大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)505号 判決

原告 浪花企業株式会社

被告 株式会社かどや 外四名

主文

被告かどやは原告に対し別紙物件目録〈省略〉記載(1) の家屋を明け渡し、且昭和二十七年四月八日以降右明渡済に至る迄一箇月につき金千五百円の割合による金員を支払え。

被告細野は原告に対し別紙物件目録記載(2) の家屋を明け渡し、且昭和二十七年四月十一日以降右明渡済に至る迄一箇月につき金二千三百四十円の割合による金員を支払え。

被告磯部は原告に対し別紙物件目録記載(3) の家屋を明け渡し、且昭和二十七年四月八日以降右明渡済に至る迄一箇月につき金二千四百七十円の割合による金員を支払え。

被告稲本は原告に対し別紙物件目録記載(4) の家屋を明け渡し、且昭和二十七年四月八日以降右明渡済に至る迄一箇月につき金三千円の割合による金員を支払え。

被告阪神薬局は原告に対し別紙物件目録記載(5) の家屋を明け渡し、且昭和二十七年四月八日以降右明渡済に至る迄一箇月につき金三千四百四十五円の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決は、被告かどやに対しては金二十五万円、被告細野及び磯部に対しては各金三十万円、被告稲本及び阪神薬局に対しては各金三十五万円のいずれも担保を供するときは、仮に執行できる。

事実

第一、当事者双方の申立

原告訴訟代理人は主文第一乃至第六項同旨の判決並に家屋明渡の部分については無担保により、金員支払の部分については担保提供による仮執行の宣言を求め、被告等訴訟代理人は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする旨の判決を求めた。

第二、原告が請求の原因として陳述した事実

原告は訴外花田鶴雄に対し昭和二十三年十二月十五日原告所有に係る別紙物件目録記載(1) の家屋(賃貸当時は平家建)を、訴外森田ハル子に対し昭和二十四年一月二十七日別紙物件目録記載(2) の家屋(賃貸当時は平家建)を、訴外寺本栄子に対し同年七月二十七日別紙物件目録記載(3) の家屋(賃貸当時は平家建)を、訴外平野慎治郎に対し昭和二十三年十二月二十二日別紙物件目録記載(4) の家屋(賃貸当時は平家建)を、訴外東洋企業株式会社に対し昭和二十二年十一月十四日別紙物件目録記載(5) の家屋(賃貸当時は平家建)を、いずれも、(イ)賃貸期間は昭和二十五年三月末日迄、(ロ)家屋利用料(家賃の外共栄費、設備利用料を含む、家賃はそのうちの六割)として一箇月につき(1) の家屋は金六百円宛、(2) の家屋は金千八百円宛、(3) の家屋は金千九百円宛、(4) 及び(5) の家屋は各金二千五百円宛を毎月五日持参支払、(ハ)敷地所有者たる訴外京阪神急行電鉄株式会社(以下阪急と略称する)より敷地の継続使用を許されない限り契約の更新はせず又期間内でも阪急の要求があれば一箇月の予告期間を以て解約ができる。(ニ)賃借人等は原告の書面による承諾がない限り家屋の改造、変更、附加は勿論、賃借権の譲渡、転貸ができなく、右家屋において経営する営業の種類についても原告の承諾を要する。(ホ)賃借人は賃貸借終了後賃借家屋の明渡を遅延したときは明渡済に至る迄家屋利用料の十倍に相当する損害金を支払う旨の約定で一時使用のため賃貸したが、その後家屋利用料は一箇月につき、(1) の家屋については金千五百円、(2) の家屋については金二千三百四十円、(3) の家屋については金二千四百七十円、(4) の家屋については金三千円、(5) の家屋については金三千四百四十五円にそれぞれ値上げされ、又平家建であつた賃貸家屋は賃借人等によつて別紙物件目録の如くいずれも二階建に増改築せられた。

而して右各家屋が賃貸せられるに至つたのは次の如き事情によるものであつて、右賃貸借は借家法の適用なき一時使用のためのものである。

(一)  別紙目録記載の各家屋は、原告が大阪市北区梅田八番地宅地千二百三十二坪六合九勺(以下本件宅地と略称する)地上に建築所有する仮設建物の一部であるところ、本件宅地は阪急が阪急梅田南駅建設用地として昭和十二年頃大阪市の換地処分により取得し、これが建設の準備をしていたが、その後約十年間の戦時下及び終戦後の特殊事情のため、その実現がおくれていたものである。そして本件宅地は阪急阪神電鉄ビルに近接し、且大阪市内の幹線道路たる御堂筋街路に面し、国鉄大阪駅前の美観地区、高層建築物建設の指定地及び特殊防火地区に属していたのであつて、阪急は板囲をして本件宅地を管理していたのであるけれども、昭和二十一年頃よりの終戦後の社会状態の混乱に乗じた第三国人等が本件宅地内に侵入してバラツク等の建築を始め、空地の儘で管理するときは全面的にこれ等の者に不法侵奪せられる虞を生じたのである。しかるに本件宅地は人通りの多い地点にあつて、店舗営業のため好適の場所であつたので、原告はこの点に着眼して阪急に対しこれが賃貸の能否を交渉したところ、阪急では資材の入手が可能となり次第に南駅を建設することを決定していて、賃貸を受けることが困難なことが判明した。しかしながら、地理的環境から判断するときは本件宅地に仮設建物を建築してこれを賃貸するときは、これが利用者は右建物によつて一時的な営業をしても、十分な利益を挙げ得るものと考えられたので、原告は阪急に懇請して昭和二十二年二月十日期間は一応三箇年と定めるも、右期間内といえども、阪急において南駅建設のため必要を生じた場合は、要求あり次第明渡をする約で、本件宅地を、一時使用のため賃借したのである。

