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名古屋地方裁判所 昭和57年(行ウ)2号 判決

原告 小林明 外一四名

補助参加人 小室博文 外一五名

被告 澤木義光 外二名

主文

一  原告らの被告仙田明一、同亀井淳二に対する訴えを、却下する。

二  原告らの被告澤木義光に対する請求を、いずれも棄却する。

三  訴訟費用のうち参加によつて生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告ら

1  被告澤木義光は、扶桑町に対し、別紙物件目録(一)記載の土地につき昭和四五年四月一八日売買を原因とする名古屋法務局犬山出張所昭和五二年三月一四日受付第三四五〇号の、同目録(二)記載の土地につき同出張所同日受付第三四五一号の、同目録(三)記載の土地につき同出張所同日受付第三四五二号の、各所有権移転仮登記の抹消回復登記手続をせよ。

2  被告らは、扶桑町に対し、連帯して金一三一五万五〇〇〇円を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  被告ら

1  被告仙田明一、被告亀井淳二の本案前の申立て

(一) 被告仙田明一、被告亀井淳二に対する訴えを却下する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

2  被告らの本案の答弁

(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  原告らの請求原因

1  原告ら及び補助参加人らは扶桑町の住民である。

2  被告仙田明一(以下、単に「被告仙田」という。)は昭和四五年当時、被告亀井淳二(以下、単に「被告亀井」という。)は昭和五六年当時、いずれも扶桑町の町長の職にあつた者、被告澤木義光(以下、単に「被告澤木」という。)は昭和四五年当時、扶桑町の町会議員の職にあつた者である。

3  被告澤木は、昭和四五年四月一八日、扶桑町との間で、同人所有の別紙物件目録(一)ないし(三)記載の各土地(以下、「本件土地」という。)を同町に売り渡す旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)を締結し、同日、同町から代金四四二万五〇〇〇円を受領した。

4  扶桑町は、右売買を原因として、別紙物件目録(一)記載の土地につき名古屋法務局犬山出張所昭和五二年三月一四日受付第三四五〇号の、同目録(二)記載の土地につき同出張所同日受付第三四五一号の、同目録(三)記載の土地につき同出張所同日受付第三四五二号の、各所有権移転仮登記(以下、「本件各仮登記」という。)手続を了した。

5  しかるに、扶桑町は被告澤木との間で、昭和五六年三月二五日、本件売買契約を解除(以下、「本件解除」という。)し、同日、被告澤木から前記売買代金四四二万五〇〇〇円の返済を受け、本件土地につき、前記出張所同月二七日受付第四八七六ないし四八七八号をもつて、右解除を原因とする本件各仮登記の抹消登記手続を了した。

6  しかしながら、本件解除は、次の理由により違法、無効である。

(一) 本件解除が行われるに至つた経緯は次のとおりである。

すなわち、扶桑町は、愛知県道愛岐大橋線(以下、単に「愛岐大橋線」という。)の造成を円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷地の買収に伴う代替地を先行的に取得することとし、右代替地の一つとして、被告澤木から本件売買契約により本件土地を取得したものであるが、その後、被告澤木が扶桑町に対し、愛知県による扶桑町大字高木地内の愛岐大橋線の用地買収単価が決まつたら、その買収単価を基準に算定した本件土地の代金額と、同人が本件土地代金として既に受領している前記金員との差額分の追加払いをするように要求してきた。しかしながら、同町としては、被告澤木が受領した前記売買代金額は本件売買契約締結当時の本件土地の時価相当額であり、追加払いを認める特約条項も契約書面上規定されていないことなどからして、同人の右要求に応ずることは不可能であると判断したが、反面、同町が行政責任を負つている愛岐大橋線の事業の進捗について、決定的な力を持つ被告澤木の右追加払いの要求を単にはねつけることは得策ではないと考え、同人の無法な要求に対し、これを「政治的に判断」して、本件売買契約を解除することにしたのである。

このような経緯で、被告澤木の無法な、悪しき意図に屈服してなされた本件解除は、それが合意解除であるとしても、公序良俗に反し、民法九〇条により無効なものというべきである。

(二) 扶桑町は、本件売買契約により、本件土地の所有権を取得したものであり、本件土地は同町の公有財産となつた。このことは、扶桑町が被告澤木に対し、売買代金を支払つていること、本件土地が昭和四四年度の同町の決算書類の中に「公用地取得状況」名下に「高木地区・・・」として記載され、また、昭和四五年度の同町の財産調書の中に同町の「土地取得特別会計財産」として「愛岐大橋線公用地」名下に記載されていること、本件売買契約締結時から約七年後にわざわざ本件各仮登記手続が行われたことなどからも明らかである。

