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大阪高等裁判所 平成3年(ネ)2824号 判決

大阪府吹田市豊津町一六番五号

控訴人

株式会社三和企画

右代表者代表取締役

渡部一二

右訴訟代理人弁護士

牛田利治

白波瀬文夫

内藤早苗

右輔佐人弁理士

塩出真一

大阪府大阪狭山市山本北一四二三番地の六

被控訴人

ミツギロン工業株式会社

右代表者代表取締役

森本重男

大阪府大阪狭山市大野台一丁目一三番一一号

被控訴人

森本重男

大阪府岸和田市今木町一〇一番地

被控訴人

新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社

右代表者代表取締役

中岸光義

右被控訴人ら訴訟代理人弁護士

梅本弘

片井輝夫

石井義人

池田佳史

右被控訴人ら輔佐人弁理士

杉本勝徳

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一  申立

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人ミツギロン工業株式会社は、原判決別紙物件目録一ないし三記載及び別紙イ号物件四ないし六目録記載の各物件(控訴人は、当審においてイ号物件四ないし六の特定記載を原判決別紙物件目録四ないし六の記載から別紙イ号物件四ないし六目録の記載に改めたものである。)を製造し、販売してはならない。

3  被控訴人新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社は、前項の各物件を販売してはならない。

4  被控訴人ミツギロン工業株式会社及び同森本重男は、控訴人に対し、各自金一億〇〇〇六万〇四三七円及びこれに対する平成三年七月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  被控訴人新日本ケミカル・オーナメント工業株式会社は、控訴人に対し、金一〇三六万六一八〇円及びこれに対する昭和六三年二月二日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

6  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

7  2ないし5につき仮執行宣言

二  被控訴人ら

主文と同旨

第二  事案の概要

次に付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第二 事案の概要」に記載のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決六頁一一行目の「原告代表者」の次に、「、弁論の全趣旨」を加える。

二  同九頁九行目の「同目録記載四ないし六」を「別紙イ号物件四ないし六目録記載」と改め、同一〇行目の「という。」の次に、「但し、右イ号物件四ないし六の間隔保持具が、その下部において同目録に表示の『二股部』を備えるかどうか並びにその上部において同目録に表示の「縦部材』及び『傾斜板』を備えるかどうかについては争いがある。」を加え、同一二頁六行目から同一四頁七行目までを削除する。

三  同一四頁八行目冒頭の「八」を「七」と、同末行の「同被告が」を「同被控訴人及び同被控訴人の代表者として右各物件の製造・販売を指揮した被控訴人森本両名各自に対し、」と各改め、同一六頁六行目から八行目までを削除し、同一一行目の「(一)ないし(三)」を「(一)、(二)」と、同一七頁二行目冒頭の「九」を「八」と、各改める。

第三  争点に関する当事者の主張

一  争点1(本件考案の構成要件(二)の「縦部材」は、当初明細書記載の「垂直板」に限定されるか。)について

原判決一九頁一行目から同二四頁四行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

二  争点2(イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用した場合、本件考案の構成要件(二)ないし(四)を充足するか。)について

1  控訴人の主張

(一) 本件考案の間隔保持具とイ号物件四ないし六の構成の対比(イ号物件四ないし六を使用した食品包装パックが本件考案の構成要件(二)ないし(四)を充足すること)

本件考案の間隔保持具(構成要件(二))とイ号物件四ないし六の間接保持具の構成(別紙イ号物件四ないし六目録)を対比すると、イ号物件四ないし六は、間隔保持具の下部において、二股部を三本足構造としている点(相違点〈1〉)及び中央部の足を曲成した挟持部分13としている点(相違点〈2〉)で、その上部において、縦部材4と傾斜板5が連続してトレイの内側に湾曲せしめられ円弧状を形成している点(相違点〈3〉)で、一応本件考案の間隔保持具と相違はしている。

