大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

大阪地方裁判所 平成5年(ワ)487号 判決

主文

一  被告は原告に対し、金四七万七八二六円及び内金四三万七八二六円につき平成四年四月二八日から、内金四万円につき平成五年一月二九日からいずれも支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを九分し、その五を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は原告に対し、金一〇九万九七一〇円及び内金九九万九七一〇円につき平成四年四月二八日から、内金一〇万円につき平成五年一月二九日からいずれも支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告が普通乗用自動車(以下「被告車」という。)を運転中、信号待ちのため停止していた原告の運転する普通乗用自動車(以下「原告車」という。)に追突した(衝撃の程度に争いがある。)事故について、原告が負傷したとして、原告が被告に対し、民法七〇九条に基づく損害賠償を請求したものである。

一  争いのない事実

1  交通事故の発生

日時 平成四年四月二八日午前一一時二〇分ころ

場所 大阪市中央区谷町五丁目四番二号

態様 被告が被告車を運転中、信号待ちのため停止していた原告の運転する原告車に追突した(衝撃の程度に争いがある。)。

2  損害の填補

被告は、本件事故に関し、原告に対して五〇〇〇円を支払つた。

二  争点

原告の損害額(治療費、慰謝料、弁護士費用)(原告は、本件事故により、本件事故当日から平成四年九月一二日までの間、通院実日数九九日間の通院加療を要する外傷性頸部症候群の傷害を負つたとして、右受傷を前提とする各損害を主張する。これに対して、被告は、被告車が信号待ちで停止していた原告車に続いて停止中、ブレーキを踏んでいた足がゆるんで被告車がゆつくりと動きだし、原告車の後部バンパーに被告車の前部バンパーが軽く接触したもので、原告車、被告車ともに一見して分かる程度の損傷はなく、本件事故により原告車が前方に押し出されたこともないから、原告に鞭打ち症が発生する余地はないとして、被告の損害賠償責任を否定する。被告の右主張に対して、原告は、本件事故前に被告車が原告車の後方で一旦停止していたとの点、本件事故後に原告車が前方に移動したことはないとの点に関する被告の供述等は信用できず、また、原告車と被告車はともに樹脂製のバンパーであることから、本件事故態様のもとでバンパーの外観に損傷がないのは当然であり、むしろ、原告車の後部バンパー内側にある鋼鉄製のフオースメントの中央部分に約一五センチメートルの凹みがあつたのであるから、衝撃が極めて軽微であつたとする被告の主張は理由がないと主張する。)

第三争点に対する判断

一  証拠(甲一ないし八、一二、一三、乙二の2、七ないし九、検乙一ないし六、原告、被告各本入)によれば、以下の事実が認められ、被告本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分は採用できない。

1  本件事故状況

本件事故現場は、南北に伸びる中央分離帯のある道路の南行車線上である。本件事故現場付近は、平坦なアスフアルト舗装で、本件事故当時、路面は乾燥していた。被告は、本件事故当時、被告車(オートマチツク車)を運転して本件道路を南進し、進路前方で原告車が信号待ちのため停止していたことから、原告車の後方約二・七メートルの地点に停止した。被告は、右停止中、シフトをドライブに入れたまま、フツトブレーキを踏み、サイドブレーキは使用していなかつた。そして、被告が助手席にある鞄を取ろうとした際、フツトブレーキから足が離れ、被告車が歩く程度の速度で前進し、これに気付いた被告がブレーキをかけるのとほとんど同時に、被告車の前部が原告車の後部に衝突した。右衝突の結果、原告車が本件事故前の停止位置から前方へ押し出されたことはなく、原告車の後部に被告車の前部が接着したような状態で停止していた。また、被告車の前部バンパーには、本件事故による損傷はなく、原告車の後部バンパーについても、樹脂製であるバンパーの外側には、本件事故による凹損、擦過等の損傷は外見上認められなかつたが、バンパーの内側にある鋼鉄製のフオースメントの中央部分が、幅一四、五センチメートルにわたつて変形し、樹脂製の部分との間にすき間ができていた。本件事故後、原告車、被告車のいずれも、修理されたことはない。なお、本件事故当時、原告は、シートベルトを着用しており、本件事故によつて、原告の後頭部が運転席の枕に衝突したことはなかつた。