右のとおり、本件土地は、地方自治法二三七条一項、二三八条所定の扶桑町の公有財産であるから、同町は、同法二三七条二項の規定により条例又は議会の議決による場合でなければ、被告澤木に対し、適正な対価なくして所有権を復帰させることは許されないのである。同人が受領した代金額で本件売買契約を解除することは、対価の適正を著しく欠く公有財産の処分であり、右条項に違反する。したがつて、本件解除は、違法、無効である。

(三) 本件売買契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、私的解除を許さないものである。

愛岐大橋線は、扶桑町においても、本件土地の所在する高木、斉藤地区内を除いて、ほぼ完成、開通している県道であり、将来は国道となる重要道路である。愛岐大橋線の造成事業の進捗が遅れている主要な原因は、道路予定敷地の買収が容易に進まないからであり、進まないのは、右道路敷地の被買収者が代替地を要求するからである。そこで、右道路敷用地買収を円滑に進めるために、扶桑町が、右代替地(農地・畑)を先行取得することとし、その一つとして本件売買契約も締結されるに至つたのであり、その取得目的は、公共の利益を実現するためであつた。また、扶桑町は、公用若しくは公共用に供する土地又は、公共の利益のために取得する必要がある土地を予め取得することにより、事業の円滑な執行を図るため、扶桑町土地開発基金条例(昭和四四年一〇月六日、条例第五号)を制定し、同町土地開発基金を設置するとともに、右用地先行取得事業に係る歳入歳出を経理し、同町による土地の取得の円滑化を図るために、扶桑町土地取得特別会計条例(昭和四四年一〇月六日、条例第六号)を制定し、土地取得特別会計を設置しているのであるが、被告澤木に対して支払われた本件売買代金も、右基金及び右特別会計から支出されているのであり、この点からも、同町による本件土地の取得が、「公共の利益のために取得する必要のある」場合であることが明らかである。このように、本件土地は、公共的目的のために取得されたものであり、右公共的目的は、愛岐大橋線の造成が未だ進捗していない現状からすると、現時点においても存続しているものというべきである。この公共的目的性は、本件売買契約及びその解除を規制するものというべきであり、右公共的目的の喪失、変更がないのにされた本件解除は、違法、無効である。

7  仮に、本件解除が有効であり、本件土地の所有権が被告澤木に復帰したとしても、本件解除は前項記載のとおり違法なものであるから、原告らは、予備的に、被告らに対し、違法な本件解除により扶桑町が被つた損害の賠償を求める。

すなわち、右解除当時の本件土地の時価は一七五八万円を下ることはないから、右違法な解除により、扶桑町は、少なくとも、本件土地の右時価相当額と被告澤木が同町に返還した前記代金額四四二万五〇〇〇円との差額一三一五万五〇〇〇円の損害を被つたものであるところ、被告亀井は、右違法な本件解除がなされた当時の町長であり、被告澤木はその相手方であつて、いずれも本件解除の当事者であるから、同町が被つた右損害を賠償すべき義務がある。また、被告亀井は、本件売買契約につき、被告澤木が受領した前記代金を本件売買代金の内金であると力説し、この内金であることを本件解除の正当理由、根拠としてきたものであるが、これは、扶桑町が本件売買契約を締結した当時の町長であつた被告仙田の見解を踏襲したものであり、このような種類の売買契約を締結した被告仙田も右賠償の責任を免れ得ない。

したがつて、被告らは、連帯して、右損害を賠償すべき義務がある。

8  原告小林明、同小室美代子は、昭和五七年二月一日、扶桑町監査委員に対し、地方自治法二四二条一項に基づき、以上のような趣旨の監査請求をしたが、右監査委員は、同年三月二九日付で右原告らの請求に理由がないとする趣旨の監査結果を右原告らに通知した。

9  よつて、原告らは、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、扶桑町に代位して、主位的には、被告澤木に対し、同町に本件各仮登記の回復登記手続を行うことを、予備的には、被告らに対し、連帯して金一三一五万五〇〇〇円を同町に支払うべきことを求める。

二  被告仙田、同亀井の本案前の主張

1  被告仙田、同亀井に対する本訴請求は、原告らも自認するとおり、被告澤木に対する本件各仮登記の回復登記手続請求が効を奏せず、本件土地の所有権を扶桑町に復帰させることができなかつた場合の予備的な請求である。したがつて、被告仙田、同亀井に対する本件訴えは、主観的予備的併合の訴えとなるから、不適法であり、却下されるべきである。

2  原告らは、本件訴えを地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき提起しているが、同号によつて損害の賠償を求め得る相手方は、当該職員及びその行為の相手方である。しかるに、被告仙田は、右当該職員にも、また、右相手方にも該当しない。したがつて、被告仙田に対する訴えは、住民訴訟の要件を欠くものであり、却下されるべきである。