(二)  そこで、原告は同年三月より建築に着手し、本件宅地上に木造片屋根スレート葺平家建一棟三戸乃至五戸建の仮設建物を多数建築したが、右建物は間口を二間以内とし、土壁を施さず全部板張板仕切の全く臨時使用を目的としたバラツク式仮設建築である。

(三)  而して、原告は右建物を賃貸するに当つて、本件宅地の性質、原告と阪急との本件宅地賃貸借の趣旨等を賃借人に十分諒承せしめた上賃貸したが、特に賃貸借期間を一律に昭和二十五年三月末日と定め、契約終了の際の明渡を確保するため、明渡遅延の際の損害金を家屋利用料の十倍と定めたのである。

(四)  本件各家屋は右仮設建物の一部であつて、賃借人たりし前記被告等は上記の点をよく諒解して、店舗営業には好適の場所であり、短期間の営業でも十分に利潤を挙げ得ることを考慮の上終戦後の混乱せる社会情勢下に於て、安定を見る迄の暫定的拠りどころを得べく、本件賃貸借契約を締結したものである。

しかるに阪急は本件宅地賃貸借の継続を許容せず、昭和二十五年二月二十七日附内容証明郵便を以て、原告に対し同年五月末日限り本件宅地を返還することを督促してきたので、原告は直にその旨を家屋賃借人たる被告等に通告し、再三家屋の明渡を要求していたが、阪急は更に昭和二十六年三月二十八日附内容証明郵便を以て強硬に本件宅地の明渡を迫つてきたので、原告は賃借人等に対し同年九月末日限り明渡義務を履行することを求めたが、応じないので調査したところいずれも既に賃借権を被告等に譲渡していて、原告に対しこれが承諾を求めてきた。当時原告は既に借家人等に対し期間満了による賃貸借の終了を理由に家屋の明渡を要求していたが、借家人側は容易にこれに応ぜず、早急に解決の見込がたゝなかつたので阪急に対し本件宅地明渡の猶予を求めて交渉中であつたので、賃借権の譲渡を認めることができなかつた。しかるに被告等は本件賃貸借は既に終了していることを認め、右交渉が成立して具体的に明渡時期が決定せられるが、又は交渉が決裂したときは直に明渡をしなければならない事情の下にあることを承知して、原告に対し原告より具体的に要求があり次第何時でも本件家屋の明渡をすることを約したので、原告はやむを得ずそれ迄の間現実の明渡を猶予する趣旨で、昭和二十五年十二月十六日訴外花田鶴雄の被告かどやに対する、同月七日訴外森田ハル子の被告細野に対する、同年七月一日訴外寺本栄子の被告磯部に対する、昭和二十六年二月二十八日訴外平野慎治郎の被告稲本に対する、昭和二十五年九月一日訴外東洋企業株式会社の被告阪神薬局に対する、いずれも本件家屋明渡義務の承継を承認した次第である。ところが、前記交渉は妥結するに至らず阪急は昭和二十六年三月二十八日附内容証明郵便を以て原告に対し強硬に本件宅地の明渡を求めてきたので、原告は直に被告等に対しその旨を通告し、同年九月末日限り本件家屋の明渡を履行すべきことを要求した。

右の如く本件各賃貸借は昭和二十五年三月末日の期間満了により終了したものであり、被告等は明渡を約しながら原告の請求に拘らず右約旨に反してこれを履行しないから、本訴を以て被告等に対し右特約並に所有権に基き本件各家屋の明渡を求めると共に、いずれも本件訴状送達の翌日から右明渡済に至る迄前記家屋利用料相当の割合による損害金の支払を求める。

第三、被告等が答弁として陳述した事実

一、本件各家屋の賃貸借について、

原告が請求の原因として主張する事実中訴外花田鶴雄、森田ハル子、寺本栄子、平野慎治郎及び東洋企業株式会社が原告から原告主張の日時、原告主張の家屋を、原告主張の家屋利用料支払の約で賃借したことは認めるも、阪急と本件宅地との関係は不知、賃貸借期間、一時使用のための賃貸借であつたとの点、解除権が留保せられていたとの点、目的家屋が一時使用を目的とした仮設建物であつたとの点、賃料は持参払の定であつたとの点及び右賃貸借に原告主張の如き特約があつたとの点はいずれも否認する。本件賃貸借は借家法が適用されるものであつて、原告主張の如く一時使用のための賃貸借でないことは次に述べる事実により明かである。

