大判例

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名古屋家庭裁判所 平成5年(少)A990号 決定

少年 Y・Y(昭和51.11.8生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、

1  Aほか友好関係にある暴走族構成員約200名と共謀の上、自己の運転する自動二輪車(○○×××××)をはじめ他の構成員らの運転する自動二輪車約90台及び普通乗用自動車数台を連ね、又は並進して、

(1)  平成5年1月2日午後0時29分ころ、名古屋市中村区○○×丁目×番×号先の信号機により交通整理の行われている通称○△交差点において、対面信号機の表示する赤色信号を無視して○○町方面から○○方面に向かって時速30キロメートルで北進直進したため、折から青色信号に従って○○方面から○○方面に向かって普通乗用自動車(車両番号○○××○××××)を運転して西進直進しようとしたB(当時19歳)に衝突の危険を与えてその進路を妨害し、同人をして交差点内に停止を余儀なくさせ、もって共同して著しく道路における交通の危険を生じさせるとともに著しく他人に迷惑を及ぼす行為をした。

(2)  同日午後0時37分ころ、名古屋市中区○×丁目××番××号先の信号機により交通整理の行われている通称△△交差点において、対面信号機の表示する赤色信号を無視して○○線方面から○○方面に向かって時速約20キロメートルで右折北進したため、折から青色信号に従って○○方面から○○方面に向かって普通乗用自動車(車両番号○○××○××××)を運転して直進北進しようとしたC(当時19歳)に衝突の危険を与えてその進路を妨害し、交差点内に停止を余儀なくさせ、もって共同して著しく道路における交通の危険を生じさせるとともに著しく他人に迷惑を及ぼす行為をした

2  公安委員会の運転免許を受けないで、上記1(1)記載の日時場所において、上記自動二輪車を運転した。

3  平成5年2月11日午後3時ころ、愛知県丹羽郡○○町○○×丁目××番地○○店自転車置き場において、D所有の軽快自転車(防犯登録××○×××××号)1台時価1万5000円相当を窃取した

ものである。

(法令の適用)

共同危険行為につき、道路交通法118条1項3号の2、 68条

無免許運転につき、道路交通法118条1項1号、 64条

窃盗につき、刑法235条

(処遇の理由)

1  本件非行は、少年が加入していた「○○」ほか多数の暴走族が正月の昼間に名古屋市内の繁華街を集団暴走した大胆で危険な事案と自転車盗の2件である。少年には、平成4年9月2日占有離脱物横領、道路交通法違反にて審判不開始(保護的措置)といった非行歴がある。

少年は、小学校時代は野球や陸上で活躍していたが、中学3年生ころから不良交友が目立つようになった。中学卒業後は、この2月ころまでは仕事に就いていたが、不況で仕事がなくなり、現在はアルバイト程度の仕事に就いている。ところで、少年は、無免許運転及び暴走行為は悪いことと知りながら、これまで発覚しなかったことから少年自身は捕まらないと思い込み、これまで繰り返してきたという。今回、本件非行により、逮捕、勾留に代わる措置、みなし観護措置といった一連の身柄拘束措置を受けたにもかかわらず、内省は十分できておらず、自力更生に前向きな姿勢は認められない。

2  名古屋少年鑑別所長作成の平成5年4月22日付け鑑別結果通知書によれば、少年の知的能力は普通(IQ=100)である。性格は、楽天的で物事を安易に考えすぎ即行性が強い。心理的負担を感ずる場面では従順に振る舞うこともあるが、内心では反抗的な気持ちがあり、自分の行動を規制されることを極端に嫌う。刹那的な快楽追求傾向が強いという。

父母は、健在であるが、祖父母の初孫ということもあり、甘やかして養育してきた。少年が問題行動、とりわけ無免許なのに自動二輪車を購入して乗車していた際には再三にわたり注意を与えてきたというが、実効ある指導はできない。家庭の監護能力は脆弱というべきであり、今後も少年を十分に監護できるとはいいがたい。

3  そこで、処遇について検討する。少年がこれまで保護処分歴を受けたことがなく、身柄拘束を受けたこともないことを考慮するときは、一度だけ在宅処遇の機会を与えることも考えられるところである。しかしながら、本件非行の悪質な態様、内省の深まらない少年の性格、監護力の弱い家庭環境等の事情に鑑みるならば、少年の再非行の可能性は極めて高いと認めざるを得ず、在宅処遇での自力更生は困難であると考える。したがって、この際矯正施設に収容して自己の問題点について内省させるとともに不良交友に左右されない自律心を身につけさせる必要がある。

ただし、非行が主として交通事犯に限定されつつあること、保護処分歴がないこと、知的能力に問題もなく、ある程度自律的な行動がとれることから、上記処遇は特修短期処遇課程での短期集中的な開放的処遇にて達成できると考えられるから、その旨勧告する。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 杉浦徳宏)

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