三  被告仙田、同亀井の本案前の主張に対する原告らの反論

主観的予備的併合の訴えが不適法とされる理由は、予備的被告とされた者が、不当に不安と不利益とを強いられるからである。それ故、諸般の事情により、請求が主観的予備的に併合されても被告が不当に不利益を受けず、不安定な立場に置かれてもやむを得ないと認められる場合には、右併合は許されると解すべきである。特に、本件訴訟の如く行政訴訟である住民訴訟の場合は、出訴期間の制限があり、主観的予備的請求の可否につき否定説を採つた場合には、結局において、原告らの救済の道を閉ざすことに帰し、原告らの不利益は耐え難いものになる。これに対し、被告亀井、同仙田は、本件の主位的請求の争点である本件解除行為に直接かかわつた当事者であり、最高責任者であつて、予備的被告とされても不当に不利益を受けるものとはいえない。

したがつて、本件主観的予備的併合の訴えは適法とされるべきである。

四  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1、2の各事実は認める。

2  請求原因3のうち、被告澤木と扶桑町との間の契約が単なる売買契約であつたこと、及び売買代金が四四二万五〇〇〇円であつたことを否認し、その余の事実は認める。

右契約は、売買予約契約ないし本件土地を代替地として希望する被買収者が現れ、かつ、農地法上の許可があることを条件とする売買契約であり、また、被告澤木が受領した金員は、売買代金の全額ではなく、その内金である。

3  請求原因4、5の各事実は認める。なお、同5のうち、本件解除は前項の趣旨、内容の契約の合意解除であり、被告澤木が扶桑町に返還した金員は、売買代金の前記内金である。

4  請求原因6の冒頭の主張は否認する。

同6(一)は、扶桑町が、愛岐大橋線の造成を円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷地の買収に伴う代替地を確保しておくために、前記の内容の契約を締結したことは認め、その余は否認する。

同6(二)は否認する。

同6(三)については、被告澤木はすべて不知ないし否認、被告亀井、同仙田は、原告ら主張の各条例が制定されたこと、本件売買代金の内金が右各条例により設置された基金及び特別会計から支出されたものであることは認め、その余は否認する。

5  請求原因7は否認する。

6  請求原因8は認める。

7  請求原因9は争う。

五  被告らの主張

1  本件売買契約について

被告澤木と扶桑町との間において、昭和四五年四月一八日、被告澤木所有の本件土地について売買に関する契約を締結したが、右売買は、将来、敷設される愛岐大橋線の用地買収に伴う代替地を扶桑町において予め確保しておき、愛知県が行う用地買収についての協力を扶桑町が求められた場合、その買収事務が円滑に行われることを目的になされたもので、扶桑町には本件土地を占有、使用する目的はなかつた。したがつて、右契約においては、売買代金は扶桑町大字高木地内(本件土地の所在地内)の愛岐大橋線の用地買収単価が決定したとき、その畑地の単価で算出した額を売買代金と決定すること、本件土地の所有権移転時期は所有権移転登記時とし、占有移転時期は愛岐大橋線の用地買収単価が決定し、右用地の被買収者が決定し、その被買収者が本件土地を買収土地の代替地として希望し、それが確定した時とすることが約されていたのである。右契約を解除した時点では、扶桑町は未だ本件土地の所有権移転登記を受けておらず、また、本件土地を代替地として引渡すべき相手方も決定していなかつたのであるから、右解除の時点では、本件土地の所有権も占有も、被告澤木にあり、扶桑町に移転していなかつたことは、右契約内容に照らし明らかである。

本件土地は、地目、現況ともに農地であるため、扶桑町といえども、省令で定められている場合を除くの外、農地を取得しようとするには農地法所定の愛知県知事の許可を必要とするが、本件の場合は、右許可手続はとられていないしその意思もなかつた。それは、前記のとおり、扶桑町が本件契約を締結した目的が、愛岐大橋線の用地の被買収者のための代替地を確保しておくことにあり、他に使用の目的はなく、所有権まで扶桑町に移転しておく必要がなかつたからである。その意味で本件土地についての右契約の法的性質は、本件土地を代替地として希望する被買収者が現れ、かつ、農地法の許可のあることを条件とする売買契約ないしは売買予約契約である。

また、扶桑町は、昭和四五年四月一八日、被告澤木に対し、金四四二万五〇〇〇円を支払つているが、右時点では、愛岐大橋線の用地買収単価が未だ決定されておらず、したがつて、本件土地の売買代金も確定していなかつたのであるから、右金員の支払いは、売買代金の内金として支払われたことも、右契約内容に照らし明らかである。

右金員の支払いは、扶桑町土地取得特別会計条例に基づく土地取得特別会計より支出されているが、本件土地の売買契約の目的は、あくまでも代替地の確保であり、扶桑町の公用若しくは公共用の土地として先行取得したものではない。