(一)  昭和二十一年十一月二十一日の第三次追放指令により阪急の重役その他の幹部が多数追放せられたが、当時の社会並に経済状態は終戦後の混乱が続いていて阪急の運命すら予断することができない有様であつたので、本件宅地の如きはその使用の目途さえ立てられなかつた。その際、阪急の残留重役等は追放該当者の経済的救済を考えた結果、徒らに闇市場的場所の目標となりつゝあつた本件宅地が場所柄相当利用価値があつたので、追放該当者等にこれが利用収益を許したのである。

そこで追放該当者等が相集り原告会社(当初は株式会社浪花商店街と称した)を設立し、大阪駅前の交通の一大中心点にして小売商に最も適した本件宅地に永久的なる商店街を建設せんと企図したが、その資金の捻出方法に窮し、本件宅地に商店街を建設する計画を公表し、使用希望者を募つて、応募者より当時は地代家賃統制令のため権利金を徴することができなかつたので外形的には借入金名義で多額の権利金を受け取りこれを資金として本件宅地上に商店用家屋を建設して、応募者等に賃貸したものである。

本件賃貸借契約の当時は戦後の混乱状況が最高潮に達し、食糧事情は窮迫し、インフレーシヨンは破滅的に昂進し、財閥の解体、財産税の創設を前提とする新旧円の切換、諸預金の封鎖等が実施せられた時代であつて、阪急の将来すら予測することができなく、況んや南駅の設置の如きは如何なる意味においても問題とならなかつたのである。当時は生きるために如何にして新円を確保し、食糧を取得して自己を保身するかということが最大の問題で会社の前途殊に拡張政策の如きは正に夢物語に過ぎなかつたのであつて、商店街の建設により新円の獲得ができるということは干天に慈雨の如く無批判的に阪急の賛同が得られたものである。

(二)  原告の主張によれば、原告と阪急との本件宅地の賃貸借期限は昭和二十五年二月九日であつて、原告と被告等との本件家屋の賃貸借契約は同年三月末日ということであるが、右主張によると本件家屋の賃貸借契約は敷地の明渡義務が生じてから約五十日後迄継続することになり、契約の当初において敷地明渡義務の遅滞を予定していることになつて吾人の常識に反すること甚だしく、右はいずれもその期間が形式的に定められていても当事者がこれに準拠する意思がなかつたか、又はその意思が甚だ微弱であつたことを示すものである。

更に本件宅地賃貸借契約及び本件家屋賃貸借契約にはいずれも「期間更新」の特約が殊更の如く記載せられているが右の事実と前記社会経済事情とを綜合すれば、本件宅地賃貸借契約当時阪急は具体的に南駅設置の計画がなかつたことが認められるのである。従つて阪急の南駅設置という事実は確定的なものではなく、多分に希望もしくは期待的な要素があつたのである。

(三)  原告主張の如く一時使用のための賃貸借であれば、地代家賃統制令が適用されないから、権利金を受け取つてもよいし、家賃も統制がなかつたのである。しかるに原告は本件賃貸借に際しては右統制令を潛脱するため権利金を授受するのに借入金の名義を使用し、賃料は公定として設備利用料等の名目を設けて実質上の闇家賃を徴しているのであるが、右は本件賃貸借が一時使用のためのものでないからに外ならないのである。

(四)  又賃貸借契約が一時使用のためのものであるといわんがためには、使用者の明示する使用の目的が性質上一時的なものであることが明らかな場合であるが、又は当事者が特に一時使用であることを明示し、且その理由を明らかにした場合でなければならないのであるが、本件賃貸借においては性質上一時使用であることが明らかな使用目的を明示したこともなければ、当事者間に一時使用の理由を明らかにしたこともないのである。

更に本件賃貸借においては賃貸期限についても当事者間に明示がなく、又その話はあつても一応形式的に定められたものであつて、期限の定に拘らずいくらでも更新するという諒解がなされていたものであつて、さればこそ賃借人は多額の権利金を支払つたのである。

二、賃借権の譲渡について、

前記(1) の家屋は訴外花田鶴雄(本件宅地上の家屋の建築を請負つていて事実上原告と同一体の関係にあつた人)が原告から賃借して事務所として使用していたものであるが、被告かどやは昭和二十五年十二月頃、同人に権利金二十一万円を支払つて右賃借権の譲渡を受けたものであつて、右譲渡については原告の承諾を受けており、その後原告は引き続き同被告より異議なく家賃の支払を、受けているものである。

前記(2) の家屋は訴外森田ハル子が原告から賃借していたものであるが、被告細野は昭和二十五年十二月頃同人に権利金四十五万円を支払つて右賃借権の譲渡を受けたものであつて、当時原告の承諾を得た上店舗を改装し引続き居住している。

前記(3) の家屋は訴外寺本栄子が原告から賃借していたものであるが、被告磯部は昭和二十五年七月頃同人に多額の権利金を支払つて右賃借権の譲渡を受け、当時改めて原告より本件家屋を賃借して現在に至つているものである。

