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大阪地方裁判所 昭和58年(行ウ)153号 判決

原告

堺市

右代表者市長

我堂武夫

原告

堺市教育委員会

右代表者委員長

植野邦雄

右原告両名訴訟代理人弁護士

竹林節治

畑守人

中川克己

福島正

被告

大阪府地方労働委員会

右代表者会長

寺浦英太郎

右被告指定代理人

沖昇

山本博之

被告補助参加人

堺地域労働組合

右代表者執行委員長

水代彰子

右被告補助参加人訴訟代理人弁護士

赤澤博之

岡崎守延

主文

一  原告堺市教育委員会の本件訴えを却下する。

二  (原告堺市の本件請求に基づき)

被告が、申立人被告補助参加人、被申立人原告ら間の大阪府地方労働委員会昭和五七年(不)第七〇号事件につき昭和五八年一二月六日付けでした命令主文第一、二項中被申立人堺市教育委員会に関する部分並びに第一項中昭和五八年五月二日付け要求のうち退職金に関する事項以外の事項について申立人との速やかな団体交渉を命じた部分を取り消す。

三  原告堺市のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は全部原告堺市の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨(原告ら)

1  被告が、申立人被告補助参加人、被申立人原告ら間の大阪府地方労働委員会昭和五七年(不)第七〇号事件につき昭和五八年一二月六日付けでした命令を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因(原告ら)

1  被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)は、被告に対し、原告らを被申立人として不当労働行為救済の申立をしたところ(昭和五七年(不)第七〇号事件)、被告は昭和五八年一二月六日付けで別紙命令書記載の命令(以下「本件命令」という。)を発し、右命令書は、右同日原告らに交付された。

2  本件命令には、次のとおり、これを取り消すべき違法事由がある。

(一) 原告堺市は、仲よしクラブと呼称する留守家庭児童のための社会教育事業(以下「本件事業」という。)の廃止・推進の権限を持つものであるが、同クラブ指導員(以下「指導員」という。)に対して何らの法的関係に立たず、また指揮監督する立場になく、使用者ではない。原告堺市は、地方公共団体の事務を処理するため必要な経費について、予算の調整・執行権限を有するが、それだからといつて指導員との間に使用従属関係があるとはいえず、使用者の立場に立つわけではない。

(二) そもそも、国家公務員法二条六項は、職員以外のものに対する給与の支払を禁止しているが、地方公務員法には明文の規定を欠くけれども、右国家公務員法の条項と同様に、普通地方公共団体に私法上の契約に基づいて勤務する職員を認めないものと解される。補助参加人は「指導員の身分は公務員そのものではないが、原告らと指導員間において労使関係として使用従属関係にあることは、労働実態からみて明らかである。」旨主張するが、現行地方公務員制度の法体系において、地方公共団体と使用従属関係にあって公務員ではない法律関係を認めることはできず、補助参加人の右立論は失当である。この点についての被告の見解は明らかではないが、指導員が地方公務員法上いかなる法的地位にあるのか、指導員が地方公共団体と直接的な労務供給関係にあるとしながら何故に労働組合法の適用があるのか、明らかにされなければならない。

(三) 原告堺市教育委員会(以下「教委」という。)は、本件事業を管理運営するものであるが、以下の理由により、指導員との間に使用従属関係がなく、指導員はボランティアとして留守家庭児童の育成指導にあたるものであって、教委は使用者ではない。

被告は、別紙命令書理由欄第二、二において、八項目の事実を認定し、「これらの点から判断すれば、指導員は、市側に使用される労働者であり、市側との間に支配従属関係があると判断するのが相当である。」としているので、右八項目の事実について反論する。

ア 仲よしクラブは堺市留守家庭児童会実施要綱等に基づき実施されてきたことについて

仲よしクラブは、堺市留守家庭児童会実施要綱等に基づき実施されてきたかのごとき体裁はあっても、実態は、右要綱等にかかわらず、指導員の自由裁量により行われ、特に、昭和五六、七年当時は仲よしクラブ実施要項により実施され、それによれば「留守家庭の低学年児童の放課後における保護及び生活指導を行うものとする。」とのみ定められ、その内容については制度上も指導員の自由裁量に委ねられている。

イ 指導員の選任は毎年度教委によって行われていたことについて

それ自体は誤りではないが、指導員については特に資格を要求せず、選考や試験もなく、校長の推薦のみで教委が依頼しており、契約書の作成もなく、依頼書が発行されるのみで、お願いする方も頼まれる方も、ボランティアという感覚で処理しており、そこには使用者、労働者の関係を設定する任用行為も労働契約締結行為も存在しない。

ウ 指導員は、毎日当日の保育業務の処理状況を当該小学校長に報告し、また後日教委に業務日誌を提出していたことについて

指導員が昭和五六、七年当時記載していた仲よし日記には、年月日、曜日、天候、全日か半日かを区別するための従事時間、指導員氏名、児童数(または研修会)を記載するだけであって、小学校長、教委側の検印すらなく、「毎日当日の保育業務の処理状況を小学校長に報告したり、業務日誌を教委に提出して」その指揮監督下にあったとすることができない。

エ 教委によって指導員全員参加の研修が行われていたことについて

研修については謝礼金支払のための月一回の連絡会の機会に行われていたが、全員参加ではなく出席者のみの任意のものであったし、その内容も指導保育の内容を規制するようなものではなかった。研修が行われていたことをとらえて教委の一般的指揮監督をうんぬんできるような実態ではない。

オ 指導員の平均勤続年数は一一年に達していたことについて

従事日数の短い人で八か月、平均で七年九か月であった。

カ 就業時間は原則として正午から午後五時までであり、年間従事日数は平均約二一一日となっていたことについて

時間については、全日の場合は一〇時から一七時、半日の場合は一二時から一七時と一応の定めがあるが、これは勤務時間としての始業及び終業時の定めではなく、全日か半日かの謝礼支払のための一応の目安にすぎず、指導員は自己の判断で児童の保護に欠けることのないよう自由に保育に携わっており、遅刻・早退の取り扱いはないし、休憩の定めも時間外勤務という概念もなく、指導員は時間中でも私用のため保育室を離れることもあり、指導員が時間に拘束されておらず、時間について管理監督は全く受けていない。

キ 指導員が休む場合には事前に教委又は当該小学校長に連絡していたことについて

休む場合の事前連絡については、市の行政である以上当然のことである。他方、指導員が休む場合に指導員として選任されていない留守家庭児童の保護者とか、地域のボランティアとか指導員の子弟がこれに代わることが教委により容認されていた。要するに指導員の責任で児童の保護に欠けることのないよう保育されれば足りたわけで、その意味では労働契約における労務提供の非代替性は認めがたい。

ク 指導員に対し半日勤務の場合は一日二七〇〇円、全日勤務の場合は一日三八〇〇円の全員が勤務日数に応じて支給されていたこと、またその平均年収は約六〇万円であったことについて

平均年収は約四五万円である。また、指導員が受け取る謝礼は、多い人で月額五万円、少ない人で二、三万円であり、一時間当たり五四〇円であって、謝礼の金額からみて生活保障的要素が少なく、賃金というよりはボランティアへの謝礼との色彩が濃く、指導員の経験年数が異なっても謝礼は同額であり労働の質に対する較差がなく、欠務控除、超勤手当もなく、労働自体の対償的性格を持っていない。原告堺市では、右謝礼を予算項目上報償費で支給しており、制度上も給与となっていないし、報酬として支払ったこともない。