しかし、本件考案は、透明フィルムが食品に密着しないように間隔保持具を設け、間隔保持具をトレイ側壁に係合することにより迅速、確実にパックできるようにしたものであって(この構成を備える従来技術は存在しない。)、間隔保持具を設けることとそれをトレイ側壁に係合する(構成要件(三))という点に新規な本質的特徴があるものであり、間隔保持具の形状に本件考案の新規性があるわけではない。従って、その形状を被控訴人ら主張及び原判決認定のようにみだりに限定すべきではないし、前記相違点〈1〉~〈3〉は、いずれも以下のとおり本件考案の実施例に含まれるかその附加的構成と認めるべきものである。

二股部が三本足構造であるとの相違点〈1〉に関しては、本件明細書には、実施例として、三本足構造を有するものも示されている(補正公報訂3の41~42行、公報(一)第7図、第8図)から、本件考案の間隔保持具の二股部は二本足のみならず、三本足構造のものも含んでいるものというべく、イ号物件四ないし六の三本足構造は本件考案の一実施例である。従って、相違点〈1〉があるからといって、本件考案の間隔保持具とイ号物件四ないし六の構成の実質的同一性が否定されるものではない。

イ号物件四ないし六における中央足部の挟持部分13は、トレイ側壁の外面部分を押圧するために設けられたものであり、本件考案においても二股部の足の幅を適宜定めることにより同一の効果を奏し得る。即ち、中央部の足を曲成した挟持部分13としているとの相違点〈2〉は、間隔保持具を安定的にトレイの側壁に係合させるために設計上設けられた附加的構成に過ぎず、右相違は、本件考案の間隔保持具とイ号物件四ないし六の構成を異ならしめるものではない。

縦部材4と傾斜板5が連続してトレイの内側に湾曲せしめられ円弧状を形成しているとの相違点〈3〉に関しても、本件考案の間隔保持具の「縦部材」とは「二股部より上方にのびて傾斜板を上方に導きこれをある程度の高さに支持する部分」であり、「傾斜板」とは、「上方で透明フィルムを直接支える部分」であるが、「縦部材」と「傾斜板」の形状については何ら限定されていないのであるから、イ号物件四ないし六のように縦部材4と傾斜板5が連続してトレイ1の内側に湾曲せしめられ円弧状を形成しているものも、本件考案の間隔保持具の実施例に含まれるものである。このことは、〈1〉 本件明細書の考案の詳細な説明の「実施例」の項に、「縦部材4・・・は、必ずしも二股部3に対して垂直なもののみを意味するのではなく、ある程度、傾斜していても・・・よい」との記載があること(補正公報訂3の34~35行)、〈2〉 同項には「傾斜板5と縦部材4との角度θは0~90度の間、好ましくは20~70度とし、透明フィルムで押圧しながらパックしたときに角度θが90度前後となるようにする。」と記載されており(補正公報訂3の37~39行。但し、右記載に対応する公報(一)4欄5~8行では右「傾斜板5と縦部材4との角度θ」との部分が「傾斜板5と垂直方向との角度θ」と記載されている。以下、同じ。)、角度θが0度である場合は、縦部材4と傾斜板5とが一直線となり、両者の区別がつかなくなるが、このような一直線の部材もフィルムで押圧して包装すれば通常湾曲した形状となること、〈3〉 右記載の本件考案における好ましい角度θが20~70度の場合においても、縦部材4と傾斜板5の材質、厚みを適宜選択すれば、フィルムの押圧により湾曲形状になること、〈4〉 本件考案の実施例図(第9図、第10図)に例示されるように、傾斜板5は平板に限定されていないこと、〈5〉 イ号物件四ないし六の縦部材(食品より上方にフィルムを支えるための部分をある程度の高さに支持する部分)と傾斜板(フィルムを食品より上方で直接支える部分)の両者がなす角度θは、別紙イ号図面四ないし六の各第4図に示されるように、本件明細書の右〈2〉の記載と一致していること、からも明らかである。