前記(4) の家屋は訴外平野慎治郎が原告から賃借していたものであるが、被告稲本は昭和二十四年十二月頃同人より右賃借権の譲渡を受け、当時改めて原告より本件家屋を賃借して現在に至つているものである。

前記(5) の家屋は訴外東洋企業株式会社が原告から賃借していたものであるが、被告阪神薬局は昭和二十四年二月頃同社に相当な権利金を支払つて右賃借権の譲渡を受け、当時原告に金一万円を支払つてその承諾を得、更に昭和二十五年八月頃原告より本件家屋を賃借することにしてその賃貸借契約書を作成したものである。そして右賃借権の譲受後は原告に対して引続き賃料の支払をしているのである。又同被告は昭和二十四年四月頃原告の承諾を得て本件家屋を現在の如く大改築したが、若し原告主張の如く単なる明渡義務の承継であるとすれば、同被告において多額の権利金を支払い又は大改築をする筈がないのである。

以上の如く被告等が多額の権利金を支払つたこと、その後原告の承諾を得て相当の費用を支出して賃借家屋の改造、造作の変更等をしたこと、被告等名義を以て家賃金の支払をしたこと等を綜合すれば被告等が明渡義務を承継したとする原告の主張は事実に反すること明らかである。即ち近き将来明け渡すべきことの確定せる家屋に暫時居住するため右の如く多額の出費をするが如きことは吾人の常識を以てしては考へられないことであり、法律的素養のある原告会社代表者が明渡猶予期間中に居住者より家賃を受領するが如きことはあり得ないところである。

又本件家屋の最初の賃借人等は原告に対し多額の権利金を支払つていて、原告は右権利金を以て本件家屋を建築したものであるから、本件は形式上は家屋の賃貸借になつているが、実質上は前記の如く阪急と同一体の関係にある原告が本件宅地を賃貸したものであつて、本件賃借権の譲渡というのは、賃借人等の権利金を以て建築した本件家屋の譲渡とその敷地の譲渡のことである。そして最初の賃借人等は原告に対し多額の権利金を支払つているが、一般に権利金の授受は賃借人に賃借権の譲渡又は転貸の自由を与えることの対価としてなされるものであるから、賃借人等は自由に賃借権の譲渡をすることができたのである。加うるに大阪市の繁華街たる心斎橋、九条新道、難波新地、恵美須及び梅田方面においては建物所有者は特別に重大なる理由がない限り借家人の賃借権の譲渡又は転貸につき承諾を与えなければならない義務を有するとする慣習が行われているが、本件当事者も右慣習による意思を以て本件賃貸借契約を締結したものであるから、原告としては賃借権の譲渡につき承諾を拒むことができなかつたのである。

第四、被告等の答弁に対し原告が主張した事実

一、賃借権譲渡の承諾について、

(一)  原告は本件賃貸借に関し権利金を受領したこと及び被告等主張の如き賃借権の譲渡に関する慣習が存在することはいずれも否認する。

(二)  原告は本件家屋賃貸当初消費貸借契約により建築資金の一部に充当するため賃借人より金員の借入をしたが、これはいわゆる権利金ではない。本件宅地の賃貸借が一時使用を目的としたものであつて、殊に解除権留保により期限前の解約が認められているから、原告としては短期間内に本件家屋を収去して本件宅地の明渡をしなければならなく、斯る制約のある事情の下において店舗賃貸の経営をすることは、原告においてもたとい一時的な仮設建築であつても、その建築資金の全部を自己資金にのみよることが、採算上困難であつたから、この特殊事情を賃借人に諒解せしめて借入をしたものである。賃借人等も又本件家屋が経営上絶好の場所であり短期間の営業によつても十二分に利潤を得られるという見込の下に貸借に応じたものである。従つて消費貸借の内容は次の如きものである。

1、元金の返済期限は家屋賃貸期限と同じく昭和二十五年三月末日とし、阪急の都合により家屋の賃貸借期間が短縮又は延長されたときは返済期限もこれに応じて短縮又は延長せられる。利息は付けない。

2、原告は、右期限が一箇年以内に短縮せられたときは借入金の三分の二を、又二箇年以内に短縮せられたときは借入金の三分の一を返済し、其の余の債務は免除せられる。又三箇年以上の場合は期間の長短に拘らず期間満了の際、賃貸家屋の資材を以て代物弁済せられる。

3 賃借人は右代物弁済の資材を一箇月以内に収去せなければならない。右期間内に収去しないときは原告に於て任意に処分する。

4、賃貸家屋が火災その他の原因で滅失したときは、原告は借入金の返済義務を免れるが、保険金を受領した際はその半額は賃借人に支払い、残つた資材があれば賃借人に引渡す。

従つてこれは家屋の賃貸借に附随した消費貸借であつて、権利金ではなく、結局期限到来により又はその以前にても建物収去土地明渡の阪急に対する約定の履行を確保するためになされたものである。