また、扶桑町は、右売買残代金について、町議会の右債務負担行為についての議決を得ていないが、右議決を得なかつた理由は次のとおりである。すなわち、扶桑町は、本件土地を代替地として希望する被買収者に対し、被告澤木との間の本件売買契約によつて決定された売買代金と同額で被買収者に本件土地を売却するので、同町が被告澤木に支払うべき残代金は、被買収者から(事実上は、愛知県から)同町が支払いを受ける売買代金によつて賄うことができ、事実上、扶桑町が債務を負担することにはならないことから、右債務負担行為の手続をとらなかつたのである。したがつて、債務負担行為の手続をとらなかつたからといつて、扶桑町が被告澤木に対し支払つた前記金員が、売買代金の全額であるとはいえない。

2  本件解除の適法性について

(一) 本件解除は、被告澤木と扶桑町と間の合意による解除であつて、何ら違法な点はない。

(二) 原告らは、本件解除が地方自治法二三七条二項に違反する旨主張するが、右主張は、次の理由により、失当である。

(1) 本件解除は、合意による契約の解除であつて、普通地方公共団体の所有に属する財産の譲渡に該当しないので、右条項は、本件解除には適用がない。

(2) 前記のとおり、本件売買契約により、扶桑町は、本件解除の時点において、本件土地の所有権を未だ取得していないのであるから、本件土地が同町の公有財産であることを前提とする原告らの主張は理由がない。

(三) 原告らは、本件売買契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、右公共目的の喪失、変更がないのにされた本件解除(私的な合意解除)は違法、無効である旨主張する。しかしながら、右主張も、次の理由により失当である。

(1) 原告ら主張の公共的目的性の故に私的な解除が制限されるとする根拠はない。

(2) 前記のとおり、本件土地は扶桑町自身が公用若しくは公共用の土地として利用するために先行取得したものではないし、その目的からすれば、もともと、本件土地の所有権を扶桑町が取得するまでの必要性もなかつたものである。また、本件解除の条件として、被告澤木は、解除後においても、本件売買契約の趣旨を尊重し、必要あるときは本件土地を愛岐大橋線の代替用地として提供しなければならないことになつているのであるから、本件解除は、何ら右公共目的性に反しない。

(三) 前記のとおり、本件売買契約によれば、被買収者において本件土地を被買収地の代替地として希望したときに、扶桑町は愛知県の用地買収単価でもつて本件売買代金額を確定し、同町は右代金を被告澤木に支払つて本件土地の所有権を取得し、同額の売買代金でもつて被買収者に対し本件土地を売却しなければならないことになつているのであるから、右各売買契約によつて、同町は一銭の利得も得られないのである。したがつて、扶桑町としては、既払の前記内金全額の返済を受けて合意解除しても、何ら損失を受けたものとはいえない。

六  被告らの主張に対する原告らの認否

被告らの主張1は、本件売買契約締結の目的が被告ら主張のとおりであること及び本件売買代金の支払いが土地取得特別会計によりなされたことは認め、その余は否認ないし争う。

被告らの主張2は、本件解除が合意による解除であることは認め、その余は否認ないし争う。

第三証拠関係〈省略〉

理由

一  被告仙田、同亀井の本案前の申立てについて

原告らの被告仙田、同亀井に対する請求は、被告澤木に対する請求との関係で予備的なものであつて、本訴は、いわゆる訴えの主観的予備的併合であることは、原告らの自認するところである。

民事訴訟においては、右主観的予備的併合は、予備的請求の被告とされる者が応訴上、著しく不安定、不利益な地位に置かれ、原告の保護に偏することになることから不適法と解するのが相当であり(最高裁判所昭和四三年三月八日第二小法廷判決、民集二二巻三号五五一頁)、行政訴訟においても、右主観的予備的併合は、主位的請求の被告と予備的請求の被告とが国等の行政主体とその行政庁というような実質的に一体とみることができるような関係にある場合には、例外的にこれが許容される余地があるとしても、そうでない限り、不適法と解すべきところ、本件においては、主位的請求の被告澤木は、本件売買契約及び本件解除の相手方であり、予備的請求の被告仙田は本件売買契約当時の、同亀井は、本件解除当時の、いずれも扶桑町の町長個人であつて、当事者の実質的同一性を肯定する余地のない事案であるから、行政訴訟において例外的に主観的予備的併合が許される場合に当たらないことは明らかである。

この点につき、原告らは、本件訴訟の如き住民訴訟においては出訴期間の制限があり、主観的予備的請求の可否につき否定説を採つた場合には、結局において、原告らの救済の道を閉ざすことに帰し、原告らの不利益は耐え難いものになるのに対し、被告亀井、同仙田は、本件の主位的請求の争点である本件解除行為に直接かかわつた当事者であり、最高責任者であつて、予備的被告とされても不当に不利益を受けるものではないから、本件主観的予備的併合の訴えは適法と解すべきである旨主張する。

