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大阪地方裁判所 昭和48年(ワ)2756号 判決

原告 交洋木材株式会社

被告 杉本徳造

主文

被告は原告に対し、金七五万二、四六二円およびこれに対する昭和四八年六月一日以降完済まで日歩八銭の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は三分し、その一を原告の負担、その余を被告の負担とする。

この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。被告において金五〇万円の担保を供するときは、右仮執行を免れることができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

(1)  被告は原告に対し、金二二五万七、三八六円およびこれに対する昭和四八年六月一日から完済に至るまで日歩八銭の割合による金員を支払え。

(2)  仮執行宣言。

二、請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、請求原因

(1)  被告は昭和四六年六月二二日原告に対し、訴外林梱包株式会社(以下訴外会社と称す)が原告に対し、現在および将来負担する一切の債務につき右訴外会社と連帯してその支払履行の責に任ずる旨の連帯保証をした。

(2)  昭和四七年五月一九日、原告と訴外会社間の大阪簡易裁判所昭和四七年(イ)第三〇五号即決和解事件において、訴外会社は、原告に対し、昭和四七年四月六日現在金五三九万一、八二〇円の買掛金債務を負担していることを承認し、これを左記の通り分割して支払うこと、訴外会社は、毎月、左記支払期日限り当該の金員を原告方へ持参または送金して支払うこと、訴外会社が前記の債務の履行を一回でも遅滞したときは、原告の催告の手続を要せず訴外会社は、その残額について当然に期限の利益を失い、ただちに残額の全部を支払わなければならないこと、及び、訴外会社は、支払期日を経過した金額については日歩八銭の割合による遅延損害金を付加して支払うことを約した。

支払期日        金額

昭和四七年四月二五日 金二二万三、九二二円

同年五月五日     金二八万八、五七八円

同年六月五日     金二九万六、九七四円

同年七月五日     金三〇万五、三八六円

同年八月五日     金三〇万二、八九四円

同年九月五日     金二九万九、三五六円

同年一〇月五日    金二九万七、九〇六円

同年一一月五日    金二九万四、五三二円

同年一二月五日    金二九万二、九二四円

昭和四八年一月五日  金二九万〇、四三二円

同年二月五日     金二八万六、〇一〇円

同年三月五日     金二八万五、四四七円

同年四月五日     金二八万二、四七二円

同年五月五日     金二八万〇、四六二円

同年六月五日     金二七万七、六四八円

同年七月五日     金二七万五、四七七円

同年八月五日     金二七万二、九八五円

同年九月五日     金二七万〇、四一二円

同年一〇月五日    金二六万八、〇〇〇円

(3)  ところが、訴外会社は、原告に対し、昭和四七年四月二五日金二二万三、九二二円、同年五月五日金二八万八、五七八円、同年六月五日金二九万六、九七四円及び同年七月五日金三〇万五、三八六円合計金一一一万四、八六〇円を支払つたのみで同年八月五日支払うべき金三〇万二、八九四円の支払をしない。

従つて、訴外会社は、昭和四七年八月六日、期限の利益を失ない、残額金四二七万六、九六〇円を原告に支払わねばならなくなつた。

(4)  その後、同四八年五月三一日、原告は右債権の内金二〇一万九、五七四円の弁済をうけたから、被告に対し、連帯保証債務の履行として残金二二五万七、三八六円およびこれに対する同年六月一日以降完済まで日歩八銭の割合による約定遅延損害金の支払を求める。

(5)  仮に被告が訴外林正治(訴外会社代表取締役)に対し連帯保証をなす代理権を授与していなかつたとしても、昭和四六年六月ころ、被告は、訴外林に対し訴外会社の債務に対する担保権設定のための包括的代理権を授与していた。なお、被告は、昭和四六年七月一七日訴外林正治の訴外大阪府中小企業信用保証協会に対する債務の担保として自己所有の土地建物に元本極度額金五〇〇万円の根抵当権を設定したが、そのための代理権も授与していた。訴外林は、このような基本代理権に基き、昭和四六年六月八日頃から同月二二日頃まで被告の実印を預り、被告の印鑑証明書の下付をうけて、同年六月二二日原告との間に前記連帯保証契約を締結するに際しては、被告の代理人として、被告の実印を押してある保証書と印鑑証明書を持参したので原告は、訴外林の行為はその代理権の範囲内の事項であると信じたのであり、前記事情の下では、右のように信ずるにつき正当な理由がある。

よつて、原告は、予備的に表見代理の主張をなし、請求の趣旨記載金額の支払を求める。

二、請求原因に対する認否および被告の主張

(1)  請求原因(1) の事実は否認する。同(2) (3) の事実は不知。同(4) のうち、原告が主張の額の内入弁済をうけた事実は認め、その余の主張は争う。

(2)  被告は、訴外会社代表取締役林正治とは、知合いであるが、同会社が原告に対し債務を負担していることは知らないし、右債務につき保証人となるよう依頼されたこともない。本件保証に関し原告からも、問合わせや通知を受けたことはない。

(3)  被告は訴外林正治に被告の実印を交付したことがあるが、それは昭和四六年六月初めころ、訴外林の訴外大阪府中小企業信用保証協会に対する債務を担保すべく被告所有の不動産に根抵当権設定登記手続をするに必要な被告の印鑑証明の下付をうけるため、訴外林に被告の実印を渡したが、一両日中に返還を受けたものである。そして、訴外林は、被告が保証人欄に署名押印した申込書に被告の印鑑証明書および根抵当権設定登記委任状を添付して大阪府中小企業信用保証協会へ提出したのであつて、その間に何ら代理関係は存在しない。むしろ、大阪府中小企業信用保証協会が、被告の委任にもとづき、被告の委任状、印鑑証明書を使用して根抵当権の設定登記手続をしたにすぎない。

