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名古屋地方裁判所 昭和50年(行ウ)33号 判決

原告 鈴木庄助

補助参加人 鈴庄染工株式会社

被告 蒲郡市

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立

(原告)

建設大臣が昭和四一年一二月二八日建設省告示第四一九六号をもつてなした蒲郡市都市計画街路の路線決定変更処分はこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

(被告)

第一次的に、

主文同旨

の判決を求め、予備的に、

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二主張

(原告)

請求原因

一  原告は別紙物件目録記載の従前の土地の所有者である。

二  補助参加人鈴庄染工株式会社(以下、参加人会社という)は、織物染色を業とする株式会社であり、原告が代表取締役となつている。

参加人会社は、右従前の土地中に工業用井戸四本を有し、これより染色の生命ともいうべき良質な水源を得ている。右井戸群は、一日当り一五時間稼動し、その間の揚水量は一日当り一、五〇〇立方メートルもの量にのぼつており、その水位はポンプの運転中止中(九時間)に元の自然水位に復元するすぐれたものである。

三  ところで、原告所有の従前の土地は、昭和四六年九月二〇日設立された訴外蒲郡西田川土地区画整理組合(以下、訴外組合という)の施行地区内に存するものであるが、右組合の土地区画整理事業の施行地区内には、宝飯都市計画道路三・五・五七号五井線(以下、五井線という)が都市計画法による都市計画街路として決定されている。

四  右都市計画街路は、元蒲郡都市計画街路として建設大臣によつて決定されたもので、昭和二五年六月五日建設省告示四三八号をもつて告示され、その後同三六年二月八日建設省告示第一七一号、同四一年一二月二八日建設省告示第四一九六号をもつてそれぞれ変更されている。その後右都市計画街路は現在の宝飯郡市計画街路と名称変更された。

右変更のうち、五井線については左記のとおりである。

(1) 昭和二五年六月五日建設省告示第四三八号

名称 一・小 五 相楽線 幅員八メートル

起点 蒲郡市(当時)大字府相字相楽

終点 同字端廻

以下は変更部分のみ記載する。

(2) 昭和三六年二月八日 建設省告示第一七一号

名称 二・三・二 五井線 幅員一二メートル

終点 蒲郡市五井町西部

延長 二、三〇〇メートル

(3) 昭和四一年一二月二八日 建設省告示四一九六号

起点 蒲郡市府相町暮古五四番地の二地先

終点 同市五井町西郷五三番地の一

延長 一、六五〇メートル

(4) 昭和四六年九月七日 蒲郡市告示第八九号

名称 三・五・五七 五井線

右(3)の告示による変更(以下、本件路線変更処分という)により、五井線は原告所有の従前地を通ることとなつたが、それはまた前記四本の井戸群すべてにかかつているものである。

五  訴外組合は、その事業の一環として、右五井線の用地を確保し工事を施行することとし、このことを前提として、昭和五〇年九月一九日付で別紙物件目録記載の仮換地を従前の土地の仮換地とする旨の仮換地指定処分をなし、その通知は翌二〇日原告に到達した。

六  しかし、本件路線変更処分は、都市計画法の定める目的や基本理念に違反する違法なものであり、取消されるべきである。すなわち、右変更された路線には次のような重大な欠陥があり、都市の建全な発展と秩序ある整備を図るものとは到底言い得ないものである。

1 本件路線変更により、南方の道路を五井線に接続させるためには、道路が危険な急カーブをとらざるを得なくなる。五井線は周辺の主要道路で、相当の交通量が予想されるのであり、交通の安全と秩序を確保するためにも従前の路線の方がはるかに合理的な位置にある。

2 五井線が国鉄・新幹線下を通過する部分は、既に変更前の路線に従つて作られており、本件路線変更により新幹線ガード出口より不自然な角度をもつて五井線が作られることとなる。

3 本件路線変更により、前記第二項記載の良質な井戸群が廃止されることとなるが、右井戸の廃止は補助参加人にとつて事業の存立を左右する重大問題であり、さらに他の場所に同一水量、同一水質の代替井戸を堀ることは不可能に近く、仮に出来たとしても多額の費用を必要とする。

