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大阪地方裁判所 平成7年(わ)443号 判決

裁判所書記官

牧之内葉子

本籍

大阪府堺市長曽根町六七四番地

住居

大阪府堺市長曽根町五一一番地

会社役員

東野喜三郎

大正五年八月二〇日生

国籍

韓国(全羅南道羅州郡潘南面徳山里九六四)

住居

大阪府堺市黒土町一九番地の一

土木作業員

長本こと黄永彦

一九三九年一一月三日生

本籍

大阪府南河内郡美原町さつき野東三丁目五番地の五

住居

右同

会社役員

尾田洋治

昭和一二年三月一日生

右の者らに対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官室田源太郎出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人東野喜三郎を懲役八月及び罰金八〇〇万円に、被告人長本こと黄永彦及び被告人尾田洋治をそれぞれ懲役六月及び罰金四〇〇万円に各処する。

被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、それぞれ金一〇万円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置する。

被告人らに対し、この裁判確定の日から三年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人東野喜三郎(以下「被告人東野」という。)は、大阪府堺市長曽根町五一一番地に住所を置くものであるが、被告人東野、被告人長本こと黄永彦(以下「被告人黄」という。)及び被告人尾田洋治(以下「被告人尾田」という。)は、鈴木彰(以下「鈴木」という。)、岡澤宏(以下「岡澤」という。)及び川合陽一郎(以下「川合」という。)と共謀の上、被告人東野の平成三年分の所得税を免れようと考え、別紙(一)修正損益計算書記載のとおり、被告人東野の平成三年分の総合課税の総所得金額が八万四〇〇〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が四億八二八八万三二〇〇円で、これに対する所得税額が一億一八五五万〇五〇〇円であった(別紙(二)税額計算書参照)にもかかわらず、架空の譲渡原価を計上するなどの方法により、その所得の一部を秘匿した上、法定の申告期限後の平成四年六月一五日、大阪府堺市南瓦町二番二〇号所在の所轄税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総合課税の総所得金額が二九五万八七八〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が五五九〇万円で、これに対する所得税額が一二〇三万八八〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、別紙(二)税額計算書記載のとおり、平成三年分の正規の所得税額と右申告所得税額との差額一億〇六五一万一七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

(注)括弧内の漢数字は、証拠等関係カード検察官請求分記載の証拠番号を示す。

一  被告人東野喜三郎、同長本こと黄永彦及び同尾田洋治の当公判廷における各供述

一  被告人東野喜三郎〔四八、五〇、五三、五四〕、同長本こと黄永彦〔七六、七七〕及び同尾田洋治〔八二、八三〕の検察官調書

一  分離前の相被告人鈴木彰及び同岡澤宏の当公判廷における各供述

一  鈴木彰〔六二、六三〕、岡澤宏〔六九〕、山本正雄〔三八ないし四〇〕、松田貞彦〔四一〕、増田義一〔四二〕、林田正幸〔四四〕及び服部潔〔四五〕の検察官調書

一  査察官調査書〔三ないし二一〕

一  査察官調査報告書〔二五、二九〕

一  証明書〔二〕

一  「所轄税務署の所在地について」と題する書面〔二二〕

一  土地登記簿謄本〔二三、二四〕

(事実認定の補足説明)

一  被告人東野の弁護人は、第一に、被告人東野は、鈴木及び岡澤に対して本件に関し相談や依頼をしたことはないのであるから、同人らとの共謀は成立せず、第二に、被告人東野は、本件所得税を安くする方法について被告人黄に相談した際には、約一億三〇〇〇万円を納税する意思を有していたのであり、また、平成四年三月ころ、被告人黄らに対し、本件納税資金及び報酬として一億三〇〇〇万円を交付した際にも、同金額から報酬分を差し引いた九五〇〇万円ないし一億円は納税されるものと信じていたのであるから、公訴事実記載の本件ほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円のうち、九五〇〇万円ないし一億円の部分についてはほ脱犯は成立しない旨主張し、被告人東野も当公判廷において右各主張に沿う供述をする。そこで、これらの点につき、当裁判所の判断を示す。

