大判例

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大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)3556号 判決

原告 不動信用組合

右訴訟代理人弁護士 村本一男

被告 大阪厚生信用金庫

右訴訟代理人弁護士 米田宏已

被告 株式会社大和銀行

右訴訟代理人弁護士 佐藤武夫

同 河合宏

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

〈全部省略〉

理由

〈前略〉

原告は、第一、二目録記載の預託金返還債権の譲渡は許されないから訴外会社と小沢義治との右債権譲渡契約は無効であると主張し、その譲渡の許されないとする根拠を請求原因第六項に掲げているので、これについて順次検討する。

(一)  まず預託金返還請求権が性質上譲渡を許さない債権であるという原告の主張について判断する。

(1)手形交換規則上、交換手形を不渡として返還した支払銀行がその不渡を手形債務者の信用に関しないものと認め、手形金額に相当する現金を手形交換所に提供し、不渡届に対する異議の申立をしたときは、取引停止処分が猶予され、またその提供金は所定の事由が生じたとき支払銀行に返戻されることになる。そしてかかる異議申立の手続は通常手形債務者が支払銀行にその手続をとることを委託することに基づいて行われ、その委託をするに当り、手形債務者は支払銀行が異議申立をするに要する提供金に見合う資金とする趣旨で手形金額に相当する金員を支払銀行に預託するのである。かようなわけで預託金は当該不渡手形の手形債権の支払を担保するものでも、手形金の支払を拒絶する事由のないことが確定したとき手形債権の支払に充てる目的で預託されるものでもない。ただ預託金の右趣旨からみて、支払銀行が手形交換所から提供金の返戻を受けるまで支払銀行の手形債務者に対する預託金返還債務の履行期は到来しないものと解すべきである。したがって支払銀行は提供金の返戻を受けるまで預託金返還債権の譲受人に対してもその返還を拒絶しうるのである。それ故預託金返還債権は債権者の変更によって、給付の内容ないし債権行使の仕方に差異を生ずるものではない。

(2)不渡届に対する異議の申立をするに当り手形金相当額の金員を提供させるのは、手形債務者に支払の能力があり不渡がその信用に関しないものであることを明らかにさせることにより、取引停止処分を回避するために異議申立が濫用されることを防止しようとするにあると解されるが、異議申立は支払銀行において不渡が手形債務者の信用に関しないものと認めたとき提供金を提供して自己の名で行うのであり、手形債務者が預託金を預託しなければ支払銀行において不渡を手形債務者の信用に関しないものと認めることができず、したがって異議申立をすることもできないとする根拠はない。ただ異議申立は前叙のとおり一般に手形債務者が提供金の見返資金として預託金を支払銀行に預託し異議申立手続をとることを委託したときこれに基づいて行われる関係から、異議申立が行われる前に手形債務者は預託金を預託することによって事実上自己に手形金を支払う資力がありその支払拒絶が資力の不足によるものでないことを明らかにすることになるのである。したがって、提供金が返戻されるまでの間に手形債務者が預託金返還債権を他に譲渡することは好ましくないとしても、その譲渡が直ちに異議申立をするには提供金の提供を要するとする手形交換規則の趣旨に反し許されないということはできない。

(3)預託金返還債権が支払銀行と手形債務者の間でのみ決済しなければならないとする特段の理由は見出しがたい。

以上要するに、預託金返還債権はその給付の性質上債権発生当時の債権者である手形債務者以外の第三者に対し履行したのでは本来の目的が達せられないというようなものではないのであり、預託金返還債権がその権利の性質上譲渡を許されないとする原告の主張は理由がない。

(二)  次に原告は提供金返還債権が手形交換規則に基づく取扱上譲渡を禁止されているから、預託金返還債権もまた譲渡を禁止されると解すべきであると主張する。しかし提供金と預託金との関係は既に述べたとおりであり、前者の返還請求権の譲渡が禁止されたからといって、これにより当然に後者の返還請求権の譲渡が禁止されたと解すべき理由はない。

(三)  次に原告は預託金返還債権の譲渡を禁止する商慣習法ないし事実たる慣習が存在すると主張するが、昭和四一年三、四月当時かかる慣習法ないし慣習が存在したことを認むべき資料はない。

(四)  さらに原告は訴外会社と各被告との間で第一、二目録記載の預託金返還債権の譲渡を禁止する旨の特約が結ばれたと主張するが、これを肯認するに足る証拠はない(証人土堤内利夫の証言によると、被告銀行は昭和四三年四月以降預託金の預託を受けるに当りその返還債権につき譲渡禁止の特約を結ぶ取扱をするようになったが、それ以前にはかかる取扱をしていなかったことが認められる)。

そうすると訴外会社と小沢の間の第一、二目録記載の預託金返還債権の譲渡が無効であるとする原告の主張は理由がないから、結局原告の本訴請求は失当として棄却するほかなく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 石川恭)

〈以下省略〉

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