しかしながら、本件主位的請求と予備的請求は、相互にいずれか一方の請求の判断を待たなければ、他方の請求の判断をなし得ないといつた関係にはなく、同時、かつ、別個に判断することが可能な請求であるから、このような関係にある右各請求を出訴期間内に別訴として提起することを原告らに要求したとしても、原告らに対し、その救済の道を閉ざし、耐え難い不利益を強いるものとはいい難い、また、被告仙田、同亀井が本件解除行為にかかわつた当事者であり、最高責任者であつたとしても、右両名が本件予備的請求の被告とされることによつて、応訴上の不利益を受けることは明らかであり、また、右不利益を受忍しなければならないとする理由はない。

したがつて、原告らの右主張も理由がなく、結局、被告仙田、同亀井に対する本件予備的請求は不適法というべきであつて、これを却下せざるを得ない(なお、付言するに、仮に本件において主観的予備的請求が許容される余地があるとしても、後記認定の事実関係からすれば、右請求が理由のないことは明らかである。)。

二  被告澤木に対する請求について

1  請求原因1、2、4、5の各事実及び同6のうち、扶桑町が愛岐大橋線の造成を円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷地の買収に伴う代替地を確保しておくために、被告澤木との間で、昭和四五年四月一八日、本件土地の売渡しに関する契約(以下、「本件契約」という。)を締結した事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、まず、扶桑町と被告澤木との間で締結された本件契約の内容について、以下、検討する(請求原因3)。

成立に争いのない甲第五号証、同第六号証の一、二、同第七号証の一ないし三及び被告仙田明一、同亀井淳二各本人尋問の結果並びに前記争いのない事実によれば、以下の事実が認められる。

当時、扶桑町の町長であつた被告仙田は、将来、愛知県が行う県道愛岐大橋線敷設のための用地買収に協力し、これが円滑に行われることを目的として、右用地買収に伴う代替地(農地)を扶桑町において予め確保しておくため、昭和四五年四月一八日、本件土地(地目、現況ともに農地であつた。)の所有者である被告澤木との間で、本件土地の売買に関する本件契約を締結した。本件契約においては、扶桑町は、被告澤木から同人所有の本件土地を、将来愛知県が扶桑町大字高木地内の愛岐大橋線の用地買収単価を決定したとき、その畑地の単価で算出した額をもつて本件土地の売買代金とし、右単価が決定され次第、被告澤木の請求により、扶桑町が右代金を支払うとの条件により買受けること、本件土地の占有移転時期は、愛知県による愛岐大橋線の用地買収が行われ、右用地の被買収者が本件土地を買収土地の代替地として希望し、扶桑町が右被買収者に本件土地を引渡すことを決定した時点とし、本件土地の所有権移転登記手続がなされる前の公租公課その他の支出は被告澤木の負担とすること等が約された。

扶桑町は、本件契約を締結したその当日である昭和四五年四月一八日に、被告澤木の請求に応じて、同人に対し、本件契約に関して合計金四四二万五〇〇〇円を支払つたが、当時、本件契約の当事者である被告仙田、同澤木は、右記載の本件契約の内容からして、右金員は本件土地の代金の全額ではなく、その内金であると考えており、前記の愛知県による用地買収単価が将来決定した時点で、その畑地の単価で算出した本件土地の価額と、被告澤木が既に受領している右金額との差額に相当する金員の追加支払いが被告澤木に対し行われる予定であつた(右支払額は本件契約当時の本件土地の時価にほぼ近い金額であつたが、当時、愛知県による愛岐大橋線敷設のための用地買収が、その一、二年後に行われるものと関係者の間で予想されており、右用地買収単価により算出する本件土地の価額の方が右支払額を幾分上廻ることが見込まれていた。)。

本件契約の内容が右のようなものであり、扶桑町が被告澤木から本件土地を代替地として取得するためには、代金の追加支払いが予定されていたのであるが、当時の同町長であつた被告仙田は、次のような見解から、予算上、右契約内容に即した同町議会の議決を経なかつた。すなわち、扶桑町が本件契約を締結した目的は前記のとおり、愛知県の用地買収に協力するためなのであるから、同町としては、本件土地の所有権を確定的に取得する必要はなく、右用地買収の過程で、被買収者が本件土地を代替地として希望した段階で、愛知県に直接、被告澤木から本件土地を前記買収単価で買い上げてもらう方法、あるいは、右被買収者と被告澤木との間で、本件土地につき、右買収単価で算出した売買代金額で、直接、売買契約を締結する方法により、右代替地提供の目的を果たすことが予定されているのであり、右のいずれの場合であつても、被告澤木は、愛知県ないし右被買収者から、本件契約で定めた前記買収単価で算出した本件土地の代金を受領することができ、その場合に、扶桑町としては、実質的にみて、何らの追加支出をする必要がなく、右代金の中から同町が被告澤木に対し支払つた金額を回収することができるのであるから、前記議決を経るまでの必要はないと、被告仙田は考えていた。