二  まず、本件脱税に関する事実関係についてみるに、前掲「証拠の標目」記載の関係各証拠、とりわけ、被告人東野〔四八、五〇〕、同黄〔七六、七七〕、同尾田〔八二、八三〕、鈴木〔六二、六三〕、岡澤〔六九〕及び松田貞彦〔四一〕の検察官調書によれば、

1  被告人東野は、平成二年四月二四日、被告人東野所有の土地を被告人黄及び同尾田の仲介により代金五億二〇〇〇万円で売却し、平成三年一月一八日までに右代金を受領したものの、平成四年一月ころ、右土地売却に伴う税金の額について被告人東野の顧問税理士から、国税及び地方税を合わせて約一億五〇〇〇万円になる旨の回答を得たが、右土地売却についての納税資金を株の信用取引による損失の補填に費消してしまっていたことから、何とかして税金を安く納めたいと考え、そのころ、被告人黄に対し、右土地売却に関して税金が一億五〇〇〇万円かかるが、株で損をしたので何とか税金を安くしたい、半分くらいになればありがたいが、そこまでは無理としても五〇〇〇万円でも安くなれば助かる旨相談を持ちかけ、その後、被告人黄及び被告人黄から右相談の内容について連絡を受けた被告人尾田に対して、右税金を安くする方法について相談し、本件脱税への協力を依頼したこと

2  被告人黄及び同尾田は、右被告人東野からの依頼を受けて、同年一月下旬ないし二月ころ、被告人尾田の知り合いの川合に対して、被告人東野の前記土地売却に伴う税金を何とか安く申告できるよう、本件脱税への協力を依頼し、川合の承諾を得る一方、本件脱税を同人へ依頼した旨を被告人東野に対して報告してその了承を得、さらに、被告人東野から、税務申告のための資料として不動産売買契約書等前記土地売却に関する一件書類及び被告人東野の平成二年分の所得税確定申告書(控)を受け取り、それらの写しを川合に渡したこと

3  そのころ、被告人東野は、被告人黄及び同尾田から、川合が本件国税及び地方税の納税資金及び同人に対する報酬として一億一〇〇〇万円を要求しているので、これに被告人黄及び同尾田に対する報酬として合計二〇〇〇万円を加えた一億三〇〇〇万円を用意するように言われ、被告人東野としては、前記1のとおり、正規税額の半分ないしは五〇〇〇万円程度低い金額、つまり総額一億円以内に納める心積もりであったことから、被告人黄らの要求する金額は高過ぎるとして、本件脱税の依頼を断ろうとしたものの、被告人黄らから中止を思い止まるよう説得を受け、結局、右要求金額を受け入れて、本件脱税の依頼を続行することとしたこと

4  被告人東野は、同年三月三日ころ、被告人黄及び同尾田と共に、川合の事務所を訪れ、被告人黄らから川合を紹介された際、被告人東野からも直接、川合に対して、本件脱税への協力を要請したところ、同人から一億一〇〇〇万円で本件脱税を引き受ける旨言われたこと

5  被告人東野は、川合に対し、本件国税及び地方税の納税資金並びに同人に対する報酬として、同月一〇日、被告人黄及び尾田を介して現金七〇〇〇万円を、また、同月一九日、被告人黄を介して額面四〇〇〇万円の約束手形一通をそれぞれ交付し、また、右現金七〇〇〇万円と同時に、被告人黄及び同尾田に対し、報酬として現金二〇〇〇万円を支払ったこと

6  一方、川合は、前記被告人東野らからの依頼を受けて、同年二月中旬ころ、鈴木に対して、被告人東野の前記土地売却に伴う譲渡税等を安くなるよう脱税工作を行い、確定申告をして欲しい旨、本件脱税への協力を依頼し、鈴木の承諾を得た上、同月下旬ころ、同人に対して前記一件書類及び確定申告書(控)の写しを交付し、鈴木に対する報酬として、国税及び地方税の納税資金とを合わせて七〇〇〇万円を支払う旨申し入れ、同人の承諾を得たこと(ただし、その後、右七〇〇〇万円のうち一〇〇〇万円は一旦鈴木が受領後川合へ返還することとされた。)

