大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和62年(く)24号 決定

少年 T・H(昭44.7.1生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年名義の抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用するが、その要旨は、原決定は、少年をまず医療少年院に送致し、疾病が治癒した後に中等少年院(交通短期処遇)に送致するというものであるところ、これでは医療少年院において交通短期処遇を受けられず、期間を限らず疾病が治癒するまで医療少年院に収容された後、改めて中等少年院へ送致されることとなつて、実質的には長期処遇の決定と異ならず、処分が重きに失して著しく不当であるから、その取消しを求める、というのである。

よつて検討するに、原決定及び記録によれば、少年は道路交通法違反(共同危険行為)により、保護観察処分に付されながら、本件各非行(無免許運転、業務上過失傷害、救護・報告義務違反)に及んだものであつて、原決定はその処遇として中等少年院(交通短期処遇)送致を相当と判断しながらも、鑑別の結果、少年が梅毒に罹患していることが判明したので、その治療のため、まず医療少年院に送致する旨の決定をしたことが明らかである。そして、そのような場合には、家庭裁判所としては、医療少年院送致決定をするとともに、医療措置の終了後は中等少年院(交通短期処遇)へ移送するのが相当である旨処遇勧告意見を付するか、あるいは、中等少年院(交通短期処遇)送致決定をするとともに疾病治療のため医療少年院へ移送するのが相当である旨の処遇勧告意見を付すべきものである。ところが、原決定は、「少年を先ず医療少年院に、疾病治癒後中等少年院(交通短期処遇)に送致する。」との主文を言い渡しており、このうち、中等少年院送致決定は、その執行を、疾病の治癒か疾病が進行しなくなつたときという不確実な期限の到来にかからしめている点で、無効なものといわざるを得ない。もつとも、右決定主文の趣旨は、前示のとおり、少年の本来的処遇としては中等少年院(交通短期処遇)へ送致すべきところ、治療の必要上医療少年院へ送致するというものであることが明らかであるから、原決定主文中「中等少年院(交通短期処遇)へ送致する」との部分は、少年院送致決定としては無効であつても、その趣旨の処遇勧告意見としての意味を持つと解することができる。

これを要するに、原決定は、その一部に少年院送致決定としては無効な部分を含み、相当ではないけれども、その有する効力は、医療少年院へ送致する旨の決定に、医療措置終了後は中等少年院(交通短期処遇)へ移送するのが相当である旨の処遇勧告意見が付されたものと同視することができ、したがつて、医療少年院の処遇として交通短期処遇に準じた処遇を許さない趣旨のものではないし、医療少年院における処遇を通じて、交通短期処遇に相当する成果を収めたときにも、更に中等少年院へ送致しなければならないとの効力を有するものでもないから、所論は、結局においてその前提を欠くものであり、また、原決定の趣旨を右のように解することができる以上、その処分は相当というべきであつて、これが著しく不当であるとは認められない。論旨は理由がない。

よつて、少年法33条1項、少年審判規則50条により、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 杉浦龍二郎 裁判官 井垣敏生 小西秀宜)

〔参考1〕 抗告申立書

抗告申立書

少年 T・H 昭和44年7月1日生

上記の者に対する業務上過失傷害・道路交通法違反保護事件について、昭和62年10月20日福井家庭裁判所から医療少年院送致の決定を受けましたが、下記理由により不服につき抗告を申立ます。

昭和62年10月27日

抗告申立人 T・H

名古屋高等裁判所御中

理由

去る、10月20日に、自分は、福井家庭裁判所において、少年院送致の決定がありました。

処遇内容は、交通短期処遇という、処遇でした。交通短期処遇という処遇は、先生方に聞いた所、通常約4ヶ月間ぐらいで、仮退院出来るものだと聞きました。本来ならば、自分は愛知県にある豊ケ岡農工学院で、生活するのですが、現在自分は病気にかかっており家庭裁判所で、京都医療少年院送致となったわけです。自分はこの決定にっいては不満はありません。

それは、この医療少年院の中で、交通短期処遇として生活して行くのだろうと思っていたからです。しかし、先ほど、院の先生から説明があり、院の先生が、電話で福井家庭裁判所で、問い合わせた所、自分の思っていた内容とは違っており、自分の病気が、進行しなくなるか又は治って、医療少年院での、治療の必要がないと判断されてから、交通短期処遇の少年院へ移送されなければならないと聞きました。

ぼくが、抗告する理由は、そこにあります。ぼくが受けた処遇内容は、交通短期と言う処遇なのに、これでは長期処遇の決定と変わらない決定になってしまうからです。ぼくが言いたいのは、この医療少年院の中で、交通短期処遇の処遇では、なぜ、ダメなのかと言うところです。

それと、少年院に入院している期間のことですが、病気の治療の必要が、なくなるまで医療少年院に、いなければならないということは、いくら自分が、一生懸命勉強しても、出院する日が全くわからないということです。お医者さんも、四ヶ月ぐらいは、薬を飲みつづけなければいけないといいましたが、いつ治るという事は、はっきりとは聞いていません。これでは、いくら自分ががんばって勉強をして成績がよくても、二十歳まで出院できないと言う可能性もあります。

それでは、とても長すぎると思いますので、抗告します。

〔参考2〕 原審(福井家 昭62(少)3355号 昭62.10.20決定)〈省略〉

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