右反論に加えて、教委と指導員との間に使用従属関係がない事由として次のとおり主張する。

ケ 日常の指導保育は、留守家庭の児童をひとところに集めてけがのないように目を配るという程度のものであり、指導員の自由裁量に委ねられており、指導保育の内容を教委が定めたり、その遂行過程において教委の一般的な指揮監督を必要としたり、服務規律を特に要求したりする性質のものではない。

コ 保育室の備品のうち、冷蔵庫、電熱器、テレビ等は保護者等が寄付しており、おやつ代も保護者から保育料として指導員が徴収して管理している。また指導員の研修費を保護者が負担している校区もある。

サ 指導員は労働者ではないので、労働基準法の適用はなく、年次有給休暇、健康診断、生理休暇、災害補償の制度はなく、就業規則作成も行われていない。

以上のように、任用行為性はもとより契約の締結過程における通常の労働契約性すら認められないこと、時間的拘束性がなく、依頼のときの時間指定も勤務時間と観念できないこと、労務提供の非代替性がないこと、指導員に支払われる謝礼が、生活保障的要素、労働の質に対する較差、欠務控除、超勤手当がなく、労働自体の対償的性格を持っておらず、支払も給与ではなく報償費扱いであること、業務内容が教委において定められたり、その遂行過程における教委の一般的な指揮監督関係がなく、服務規律の適用がないこと、業務用具及び費用の負担が必ずしも教委ではないこと、社会保険制度や退職金制度もなく、労働基準法に定める年次有給休暇、健康診断、生理休暇、災害補償等の取扱もないこと等、使用従属関係の徴表と考えられる諸点が存在しないことを総合判断すれば、指導員は教委と使用従属関係にないものといえる。

なお、本件命令主文第二項中、昭和五七年八月九日及び同年九月三〇日に申入れのあった事項については、原告らが使用者の地位にないという事由のみをもって、取り消すべき違法事由として主張する。

(四) 原告らは、昭和五八年四月一日以降使用者ではないので、団体交渉の義務はない。

原告堺市では、昭和五四年一二月に市議会の「学童保育等に関する要望決議」を受け、堺市学童保育問題協議会を設置し、慎重審議の結果、同協議会は昭和五六年五月に「堺市における留守家庭児童に関する基本的方策について」と題する答申を行った。この答申に基づき、原告らにおいて、種々検討の結果、答申の趣旨を具体化する施策として、昭和五八年度から、地域において自主的に運営される施設(自主管理仲よしクラブ)に対する補助事業を実施することになり、これに伴い従来の「仲よしクラブ」と呼称する留守家庭児童の社会教育事業は、昭和五八年三月三一日をもって廃止された。

更に、指導員は、昭和五七年四月七日から昭和五八年三月三一日までの昭和五七年度の仲よしクラブ指導員として教委から依頼されていたのであるから、昭和五八年四月一日以降、原告らとの間に何らの身分関係(雇用関係)も存在しない。

本件命令は、理由欄第二、二において「仲よしクラブは五八年三月末で廃止されたが、同クラブの廃止に伴う組合員の身分に関する問題については未解決のままであるから、組合は団体交渉を行う利益を有しており、市側とはその限りにおいて未だ労使関係が継続していると言うべきである。」と述べ、補助参加人は、指導員の身分の消滅は解雇にほかならないので、その有効・無効について及び解雇に代わる措置などについて団体交渉すべき旨主張するが、指導員の身分が消滅することは明らかでそれについて有効・無効を協議する余地はなく、また、解雇に代わる措置とは、従来の指導員としての地位、すなわち、被告らのいう使用従属関係が消滅していることを前提に、原告らと何らかの身分関係にある地位を再取得しようというものであり、再雇用を要求するに等しく、指導員は労働組合法七条二号にいう「雇用する労働者」にはあたらない。

(五) 昭和五八年五月二日付け要求は団交事項ではない。

昭和五八年三月三一日をもって、原告堺市が実施し、教委が管理運営していた本件事業が廃止され、四月一日以降自主管理運営にかかる児童育成クラブ事業が発足した。本件事業の廃止は管理運営事項である。

指導員は、昭和五七年四月七日から同五八年三月三一日まで昭和五七年度の仲よしクラブ指導員として教委から依頼されていたのであるから、昭和五八年度については本件事業が存在しない以上、指導員の身分は当然消滅し、その点について団体交渉で協議する余地はない。

教委は、指導員に対し、感謝状を授与し、本件事業廃止に伴う謝礼金を支払った。その支給基準は通算した年数そのものによらず、支出費目も報償費であり、支給に関する規則等も存在せず、労働条件としての退職金とは明らかに性質を異にするものであり、原告らにおいて、何らかの法律上の義務があって支給したものではなく、感謝の意を表明し、餞別的な性格をもつものとして、一方的な意思によって支給したにすぎないので、謝礼金の支払について団体交渉の対象となりえないことも明らかである。

3  なお、本件命令の「第一認定した事実」に対する認否は、次のとおりである。

(一)(1) 1の(1)の事実は認める。

(2) 同(2)の事実は認める。

(3) 同(3)の事実は不知。

(二)(1) 2(1)アの事実のうち、仲よしクラブが公立学童保育であることは否認する。仲よしクラブは留守家庭児童会である。また、仲よしクラブは昭和四八年以後は、留守家庭児童の保護及び生活指導を目的としている。その余の事実は認める。

(2) 同イの事実のうち、五七年度における児童数及び指導員数は否認し、その余は認める。五七年度における児童数は三二一名、指導員数は三八名であった。

(3) 同ウの事実は認める。

(4) 同エの事実のうち、保育、保育業務、業務日誌、出勤状況という概念は争い、その余は認める。

(5) 同オの事実のうち、指導員研修会という名称、保育という概念は争い、その余は認める。指導員研修会ではなく指導員連絡会である。

(6) 2(2)アの事実のうち、平均勤続年数が一一年であることは否認し、その余は認める。平均七年九か月指導をお願いしている。

(7) 同イの事実のうち、指導員研修会という名称、出勤日という概念は争い、その余は認める。なお、指導員が指導にあたれないときは、教委において他の指導員を派遣することもあるが、指導員が自らの子弟又は他人に代替を依頼することもあった。

(8) 同ウの事実のうち、就業時間、勤務という概念は争い、その余は認める。

(9) 同エの事実のうち、当初は「報酬」であったこと、一人当たり年平均約六〇万円であったことは否認し、勤務という概念は争い、その余は認める。当初より報酬ではなくて謝礼金である。一人当たり年平均は四五万円である。