7  その間、鈴木は、従前より共に脱税工作の請負を行っていた岡澤に対し、本件脱税についても同人と共に脱税工作を行うとの前提の下で、前記川合からの依頼の要旨を連絡し、右依頼を引き受けることについて岡澤から了解を得た上で、右のとおり、川合に対して、本件脱税工作を受任する旨回答し、また、その後、岡澤に対して、前記土地売却の代金額や鈴木に対する報酬金額など、右依頼の具体的内容について連絡したこと

8  川合は、同年四月ころ、鈴木に対し、本件納税資金及び同人に対する報酬として、現金三〇〇〇万円(ただし、うち一〇〇〇万円は後日川合に返却することとなっていた。)及び前記額面四〇〇〇万円の約束手形一通を交付したこと

9  鈴木及び岡澤は、平成四年六月ころ、本件脱税の方法について相談した結果、前記土地売却に関して架空経費を計上することを決定し、鈴木において、右架空経費計上のための領収証等を作成し、また、同人の顧問税理士をしてその旨の確定申告書を作成させた上、同月一五日ころ、堺税務署において右確定申告書を提出し、その後、鈴木は、岡澤に対し、本件脱税に協力した報酬として、鈴木が川合から受け取った報酬の中から一〇〇〇万円を支払ったこと

10  一方、被告人東野は、本件脱税摘発に至までの間、川合が、被告人東野の交付した七〇〇〇万円と四〇〇〇万円の合計一億一〇〇〇万円から川合の報酬として二〇〇〇万円程度を差し引いた、国税及び地方税を合わせて九〇〇〇万円程度を納税しているものと思っていたこと

以上の各事実が認められる。また、被告人東野は、右1のうち被告人黄に相談した内容を除いては、当公判廷においても右各事実と同旨の供述をしている(ただし、公判供述においては、右10の川合が納税するものと思っていた金額は九五〇〇万円程度であるとされている。)。

ところで、右1の被告人黄に相談した内容に関し、被告人東野は、当公判廷において、当初、被告人東野が被告人黄に対して右土地売却に関する税金対策について相談した際には、一億五〇〇〇万円の税金を二〇〇〇万円程度安くしたいと思っていたのでその方法を尋ねたのであって、税金を五〇〇〇万円安くしたり、半分にしたいと言ったことはない旨供述する。しかし、右公判供述は、被告人黄及び同尾田の当公判廷における各供述並びに被告人黄〔七七〕及び同尾田〔八三〕の検察官調書の内容に反するものであるばかりでなく、自己の記憶どおりに供述したことを被告人東野自身も当公判廷において認めている被告人東野の検察官調書〔五〇〕の内容にも反するものである。したがって、当初は納税額を二〇〇〇万円程度安くしたいと思っていたに過ぎないとする前記被告人東野の公判供述は、信用できない。

三  共謀関係について

被告人東野の弁護人は、前記一のとおり、被告人東野が鈴木及び岡澤と共謀をした事実はないのであるから、被告人東野と鈴木及び岡澤との間には共謀は成立しない旨主張する。

しかし、そもそも、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が相互に面識を有し、かつその数人間に一個の共謀の成立することを必要とするものではなく、同一の犯罪について、数人の間に順次共謀が行われた場合には、これらの者の全ての間に当該犯行の共謀が行われたものと言うべきである。

そして、前記各認定事実によれば、なるほど被告人東野が直接鈴木及び岡澤に対して本件脱税を依頼した事実は認められないけれども、被告人東野は、被告人黄及び同尾田並びに川合に対して本件脱税への協力を依頼し、右四名の間で本件脱税についての共謀がなされ、また、右依頼を受けた川合は、鈴木に対して本件脱税工作を依頼し、右両名の間でも本件脱税の共謀がなされ、さらに、鈴木は、岡澤と共に、本件脱税の具体的方法を検討して本件確定申告書を提出し、右両名の間でも本件脱税の共謀がなされたのであって、結局、被告人東野、同黄及び同尾田並びに川合、鈴木及び岡澤は、本件脱税について順次共謀を行ったのであるから、右六名全員の間に本件脱税についての共謀が成立するものと言うことができる。