以上のとおり、右各相違点はいずれも、本件考案の実施例に含まれ若しくは附加的構成に過ぎず、イ号物件四ないし六の間隔保持具を食品包装パックに使用した場合、その構成は、本件考案の間隔保持具と実質的同一性を有するものであって、本件考案の構成要件(二)を充足するし、「間隔保持具の二股部をトレイの側壁に係合させ」るものであるから、本件考案の構成要件(三)も充足する。また、本件考案の構成要件(四)の「食品を入れたトレイを透明フィルムで傾斜板の上面を押圧して包装する・・・」とは、間隔保持具でフィルムを上方に安定的に支えるという本件考案の主たる目的を達成するために傾斜板の上面でフィルムを支えるという意味であって、「透明フィルムが傾斜板の上面にのみ当たる」場合のみならず、本件実施例図(第2図)に透明フィルムが縦部材にも接触した状態の食品包装パックが示されていることからも明らかなように、トレイの形状によってはフイルムが傾斜板の上面を押圧するとともに、縦部材と接触したり、これを押圧したりする場合も含むから、本件考案の構成要件(四)も充足する。

(二) イ号物件四ないし六を食品包装パックに用いた場合の作用効果と本件考案の作用効果の対比

イ号物件四ないし六を食品包装パックに用いた場合の作用効果は、左記のとおりであり、本件考案の作用効果とまったく同一である。

(1) 間隔保持具で刺身などの食品との間隔を保つことにより、透明フィルムがトレイ上方にはみだして盛りつけられた食品に密着して押圧されることはなく、このため食品の外観(見映え)を良好にし、かつ鮮度を保つことができる。

(2) 二股部をトレイの側壁に係合することにより、間隔保持具はトレイの側壁にワンタッチで係合固定されるので、トレイの大きさ、形状に関係なく、パック包装作業を迅速かつ確実に行うことができ、しかもトレイの底に間隔保持具を据えるスペースを必要とせず、見映も良好であり、さらにトレイに溝を有する突起物や段部を設ける必要がない。

なお、原判決は、「イ号物件四ないし六は、・・・これを食品包装パックに使用した場合、フィルムの張力に合わせて支え部(円弧状板)が弾性変形してよく馴染み、フィルムの破損がなくなるとの、本件考案にはない作用効果を奏する(ちなみに、本件考案の間隔保持具は、傾斜板と縦部材との連設部〔特にその両端部〕が角を形成するため、その実施段階において例えばその部分に丸みをつける等の、フィルム破損防止のための手段を講じなければならない。)。」(原判決五六頁一行目から同四行目)と判示する。

しかし、プラスチック素材を用いる以上、本件考案における間隔保持具も一般にフィルムの張力に合わせて弾性変形してよく馴染むことは当然であり、また本件考案における間隔保持具を製造する場合において、自動包装機で食品トレイを包装する際に傾斜板と縦部材との連設部にフィルムが当接しても破れないようにするため、ここに丸み(アール)をつけて成形することは当業者にとって常識ともいうべきことであり、公報(一)における図面(第3図ないし第10図)に示す程度の丸みを連設部に付けるだけで、フィルムが破損することはなくなる。この丸みをつける手段は、原判決に示されるように別途講じるものではなく、成形工程において成形と同時になされるものである。実際に間隔保持具を使用して食品トレイを自動包装する場合、フィルムが連設部で破れるような強い力がかかるものではなく、フィルムの強度よりはるかに小さい力しかフィルムにかからないように設計されている。このため、連設部を公報(一)の図面に示す程度の曲面(アール)に成形しておけば、イ号物件四ないし六のように円弧状に成形するのと何ら実用上の作用効果における差異は生じない。従って、縦部材と傾斜板を円弧状に形成した構成(相違点〈3〉)は、本件考案の作用効果の他に特別な作用効果を奏するものではなく、両者が実質的には同一であることは明白であり、原判決の判断は正当ではない。

のみならず、大阪市立工業研究所における、本件考案の実施例たる商品A、B、C三種類の間隔保持具と被控訴人ミツギロン製造にかかるイ号物件六(商品名ラップガードS)の性能検査の結果(甲三二はその報告書)では、それらにつき各一〇〇回の自動包装の試験がなされたが、いずれの商品についても、フィルムの破損は一回も発生せず(但し、イ号物件六においては、間隔保持具の下部とフィルムの接触部分に多量のフィルム破損が生じ、また自動包装の際に間隔保持具が傾いて適正な包装ができないものが四パーセント発生した。)、また、間隔保持具が倒れる事態も生じなかったのであって、原判決の前記認定した本件考案にはない作用効果なるものは、現実に間隔保持具を使用する場面においては何ら発生しないことが明らかである。結局のところ、右作用効果なるものは、円弧状板の形状から机上の論理として導かれているものに過ぎない。

