大判例

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大津地方裁判所 昭和34年(む)40号 判決

申立人 浜田博 外一名

決  定

(被疑者・申立人氏名略)

右の者から被疑者黒田篤太郎に対する収賄被疑事件につき大津地方裁判所裁判官古川秀雄が昭和三十四年二月十九日になした接見等禁止決定に対し準抗告の申立があつたから左の通り決定する。

主文

原決定中「物の授受を禁ずる」とある部分を「臥具、衣類、チリ紙その他これに類する日常必需品を除くその余の物の授受を禁ずる」と変更する。

その余の申立はこれを棄却する。

理由

本件準抗告の申立の趣旨及び理由は申立人提出の申立書記載の通りであるからこれを引用する。

一件記録に徴すると本件被疑者の刑訴第三九条第一項所定の者以外の者との接見並に書類の授受により罪証隠滅を疑うに足る事態の発生する相当な理由あるものと認めることができるからこれの防止のため接見並に書類の授受を禁止した原決定は相当である。刑務官或は警察官の立会又は検閲は罪証隠滅の可能性を滅殺するものであつても、これを絶無とするものではないから右禁止は理由ないものではない。

物の授受は前二者に比較すると、確かに、罪証隠滅の可能性の少いものであろう。しかしこれも程度の問題であつて、従つてその無制限な授受は到底これを是認することはできない。尤も弁護人指摘の臥具、衣類、チリ紙その他日常必需品等は監獄法規に基き現に支給せられているのであつて、格別に外部よりこれを補給しなければ、被勾留者に対し拘束による当然の不便の域を超えて徒らに苦痛を与えるものとは解することはできないのであるが、被勾留者自身或はその家族その他において、特に授受を希望するにおいては、法規の許す範囲においてその授受を認めても、本件の場合、罪証隠滅の結果を来すものとも認め難いから結局この範囲において本件申立は理由あるものと認めこの点に関する原決定を取消しこれが授受を許すを相当と認め、その余の点はこれを理由なきものとして棄却することとし、仍て刑訴第四三二条第四二六条により主文第一、二項記載の通り決定する。

(裁判官 三上修 土屋連秀 梨岡輝彦)

準抗告申立の趣旨

一、昭和三十四年二月十九日大津地方裁判所裁判官古川秀雄が右被疑者に対して為した接見禁止、書類及物の授受を禁ずるとの決定は之を取消す

二、仮りに前項の取消が理由ない時は

右決定中物の授受を禁ずるとの決定はこれを取消す

との裁判を求める

準抗告申立の理由

一、被疑者は収賄被疑事件で勾留中の者である

二、大津地方裁判所裁判官古川秀雄は昭和三十四年二月十九日、右被疑者には罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるから被疑者と刑事訴訟法第三十九条第一項に規定する以外の者との接見を禁止し、又書類及び物の授受を禁ずるとの決定をした

三、然し同被疑者には罪証を隠滅すると疑われる相当な理由はないものと思料する

被疑者は中京税務署長で突然逮捕、勾留せられた関係上職務上のことに関し署員に指示し、又は署員の相談に応ずる必要があるのみならず、被疑者との接見には警察官若は刑務官の立会があり、事実上証拠湮滅は出来ないのである

又書類及物が授受に於いても警察官若は刑務官の検閲があり之亦事実上証拠湮滅は計られない

四、特に物の授受を禁止せられると毛布、衣類、チリ紙其他日常必要とする物は全部授受を禁ぜられるのである

換言すれば被疑者は逮捕時に着ていた衣類を、勾留期間中着用し続けねばならぬのであるこれは衛生上寔に憂慮すべき問題である

五、結局右決定は被疑者に孤独感と苦痛を与え自白を強要する一助としか考えられない斯る違法な決定が容認せられる理はないと信じますので準抗告の趣旨記載の裁判を求めるため此の抗告に及びました

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