本件土地の登記名義は、本件契約締結後も、被告澤木名義のままであつたが、昭和五二年になつても、愛知県による用地買収の目処がつかなかつたので、扶桑町は、権利保全の目的から、昭和五二年三月一四日、本件土地につき、原因を「昭和四五年四月一八日売買」とする本件各仮登記手続を了した。被告澤木は、本件契約締結後も、本件土地の占有を継続し、その公租、公課も同人が負担した。

以上の事実が認められ、原告小林明の供述中、右認定に反する部分は採用し難い。

右認定の事実関係によれば、本件契約は、その締結当時、売買契約の重要な要素である売買代金額が具体的な金額でもつて特定しておらず、右代金額は、将来、行われる予定の愛知県による用地買収の際の単価を基準に算出するものとされていたこと、扶桑町としては、愛知県による用地買収に協力し、その代替地を確保しておくために本件契約を締結したのであるが、その場合に、予め本件土地の所有権を確定的に取得しておく必要はなかつたこと、本件契約締結後も、本件土地の登記名義は被告澤木名義のままであり、被告澤木が本件土地の占有を継続し、その公租、公課も本件契約の内容どおり、同人が負担したこと、本件土地は地目、現況とも農地であるが、農地について所有権を移動する場合には、原則として、売買契約等の成立前に都道府県知事ないし農業委員会の許可を受けなければならず(農地法三条、五条)、許可のない限り、売買契約等は完全には効力を生ぜず(同法三条四項、五条二項)、その所有権は買主に移転しないと解されているところ、本件契約締結の際に、右許可申請手続が行われた形跡はなく、また、本件は右許可を要しない場合に該当しないことなどが明らかであり、これらの事実を総合すれば、本件契約の締結によつては、本件土地の所有権は扶桑町に移転せず、右所有権は依然として被告澤木の許にあること、及び本件契約締結の当日に被告澤木が同町から受領した前記金員は、本件土地代金の全額ではなく、その内金であつたことが認められる。

この点に関し、原告らは、本件土地の所有権は、本件契約により扶桑町に移転したものであり、右契約時に被告澤木が受領した金員は、本件土地の売買代金の全額である旨主張し、〈1〉被告澤木が受領した右金員は、本件契約当時における本件土地の時価相当額であること、〈2〉本件契約において、内金払いを許容するような条項はないこと、〈3〉代金の追加支払いが本件契約上予定されているのであれば、予算上、右債務負担行為についての町議会の議決が必要であるのに、これがなされていないこと、〈4〉被告澤木に対する右金員の支払いが内金の支払いであるとすれば、これを前金払いないし概算払いと解さざるを得ないが、地方自治法、同法施行令上、本件のような場合にこれを許容する規定はないこと、〈5〉同町が農地の所有権を取得し、所有権移転登記手続を行つた例があること等を右主張の根拠としている。