(10) 2(3)アの事実は認める。

(11) 同イ、ウの事実は不知。

(三)(1) 3記載の交渉の経過はおおむね認めるが、団体交渉として行ったものではない。

(2) 3(7)の事実のうち、新聞記者に発表した日は、昭和五八年一月二八日である。

(3) 同(10)の事実のうち、分会長ほかの特別謝礼金受領拒否にあたり、団体交渉で話し合うべきであるとの理由は示されていない。

4  よって、原告らは、本件命令の取消を求めるため本訴に及んだ次第である。

二  請求原因に対する被告らの認否及び主張

1  被告

請求原因1の事実は認めるが、同2の主張は争う。

本件命令の理由は、別紙命令書理由欄記載のとおりであり、被告の認定した事実及び判断に誤りはないから、本件命令は適法であり、原告ら主張の違法事由は存しない。

2  補助参加人

(一) 請求原因2(一)の主張は争う。

本件事業は教委が営んでいたのであるが、教委には予算を調整し執行する権限が認められておらず、それらの権限を有するのは堺市長である。本件における指導員の身分に関する事項についての団体交渉に関しては、予算に関係することであり、それを調整し、執行する権限のあるものでなければ、団体交渉が進展しない。団交応諾義務を負う使用者とは、直接雇用関係にある使用者のみならず、労働条件その他について影響力・支配力を有するものをいうのであって、原告堺市も予算の調整執行の権限を持つことからみて、当然に使用者の地位にあるというべきである。

(二) 同2(二)の主張は争う。原告らは、原告らと指導員との間の法的地位を問題にし、地方公共団体と使用従属関係にあって公務員でない法律関係を認めることはできない旨主張するが、指導員が地方公務員法上の一般職に該当する場合は格別(一般職に該当すれば、地方公務員法により不当労働行為の救済申立資格はない。)、そうでないとすれば、原告らと指導員間において、その労働実態からみて使用従属関係がある以上は、あえて指導員の身分ないし法的地位に言及する必要はない。なお、指導員は一般職の地位にある公務員ではない。

(三) 同2(三)の主張は争う。指導員の本件事業における労働実態からして、指導員の原告らに対する使用従属関係は明らかであり、指導員は、原告ら主張のようにボランティアではなく、純然たる労働者である。

(1) 指導員の採用について

指導員は主事と呼ばれる各校区の校長が推薦して、教委により採用決定がなされるというように、一定の採用手続が定型化している。その際発行される文書は「辞令」と題するもので、指導員に「委嘱する」旨記載されており、ボランティアに対するものとすれば全くふさわしくないものである。右文書の標題はその後「委嘱書」「依頼について」と変更されているが、これは本件事業の存続問題に対応して、原告らにより意識的になされたものである。

(2) 指導員の勤続年数について

指導員の勤続年数は平均一一年の長期間に及んでいるが、このことは、指導員らが一時的・臨時的にその任に就いたものではなく、長期間継続的にこれを職業として従事してきたことを意味し、単なるボランティアとはいえない。

(3) 指導員の労働時間について

指導員の労働時間は、全日の場合が一〇時から一七時まで、半日の場合が一二時から一七時までと定められており、この間指導員は終始指導にあたることを余儀なくされている。ただ実態として子供の授業が遅くなるときはそれに合せて指導員が出勤する例であるが、これも合理的なものであり、原告らの指示に従っての対処である。また、入退室の時間は若干の前後があるが、これも子供の状況に合せてのことである。遅刻・早退扱いや休憩の定めがないことや残業手当の対象とされていないのは、制度上の不備の問題であって、労働者性を否定する理由とはならない。また、原告ら主張のように、指導員が私用で職場を離れることが容易にできる性質の職務ではないし、研修会の場や主事を通して、子供が帰った後でも五時までいてくれないと困るとの指示が指導員らに度々なされており、その拘束性は極めて強い。出勤簿に代わるものとして従事報告書が作成され、それには従事指導員名も記入され、主事に提出されたうえで、教委に提出されていた。以上のように、指導員はその労働時間内はその業務への従事が強く拘束され、原告らから管理されるところとなっており、その点での使用従属関係は明らかである。

(4) 指導員の業務内容について

指導員の業務内容は、指導員の自由裁量に任されていたのではなく、原告らの指示管理に従うものである。指導員は、堺市留守家庭児童会指導要領を念頭に置きながら指導に従事してきたものであり、右指導要領には児童の指導の方法として、余暇指導、生活指導、安全教育、学習指導と広範なものが規定されている。右指導要領は、昭和五〇年ごろまで指導員全員に渡されていたがその後は交付されていない。しかし、昭和五七年時点で、指導員の平均勤続年数は一一年にも及んでいることを考えれば、大半の指導員は右指導要領を念頭に置いて指導に従事しているし、格別原告らから右指導要領を廃止したとの表明もないのであるから、これはその後も維持されていたことは明らかである。また、指導員に対しては、定例の研修会の場で指導内容の研修がなされてきたところであり、この内容は前記指導要領に沿うものとなっている。

(5) 指導員に対する管理体制について

指導員に対しては原告らから様々な点において、その業務に対する管理がなされてきた。堺市留守家庭児童会指導員心得がその支柱となるものであり、そこでは指導員の遵守事項が多岐にわたり定められている。大半の指導員は右指導員心得を現実に目にして、それを念頭に置きつつ保育に従事してきたのであり、その有する拘束性は極めて強い。堺市留守家庭児童会(学童保育クラブ)実施要綱についても同様である。

指導員の休暇取得については、その方法が原告らから指導員に厳格に指示されており、休みたいときに自由に休むという状態ではない。少なくとも二日前に教委に連絡すべきものとされ、その際教委の用意していた代替要員がいれば代わって保育に当たっていたが、指導員が病気等で緊急に休まざるを得ないときは、教委が代替要員を派遣せず、そのため指導員においてやむなく身内や近隣の人に代行を依頼していた。この実態は、元来原告らが休暇の権利を指導員に保障していないことに起因しているのであり、労働者性を否定する理由にならない。

日々の指導内容については、仲よし日誌を作成するよう指示されており、指導員はその指示に従ってこれを一年毎に教委へ提出していた。その記載内容について、付せんや文書で訂正を指示されていた。

(6) 指導員の賃金について

指導員が受け取る賃金は、その額からしても労働の対価たるにふさわしいものであるし、毎年ではないもののその額は徐々に上昇し、時間当たりにしても大阪府の最低賃金をかなり上回っている。月五、六万円という金額はパート労働者ではよく見かける額であり、指導員はこの賃金を生活費の重大な要素としていた。

(7) 保育室の備品について

各仲よしクラブの備品は、その基本となるものは教委から支給されているが、それでも足りないものは父兄の援助をあおいでいるものもあるにすぎない。

(8) 指導員の労働条件について

原告ら主張のように、指導員には、社会保険、残業手当、退職金、有給休暇、健康診断、生理休暇、労災補償等の制度が実施されていない。しかし、指導員は再三その実施を原告らに求めてきたのに対し、原告らがその実施を怠ってきたのであり、労働者性を否定する理由にならない。

(四) 同2(四)及び(五)の主張は争う。

原告らは、本件事業が廃止され存在しない以上、指導員の身分は当然消滅し、団体交渉で協議する余地はないと主張している。しかしながら本件事業が廃止されたからといって、当然に指導員の身分が消滅するものではない。指導員と原告らの間において、本件事業廃止前に労働関係上の身分関係があったとすれば、事業廃止によって指導員の身分を喪失させるのか(いわば解雇の問題)、他の事業に身分を継続させるのか(いわば配転の問題)、また身分を喪失させるについて何らかの代償措置を取るのか(いわば退職金の問題)、などの問題が生じてくるのであり、事業が廃止されたからといって全てがそこで無になってしまうわけではない。通常整理解雇や一事業所の閉鎖に伴う整理解雇などの場合、使用者において、解雇の必要性、解雇の基準、代替措置などについて、十分協議を尽くさなければならないことになっており、本件もこれと全く同じであって、事業が既に廃止され、存在しなくなったからといって、労働者の処遇をどうするかの協議が残っており、これについて原告らも誠実に協議を尽くすべき義務がある。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一原告教委の本件訴えについて