二、借家法に基く解約の申入、

仮に百歩を譲り、本件賃貸借を以て借家法の適用あるものとし、又被告等主張の如く賃借権の譲渡につき原告の承諾があつたものとしても、原告は昭和二十五年三月末日の期間満了前より賃借人等に対し前記の如く本件家屋の明渡を引続き請求しているから、契約の更新を拒絶しているものというべく、賃借人等がこれに応じないで経過している内前記の如く阪急より昭和二十六年三月二十八日附を以て本件宅地の明渡を強硬に求めてきたので、原告は被告等に対し同年九月末日限り本件家屋の明渡を請求しているから、右は借家法上の解約の申入と解すべく、しかるに被告等はこれが明渡をしないから本訴を以て明渡を求めているのであるから、少なくとも本件訴状の送達により解約の申入があつたものであつて、その後六箇月の経過により本件賃貸借は適法に解約せられたものである。仮にしからずとすれば昭和二十九年二月四日附の本件準備書面を以て解約の申入をなすものである。

而して右更新拒絶並に解約の申入は次に記載する如き事由により借家法第一条の二所定の正当の理由を具備しているのである。

(一)  原告と被告等との本件賃貸借をするに至つた前記の如き事情と本件宅地上の家屋につき賃貸借期限を昭和二十五年三月末日と一様に定めていることは正当性認定の重要なる資料である。阪急の南駅建設の時期が本件賃貸借当時確定的でなかつたにせよ、少なくとも二、三年内に到来することは予想できたのであるから、この点はいわゆる疎開者復帰の場合の終戦の時期が全然予想できなかつたのとは多いに事情を異にするのである。現に阪急は本件宅地の賃貸借期限の到来に際し南駅建設実施のため原告に対しこれが明渡を要求しているし、昭和二十六年七月には大阪府に対し南駅建築認可の申請をし、同年八月これが認可を受けているのである。

(二)  被告等は本件賃貸借期限の満了より既に満四箇年の日時を経過しているのに拘らず、原告の蒙る莫大なる損害をも顧みず、移転先を探すことにつき何等の努力もしていないが、斯の如きは社会共同生活上の信義誠実に反し社会正義を無視するものである。

(三)  被告等は一、二箇年の短期間でも店舗の経営により十分利益を得らるる見込で賃借したものであるが、その後既に六箇年以上を経過し莫大なる利益を得ており、又社会情勢は安定し、経済界も落付をとりもどしているのである。従つて、当初の賃借人は大部分この間に賃借権を無断譲渡し、或は無断転貸して他に店舗を求め、自宅を郊外に求め、現在は不法占拠者等も大部分が使用人を居住せしめて、店舗を経営している実情である。

(四)  元来阪急南駅は昭和三年当時の計画であつて、昭和十一年当時既に梅田駅構内の狭隘、交通量の増大、乗降客の輻輳雑沓緩和のため、早急に建設せらるべき必要があつたので、本件宅地が確保せられたもので、その後戦時及終戦後の事情のため遅れたものであるが、阪急はその間本件宅地に板囲をして空地の儘これを確保していたのである。昭和二十三年六月以降阪急駅前の交通遮断により現在梅田駅構内は国鉄大阪駅の乗降客の通路となり、雑沓甚しく交通上の危険を増大していることは公知の事実である。昭和二十六年八月当時の梅田駅構内は乗降客数も昭和十二年当時の約二倍半で一日平均二十七万二百八十八人に増加し、現在は一日平均三十四万百五十人になつているのみならず日曜祭日には更に客数が増大するのである。従つて南駅の建設が遅延することにより一般公衆に甚大なる影響を及ぼすものである。

被告等も本件家屋明渡により多少の損害を蒙ることはあつてもこれを原告、阪急及び一般公衆の蒙る損害に比すれば全く僅少であつて、当事者間の利害の比較衡量という点より考えても本件解約の申入は正当の事由があるものである。

(五)  元来借家法第一条の二は住宅難が深刻化した際借家人の住居の保護を計るため制定せられた規定であるところ、本件家屋は一般借家関係とは当初より事情を異にし、住居ということは従であつて、店舗営業による利潤の獲得ということが主となつて考えられ、その趣旨を以て本件賃貸借契約も締結せられたものである。しかるに被告等は前記の如く莫大なる利益を得て所期の目的を達しているのである。従つて本件解約の申入は正当の事由があること明らかである。

第五、解約申入に関する原告の主張に対し被告等が主張した事実

(一)  原告が解約申入の正当事由として主張する諸点の中特に力説するところは、本件家屋の賃貸借が解約せられないことによつて、阪急が南駅を設置することができないという点である。しかしながら本件賃貸借の当事者は原告と被告等であり、賃貸借契約解約の正当の事由の有無は賃貸人と賃借人の目的建物を必要とする事情を比較することによつて判断されるべきものである。さすれば賃貸人たる原告はその主張に従えば本件宅地を阪急に返還するため本件家屋の賃貸借契約を解約する必要があるということにつきるのであり、阪急が本件宅地を如何に使用するかは解約の正当事由とは何等のかゝわりがないことといわなければならない。そこで原告が本件宅地を阪急に返還したいという必要度は、被告等の後述の如き本件家屋を必要とする事情と比較するときは到底問題となり得ない程度のものであつて、原告主張の解約は正当の事由がないのである。

