大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

大阪地方裁判所 昭和42年(手ワ)2961号 判決

原告 吉田利義

被告 藤井産業株式会社

右代表者代表取締役 藤井幸一

〈ほか二名〉

主文

一、被告等は各自、原告に対し、金三、七九一、六四九円、及び、これに対する昭和四二年九月一六日から、完済まで、年六分の金員を支払え。

二、訴訟費用は被告等の負担とする。

三、この判決は、仮に執行することができる。

四、被告会社において金一〇〇万円の担保を供するときは、同被告に対する右仮執行を免がれることができる。

事実

原告は、主文第一、二項と同旨の判決、ならびに、仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、

「原告は、訴外田口邦夫から、被告会社振出にかかる、

金額を 金三、七九一、六四九円

満期を 昭和四二年九月一五日

振出地及び支払地を 大阪市

支払場所を 株式会社三和銀行四貫島支

店振出日を 同年七月一日

受取人兼第一裏書人を被告藤井

第一被裏書人兼第二裏書人を 被告下津

第二被裏書人を 前記訴外人

とした約束手形一通の裏書(以上の各裏書については、すべて拒絶証書作成義務が免除されている。)を受けたので、満期日にこれを支払のため支払場所に呈示したところ支払を拒絶されたから、ここに、振出人たる被告会社、裏書人たるその余の被告二名に対し、右手形金及びこれに対する満期の翌日から完済まで、手形法所定年六分の利息金の合同支払を求める。」

と述べた。

被告会社及び被告藤井は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決、ならびに、被告両名敗訴の場合における担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求め、答弁として、

「一、原告主張の事実中、被告会社が本件手形を振出し、被告藤井がこれに裏書したことは、いずれもこれを認めるが、その余の事実は知らない。

二、被告会社が、その代表取締役たる被告藤井に対して手形を振出すことは、商法第二六五条にいわゆる取引に該当し、被告会社取締役会の承認を要するところ、本件手形の振出については右承認がなされていないし、又これを追認したこともないから、右振出は無効である。

尤も、本件手形には、「昭和四二年七月一日開催された被告会社取締役会において承認した。」旨記載された符箋が貼付されているけれども、右は、被告下津の要請により、被告藤井が作成して貼付したに過ぎず、右承認は与えられていない。

前記のとおり、本件手形の振出が、商法第二六五条の取引に該当することは、本件手形を一見して明瞭であるから、これを取得する原告において、被告会社の取締役会議事録を調査する等して右承認の有無を確認すべきであるのにかかわらず、原告はこれをしなかったのであって、この点において原告には重大な過失がある。」

と述べた。

被告下津は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、「本件手形金は振出人に請求すべきものであるから、被告には支払義務がない。」と述べた。

理由

一、原告主張の請求原因事実は、被告下津において明らかに争わないところであるからこれを自白したものとみなすべく、又、被告会社及び被告藤井との関係においては、被告会社が本件手形を振出し、被告藤井がこれに裏書したことは当事者間に争いがなく、その余の事実は、弁論の全趣旨によってこれを肯認することができる。

二、被告藤井及び下津の主張は、それ自体原告の本訴請求を拒否する理由とならない(被告藤井は裏書人として、本件手形振出の有効無効にかかわらず、手形文言に従って責任を負うべきものであることはいうまでもない。)。

三、被告会社は、被告会社の代表取締役たる被告藤井が、自らを受取人として振出した本件手形の振出は、商法第二六五条にいわゆる「取引」に該当し、これについて被告会社取締役会の承認ないし追認を得ていないから右振出が無効であると主張し、本件手形振出人と受取人の関係が同被告主張のとおりであることは弁論の全趣旨によって認められるけれども、およそ手形の振出は、単に取引の手段として用いられるに過ぎず、それ自体右法条にいわゆる「取引」に該当するものではないと解すべきである(右見解と異なる最高、昭和三八年三月一四日判決、民集一七巻二号三三五頁の見解は、当裁判所の採らないところである。)から、被告会社の本件手形振出が右法条にいわゆる「取引」に該当することを前提とする被告の主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

尤も、右のような手形振出の原因関係となった、会社とその代表取締役個人との間の契約その他の行為が、右法条規定の行為に該当し、これについて取締役会の承認を得ていないときは、原因関係たる行為が無効であることはいうまでもなく、これについて手形権利者(代表取締役個人から裏書を受けた者)が悪意であるときにおいては、会社は、右権利者に対し、手形法第一七条但書により、原因関係の無効―不存在―を理由として手形金の支払を拒み得ると解すべきであるけれども、本件において被告は右主張をしていない。

四、してみると、振出人たる被告会社、裏書人たる被告藤井及び下津は、合同して原告に対し、本件手形金及びこれに対する満期の翌日から完済まで、手形法所定年六分の利息金を支払う義務があるわけであるから、これが支払を求める原告の本訴請求を正当として認容し、民事訴訟法第八九条、第一九六条第二及び第三項を適用して、主文のとおり判決する(なお、被告藤井について、仮執行免脱宣言を付するのは相当でないと認めるから、これを付さない)。

(裁判官 下出義明)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com