民事訴訟法上、訴訟当事者能力を有する者は、原則として私法上権利能力を有する者であり、権利能力のない者について訴訟当事者能力ないし当事者適格が認められるのはその旨を明らかにした法令の規定があるときに限られるところ、教育委員会は、いわゆる独立行政委員会であって、その所管事務に関しては、地方公共団体の長から独立して権限を行使するものではあるが、それはあくまでも右事務等の処理の主体である地方公共団体の内部における具体的管理及び執行の権限が長から独立していることを意味するにすぎず、私法上権利義務の主体となることのできる能力、すなわち権利能力を有するものとは解されないし、教育委員会について原告としての訴訟当事者能力ないし当事者適格を認める法令の規定もないのであるから、原告教委は本訴につき訴訟当事者能力ないし当事者適格を有せず、したがって同原告の本件訴えは不適法として却下すべきものというべきである。

なお、労働組合法二七条の規定による救済命令の名宛人とされる使用者とは、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要するものと解されるところ、本件命令は、独立した権利義務の帰属主体ではない原告教委をも名宛人としているが、原告教委は法人たる原告堺市の構成部分(機関)であるので、本件命令中原告教委を名宛人とする部分は、実質的には原告堺市を名宛人とし、これに対し命令の内容を実現することを義務付ける趣旨のものと解するのが相当である。

二以下、原告堺市の本件請求について検討する。

1  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

2  本件命令の基礎となった事実関係について、別紙命令書の「第一認定した事実」に沿って順次検討する。

(一)  1の(1)及び(2)の事実は当事者間に争いがない。

(二)  同(3)の事実は、〈証拠〉によってこれを認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(三)  2(1)アの事実のうち、〈証拠〉によれば、仲よしクラブは堺市留守家庭児童会と称する公立学童保育(地方自治体が直接管理運営している学童保育)であることが認められ、〈証拠〉によれば、遅くとも昭和五三年以降仲よしクラブは留守家庭児童の保護及び生活指導を目的としていることが認められ、右各認定を左右するに足る証拠はなく、その余の事実は当事者間に争いがない。

(四)  同イの事実のうち、〈証拠〉によれば、児童数は三二一名であることが認められ、〈証拠〉によれば、教委の方で確保している交代要員を除き一四校区の各仲よしクラブに所属している指導員数は三一名であることが認められ、右各認定を左右するに足る証拠はなく、その余の事実は当事者間に争いがない。

(五)  同ウの事実は当事者間に争いがない。

(六)  同エの事実のうち、原告堺市は、保育、保育業務、業務日誌、出勤状況という概念を争うが、前掲乙第一一、一二号証、同三五号証及び証人水代彰子の証言によれば、右概念を用いることは相当であることが認められ、その余の事実については当事者間に争いがない。

(七)  同オの事実のうち、〈証拠〉によれば、指導員は教委青少年課主催の指導員連絡会という名称の研修会に出席していたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、保育という概念が相当であることは前述のとおりであり、その余の事実は当事者間に争いがない。

(八)  2(2)アの事実のうち、前掲乙第三六号証によれば、前記三一名の平均勤続年数は約9.6年であることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、その余の事実は当事者間に争いがない。

(九)  同イ、ウの事実のうち、〈証拠〉によれば、出勤日、就業時間、勤務という概念を用いることは相当であることが認められ、指導員連絡会という名称の研修会が行われていたことは前述のとおりであり、その余の事実は当事者間に争いがない。

(一〇)  同エの事実のうち、〈証拠〉によれば、教委は指導員に対し当初は「報酬」後には「謝礼金」の名目で毎月金員を支払っていたこと、並びに一四箇所ある仲よしクラブのうち一一箇所では所属の指導員は各二名であって、同人らに支給された金員は一人当たり年平均約六〇万円であり、残りの三箇所では所属の指導員は各三名であって、同人らに支給された金員は一人当たり年平均約四〇万円であり、右三一名の年平均は約五四万円であることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はなく、勤務という概念を用いることが相当であることは前述のとおりであり、その余の事実は当事者間に争いがない。

(一一)  2(3)アの事実は当事者間に争いがない。

(一二)  同イ及びウの事実は、〈証拠〉によって認めることができ、右認定を左右するに足る証拠はない。

(一三)  3(1)ないし(11)の事実のうち、〈証拠〉によれば、昭和五八年一月二七日に市側が新聞記者に対し「今年度をもって仲よしクラブを廃止する」旨発表したことが認められ、右〈証拠〉によれば、分会長水代彰子ほか一二名の分会員は、特別謝礼金の件については団体交渉で話し合うべきであるとして、その受領を拒否したことが認められ、右各認定を左右するに足る証拠はなく、その余の事実は当事者間に争いがない。

3  右認定の事実関係に基づき、原告堺市主張の本件命令の違法事由(請求原因2)について順次判断する。

(一)  原告堺市は、本件事業の廃止・推進の権限を持つものであるが、指導員に対し何らの法的関係に立たず、また指揮監督する立場ではなく、使用者ではないと主張するが、〈証拠〉によれば、本件事業の設置及び管理運営は教委が行うことが認められるところ、前述のように、教委は独立した権利義務の帰属主体ではなく原告堺市の構成部分にすぎないのであるから、教委が本件事業を設置し、指導員の選任などその管理運営をすることにより、原告堺市と指導員との間で法律関係が生ずるものといわざるを得ず、原告堺市の右主張は失当である。

(二)  原告堺市は、被告らが主張するように指導員が原告堺市と使用従属関係にあるとすれば、指導員が地方公務員法上いかなる法的地位にあるのか、地方公共団体と直接的な労務供給関係にあるとしながら、何故に労働組合法の適用があるというのか明らかにされるべきである旨主張する。

(1)  まず指導員が地方公務員であるか否か検討する。

公務員の任用行為は行政処分であって、その要件及び手続は法定されているところ、証人諸農正和の証言によれば、原告堺市が非常勤職員等地方公務員を任用する場合は、その旨明示して公務員としての採用手続を行うのに対し、本件指導員の採用にあたっては、原告堺市において公務員を採用するという認識はなく、公務員の採用である旨明示されておらず、公務員としての所定の採用手続がとられていないことが認められるので、原告堺市と指導員との間の法的関係は、私法上の契約関係に基づくものといわざるを得ない(なお、原告堺市は、指導員らは公務員ではないと主張し、被告はこの点を明らかに争わず、補助参加人は、本件においてこの点を議論する必要性はないが、指導員は一般職の公務員でない旨主張する。)。したがって、労働組合法等の適用除外を定めた地方公務員法五八条一項の規定は適用されない。

(2)  ところで、原告堺市は、現行地方公務員制度の法体系において地方公共団体と使用従属関係にあって公務員でない法律関係を認めることができない旨主張するので判断するに、主張のとおり地方公務員法によると、普通地方公共団体が公務員たる職員以外に、私法上の契約に基づき職員を採用することは認められていないものと解される。しかし、労働組合法は地方公務員法とは別個の立場から、現に実質的に使用従属関係にある当事者を対象に適用されるものと解されるので、原告堺市が労働組合法上の使用者であるか否かは、原告堺市と指導員らとの間の実質的な使用従属関係の有無によって判断すべきものであり、右判断は、原告堺市と指導員との契約内容、その業務及び勤務の実態に即してなすべきものである。よって、原告堺市の右主張は採用できない。