(4)  被告は、昭和四五年頃知人の紹介で訴外林と知合つたが、特別の関係はなく、同人が原告に差入れた保証書(甲第一号証)は、前記のように被告が同人に実印を預けた際これを冒用して作成したものであり、原告に交付した印鑑証明書は、余分に下付をうけたものと思われる。

(5)  被告は訴外林に担保権設定の包括的代理権を授与したことはなく、前記根抵当権設定のための代理権を授与したこともない。

仮に、同人に何らかの基本代理権があつたとしても、本件連帯保証契約をなすにつき同人に被告の代理権があつたと信ずべき正当の理由がなく、かつ、右代理権限があつたと信ずるにつき原告に過失があつた。したがつて、原告の表見代理の主張も失当である。

第三、証拠〈省略〉

理由

一、成立に争いのない甲第二号証に原告代表者、被告各本人尋問の結果の一部を総合すると、次の事実が認められる。

(1)  原告は、訴外会社に対し、昭和四六年九月四日から同四七年三月一九日までの間に、代金は毎月末日締切、翌月二五日払、遅延損害金日歩八銭の約定で、合計五三九万一、八二〇円相当の木材を売渡し、同額の売掛金債権を有していた。

(2)  そこで原告は、大阪簡易裁判所に即決和解の申立てをなし、同四七年五月一九日訴外会社との間に、請求原因(2) 記載のとおりの内容の和解が成立したが、右和解においては、訴外藤林キヌエが訴外会社のためその所有の不動産に債権極度額七〇〇万円の根抵当権を設定し、物上保証をした。

(3)  訴外会社は、請求原因(3) のとおり支払いをしたが、同四七年八月一五、六日頃手形不渡りを出して倒産し、残余の支払をしなかつた。その後原告は、前記物上保証人藤林から内金二〇一万九、五七四円の支払をうけた(上記支払をうけたことは争いがない)。

以上の事実が認められ、これに反する証拠はなく、右認定事実によれば、原告は訴外会社に対し、金二二五万七、三八六円の売掛残金債権およびこれに対する昭和四八年六月一日以降完済まで日歩八銭の割合による約定遅延損害金債権を有すると認められる。

二、そこで被告の連帯保証の成否につき判断する。成立に争いのない甲第一号証の二、第三号証の一、二、証人飯塚惣三の証言および原告代表者、被告各本人尋問の結果の一部を総合すると次の事実が認められる。

(1)  訴外林正治は、倒産した企業を引受け、訴外会社を経営するため原告に協力を申入れたが、原告が取引開始の条件として、担保物件の提供または資力のある確実な保証人を立てることを求めたところ、同人は、被告が共同経営者であるとして、昭和四六年六月八日付被告の印鑑証明書(甲第一号証の二)および同月二二日付被告の印のある保証書(同号証の一)各一通を持参したので、原告は、被告が不動産を所有する者であることを調査確認したうえ、訴外会社と取引を始めた。

(2)  被告は、訴外林の大阪府中小企業信用保証協会に対する債務を担保すべく、同四六年七月一七日付設定契約に基き、同月一九日、その所有にかかる門真市大字打越三四二番地二宅地一二五・三五平方メートル、同番地所在家屋番号三四二番五居宅木造瓦葺二階建一階四四・六二平方メートル二階二四・八四平方メートルに元本極度額五〇〇万円の根抵当権設定登記を経由した。

(3)  被告と訴外林との間には、信用貸等の取引関係があつた。なお、前記物上保証人藤林は、被告が訴外会社のため保証人になつていることを知つており、被告にその旨話したことがある。

以上のとおり認められ、被告本人尋問の結果中右認定に反する部分は、前掲他の証拠と比較してたやすく措信し難く、他にこれを覆えすような証拠はない。そして右認定事実に本件保証書(甲第一号証の一)中被告名下の印が被告の印鑑によるものであることにつき争いのない事実をも加えて考察すると、訴外林が被告の印を冒用して被告名義の文書を偽造したと認めるような特段の事情の存在しない本件においては、被告名義の本件保証書(甲第一号証の一)は、被告の実印により適法に作成されるとともに、被告は自己の印鑑証明書(同号証の二)をも交付したと推認するのが相当であるから、被告は、同四六年六月二二日訴外会社の前記債務につき連帯保証をしたものというべきである。

三、もつとも被告の連帯保証が無期限、無限定で担保の責に任ぜしめる信用保証であることは、原告の自認するところ、かかる信用保証は、一般の取引において好ましいものでないのみならず、その性質および機能においていわゆる身元保証契約と異なるものではないから、身元保証ニ関スル法律五条の規定を類推適用すべく、原告から本件保証につき通知等をうけたことがない旨の被告の主張はその趣旨の仮定抗弁と解すべきである。

原告が被告に対し何ら照会をしたことがなく、本件保証についても通知ないし確認をしなかつたなど被告本人尋問の結果により認められる諸般の事情を斟酌すると、被告の責任限度は、残債務の三分の一にまで圧縮するのが相当である。

四、そうすると、原告の本訴請求中被告に対し、金七五万二、四六二円およびこれに対する昭和四八年六月一日以降完済まで日歩八銭の割合による約定遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条仮執行の宣言および免脱宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲江利政)

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