(二)  原告は被告等が他に住居を有し又他の店舗を求める資力を有すると主張するが、被告等は右主張を否認する。被告等は本件家屋を居住並に営業に使用しこれを唯一の生活の根拠として、辛じて生活の資を得ているのである。又現在の状勢下では住家を求めることは通常の手段を以てしては殆んど不可能というべく、まして店舗付住宅等は莫大なる代金を以てしなければ入手できなく、被告等の到底よく支弁し得るところではないのである。

(三)  被告等は本件家屋で相当永く飲食店その他の営業に従事しているので、本件家屋を中心としてその附近の人々を顧客に持つものである。しかも被告等の営む飲食店等の営業の顧客はいわゆる定連であつて、他の営業に比し、その場所的関係が重視せられ、これを移転することは甚しく不利益を伴うものである。

第六、証拠

〈省略〉

理由

訴外花田鶴雄、森田ハル子、寺本栄子、平野慎治郎及び東洋企業株式会社が原告から原告主張の日時、原告主張の家屋を、原告主張の如き家屋利用料を支払う約で賃借したこと、及び右家屋利用料がその後原告主張のとおり値上げされたことは当事者間に争いがない。

原告は右は期間を昭和二十五年三月末日迄と定めた一時使用のための賃貸借であると主張するに対し、被告等は期間の定めはなく、又借家法が適用せられる賃貸借であると主張して争つているので、先ずこの点を判断することとする。

家屋の賃貸借が一時使用のためのものか否かは、借家人側の事情に左右せられることが多く、又一時使用の賃貸借は一年未満の期間のものが多いけれども、必ずしもそのように限定せられるものではなく、賃貸借の動機、目的、家屋敷地の使用関係目的家屋の構造、性質、その他諸般の事情を綜合して決せらるべきことである。家屋の所有者と敷地の所有者が異なり敷地所有者が他に使用目的を有する土地を、家屋所有者において敷地所有者が右目的のため使用するに至る迄の短期間、賃貸するための店舗用仮設建物を建築所有する目的で、一時的に賃借しているため、敷地をその所有者に返還する必要上、右敷地上に仮設建物を建築した家屋所有者が永続的な賃貸借契約を締結することを欲せず、専ら一時使用のためにのみこれを賃貸する意思であつて、賃借人にもその旨を説明して諒解せしめ、賃貸借契約証書にも特にその旨を明記し、且解約権を留保してなされた家屋の賃貸借は、たとい数年間の賃貸借期間が定められてあつても、又賃貸借契約上敷地所有者よりその継続使用が許容せられたときは、その範囲内において賃貸借の更新又は継続をすることが予定せられている場合でも、一時使用のためのものと解するを相当とする。

そこで成立に争いのない甲第一号証の三、六、七、九、第七、八号証、第十二号証の一乃至五、第十三号証、第十五号証、右第十二号証の二、三及び第十三号証により真正に成立したことが認められる同第三、四、六、九号証、第十号証(但し官公署作成部分の成立は争いがない)と証人小塩太吉、花田鶴雄の各証言を綜合して考えると、

阪急(当時の商号は阪神急行電鉄株式会社)は、昭和三年頃大阪市都市計画のため、その梅田駅(梅田停留所と称していた)の東南西三方において道路沿の敷地約百五十坪を収用せられたため、同駅の待合所として使用できる面積は約三百六十坪となり、混雑するようになつたので、大阪市長に対し、本件宅地の隣地である旧曽根崎警察署跡地(現在の阪神ビル敷地)を、右収用地の代地として換地するように陳情していたが、大阪市長はこれを他に売却したのでこれが換地を受けられなかつたこと、

その後大阪市都市計画大阪駅前土地区劃整理により、阪急はその附近所有地の代地として、昭和十二年暮頃に本件宅地の仮換地を受け、昭和十五年三月十九日頃換地認可により、これが所有権を取得したこと、

これよりさきに、本件宅地は昭和十一年一月十三日大阪府令第五号により、市街地建築物法施行令第十一条の規定による第二種乃至第四種の区域に指定せられ、これが地上には、表通りに面する第二種区域に在りては十七メートル以上、裏側の第三種区域に在りては十四メートル以上、同第四種区域に在りては十一メートル以上の高層建築物にあらざれば建築が許されなく、特別の事由があるときに限り、存続期間を付して仮設建物の建築が、許可せられるに過ぎなかつたこと、

阪急は本件宅地に前記梅田駅の延長としての南駅を建設する計画を立てゝいたが、支那事変に続く大東亜戦争による統制で高層建築をするに足る資材を入手することが困難であつたため、右計画が実現するに至らず、その間本件宅地を板塀及び鉄条網を以て囲つて空地の儘で保管していたこと、