したがって、被告人東野は、被告人黄及び同尾田並びに川合との間のみならず、鈴木及び岡澤との間にも、本件脱税の共謀が成立するのであり、この点に関する被告人東野の弁護人の主張は採用できない。

四  ほ脱額について

被告人東野の弁護人は、前記一のとおり、被告人東野は、当初、約一億三〇〇〇万円を納税する意思を有していたのであり、また、平成四年三月ころ、川合に対し、被告人黄及び同尾田を介して本件納税資金等を交付した際にも、同金額から謝礼分を差し引いた九五〇〇万円ないし一億円は納税されるものと信じていたのであるから、九五〇〇万円ないし一億円の部分についてはほ脱したものとは認められない旨主張する。

しかし、前記各認定事実によれば、被告人東野は、当初、前記土地売却にかかる国税及び地方税について、正規税額一億五〇〇〇万円から半分ないしは五〇〇〇万円程度を免れたいものと考え、その旨被告人黄に対して依頼し、その後、川合に対して本件納税資金や報酬を交付したころには、国税及び地方税合わせて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円をほ脱するものと認識するに至ったが、その一方、前記のとおり、右被告人東野の依頼は、被告人尾田及び川合を介して鈴木、さらには岡澤に達し、鈴木及び岡澤において、本件所得税について、判示のとおり、正規税額よりも一億〇六五一万一七〇〇円過少の申告税額を記載した本件確定申告書を提出したのであって、結局、被告人東野は、当初からほ脱の故意を有しており、しかも右ほ脱の故意に基づき被告人黄らに対して本件脱税を依頼した結果、所得税約一億円を免れたのであるから、被告人東野には右ほ脱額全体についてほ脱犯が成立するものと言うべきである。

なお、たしかに、前記のとおり、被告人東野が認識していたほ脱額は、国税及び地方税を合わせて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円であることが認められ、これは実際のほ脱額を下回る金額であり、被告人東野については、その具体的な金額についての認識に、いわば錯誤があったと言えるが、ほ脱犯が成立するための故意の内容としては、ある一定額の税金を免れることの認識をもって必要十分とするものであって、具体的なほ脱額の認識にずれがあったとしても、ほ脱額全体の故意を阻却しないものと解される(同一構成要件の範囲内における具体的事実の錯誤であるから故意を阻却しない。)。したがって、客観的なほ脱額よりも少ない金額をほ脱額として認識していた場合であっても、ほ脱の故意としては十分であり、右客観的なほ脱額全額についてほ脱犯の成立が認められるものとすべきであるから、本件ほ脱額について被告人東野の認識額と実際額との間に右のような差異があることによって、被告人東野のほ脱の故意が阻却されることはなく、この点からしても、被告人東野には、実際のほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円の全体についてほ脱犯が成立するものと言わざるを得ない。

以上のとおり、被告人東野には、ほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円全額についてほ脱犯が成立するのであり、この点に関する被告人東野の弁護人の主張も採用できない。

(法令の適用)

被告人らの判示所為はいずれも平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条一項本文により同法による改正前の刑法(以下「旧刑法」という。)六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑の併科を選択し、かつ、被告人東野については、情状により同条二項を適用して右の罰金の額はその免れた所得税の額に相当する額以下とし、各自の所定刑期及び金額の範囲内で、被告人東野を懲役八月及び罰金八〇〇万円に、被告人黄及び同尾田をそれぞれ懲役六月及び罰金四〇〇万円に各処し、被告人らにおいてその罰金を完納することができないときは、旧刑法一八条によりそれぞれ金一〇万円を一日に換算した期間、その被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用して、被告人らに対し、この裁判確定の日から三年間それぞれその懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人らが、鈴木、岡澤及び川合と共謀の上、被告人東野が自己の所有する土地を売却したことに関し、被告人東野の平成三年分の所得税につき、一億円余りを脱税したものであり、ほ脱額が高額である上、ほ脱率も約八九・八パーセントと高率であって、納税義務に著しく反する重大事案である。