しかしながら、右〈1〉、〈2〉の点についてみると、前記認定のとおり、被告澤木の受領した金員が、本件契約当時における本件土地の時価にほぼ近い金額であつたこと及び本件契約上、扶桑町が代金確定前に内金払いの義務を負担するような条項は存在しなかつたことは、原告ら指摘のとおりであるけれども、本件契約の内容は前記のとおりであり、右金員の支払いは、本件契約締結の当日に行われたものであつて、その際、被告澤木と扶桑町との間で、本件契約内容を修正し、右金員の支払いをもつて、本件土地の売買代金全額の支払いとする旨の特段の合意が成立したものとは、前記認定の事実関係に照らし、認め難いものである以上、右〈1〉、〈2〉の点から、原告らの右主張を認めることはできない。次に、右〈3〉、〈4〉の点についてみると、地方自治法上、普通地方公共団体が売買代金等を支払う場合には、支払うべき義務が確定した後に支払いをするのが原則であり(同法二三二条の四第二項)、普通地方公共団体が支払うべき債務金額の確定前に概算をもつて支出する、いわゆる概算払いは、一定の場合に例外的に許容されていること(同法施行令一六二条)、また、債務金額が確定している場合に行われる前金払いも、一定の場合に許容されているにすぎないこと(同法施行令一六三条)、本件において、扶桑町が被告澤木に対してした前記金員の支払いは、同法施行令が右概算払いないし前金払いを許容している場合に該当しないこと、代金の追加支払いが本件契約上予定されているのであれば、予算上、右債務負担行為についての町議会の議決が必要であるのに、これがなされていないことはいずれも原告らの指摘するとおりである。したがつて、当時の町長であつた被告仙田が、本件契約締結の当日、被告澤木の請求に応じ、前記金員の支出命令を発し、これを支出するに至つたことは、前記認定のとおり、右時点においては、本件契約上、代金額(債務金額)が未だ不確定であつたのであるから、公金支出についての右関係法令に違反した疑いのある取扱いであつたといわざるを得ない(被告仙田も、この点を十分検討しないで右金員を支出したことを自認する旨の供述をしている。)。しかしながら、被告仙田のした前記金員の支出が、関係法令に違反した疑いがあるとしても、本件契約の内容が前記のとおりである以上、そのことから、右金員が本件土地代金の全額であると推認することができないのは当然である。また、その当否はともかくとして、被告仙田が、右代金の追加支払いに関し、予算上、町議会の議決を経なくてもよいと考えていたことは前記認定のとおりであるから、右議決のないことから、原告主張事実を推認することもできない。更に、右〈5〉の点についてみると、成立に争いのない甲第二一ないし三二号証、同第三七、三八号証によれば、扶桑町が、その地目が農地である土地について、所有権移転登記手続を了している事実が認められるものの、右土地が、本件土地と同様、扶桑町が愛岐大橋線の用地買収に伴う代替用地として確保したものであることを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、成立に争いのない丙第一号証の一、三、同第二号証の二、同第三、第五号証の各一、書き込み部分については弁論の全趣旨により被告澤木が作成したものと認められ、その余の部分の成立については争いのない丙第一号証の二、同第二号証の一、同第三号証の二、同第四号証の一、同第五号証の二、原告小林明本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により、被告澤木が、昭和六〇年頃、扶桑町大字高雄字中海道六八の土地の状況を撮影した写真であると認められる丙第三号証の三、同じく同町大字高雄字堂子八一の一の土地の状況を撮影した写真であると認められる丙第四号証の二、同じく同町大字南山名字馬場一〇八及び同一〇九の一の各土地付近の状況を撮影した写真であると認められる丙第五号証の三、四及び右原告小林明本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、扶桑町が、その地目が農地の土地について、同町への所有権移転登記手続を了している事例は、いずれも、同町が当該土地を同町の上水水源地であるとか、児童遊園地等の同町自身の利用目的(公用若しくは公共用)のために取得したものであることが認められ、したがつて、農地法五条の許可が、例外的に不要とされる場合(同条一項四号、同法施行規則七条六号)に該当することが窺えること、また、成立に争いのない甲第九号証の一、同第一九号証の一、二、同第二〇号証の一ないし三、同第三六号証によれば、本件土地と同様、扶桑町が愛岐大橋線の用地買収に伴う代替用地として確保した土地については、いずれも、同町の登記名義にはなつていないことが認められる。したがつて、右〈5〉の点から、原告主張事実を肯認することもできない。

してみると、原告の右主張は、採用できないものといわざるを得ない。

3  次に、本件解除の適否について以下、検討する(請求原因6)。

前記のとおり、扶桑町は被告澤木との間で、昭和五六年三月二五日、本件契約を解除し、同日、被告澤木から、同人が受領していた代金四四二万五〇〇〇円の返済を受け、本件土地につき、名古屋法務局犬山出張所同月二七日受付第四八七六ないし四八七八号をもつて、右解除を原因とする本件各仮登記の抹消登記手続を了したことは当事者間に争いがない。

また、成立に争いのない乙第二号証及び被告亀井淳二本人尋問の結果によれば、本件解除当時の町長であつた、被告亀井は、本件契約締結後、一〇年以上経過したのに、愛岐大橋線が着工の運びとならず、用地買収も行われず、本件土地が買収用地の代替地となる目処も立たないことから、この際、本件契約を解除し、被告澤木に対し、本件契約代金の内金として支払つた前記金員(四四二万五〇〇〇円)の返還を求めることとし、被告澤木と話し合つた上で、昭和五六年三月二五日、本件契約を合意解除したこと、その際、被告澤木は扶桑町に対し、同人が本件契約の趣旨を尊重し、本件解除後においても、本件土地を愛岐大橋線の代替用地として提供し、愛知県による用地買収単価により算出した金額で買収に応じ、今後も、愛岐大橋線の速やかな開通に積極的に協力する旨を約したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

原告らは本件解除が違法、無効であるとし、その理由として、まず、扶桑町は本件売買契約により被告澤木から本件土地の所有権を取得したものであり、本件土地は同町の公有財産となつたものであるのに、同人が受領した代金額と同額で本件契約を解除することは、対価の適正を著しく欠く公有財産の処分であり、地方自治法二三七条二項に違反する旨主張する(請求原因6(二))。しかしながら、前記認定のとおり、本件契約の締結によつては、本件土地の所有権は扶桑町に移転せず、右所有権は依然として被告澤木の許にあつたのであり、本件土地が同町の所有に属し、公有財産になつたことを認めるに足りる証拠はないから、原告らの右主張は、その前提を欠くものというべく、したがつて、本件解除が右条項に違反すると解する余地はない。

