将来の明渡請求につき予め債務名義を作成しておく必要があつたわけでもない。かように当事者間に何ら紛争がないのに、専ら右建物とその敷地を第三者に売却するにつき、売買交渉の道具として使用する目的で作成せられたのが、本件和解調書であることが認められる。

四右の如き事情で作成せられた本件和解調書は民事訴訟法第三五六条に違反し無効であるというべきである。よつて右和解調書の執行力の排除を求める被控訴人の本訴請求は理由があるから、これを認容した原判決は結局において正当であつて、本件控訴は理由がない。

以上の理由により民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(松本重美 吉田宏 千葉勝郎)

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