大判例

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大津地方裁判所 昭和49年(行ウ)3号 判決

原告 宮田喜徳郎

〈ほか一六名〉

右訴訟代理人弁護士 吉原稔

同 岡豪敏

被告 建設大臣 仮谷忠男

右指定代理人 宝金敏明

〈ほか八名〉

主文

被告の本案前の申立は理由がない。

事実

一、原告らの「請求の趣旨」ならびに「請求原因の要旨」とこれに対する被告の答弁ならびに認否は別紙のとおりである。

二、被告は本案前の申立として「原告らの訴えを却下する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、その理由を左のとおり陳述した。

(一)  本件事業認定があったのは、昭和四八年七月一七日であるが、本訴は、原告らが本件事業認定があったことを知った日から三ヶ月を経過し、もしくは本件事業認定の日から一年を経過した後の昭和四九年一一月二二日に提起されている。

よって、本件訴えは行政事件訴訟法(以下単に法という)一四条一項もしくは三項に基づき、却下されるべきである。

(二)  右出訴期間は、原告らが本件事業認定に対する行政不服審査法(以下「行審法」という)による異議申立てを提起していると否とに拘らず進行し、本件事業認定の如く、訴願前置の強制されていないもの(以下これを「非訴願前置処分」という)については、法八条二項の適用問題を生ずる余地はない。

(三)  また、法一四条四項によると、訴願前置を強制されている処分(以下これを「要訴願前置処分」という)であると、非訴願前置処分であるとを問わず、審査請求があったときは、これをなした者については、これに対する裁決があった後でなければ取消訴訟を提起し得ざるところ、本訴は裁決前に提起された点においても不適法である。

三、原告らは右被告の本案前の申立につき左のとおり陳述した。

(一)  原告らは本件事業認定に対し三〇日以内に異議申立をしたが、三ヶ月を経過しても、その決定がないので、行訴法八条二項一号により本訴を提起したものであるから適法である。

(二)  被告は、非訴願前置処分については、法八条二項一号の適用がないと主張するが、右は法一四条四項の規定を無視した議論であり、同条項は、非訴願前置処分についても、行審法による不服申立(前記原告らの異議申立がこれにあたることは明らかである。)をした場合には適用があり、従って、行訴法八条二項一号の適用も当然あると解さなければならない(福岡高裁昭和三九年六月一〇日判決・高民集一七―四―二四四、最高裁昭和三六年二月二一日判決・民集一五巻二号二八七頁参照)。

(三)  もし被告のような解釈をとると、審査請求で救済される可能性があるのに、その結果を待たず提訴を強制することとなるとともに、審査請求の結果を待って棄却された場合でも提訴の道は閉ざされ、国民に対しより早く提訴を可能とするために訴願前置主義を排した手続において、逆に提訴の道を閉ざすということとなって、憲法上からも容認できるものではない。

理由

一、当裁判所は、原告ら主張どおり、原告らの出訴期間は、後記原告らのした不服申立によりその進行を停止したものと認める。その理由は、原告ら引用の福岡高等裁判所の判決と同旨であって、法一四条四項の趣旨とするところは、処分または裁決について、適法な不服申立手続をもって行審法上の救済を求めている限り、その結末をまたないで、処分または裁決を基準としてその出訴期間を進行させ、その期間内の出訴を強要し、あるいはその期間経過により形式的確定力を生ぜしめるのは、明らかに不合理であるため、右不服申立に対する裁決のあるまでは、その期間は進行せず、その裁決があったことを知った日または裁決の日から同条一、三項の期間を起算しようとするものであるから、右不服申立が訴願前置によって強制されていると否とを問わないものと解することによるものである。要するに同条項の「審査請求をすることができる場合……において、審査請求があったときは、」とは文字どおり「審査請求(異議申立を含む。法三条三項)の許される処分等について、適法な審査請求を提起したとき」と読むべきであり、「審査請求を経なければならない場合にこれを提起したとき」と読むべきではないと解する。

二、そして原告らが適法な不服申立をなしたことは当事者間に争いがないから、本訴が法一四条一、三項の出訴期間を徒過したものとする被告の主張は理由がない。

三、ところで被告は、法一四条四項により、非訴願前置処分についても、一旦不服申立をなした以上、裁決前には原処分の取消訴訟は提起できない旨主張する。成程、処分について行審法による不服申立をしている以上、その結末を待たないで、訴の提起を許すことは、行政庁にとっては二途の応接を余儀なくされる不利益は免れない。しかし法一四条四項は、単に出訴期間の進行の始期を定めたものであって、その進行開始前において訴を提起することを禁じたものとは解せられず、法が敢えて要訴願前置処分を例外としたこと、法八条三項は、むしろ非訴願前置処分について、裁決前に取消訴訟の許されることを前提とした規定と解せられることに徴し、当裁判所は右被告の主張は採用しない。と同時に、このように解するが故に、非訴願前置処分につき、審査請求をしたからといって、法八条一項但書が適用又は準用されるものではなく、従って同条二項各号の事由の存否に拘らず、その裁決前何時でもその取消訴訟を提起できると解するので、もはや原告ら主張の法八条二項一号の事由の存否につき判断を及ぼすまでもなく、原告らの本訴提起は適法である。

四、以上の次第であって、被告の本案前の申立はその理由がないので、更に本案の審理を進めるべく、主文のとおり中間判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 笠井達也 仲野旭)

〈以下省略〉

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