大判例

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大阪地方裁判所 昭和41年(む)201号 決定

被疑者 前田裕晤

決  定 〈被疑者氏名略〉

右の者に対する建造物侵入ならびに威力業務妨害被疑事件について、昭和四一年五月一七日、大阪地方裁判所裁判官露木靖郎のした勾略請求却下の裁判に対し、検察官から適法な準抗告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一  本件準抗告申立の趣旨および理由は、大阪地方検察庁検察官細谷明作成名儀の「準抗告および裁判の執行停止申立書」記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

二  よつて審案するに、本件記録に徴すれば、被疑者が勾留請求のなされている被疑事実を犯したと疑うに足りる相当な理由のあることが認められる。

三  そこで被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとの検察官の主張について判断する。

(一)  本件建造物侵入ならびに威力業務妨害行為が多数の者によつて敢行されたとの客観的事実については、本件記録により明らかに認められるところであつて、この点に関して罪証隠滅の余地はない。

(二)  問題は被疑者が右犯行に関与したかどうか、関与したとしてその程度はどうかである。この点に関し被疑者は、まだ充分な供述をなさず、上部団体よりの指示、指令関係、事前の謀議行動ならびに自己が指揮した集団の構成、人数などについて供述を回避している。しかしながら、このように被疑者が事実の一部を黙秘しているからといつて直ちに罪証隠滅の虞あるものと云いがたいのはもとよりである。被疑者の供述は、それ自体罪責を認めるのには不十分ではあるけれども、集団の一員として本件支援行動に参加し、犯行現場に居合せて指示をしたことは認めているのであるから、一応自己の刑責はこれを認める態度を示しているものというべく、右一部の黙秘は自己の責任の拡大の防止というようも、むしろ自己の供述による他への責任の波及を虞れてのものと解せられる。従つて、被疑者において今後事件関係者に働きかけて自己に有利な供述を求める可能性が大であるとは認めがたい。また、すでに取調べずみの関係者の供述中には被疑者の刑責を認めるに足りる部分があり、それらについて詳細な検察官面前調書が作成されている。これらの事情からみると、今後被疑者による罪証隠滅の余地は少いと考えられる。

(三)  本件犯行による第一次検挙者が釈放されて後、被疑者を含む関係者約三〇名が一堂に参集し、弁護人から捜査に対応する方策を示唆された事実は、一応認められるところであるが、そのこと自体罪証隠滅を図つたものと断定するには疑問があるのみならず、右の会合が被疑者の発意にかかるものであるとか被疑者が席上積極的な発言をしたと認められる資料はないから、右事実の存在をもつて直ちに罪証隠滅の虞あるものとはなしがたい。

(四)  その他本件記録を検討しても被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由を発見しがたい。

四  他に勾留の理由および必要を認めるに足る疎明はない。

五  そうすると、被疑者に対する勾留請求を却下した原裁判は相当であり、本件準抗告の申立は理由がないから、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 河村澄夫 岡次郎 岡田春夫)

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