(三)  次に、原告堺市は、指導員との間に使用従属関係がなく、指導員はボランティアとして留守家庭児童の育成指導にあたるものであり、労働組合法上の使用者に該当しない旨主張するので以下検討する。

(1) 指導員が原告堺市に使用される労働者であるか否かは、その契約内容、業務及び勤務の実態から判断されるべきものと解されるところ、

ア仲よしクラブは留守家庭児童会実施要綱等に基づき実施されてきたこと、

イ指導員の選任委嘱は毎年度教委によって行われてきたこと、

ウ指導員は、毎日当日の保育業務の処理状況を当該小学校長に報告し、また後日教委に業務日誌を提出していたこと、

エ教委によって指導員の研修が行われていたこと、

オ交代要員を除く指導員の平均勤続年数は約9.6年に達していたこと、

カ就業時間は原則として正午から午後五時までであり、年間従事日数は平均約二一一日となっていたこと、

キ指導員が休む場合は事前に教委又は当該小学校長に連絡していたこと、

ク指導員に対し半日勤務の場合は一日二七〇〇円、全日勤務の場合は一日三八〇〇円の金員が勤務日数に応じて毎月支給されていたこと、また平均年収は約五四万円であること

は、前2項判示のとおりであり、これらの事実によると、被告が本件命令において判断しているとおり、一応、指導員と原告堺市とは使用従属関係にあったものと推認することができる。

(2) 原告堺市は、右、

アにつき実施要綱等は存在したが実態として指導員の自由裁量に委ねられていた旨、

イにつき任用行為性はもとより契約の締結過程における通常の労働契約性すら認められない旨、

ウにつき小学校長への報告や教委への日誌の提出がされてもそれは指導員に対する指揮監督の手段とはいえない旨、

エにつき研修会は教委の一般的指揮監督をうんぬんできるような実態ではない旨、

カにつき時間的拘束性がない旨、

キにつき休む場合の事前連絡については市の行政である以上当然のことであるし、他方指導員の責任で他の者が指導員に代わって行うことが認められており労務提供の非代替性は認めがたい旨、

クにつき謝礼の金額からみて賃金とはいえないし労働自体の対償的性格は認められない旨、

各反論し、加えて、

ケ業務内容が教委において定められたりその遂行過程における教委の一般的な指揮監督関係がなく服務規律の適用がないこと、

コ業務用器具及び費用の負担が必ずしも教委ではないこと、

サ社会保険制度や退職金の制度もなく、労働基準法に定める年次有給休暇、健康診断、生理休暇、災害補償等の取り扱いもないこと

等、使用従属関係の徴表と考えられる諸点が存在しないことを総合判断すれば、指導員は原告堺市と使用従属関係にない旨主張するので、以下検討する。

(3)① 実施要綱等、業務日誌、研修会、教委の指揮監督及び指導員の自由裁量(右ア、ウ、エ及びケの点)について

〈証拠〉を総合すれば、昭和四八年ころまで、指導員に対し、堺市留守家庭児童会(学童保育クラブ)実施要綱、堺市留守家庭児童会指導要領、及び堺市留守家庭児童会指導員心得(以下併せて「実施要綱等」という。)を印刷したものが配布されており、右実施要綱等には、指導員の職務内容について、相当詳細に規定されていること、その内の一部の条項は実際には適用されていないが、指導員は実施要綱等に従って保育業務を行っていたこと、その後、実施要綱等は指導員に配布されておらず、遅くとも昭和五三年以降仲よしクラブ実施要項が作成され、指導員の目にふれる状況にあったが、右要項は以前の実施要綱と比べて簡略であり、仲よしクラブの目的として、留守家庭の低学年児童の放課後における保護及び生活指導を行うものとすると定められていること、教委側から指導員に対し実施要綱等を廃止した旨の説明はなく、昭和四八年ころ以前から従事している指導員は、実施要綱等を念頭に置いて保育業務に携わっていたこと、教委は一方的に、実施要綱等を作成し改定することができ、指導員は実施要綱等に従わなければならないこと、指導員の出勤簿は作成されていないが、主事は従事指導員名の記された従事報告書を作成し、毎月教委に提出していたこと、指導員が昭和五六、七年当時記載していた仲よし日記の内容は、年月日、曜日、天候、従事時間、指導員氏名、児童数のみであるが、記載内容については教委の指示に基づき記載していたものであること、校区によっては、主事より指導員に対し、就業時間を守るようにとの注意があったこと、研修会のときに教委側から指導員に指示がなされ、指導員はその指示に従っていたことが認められ右各認定を左右するに足る証拠はない。

以上のように、実施要綱等、従事報告書及び仲よし日記、主事、研修会などにより、教委は指導員を指揮監督することが可能であり、指導員も教委の指揮監督に従わなければならない状況にあったことが認められる。原告堺市は、指揮監督をうんぬんできるような実態ではないと主張するが、使用従属関係の判断に当たって重要なのは、使用者側で労働者を指揮監督でき、労働者側はそれに従わなければならない状況にあるか否かであり、現実に使用者が細部にわたって労働者の行動を指揮監督していたか否かではない。そして前(1)項ア、イ、ウ、エ、キの事情からして、指導員は、教委の指揮監督下にあったというべきである。

② 保育内容が指導員の自由裁量に任されていたとの主張については、当初保育内容について、教委の方で詳細な定めがされていたものが簡略化されたことは前認定のとおりであり、指導員の保育内容につき教委側で決定できるという点からして、指導員の労働者性を否定する理由にならない。

③ 指導員の選任(イの点)について

〈証拠〉によれば、指導員については特に資格を要求せず、選考や試験もなく、校長の推薦のみで教委が依頼しており、依頼書が発行されるだけで契約書は作成されないことが認められるが、他方、〈証拠〉によれば、指導員らは、自分たちのことをボランティアとは考えておらず、度々賃金等の労働条件の引き上げについて教委に要望していたことが認められる。任用行為が認められないのは指導員らが公務員でない以上当然であるし、右認定の指導員の選任状況は指導員の労働者性を否定するものとはいえない。

④ 就業時間(カの点)について

〈証拠〉によれば、遅刻・早退の取り扱い、休憩の定めや時間外勤務という制度がなかったこと及び児童が授業などで遅くなることが事前に分かるときは、それに合せて指導員が出勤するのが例であり、教委もそれを容認していたことが認められるが、他方、前述のように、本件事業は、放課後留守家庭児童の保護及び生活指導をするというものであり、右各証拠によれば、指導員は児童のいる間はその指導にあたらなければならず、出勤や帰宅が自由であったわけではないし、また二名の指導員が一組となって一〇名ないし四〇名の児童を保育するという仕事の内容からして、指導員が自由に私用で職場を離れることのできる性質の仕事ではないことが認められるのであって、指導員には時間的拘束性があったといえる。