4 変更前の五井線予定地には何ら障害となるような物件は存在していなかつたし、また現在でも障害物はなく、従前の路線に戻すことは容易である。むしろ変更前の五井線予定地の方が、仮通学路として現在に至るまで用地が確保使用されており、また工作物も何ら存在せず、強いて原告居住地(補助参加人井戸所在地)に道路を通す計画変更およびそれに基づく仮換地の指定こそ不可解極まる意図的なものということができる。

右のとおり、本件路線変更によつて、道路の形状自体不合理なものとなるばかりか、より多額の出捐と犠牲を原告や参加人会社に負担させるのみならず、終局的には区画整理を受ける住民にも負担させることとなるのであり、本件路線変更処分は何らの合理的必要性もなしに行なわれた違法なものである。

七  右違法な、取消されるべき本件路線変更処分は、昭和四一年一二月二八日になされたものであるが、最高裁判所の判例により、都市計画決定がなされたとしても、それだけでは未だ直接具体的に権利関係を左右するものではないから直ちに取消訴訟の対象とすることができないとされているため、これまで出訴することが出来なかつたものである。この度、前第五項で述べたとおり、五井線の用地を確保するため仮換地指定処分がなされ、原告の権利義務を直接左右するに至つたので、ここに本件路線変更処分の取消を求める。

八  なお、都市計画法施行法(昭和四三年法律第一〇一号)三条一項の規定によれば、現に執行中の旧法の規定による都市計画事業はそれぞれ新法の規定による相当の都市計画とみなされ、新法の都市計画法(同年法律第一〇〇号)によれば、本件都市計画の変更処分は同法一五条一項三号、同法施行令九条二項一号により、被告がこれを定めることとなる結果、建設大臣がなした本件路線変更処分もまた被告がなした処分とみなされることになる。

九  よつて、原告は被告に対し、本件路線変更処分の取消を求める。

(被告)

本案前の抗弁

一  原告が本訴において取消を求める本件路線変更処分は、それ自体で直接の法律効果を生ずるものでなく、いわゆる一般的処分の性格を有するに過ぎないものであつて、特定の個人に直接向けられた具体的処分ではない。

右都市計画街路の路線決定ないしその変更処分は、いわば、建築工事の設計図のようなもので、その告示がなされても、それ自体がその事業地内の所有権その他の権利に対し直接具体的な効果を及ぼすものではない。このことは原告も自認しているところであり、後に土地区画整理組合により仮換地指定処分がなされても、その性質が変るものではない。

従つて、本件路線変更処分は抗告訴訟の対象となる処分とはいえず、また事業地内の土地所有者は本件路線変更処分により直接権利制限を受けるものではないからその取消を求める法律上の利益を有せず、原告適格を欠くものといわざるを得ない。

二  仮に、本件路線変更処分の取消訴訟が許されるとしても、本件訴えは出訴期間徒過後に提起されたものである。

本件路線変更処分は昭和四一年一二月二八日建設省告示第四一九六号をもつてなされたものであるが、原告は昭和四六年九月五日付で「西田川土地区画整理街路計画に関する要請書」を蒲郡市長に提出しているのであるから、遅くともこの時点において、これを了知していたことが明らかである。

してみれば、原告は本訴提起の三か月以前に本件路線変更処分を了知していたものであるのみならず、本訴提起は処分の日から九年近く経過した後になされたものであるから、いずれにせよ本件訴えは出訴期間を徒過した不適法なもので却下を免れない。

請求原因に関する認否

一  請求原因第一項は認める。

二  同第二項のうち、参加人会社が織物染色を業とする株式会社であり、原告がその代表取締役であることは認めるが、その余は不知。

三  同第三項は認める。

四  同第四項は認める。但し、(4)の蒲郡市告示第八九号とあるのは同第三九号である。

五  同第五項は認める。

六  同第六項は否認する。

(原告)

本案前の抗弁に対する反論

一  本件路線変更処分は、それがなされただけでいまだ直接に具体的権利義務関係を左右するものではないから、争訟の成熟性を欠くものとして、直ちに取消訴訟の対象とすることができない。しかし、訴外組合により、本件五井線の用地を確保し工事を施行することを前提として、原告に対し本件仮換地指定処分がなされた段階において、本件路線変更処分は、原告の権利関係を直接左右するに至つたものというべきであるから、争訟の成熟性・事件性を満たし、取消訴訟の対象となると解すべきである。