ところで、本件脱税は、右土地売却に関して、架空の取得費用及び譲渡費用を計上するなどの方法によって敢行されたものであるが、その中における被告人らの関与の態様などを検討するに、まず被告人東野については、前記のとおり、そもそも、本件脱税は、被告人東野が本件所得税を低い金額で納税したいと考え、その旨被告人黄らに相談を持ちかけたことに端を発するものであるのみならず、本件脱税にかかる税務申告に使用されることを承知の上で右土地売却一件書類などを被告人黄らに交付した上、自らも直接川合に対して本件脱税を依頼していることなどからすれば、被告人東野は、納税義務者として本件犯行に欠くことのできない役割を果たしたものと評価せざるを得ず、また、自己の株取引によって生じた損失の補填のために本件所得税を安くしたいと思ったという、被告人東野の本件脱税の動機についても格段の同情の余地はない。

次に、被告人黄及び同尾田については、前記のとおり、右被告人東野の依頼に応じて、川合に対して本件脱税を依頼した上、その後も被告人東野と川合との間で、本件脱税報酬等に関する同人からの要求の伝達や、右一件書類及び右報酬ないし納税資金の授受などに関して連絡役を務めるなどし、その結果、被告人東野に対してそれぞれ一〇〇〇万円、合計二〇〇〇万円もの高額の報酬を要求してこれを受け取っており、これらのことからすれば、被告人黄及び同尾田は、本件脱税に積極的に関与し、また、重要な役割を果たしたものと言うべきである。

以上のとおり、本件脱税の規模及び被告人らの関与の態様からすれば、被告人らの刑事責任はいずれも重大である。

ところで、前記のとおり、本件脱税の具体的方法や実際の申告金額については、専ら鈴木及び岡澤によって決定されたものであるところ、被告人らは、本件脱税に関して、鈴木らとの間で直接話し合いをしたことはなく、そもそも本件申告を実際に行っているのが鈴木らであることすら知らなかったのであって、右具体的方法や申告金額についての認識を有しておらず、むしろ、川合において、国税と地方税を合わせて九〇〇〇万円程度、所得税だけで七〇〇〇万円程度の税額を申告するものと思っていた。そして、被告人東野は、前記のとおり、被告人黄及び同尾田に対して報酬として合計二〇〇〇万円を支払ったほか、川合に対して報酬及び本件納税資金として一億一〇〇〇万円を支払い、そのうち約一四〇〇万円については本件申告の際に所得税のほか無申告加算税及び延滞税として納付されたものの、その余りの約九六〇〇万円については川合、鈴木及び岡澤らによって利得されており、一方、被告人東野自身の利得額は、国税及び地方税を合わせて約二〇〇〇万円に止まる。また、被告人黄及び同尾田は、被告人東野から、地方税の納税手続についても依頼を受けて、その旨を川合に伝えていたにもかかわらず、平成四年七月から平成五年三月ころまでの間、再三にわたり、堺市役所から被告人東野方へ市民税の督促状が送られてきたので、本件脱税を仲介して報酬を得ていた関係から右被告人東野の地方税の納付のためにそれぞれ約二〇〇万円ずつを拠出している。

さらに、本件脱税は一回の土地売却に関するものであり、継続性がないこと、被告人東野は本件脱税について既に修正申告を行っていること、被告人らはいずれも大筋では事実を認め、反省していること、被告人尾田については、実弟が今後の監督を約していることなど、量刑上被告人らに有利な事情も認められる。

そこで、これらの事情を総合考慮の上、被告人らをそれぞれ主文の懲役刑及び罰金刑に処し、懲役刑についてはそれぞれその執行を猶予するを相当と思料する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中正人 裁判官 松下潔 裁判官 増田啓祐)

別紙(一) 修正損益計算書

(総所得税金額)

〈省略〉

(分離長期譲渡所得)

〈省略〉

(給与所得)

〈省略〉

(雑所得)

〈省略〉

別紙(二) 税額計算書

〈省略〉

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