⑤ 指導員が休む場合(キの点)について

指導員が休むときには、少なくとも二日前に教委又は当該小学校長に連絡することとされており、その際教委は、臨時の指導員を派遣していたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、その際教委の方で、代替の指導員を見つけることができないときは、留守家庭児童の保護者や指導員の子弟がこれに代わることが容認されていたことが認められるが、それは教委において代替要員を見つけられないという例外的な場合のことであり、指導員が自由に他人に自分の代わりをさせてよいというものではなく、指導員の労働者性を否定する理由とはならない。

⑥ 謝礼(クの点)について

謝礼として半日(五時間)の場合は二七〇〇円、全日(七時間)の場合は三八〇〇円が毎月勤務日数に応じて支給されていたこと、年間従事日数は平均約二一一日であり、平均勤続年数は約9.6年であること、年平均年収は約五四万円であることは前述のとおりであり、以上のことから、謝礼が労働の対償的性格を有するものと優に認められる。原告堺市は、謝礼の金額からして、賃金とはいえない旨主張するが、成立に争いのない丙九号証によれば、一時間当たりの金額は大阪府の最低賃金を上回っていることが、証人水代彰子の証言によれば、指導員は右謝礼を生活に必要な収入と考えていたことが各認められるのであり、謝礼の金額からしても労働の対価の実質を有するものであるといえる。〈証拠〉によれば、原告堺市は右謝礼を予算項目上報償費として支給していたこと、指導員に対する謝礼が経験年数にかかわらず同額であったこと、欠務控除や超勤手当がないことが認められるが、右謝礼を予算項目上給与ではなく報償費として支給していたのは、指導員が公務員でないことに由来するものであり、原告堺市の内部的事情というべきで、その他の事情も、労働の対償性を否定する事情とはいえない。

その他コ、サの主張も指導員の労働者性を否定するものではない。

以上(1)(3)判示の事実を総合すると、指導員は、その業務内容は奉仕作業的であり、自由裁量の余地が比較的多いということができるが、その実質において原告堺市との間に使用従属関係があると判断するのが相当である。

(四)  原告堺市は、仲よしクラブは、昭和五八年三月三一日をもって廃止されたので、同年四月一日以降使用者ではないし、また昭和五八年五月二日付け要求は団交事項ではないと主張するので、検討する。

(1) 〈証拠〉を総合すれば、昭和五四年一二月堺市議会において「学童保育事業に関する要望決議」がなされたこと、右決議を受け、昭和五五年五月堺市長は、右問題を検討させるため、諮問機関として学識経験者らからなる「堺市学童保育問題協議会」を設置したこと(昭和五五年五月堺市長が諮問機関として「堺市学童保育問題協議会」を設置したことは当事者間に争いがない。)、昭和五六年五月同協議会は、堺市長に対し昭和五七年三月末をめどに仲よしクラブを廃止することを内容とする「堺市における留守家庭児童に関する基本的方策について」と題する答申を行ったこと(この事実は当事者間に争いがない。)、右答申を受け教委を含め堺市内部で検討を重ねた結果、昭和五八年度から、地域において自主的に運営される施設(自主管理仲よしクラブ)に対する補助事業を実施することになり、これに伴い本件事業を廃止することとし、堺市長は、本件事業に係る経費を計上しない昭和五八年度の予算案を市議会に提出し、議会において討議の末、右予算案は可決され、昭和五八年三月三一日をもって仲よしクラブは廃止されたこと(昭和五八年三月三一日をもって仲よしクラブが廃止されたことは当事者間に争いがない。)、教委は、昭和四一年度から、毎年度三月までに当該小学校長を通じて在任中の指導員や他の適任者に指導員就任を依頼し、その者から履歴書の提出を求め、当該小学校長の推薦を得て、毎年四月に翌年三月までの期間付で指導員を選任委嘱していたこと(この事実は当事者間に争いがない。)、指導員は仲よしクラブ指導員として昭和五七年度は昭和五七年四月七日から同五八年三月三一日(昭和五七年七月二一日から同年八月三一日までの間を除く)までと期間を明示のうえ選任委嘱されていることが認められ、右各認定を左右するに足る証拠はない。

(2)  補助参加人は、本件事業廃止によって指導員の身分を喪失させるのか(いわば解雇)の問題、他の事業に身分を継続させるのか(いわば配転)の問題についても団体交渉の対象になると主張するが、前述のように仲よしクラブは諮問機関の答申から議会の議決を経るという公的で民主的な手続を経て廃止されたものであり、また指導員らは仲よしクラブの指導員として職種及び期間を限定して選任委嘱されたものであることが明らかであるから、仲よしクラブが右手続によって有効に廃止された以上指導員を他の職種に配転させる余地はなく、右廃止を理由に再委嘱手続がとられていない以上、同人らは、昭和五八年三月三一日の期間満了により指導員たる身分、したがって被用者的地位を失ったといわざるを得ず、右事項はもはや団体交渉の対象とはならないというべきである。ちなみに、仲よしクラブ復活の問題は市政レベルの問題であり、労使レベルの問題ではない。

(3)  ところで、指導員としての身分を喪失させるについて何らかの代償措置を取るのか(いわば退職金類似)の問題については、仲よしクラブが廃止され、指導員らはその身分を失ったものであるが、前認定のように組合員である指導員らは、特別謝礼金の件については団体交渉で話し合うべきであるとしてその受領を拒否しているのであり、このように、労働者が退職金又は退職金類似の金員の支払を求めている場合には、その限度において従来の労使関係は清算されておらず、右退職金の問題に関し、組合員である指導員らは、労働組合法七条二号の関係では、なお労働者性を有し、補助参加人は団体交渉権を有するというべきである。したがってこの点に関する原告堺市の主張は失当である。

(4) 原告堺市は、本件事業廃止に伴う特別謝礼金の問題については、労働条件としての退職金とは性質を異にし労働契約上の義務あるいは法律上の義務があって支払ったものではないので、団体交渉の対象事項ではない旨主張するが、団体交渉とは、労働者の団体が使用者との間で、労働者の労働条件その他の待遇や労使関係の運営に関する事項について交渉を行うことであり、右労働者の労働条件その他の待遇とは、これまでに労使間で合意がなされるなどして、使用者にとって一定の義務を有する事項に限られず、労働組合としては組合員に有利な新たな労働条件の獲得を目指して団体交渉を求めることができるのは当然であり、指導員の身分の喪失にあたっての代償措置(いわば退職金類似)の問題が、労働条件に関する事項であることは明らかであり、使用者において右退職金支払につき、労働契約又は法律上の義務を有しない場合であっても、右退職金の問題については団体交渉の対象事項であることに差異はないから、原告堺市の右主張は失当である。

三以上認定、説示したところによれば、原告堺市教育委員会の本件訴えは、同原告が訴訟当事者能力を有しないので不適法であり、原告堺市は、昭和五八年三月三一日以前において指導員らの使用者であり、同年四月一日以降においても、退職金の問題に限り、労働組合法上の使用者性を失わず、右退職金の問題に関し、団体交渉を拒否できる理由もないから、補助参加人から昭和五七年八月九日及び同年九月三〇日に申入れのあった事項については、団体交渉に応じて話し合う機会をもつべき義務があったものであり、昭和五八年五月二日申入れのあった事項のうち退職金の問題に限り団体交渉に応ずる義務があると認められるから、原告堺市の右各団体交渉の拒否は、労働組合法七条二号に該当する不当労働行為といわざるを得ない。

