大判例

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大阪家庭裁判所 昭和62年(少)825号 決定

少年 M・N(昭43.11.16生)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は暴力団○○組系○×組内△△組組員であるが

1  昭和61年10月9日午前5時ころ、大阪府東大阪市○○町×丁目×番先中央環状線南行車線○○橋交差点付近路上で、赤信号のため停車した貨物自動車運転中のA(当時40歳)に対し、同車が少年ら車両の歩行中に割り込んだと因縁をつけ、やにわに手拳で同人の右顔面を2回殴打し、更に同人を車内から引きずり降ろさんとして同人着用の作業服を引っ張る等の暴行を加えた

2  前記△△組幹部B(昭和37年5月7日生)と交際していたが、同年11月5日同府泉大津市内○○埠頭先海上で発見されたドラム缶入りの他殺死体が同組相談役Cの死体であると判明したことから、前記Bが、Cを殺害したのは○○組系×○一家内○△連合組員であると考え、その犯人に対し報復しようと企て、同月25日午後2時30分ころ、大阪市天王寺区○○町×番×号○○ハイツ××号室所在の○△連合相談役D(当時54歳)経営にかかる金融業○○商事事務所において、ソファに座っていた同人に殺意をもってけん銃弾丸2発を発射してその腹部及び左側胸部に命中させ、よって同日午後4時10分ころ、同区○○町×番×号○○病院において前記Dを大動脈挫裂に基づく出血失血により死亡させて殺害した際、少年は、情を知って、前記○○商事事務所前までBに同行したものであり、もって犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入し、その性格又は環境に照して、将来、傷害・暴行などの罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある

ものである。

(法令の適用)

非行事実1につき 刑法208条

同2につき 少年法3条1項3号ハ

(処遇の理由)

少年は昭和59年3月中学卒業後の同年8月に教護院措置解除となったが、間もなく暴力団組員となり昭和60年2月22日に強盗・窃盗保護事件で中等少年院送致決定を受け奈良少年院(BG1)に入院した。少年は昭和61年4月8日に同少年院を仮退院したが、同年6月ころから再び暴力団事務所に出入りするようになり本件各非行事実を惹起したものである。

少年はIQ84で爆発傾向に大きく偏った性格で暴力団志向が顕著であり罪障感に乏しい。これに対し実父は服役中であり、保護者の監護能力は極めて乏しい。

このような少年については、将来の健全な育成を期するうえで要保護性が大きいところ、本件各非行事実の内容(なお本件非行事実2の虞犯については、検察官は当初、Bと共謀の上での殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反事件として当庁に送致したが、調査審判の結果、Bとの共謀の事実は認められないが、殺人幇助の犯罪が成立する蓋然性が認められたので、暴力団の抗争にからむけん銃による白昼の殺人という本件事案の内容、情状等を考慮して殺人幇助に認定替えの上、少年法20条により検察官送致決定を行なったが、検察官が少年、Bを取り調べ更に捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がないとして、同法42条後段により虞犯事件として当庁に再送致したものである。)、少年のこれまでの生活状況、交遊環境、性格、保護者の乏しい保護能力などから、社会内処遇にはさしたる効果も期待できず、このまま社会に復帰させれば、再び同種非行を犯すことになる虞れが多分にあるので、施設に収容の上、規律正しい集団生活の中で、これまでの生活態度を改めさせるとともに、社会規範に対する正しい考え方を養うため、矯正教育を施すことが相当であり、少年の犯罪的傾向は進んでいると認められるので少年を特別少年院に送致することとする。なお本件各事件についての検察官の処遇に関する意見はいずれも長期少年院送致相当である。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 水谷正俊)

〔参考1〕 検察官送致決定(大阪家 昭62(少)824号 昭62.2.27決定)

主文

この事件を大阪地方検察庁検察官に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、暴力団○○組系○×組内△△組若中であるが、昭和61年11月5日大阪府泉大津市内○○埠頭先海上で発見されたドラム缶入りの他殺死体が同組相談役Cの死体であると判明したことから、同組幹部B(昭和37年5月7日生)らと犯人を捜していたが、真実は前記Cが賃貸するスナック経営者らが同人を殺害したものであるのに、前記Bらと共に、同月20日ころには、山口組系×○一家内○△連合組員が前記Cを殺害遺棄したものと思い込み、その犯人に対し報復しようと企て、以後一貫してBと行動を共にし○△連合組員の動静を伺うなどしていたところ、Bが同月25日午後2時30分ころ、大阪市天王寺区○○町×番×号○○ハイツ××号室所在の○△連合相談役D(当時54歳)経営にかかる金融業○○商事事務所内で、ソファに座っていたDに所携の回転弾倉式けん銃1丁を突き付け前記C殺害犯人の氏名等を聞き出そうとしたが、同人が立ち上がろうとしたため、殺意をもって至近距離から同人に向けけん銃弾丸2発を発射してその腹部及び左側胸部に命中させ、よって同日午後4時10分ころ、同区○○町×番×号○○病院において前記Dを大動脈挫裂に基づく出血失血により死亡させて殺害した際、少年は、Bが数日前から前記けん銃を携帯していることを認識していて、Bが前記けん銃を携帯して前記事務所に乗り込めば、○△連合相談役であるDを殺害するかも知れないことを十分に認識・認容しながら、同日午後2時27分ころ、Bと共に前記上○○ハイツ×階の○○商事事務所前廊下まで赴き、Bの指示に従い前記廊下で見張りをして、前認Bの犯行を容易ならしめてこれを幇助したものである。

(罰条)

刑法62条1項、199条

(理由)

本件事案の罪質及び情状に照して刑事処分を相当と認めるので少年法23条1項、20条により主文のとおり決定する。

(裁判官 水谷正俊)

〔参考2〕 送致書〈省略〉

別紙

少年は、○○組系○×組内△△組若中であり、同組幹部Bと交際し、右Bが、同組相談役Cを○○組系×○一家内○△連合組員が殺害したものと考え、その犯人に対し報復しようと企て、昭和61年11月25日午後2時30分ころ、大阪市天王寺区○○町×番×号○○ハイツ××号室所在の同組相談役D(当時54歳)経営にかかる金融業○○商事事務所において、ソファに座っていた同人に殺意をもってけん銃2発を発射し、同人の腹部及び左側胸部に命中させ、よって、同日午後4時10分、大阪市天王寺区○○町×番×号○○病院において、同人を大動脈挫裂に基づく出血失血により、死亡させて殺害した際、情を知って、右○○商事事務所前まで右Bに同行したものであり、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞れのあるものである。

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