2  原告の受傷及び治療経過等

原告は、本件事故当日、辻外科病院で受診した。右初診時に、原告は、めまい、吐き気、頭痛、頸部違和感を訴えており、頸部のレントゲン検査の結果では、頸椎間の直線化、不安定性が認められたが、ジヤクソンテストに異常はなく、反射も正常であつた。そして、右病院の医師は、外傷性頸部症候群の傷病名で約二週間の通院加療を要する見込みであると診断し、ポリネツクカラーによる固定と、湿布、投薬による治療を行つた。その後、原告は、五月の連休のためもあつて、平成四年五月五日まで通院せず、同月六日に右病院に第二回目の通院をした。そして、原告は、第二回目の通院以降、同年九月一二日までの間、ほぼ連日、右病院に通院して、頸椎牽引とマツサージによる治療を受けた。そして、同年九月一二日に右治療は中止となつた。

二  損害

1  治療費 二四万二八二六円(請求四〇万四七一〇円)

前記一1(本件事故状況)で認定したところによれば、被告車は、時速四キロメートル程度の速度で原告車に追突したと解され、右追突によつて、原告車の後部バンパーの内側にある鋼鉄製のフオースメントの中央部分に若干の変形を生じたことが認められることから、本件事故によつて、原告車に衝撃が加わつたことは否定できないものの、被告は、被告車が原告車に迫突するのとほとんど同時にブレーキをかけたこともあつて、原告車が前方に押し出されたことはなく、原告車と被告車には、本件事故による外観上の損傷部位は存在せず、修理もされていないうえ、本件事故当時、原告は、シートベルトを着用しており、本件事故によつて、原告の後頭部が運転席の枕に衝突していないことからすると、本件事故によつて、原告の身体に加わつた衝撃の程度は、かなり軽度のものであつたと解され、また、前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定したところによれば、原告に対する頸部のレントゲン検査の結果では、頸椎間の直線化、不安定性が認められたものの、ジヤクソンテスト、反射はいずれも正常であり、しかも、原告は、連休中であつたとはいえ、本件事故の翌日である平成四年四月二九日(水曜日)、同月三〇日(木曜日)、同年五月一日(金曜日)、同月二日(土曜日)には通院が可能であつたと解されるのに、通院治療を受けておらず、第二回目の通院以後、平成四年九月一二日に中止となるまでの原告に対する治療内容も、頸椎牽引とマツサージによる保存的治療の繰り返しを主とするものであつたことからすると、原告の辻外科病院における治療費四〇万四七一〇円(甲四ないし八)の六〇パーセントである二四万二八二六円の限度で本件事故との相当因果関係を肯定すべきである。そうすると、本件事故による原告の受傷自体を否定する被告の主張は採用できず、また、原告の治療費に関する請求のうち、右二四万二八二六円を越える部分は理由がない。

2  慰謝料 二〇万円(請求六〇万円)

前記一2(原告の受傷及び治療経過等)で認定した原告の症状、治療経過に、前記二1(治療費)における判示内容、その他一切の事情を考慮すれば、慰謝料としては、二〇万円が相当である。

3  弁護士費用 四万円(請求一〇万円)

原告の請求額、前記認容額、その他本件訴訟に現れた一切の事情を考慮すると、弁護士費用としては、四万円が相当である。

三  以上によれば、原告の民法七〇九条に基づく請求は、四七万七八二六円 (前記二1ないし3の損害合計額四八万二八二六円から前記争いのない損害填補額五〇〇〇円を控除したもの)と内四三万七八二六円(前記二3の弁護士費用四万円を控除したもの)につき本件交通事故発生の日である平成四年四月二八日から、四万円(弁護士費用)につき本件訴状送達の翌日である平成五年一月二九日からいずれも支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(裁判官 安原清蔵)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com