したがって、被告が原告堺市に対し、本件命令主文第一項中退職金の問題について団体交渉に応ずべきことを命じた部分、及び主文第二項の文書の手交を命じたことは正当であるが、主文第一項中退職金の問題以外の事項について団体交渉を命じた部分は違法である。なお、前述のように、本件命令中原告堺市教育委員会を名宛人とする部分は、実質的には原告堺市を名宛人とし、これに対し、命令の内容を実現することを義務付ける趣旨のものと解されるから、その趣旨を明らかにするため、原告堺市の本件請求に基づき、本件命令主文第一、二項中被申立人堺市教育委員会に関する部分を取り消すこととする。

よって、原告堺市教育委員会の本件訴えは、不適法であるから却下することとし、原告堺市の本訴請求は主文第二項記載の限度で理由があるから認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用(参加によって生じた費用も含む。)の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条、九三条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官中田耕三 裁判官土屋哲夫 裁判官下野恭裕)

別紙 命令書

申立人 堺地域労働組合

代表者 執行委員長 水代彰子

被申立人 堺市

代表者 市長 我堂武夫

同    堺市教育委員会

代表者 委員長 植野邦雄

上記当事者間の昭和五七年(不)第七〇号事件について、当委員会は、昭和五八年一一月二二日の公益委員会議において合議を行った結果、次のとおり命令する。

〔主文〕

1 被申立人らは、申立人から申入れのあった昭和五八年五月二日付け要求について、申立人と速やかに団体交渉を行わなければならない。

2 被申立人らは、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年月日

堺地域労働組合

執行委員長 水代彰子 殿

堺市

市長 我堂武夫

堺市教育委員会

委員長植野邦雄

当市及び当委員会は、貴組合から昭和五七年八月九日、同年九月三〇日及び昭和五八年五月二日に申入れのあった事項について、昭和五七年一〇月二二日以降、使用者ではないとの理由及びすでに仲よしクラブを廃止しているから貴分会員らとは何ら身分関係は存しないとの理由で団体交渉に応じませんでしたが、これらの行為は、大阪府地方労働委員会において労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為であると認められましたので、今後このような行為を繰り返さないようにいたします。

〔理由〕

第一 認定した事実

一 当事者

(1) 被申立人堺市(以下「市」という)は、肩書地に本庁舎を置く普通地方公共団体である。

(2) 被申立人堺市教育委員会(以下「教委」という)は、市が処理する教育に関する事務及び法律等により市の権限に属する事務で、学齢生徒の就学、青少年教育等の事務を管理し、執行する市の行政委員会である。

(3) 申立人堺地域労働組合(以下「組合」という)は、堺市内の事業所で働く労働者及び堺市に居住する労働者等で組織する個人加入の労働組合であり、その組合員は、本件審問終結時四五名である。なお組合には、その下部組織として、もと市の学童保育の指導員(以下「指導員」という)で組織する仲よしクラブ分会(以下「分会」という)があり、その分会員は、本件審問終結時一三名である。

二 本件申立てに至る経緯

(1) 公立学童保育仲よしクラブの開設及びその業務

ア 市は、昭和四一年度から教委作成の堺市留守家庭児童会実施要綱等に基づき、小学校一、二年生の留守家庭児童を対象とした公立学童保育仲よしクラブ(以下「仲よしクラブ」という)を開設した。

同クラブは、小学校区単位に、放課後から午後四時半まで、留守家庭児童の学習指導、余暇指導、安全教育及び生活指導等の保育にあたるものである。

イ 市は、この事業を行うため、四八年度以降においては、市の八四小学校区中一四校区において仲よしクラブを開設しており、五七年度における児童数は約四〇〇名、指導員は三一名であった。各校区の仲よしクラブの施設としては、小学校の空き教室、専用のプレハブ教室又は旧公民館を利用し、二名ないし三名の指導員が一組となって一〇名ないし四〇名の児童を保育していた。

ウ 教委は、四一年度から毎年度次の手続を経て指導員を選任していた。

① 前年度の三月までに当該小学校長を通じて在任中の指導員及び他の適任者に指導員就任を依頼する。

② 前年度三月に指導員予定者に履歴書の提出を求める。

③ 上記予定者に対する当該小学校長の推薦を求めて指導員を選任する。

エ 指導員は、児童の出席状況、保育内容その他特別の出来事等当日の保育業務の処理状況を当該小学校長に対し報告するとともに、業務日誌にもこの旨記載していた。後日、当該校長は指導員の出勤状況等を記載した従事報告書を教委に提出し、また指導員も上記の業務日誌を教委に提出していた。

オ 九月を除く毎月第二土曜日の午前一〇時から正午までの間、指導員は、全員市役所で開かれる教委青少年教育課主催の指導員研修会に出席し、保育教育や実技に関する指導を受けていた。

(2) 指導員の勤務実態

ア 指導員の任期は、前記のとおり一年であったが、大部分の者は毎年度再任され、五七年九月現在における平均勤続年数は一一年であった。

イ 指導員の出勤日は、月曜日から金曜日までであり、当該小学校の夏休み等の期間中は休日となっていた。したがって年間従事日数は、前記の指導員研修会の日をも含め、平均約二一一日であった。

また指導員が休むときには、少なくとも二日前に教委又は当該小学校長に連絡することとされており、その際教委は、臨時の指導員を派遣していた。

ウ 就業時間は、通常正午から午後五時まで(以下「半日勤務」という)であり、始業式等学校行事のため児童の下校時間が早いときには午前一〇時から午後五時まで(以下「全日勤務」という)であった。

エ 教委は、指導員に対し、当初は「報酬」、後には「謝礼金」の名目で毎月金員を支払っていた。五七年度におけるその額は、半日勤務の場合は一日二、七〇〇円、全日勤務の場合は一日三、八〇〇円であり、毎月勤務日数に応じて支給され、一人当たり年平均約六〇万円であった。

(3) 本件申立てに至る経緯

ア 五五年五月市長は、諮問機関として「堺市学童保育問題協議会」を設置し、五六年五月一一日同協議会は、市長に対し五七年三月末を目途に仲よしクラブを廃止することを内容とする「堺市における留守家庭児童に関する基本的方策について」と題する答申(以下「五・一一答申」という)を行った。

イ これを契機として指導員らは、仲よしクラブの廃止に反対する運動をすすめ、五七年八月七日、一五名の指導員により「堺市仲よしクラブ指導員労働組合」を結成した。

ウ 翌八日組合が結成され、同時に前記の労働組合の組合員は、すべて組合に加入し、分会を結成した。

三 団体交渉について

(1) 五七年八月九日組合は、市及び教委(以下「市側」という)に対して組合結成を通告するとともに、①五・一一答申の不採用 ②仲よしクラブの拡充・改善 ③指導員の身分・待遇の改善等(以下「八・九要求」という)に関して団体交渉を開催するよう申し入れた。

(2) 九月一一日に第一回交渉が開催され、席上市側は ①五・一一答申の不採用及び仲よしクラブの拡充・改善等の問題は管理運営事項にあたる ②仲よしクラブの存廃については五・一一答申尊重の立場にたっている。今年はいろいろな経過で仲よしクラブを存続させているが、来年はまだ未確定であり、存廃の回答はできない ③指導員の身分はボランティアのようなものであって、市側は使用者ではないが、指導員らの立場も配慮し交渉に臨んでいるだけである旨回答した。