ところが、終戦後の混乱時代になると各所で囲いを破つて本件宅地に侵入し、バラツク等を建てる第三国民等が続出し、警察等も微力でこれが取締を期待することができなく、その儘の状態で放置するときは、本件宅地全部がこれ等の者に不法占拠せられる虞れを生じたこと、

本件宅地は前記の如き事情があるので、阪急としては他に賃貸することのできない土地であつたけれども、弁護士として右の如き紛争解決の経験者であり、又阪急と以前から深い関係のある訴外深川重義より、仮設建物を建築して本件宅地を管理すれば、不法占拠の防止が容易であり、且阪急において南駅建設の見込がつき必要となり次第賃貸借期間内でも直に明渡の要求に応ずるから、臨時的な仮設建物による商店街を建築するため貸与せられたいとの懇請があつたので、阪急においては、南駅の建設迄は本件空地の必要がなく、且南駅建設のためには、それ迄本件宅地を不法占拠者から防衛して保管しておくことが、絶対に必要なことであつたため、右申出に応じて当時予想せられていた南駅建設開始の時期である昭和二十五年二月頃迄これを一時的に賃貸することになつたこと、

そこで右訴外人は阪急の現役並に追放幹部等と共に発起人となり、昭和二十二年二月五日頃右商店街の経営等を目的とする原告会社(商号は設立当時は株式会社浪花商店街であつたが約一箇月後に現在の如く変更)を設立し、これが代表取締役に就任して、同月十日頃原告会社の代表者として阪急との間に本件宅地の賃貸借契約を締結したこと、

右賃貸借につき、(1) 本件宅地上に建築されるものは土壁を用いない仮設建物に限り、建物その他を設置する際は、事前にその内容を阪急に明示の上諒解を得るものとし、(2) 期間は昭和二十二年二月十日より昭和二十五年二月九日迄とし、満了の三箇月前に双方協議の上更新することを得るものとする。(3) 右は阪急において梅田駅建設計画を有する土地の暫定的賃貸借なるにつき、右期間内といえども、阪急において必要を生じたときは原告の責任に於て地上建物を完全に収去して明渡し、阪急の右建設計画にいさゝかも支障を生ぜしめないものとすることが、契約の内容として特約せられたこと、

阪急は、右賃貸借が南駅建設の障害となることをおそれ、右契約に際しては永続的な賃貸借を締結するものではないことが特に強調せられ、そのため、賃貸借契約書にも本件宅地の性質と、暫定的な賃貸借なることが明記せられており、阪急は右の如く期間中に於ける解除権を留保し、又本件宅地上の建物を仮設建築に制限した上その構造についても事前に阪急の諒解を要することとしているのであつて、(2) の更新に関する約定も更新を予約したものではなく、万一南駅の建設が予定どおり開始できない場合に備えたものであること、

原告会社は、その後阪急の諒解を得た上で、本件宅地上に間口は二間又は一間半、数戸建又は一戸建の木造片屋根スレート葺平家建(但し外観上二階建に見せるため表側上部にめくら窓を作る)の店舗用家屋を二十数棟建築して、これを被告等外数十名に賃貸したが、右家屋は二、三年間の耐久力があればよいとの請負契約により建築せられたものであつて、その基礎にも石を使用せず数枚の煉瓦を敷いた程度で、壁も請求契約では板張となつていたものを請負人が勝手に隣家間の境界等を土壁にした外は全部板張とした全くバラツク式の仮設建物であつたところ、賃借人等において、その後これを別紙物件目録の如く二階建に増改築したこと、

右家屋の賃貸借(本件賃貸借はその一部)は、いずれも原告会社で印刷した同一様式の用紙により契約書を作成して締結されたものであり、賃貸借期間は契約の時期に拘らずいずれも昭和二十五年三月末日迄と定められたが、右契約書には、(1) 期間満了の際、阪急より敷地の継続使用を許容されたときはその範囲内で賃貸借契約を更新又は継続することがある(第六条)、(2) 契約の更新又は継続は必ず書面による合意を要し、単に期間満了後引続き家屋を使用する事実だけでは契約の更新又は継続とは認めない(第七条)、(3) 期間満了前にあつてもやむを得ざる事情ができたときは、原告会社は一箇月の予告期間を置いて賃借人に明渡を要求することができる。(第五条二項)、(4) 家屋の敷地は阪急の所有であつて、阪急は他に使用の目的があつたものを原告会社の懇請によつて特に一時貸与を許容せられたものであるから、賃借人はその趣旨をよく諒承して、阪急から要求があつたときは期間内であつても速かに目的家屋を明け渡して、阪急の事業に支障を生ぜしめないことを確約する(第十八条)、(5) 賃借人が明渡を遅滞したときは約定家屋利用料の十倍に相当する損害金を支払う(第十七条)旨の特約条項が明記せられてあり、原告会社は賃貸に際し賃借人に契約書を渡して通読させ、その内容を説明して賃借人に諒解させた上で、契約を締結したこと、

