大判例

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大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)1503号 判決

三和銀行

事実

原告は、(一)金額金二一五、〇〇〇円、振出日昭和二八年九月三〇日、満期同年一二月一六日、支払地及び振出地共に大阪市、支払場所株式会社三和銀行八尾支店、振出人被告関西通運株式会社、名宛人及び裏書人被告丸三商事株式会社なる約束手形及び(二)金額金二五五、〇〇〇円振出日同二八年一〇月二一日、満期同二九年一月二五日振出人被告花田、支払地振出地、支払場所、名宛人及び裏書人はいずれも(一)と同様な約束手形の所持人であるが、これを右満期に右支払場所において支払のため呈示したところ、その支払を拒絶されたから、被告関西通運、同丸三商事に対し(一)の手形金、被告花田、同丸三商事に対し(二)の手形金と各右満期の日から完済に至るまで、年六分の割合の損害金の支払を求めるため本訴に及んだ。

被告関西通運及び同花田は、各前記(一)、(二)の手形を被告丸三商事宛に振出交付した事実を否認し、原告が右各手形の正当な所持人であることを争い、被告丸三商事の代表取締役松原某が昭和二八年九月ごろ被告関西通運に、また同年一〇月ごろには被告花田に「手形の割引をしてくれる人があるが、手形の見本を割引人に見せると信用を調査し割引してくれるので、割引人に見せるための手形を書け、決して該手形自体を使用したり割引いたりしない」旨申し出たので、右被告等は信用調査のための見本手形として、単に手形要件の一部のみを手形用紙に記入し、これに振出人名義の署名押印をして被告丸三商事に交付したものであるが、前記松原は右各手形用紙の空白部分をほしいままに補充し原告主張(一)(二)の約束手形として完成のうえこれを不正に使用したものであるから、原告は正当に手形上の権利を取得しうるいわれはないと主張した。

被告丸三商事は、同被告が原告に本件(一)(二)の手形交付をした事実は否認したが、その余の原告主張事実は認めた。

(爾余の争点省略)

理由

証拠によると次の事実が認められる。被告関西通運では昭和二八年九月ごろ他から資金の融通を得る必要に迫られていたところ、たまたま被告丸三商事の代表取締役である松原から被告関西通運の専務取締役である被告花田に対し手形割引による融資の途がある旨の話があつたので被告花田において、(一)一方は振出人名義を関西通運として支払地振出地共に大阪府八尾市、支払場所株式会社三和銀行八尾支店と記載し、満期、振出日、受取人及び金額の記載なき約束手形を、(二)他方は振出人名義を被告花田個人として、支払地振出地及び支払場所は前同様に記載し、満期、振出日受取人及び金額の記載なき約束手形を各作成のうえ手形割引人に見本手形として供覧させて信用調査の機会を与え、かつ割引の交渉が成立した際は被告花田が自ら手形要件を補充する約旨のもとにそれぞれ松原に手交した。そして松原は、昭和二八年九月ごろ原告からミシン七三台を代金四七〇、〇〇〇円で買付け、その代金の支払として、右の経緯によつて手交を受けた手形のうち(一)の手形については振出日昭和二八年九月三〇日、金額二一五、〇〇〇円満期同年一二月一六日、受取人被告丸三商事と、(二)の手形については振出日同年一〇月二一日、金額二五五、〇〇〇円、満期同二九年一月二五日と各記入のうえ、第一裏書人らんに被告丸三商事の署名押印をなし、それぞれの手形を原告に交付した。以上の事実が認められる。

ところで、手形要件の一部だけを記載して振出の署名をなし、割引可能の場合は自らその他の手形要件を記載すべき約旨のもとに手形を交付して金融方を依頼した者は、受任者が委託の趣旨に反して自ら手形金額その他の要件を補充しこれを流通においたとしても、善意取得者に対しては責任を免れ得ないと解すべきところ、本件の場合は、証拠によれば原告が本件各手形について裏書の連続ある正当な所持人であることが明らかであり、かつ原告が悪意または重過失によつて右各手形を取得したことを認めるに足る証拠はないから原告は善意取得者として、被告関西通運及び同花田に対し振出人としての責任を追及しうべき地位にある者といわねばならない。また原告が被告丸三商事より本件各手形を正当に裏書によつて譲受けたものであることは右に判示したとおりであるから原告に対し裏書人としての責任を免れることができない。よつて原告の請求は正当として認容すべきである。

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