これに対して組合は、使用者性を否定する市側のこのような態度に抗議するとともに、八・九要求、とりわけ指導員の身分・待遇の改善について一〇月二日に再度団体交渉を開催するよう申し入れた。

市側は上記申入れについて、交渉には応じるが日程については検討する旨回答した。

(3) 同月三〇日組合は、市側に対し八・九要求について再度団体交渉を開催するよう申し入れるとともに、特に指導員の身分・待遇の改善を求めた一一項目の要求書(以下「九・三〇要求」という)を提出した。

その後まもなく市側は、組合に対し交渉予定日である一〇月二日は市議会開会中であることを理由に同月一六日に延期したい旨申し入れ、組合はこれに同意した。

(4) 一〇月一日の堺市議会本会議において、指導員の組合加入及び組合からの団体交渉申入れに対する市側の態度が問題とされ、これについて教委は「指導員はボランティアであると考えている。したがって指導員と市側とは労働基準法にいう支配従属関係にはない」、「五・一一答申については、五八年三月末を目途に仲よしクラブの廃止を考えている」旨答弁した。

(5) 同月一四日市側は、組合に対し仲よしクラブの存廃等について市側の統一見解ができていないとの理由で、同月一六日の交渉の延期を通告した。

これに対して組合は、同月一九日、市側の二度にわたる団体交渉の延期及び前記(4)の市議会での答弁について市側に抗議するとともに、重ねて同月二三日までに団体交渉を開催するよう申し入れ、市側は、同日までには交渉が開催できるよう検討する旨述べた。

(6) 同月二二日市側は、組合に対し前記(5)と同様の理由で交渉の延期を通告した。

(7) 五八年一月二七日に至り市側は、新聞記者に対し「今年度をもって仲よしクラブを廃止する」旨発表した。

これを知った組合は、翌二八日、市側に対し一方的廃止であるとして抗議を申し入れるとともに、八・九要求及び九・三〇要求について団体交渉に応じるよう申し入れたが、市側は、指導員はボランティアであって労働者ではなく、市側は使用者ではないとの理由で交渉に応じなかった。

(8) 二月二日、三日、四日及び三月一七日組合は、市側に対し再々団体交渉を開催するよう申し入れたが、市側は、前記(7)と同様の理由でこれに応じなかった。

(9) 三月三一日市側は、仲よしクラブを廃止した。

(10) 四月二三日から同月二六日の間に教委は、五七年度在職で通算一年以上勤続の指導員三三名に対し、特別謝礼金として一人当たり五万円ないし三〇万円の金員計七四五万円を支払うこととした。この金員を非組合員吉田某ほか一部の分会員を含む一九名の指導員は受領したが、分会長水代彰子ほか一二名の分会員は、特別謝礼金の件については団体交渉で話し合うべきであるとして、その受領を拒否した。

(11) 五月二日組合は、市側に対し、従来の八・九要求及び九・三〇要求について団体交渉を開催するよう再度申し入れるとともに、仲よしクラブの廃止に伴う指導員の身分に関する問題(以下「五・二要求」という)についても併せて団体交渉に応じるよう申し入れた。

これに対して市側は、すでに仲よしクラブを廃止しているから分会員らとは何ら身分関係は存しないとの理由でこれに応じなかったので、組合はこれに抗議した。

第二 判断

一 当事者の主張要旨

(1) 組合は、①指導員は、その労働実態からみても市の学童保育業務に従事する労働者であって、市側はその使用者にあたることは明らかであり ②仲よしクラブの廃止後も、市側は五・二要求について団体交渉に応じる義務が残っているから、市側が団体交渉に応じないのは不当労働行為であると主張する。

(2) これに対して市側は、①指導員はいわゆるボランティアであって労働者ではないから、市側は労働組合法上の使用者にはあたらず ②ましてや五八年四月一日以降は、仲よしクラブを廃止しているから分会員らとは何ら身分関係は存しないし ③上記①②について労働委員会において不当労働行為救済申立事件の審査中であるから、団体交渉に応じる義務はないと主張する。

よって以下判断する。

二 不当労働行為の成否

市側は、八・九要求及び九・三〇要求にかかる団体交渉の申入れに対し、当初はこれに応じたが、五七年一〇月二二日以降指導員はボランティアであって労働者ではなく、したがって市側は使用者ではないとの理由でこれに応じず、その後五八年三月末に仲よしクラブが廃止されてからも、五・二要求にかかる団体交渉の申入れに対し、すでに仲よしクラブを廃止しているから分会員らとは何ら身分関係は存しないとの理由でこれにも応じていないことは、前記認定のとおりである。

まず市側の主張①について検討するに、指導員が市側に使用される労働者であるか否かは、その業務及び勤務の実態から判断されるべきものと考えるところで指導員の業務及び勤務の実態は、前記第一、二(1)・(2)によれば、①仲よしクラブは堺市留守家庭児童会実施要綱等に基づき実施されてきたこと ②指導員の選任は毎年度教委によって行われていたこと ③指導員は、毎日当日の保育業務の処理状況を当該小学校長に報告し、また後日教委に業務日誌を提出していたこと ④教委によって指導員全員参加の研修が行われていたこと ⑤指導員の平均勤続年数は一一年に達していたこと ⑥就業時間は原則として正午から午後五時までであり、年間従事日数は平均約二一一日となっていたこと ⑦指導員が休む場合には事前に教委又は当該小学校長に連絡していたこと ⑧指導員に対し半日勤務の場合は一日二、七〇〇円、全日勤務の場合は一日三、八〇〇円の金員が勤務日数に応じて毎月支給されていたこと、またその平均年収は約六〇万円であったことが認められる。これらの点から判断すれば、指導員は、市側に使用される労働者であり、市側との間に支配従属関係があると判断するのが相当である。したがって本件八・九要求及び九・三〇要求については、市側は、指導員の使用者であるから組合との団体交渉に応じる義務があると言わざるを得ない。

次に市側の主張②について検討するに、なるほど仲よしクラブは五八年三月末で廃止されたが、同クラブの廃止に伴う組合員の身分に関する問題については未解決のままであるから、組合は団体交渉を行う利益を有しており、市側とはその限りにおいて未だ労使関係が継続していると言うべきであって、市側のこのような主張は失当である。したがって本件五・二要求については、市側は団体交渉に応じる義務があるものと判断する。

なお市側は、団体交渉に応じない理由の一つとして「団体交渉に応じる義務があるかどうかについて不当労働行為救済申立事件の審査中であること」をあげているが、使用者の団体交渉応諾義務は、不当労働行為救済申立事件として審査中であっても存続するものであるから、市側のこのような主張は失当である。

したがって、市側が前記のとおり八・九要求、九・三〇要求及び五・二要求について組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことは、労働組合法第七条第二号に該当する不当労働行為である。

なお申立人は、八・九要求及び九・三〇要求についても団体交渉を命ずることを求めているが、市側がこれらの要求に関する団体交渉の申入れに応じなかったことは、上記のとおり不当労働行為ではあっても、すでに仲よしクラブは廃止されているので、これらの要求について市側に団体交渉を命ずる利益がなく、したがって団体交渉の応諾を命じず、主文二による救済にとどめる。

以上の事実認定及び判断に基づき、当委員会は、労働組合法第二七条及び労働委員会規則第四三条によって、主文のとおり命令する。

昭和五八年一二月六日

大阪府地方労働委員会

会長 後岡弘

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