その後昭和二十三年六月頃前記梅田駅南正面の南北通路が一般の通行禁止となり、国鉄大阪駅の乗降客が右梅田駅の構内を通過して混雑が一増甚しくなつたので、南駅建設の必要性が更に増大し、阪急では大阪府に対し同駅建築出願の接渉をしていたが、資材等の見通しもつくようになつたので、昭和二十六年七月正式にこれが出願をし、同年八月に建築が許可せられたこと、

が認められる。乙第三号証の三、五、証人吉田照顕及び崔竜鶴の各尋問調書中の右認定に反する供述部分は前記の証拠と対比して信用できなく、他に右認定を覆すに足る証拠がない。そして右認定の事実によると本件各家屋の賃貸借は原告主張の如く一時使用のためのものなることが明らかであり、原告が昭和二十五年二月頃以降本件各家屋の賃借人等に対し再三に亘り賃貸家屋の明渡を要求した旨の原告の主張事実は被告等において明らかに争わないところであるから、本件各賃貸借は昭和二十五年三月末日の期間満了と共に終了したものといわなければならない。

そして被告かどやは昭和二十五年十二月頃訴外花田鶴雄から原告主張(1) の家屋の賃借権の譲渡を受け、被告細野は同年十二月頃訴外森田ハル子から原告主張(2) の家屋の賃借権の譲渡を受け、被告磯部は同年七月頃訴外寺本栄子から原告主張(3) の家屋の賃借権の譲渡を受け、被告稲本は昭和二十四年十二月頃訴外平野慎治郎から原告主張(4) の家屋の賃借権の譲渡を受け、被告阪神薬局は同年二月頃訴外東洋企業株式会社から原告主張(5) の家屋の賃借権の譲渡を受けたことは当事者間に争いがない。

そこで成立に争いのない甲第一号証の六、七、九、乙第一号証の二、三、四、証人小塩太吉(一部)、花田鶴雄、浦野芳雄(一部)の各証言、右証言により成立を認め得る甲第二号証の四乃至九、被告株式会社かどや代表者神谷藤吉、被告細野松一、磯部マリ子、稲本豊、被告有限会社阪神薬局代表者浦野清五郎各本人尋問の結果(一部)を綜合して考えると、原告は右訴外人及び被告等よりそれぞれ右賃借権譲渡の承諾を求められたが、前記の如く本件宅地の賃貸借期間が既に終了して阪急よりこれが明渡を要求せられていて、当時本件各家屋の賃貸借期間も昭和二十五年三月三十一日満了したのでこれが明渡を求めたが、賃借人等がこれに応じなく、原告より阪急に対し本件宅地の使用期間の延長を懇請して接衝中であつたため、被告等に対し右事情を説明して本件各家屋の賃貸借期限が既に終了していることを了解させた上、被告かどやについては昭和二十五年十二月十六日、被告細野については同月七日、被告磯部については同年七月一日、被告稲本については昭和二十六年二月二十八日、被告阪神薬局については昭和二十五年九月一日右賃借権の譲渡を承諾したことを認めることができ、右認定に反する各証人並に本人の供述は他の証拠と対比して信用できない。

右認定の事実によると原告の右承諾により原告と被告等との間は本件各家屋につき期間の定めのない一時使用のための賃貸借関係が生じたものと解するを相当とするところ、原告が昭和二十六年三月頃被告等に対し同年九月末日限り賃貸家屋を明け渡すように催告した旨の原告の主張事実は被告等において明らかに争わないところであるから、右各賃貸借関係は昭和二十六年九月末日限り終了し、被告等はいずれも賃借家屋を明け渡すべき義務があるものといわなければならない。

しからば、所有権に基き、被告かどやに対しては前記(1) の家屋の明渡を求めると共に本件訴状送達の翌日である昭和二十七年四月八日以降右明渡済に至る迄家屋利用料相当の一箇月につき金千五百円の割合による損害金の支払を求め、被告細野に対しては前記(2) の家屋の明渡を求めると共に本件訴状送達の翌日である同月十一日以降右明渡済に至る迄前記家屋利用料相当の一箇月につき金二千三百四十円の割合による損害金の支払を求め、被告磯部に対しては前記(3) の家屋の明渡を求めると共に本件訴状送達の翌日である同月八日以降右明渡済に至る迄前記家屋利用料相当の一箇月につき金二千四百七十円の割合による損害金の支払を求め、被告稲本に対しては前記(4) の家屋の明渡を求めると共に、本件訴状送達の翌日である同日以降右明渡済に至る迄前記家屋利用料相当の一箇月につき金三千円の割合による損害金の支払を求め、又被告阪神薬局に対しては前記(5) の家屋の明渡を求めると共に、本件訴状送達の翌日である同日以降右明渡済に至る迄前記家屋利用料相当の一箇月につき金三千四百四十五円の割合による損害金の支払を求める原告の本訴請求は正当であるから、これを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十三条を、仮執行の宣言につき同法第百九十六条をそれぞれ適用して主文の如く判決する。

(裁判官 乾久治 前田覚郎 白須賀佳男)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com