二  従つて、本訴の出訴期間については、本件路線変更処分が取消訴訟の対象としての処分性を具備したとき、すなわち本件においては、原告に対して本件仮換地指定処分がなされたときからこれを起算すべきである。もしこのように解さなければ、本件の如き道路計画によつて回復し難い被害を蒙る住民にとつて、その道路計画そのものの違法性について何時の段階においても全く争訟を提起しえないという不当な結果となるからである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  原告が別紙物件目録記載の従前の土地を所有していること、建設大臣が昭和四一年一二月二八日建設省告示第四一九六号をもつて本件五井線の路線変更決定(本件路線変更処分)をなし、これにより都市計画街路である本件五井線が右原告所有従前地を通ることになつたこと、訴外蒲郡西田川土地区画整理組合が右五井線の道路建設を前提として、昭和五〇年九月一九日付で原告に対し本件仮換地指定処分をなしたことは、当事者間に争いがない。そして、都市計画法施行法(昭和四三年法律第一〇一号)二条によれば、現に旧法の規定により決定されている都市計画は新法の規定による相当の都市計画とみなされ、新法の都市計画法(同年法律第一〇〇号)によれば、本件都市計画の変更処分は同法一五条一項三号、同法施行令九条二項一号により、被告蒲郡市がこれを定めることとなる結果、建設大臣がなした本件路線変更処分もまた被告がなした処分とみなされるものである。

二  ところで、取消訴訟の対象となる行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為とは、行政庁が行なう行為のうち、その行為によつて、国民の権利義務に対し直接具体的な変動を与えるものをいうと解するのが相当である。

原告がその取消を求める本件路線変更処分は、都市計画街路の路線変更決定であり、それは都市計画の内容の一部変更になるものである。このような都市施設に関する都市計画決定およびその変更決定は、爾後の都市計画事業の基礎を定めるに過ぎないものであつて、それ自体で国民に対し直接の法律効果を生ずるものではない。右のような都市計画街路を実現するためには、後に、所定の施行者によつて事業計画が定められ、続いてその施行に当つて必要があるときは、土地の収用、仮換地ないし換地処分等の措置がなされるのであり、右収用、仮換地ないし換地処分等の措置がなされることによつてはじめて国民の具体的権利義務に変動が生ずることになるのである。

従つて、本件路線変更処分は、取消訴訟の対象となるべき行政処分その他公権力の行使に当たる行為に該当しないものであるから、本件訴えは不適法であるといわなければならない、(最高裁・昭和五〇年八月六日判決、訟務月報二一巻一一号五四頁参照)

原告は、本件路線変更処分は、それがなされただけでは直ちに取消訴訟の対象とならないけれども、右都市計画街路実現のために訴外組合により本件仮換地指定処分がなされた段階においては、これにより原告の権利が侵害されるに至つたのであるから、争訟の成熟性・事件性を満たし、取消訴訟の対象となるべきである、もしこのように解さなければ、原告にとつて本件路線変更処分の違法性を主張する機会が奪われることになる、と主張する。

しかしながら、もともと取消訴訟の対象となりえない性質のものが、その後になされた他の処分により権利が侵害されるに至つたからといつて、取消訴訟の対象となりうるものに質的に変化するものではない。具体的な権利義務の変動は、後続の処分によつてはじめて生じたのであつて、従前なされた処分が変化した結果によるものということはできない。そして、このように本件路線変更処分が取消訴訟の対象にならないと解すれば、仮に同処分に違法事由が存するときは、都市計画街路の実現の一方法である本件仮換地処分にその違法性は承継され、右仮換地処分の取消訴訟においてその違法事由を主張しうるものと解するのが相当である。

結局、本件路線変更処分は訴外組合による仮換地指定処分がなされた段階において取消訴訟の対象となる処分性を備えるに至つたとの原告の主張は失当であり採用することができない。

三  よつて、本件訴えは不適法としてこれを却下し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決した。

(裁判官 藤井俊彦 窪田季夫 山川悦男)

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