次に、原告らは、本件解除が被告澤木の無法な、悪しき意図に屈服してなされたものであり、公序良俗に反し、民法九〇条により無効である旨主張する(請求原因6(一))。しかしながら、原告ら主張のような経緯、目的で本件解除がなされるに至つたとの事実を認めるに足りる証拠はない上、仮に、原告ら主張のように、被告澤木が扶桑町に対し、愛知県による同町大字高木地内の愛岐大橋線の用地買収単価が決まつたら、その買収単価を基準に算定した本件土地の代金額と、同人が既に受領している前記金員との差額分の追加払いをするように要求したとしても、本件契約内容が前記のようなものである以上、これをもつて無法な要求であるとはいい難く、同町が右要求に対し、本件解除をもつて応じたとしても、左記の諸点を考慮すると、何ら公序良俗に違反する点はないものといわざるを得ない。すなわち、〈1〉もともと扶桑町が本件契約を締結した目的は、前記のとおり、愛知県が行う愛岐大橋線敷設のための用地買収に協力し、これが円滑に行われるようにするためだつたのであるから、右目的からして、扶桑町が本件土地の所有権を確定的に取得するまでの必要性はなかつたこと、〈2〉本件契約締結時から一〇年以上経過した本件解除時においても、愛岐大橋線の着工、用地買収の目処は立つておらず、したがつて、その時点で本件契約所定の代金額が確定する見込みはなかつたこと、〈3〉前記のとおり、扶桑町が被告澤木に対してした前記金員の支払いは、本件契約内容からすれば債務金額確定前かつ支払期限到来前の公金支出であり、違法の疑いのあるものであつたが、これを、長期間にわたつてそのまま放置することは、適当ではないこと、〈4〉本件契約内容からすると、前記のとおり、扶桑町が被告澤木に対してした前記金員の支払いをもつて、本件土地代金全額の支払いであるとして、同町が同人に対し、本件土地の所有権が同町に移転していると主張することはできないものと解され、同町が右所有権を確定的に取得するためには、本件契約上、愛知県による用地買収単価が決定した時点で、これにより算定した本件土地代金額と前記金員との差額分の追加支払いをしなければならないことになるが、右追加支払いについては、本件契約締結の際、右債務負担行為について、予算上、町議会の議決を経ていないので、これを行うことは、更に違法な公金支出を重ねることになり、許されないこと、〈5〉本件契約上、扶桑町が前記金員の支払いにより本件土地の所有権を取得したものとは解し得ない以上、これを解除しても、同町には本件解除それ自体による損害は何ら生じないこと、すなわち、扶桑町は本件契約縞結の際、被告澤木に対し、本件土地の時価にほぼ近い金額を支出しておきながら、それ以降も同人に本件土地を占有させ、一〇年以上経過した時点で、本件契約を解除し、同人に対し、右支出金員のみの返還を求めることは、これを全体的にみると、扶桑町が損害を被つたものとみ得る余地があるが、それは、扶桑町が本件土地の時価にほぼ近い金額を支払つておきながら、右金員の支払いによつては、直ちに本件土地の所有権が同町に移転しない旨の本件契約を締結したこと及び当時の町長であつた被告仙田が、近々のうちに右金員を回収できると即断して、代金額(債務金額)確定前かつ支払期限到来前に右金員を支出したことにその原因があるのであり、本件解除によつて損害が生じたものとはいえないこと、〈6〉本件解除の際、扶桑町は被告澤木に対し、本件解除後においても、本件契約の趣旨を尊重して本件土地を愛岐大橋線の代替用地として提供することを約束させていること等の諸点を考え併せると、本件解除には、原告ら主張の違法の点はないものというべきである。

更に、原告らは、本件契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、右公共的目的性は私的解除を規制するものというべきであるから、右公共的目的の喪失、変更がないのにされた本件解除は違法、無効である旨主張する(請求原因6(三))。しかしながら、一般に、普通地方公共団体が契約を締結するに至つた、その公共的目的の喪失、変更がない場合に、当該契約の合意解除をすることが許されず、その場合になされた当該合意解除が違法、無効となるとの法理はない(地方自治法上、このような法理を窺わせるような規定は見当たらない。)上、前記の諸点に鑑みると、本件解除は、何ら公共的目的に反しないものとみるのが相当である。

してみると、本件解除につき、原告らの主張する違法事由は、いずれも、その理由がないことは明らかである。

また、右認定、説示してきたところによれば、本件解除が違法であることを前提とする原告らの本件予備的主張(請求原因7)もその理由がないことが明らかである。

三  以上の次第であり、原告らの被告仙田、同亀井に対する訴えは不適法であるから、これを却下し、被告澤木に対する請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文、九四条後段を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋利文 加藤幸雄 森脇淳一)

物件目録

(一) 丹羽郡扶桑町大字高木字白山前三〇三番

畑 一五八平方メートル

(二) 右同所三〇四番

畑 一六一平方メートル

(三) 右同所三〇五番

畑 三七六平方メートル

右(一)ないし(三)の各土地に対する一時利用地

高木斉藤柏森工区仮地番三三一の三

畑 五八六平方メートル

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