(三) 単なる設計変更(均等物)

前記相違点〈1〉~〈3〉にかかる変更は、当業者にとってきわめて容易になし得る変更であり、この変更後のものは、本件考案と対比してその目的及び効果(間隔保持具で透明フィルムを支え、透明フィルムと食品の密着を防ぎ、盛り付けしたままの姿で、容器の大きさ、形状に関係なく能率よく、迅速、確実にパックでき、しかも保持具のスペースを必要としない食品包装パックを提供すること)に格別の差異を生じないことも前記のとおりであるから、これらは単なる設計変更ないし均等物である。本件考案の従来技術になかった新規な部分は、前記したとおり間隔保持具を設けることと、間隔保持具の二股部をトレイの側壁に係合させることを構成とした点にあり、間隔保持具の形状に本件考案の新規性があるわけではないから、その形状を被控訴人ら主張及び原判決認定のようにみだりに限定すべきではない。

従って、イ号物件四ないし六を使用した食品包装パックは本件考案の技術的範囲に属する。

(四) 利用関係(付加)

イ号物件四ないし六の縦部材と傾斜板の形状は、本件考案の間隔保持具における縦部材と傾斜板に「湾曲させる」という要素を付加したものとみることもできる。即ち、イ号物件四ないし六は、本件考案の間隔保持具の構成をすべて含み、これに縦部材と傾斜板に「湾曲部」を付加した利用考案であり、この観点からしても、イ号物件四ないし六を使用した食品包装パックは本件考案の技術的範囲に属する。

2  被控訴人らの主張

(一) イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果

イ号物件四ないし六の間隔保持具(スペーサ)は被控訴人考案の実施品であり、これを食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果は、左記のとおりである。

そして、イ号物件四ないし六は、その下部において「二股部」を、上部において「縦部材」及び「傾斜板」を備えていないから、控訴人が当審において改めた別紙イ号物件四ないし六目録によるその特定記載は不適切であり、イ号物件四ないし六の構成は「トレイ1の側壁の内面部分に当接する二本の受止め部分とトレイ1の側壁の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分13とからなる三本足構造の嵌着挟持部3に円弧状板(支え部)4、5を連設したプラスチック製の間隔保持具2」と特定表記すべきものである。

(1) 構成

〈1〉 トレイ内の食品を透明フィルムで包装する食品包装パックにおいて、

〈2〉 トレイの側壁の内面部分に当接する二本の受止め部分と、トレイの側壁の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分とからなる三本足構造の嵌着挟持部に円弧状板(支え部)を連設してプラスチック製の間隔保持具(スペーサ)を形成し、

〈3〉 この間隔保持具(スペーサ)の嵌着挟持部をトレイの側壁に挟着させ、

〈4〉 食品を入れたトレイを透明フィルムで円弧状板(支え部)の上面を押圧して包装するようにしたことを特徴とする食品包装パック。

(2) 作用効果

〈1〉 本件考案の作用効果(一)と同旨。

〈2〉 トレイの側壁の内面部分に当接する二本の受止め部分とトレイの側壁の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分とからなる三本足構造の嵌着挟持部をトレイの側壁に挟着する(挟持部分がトレイ側壁部分を挟持する)ことにより、トレイ側壁上において間隔保持具(スペーサ)の直立姿勢が保たれるので、トレイの底に間隔保持具(スペーサ)を据えるスペースを必要とせず、見映も良好であり、さらにトレイに溝を有する突起物や、段部を設ける必要がなく、しかも、フィルムを簡単に被せ付ける作業ができ、パック包装作業の効率もよい。

〈3〉 フィルムが接触する円弧状板(支え部)が円弧状に形成されているから、フィルムの張力に合わせて円弧状板(支え部)が弾性変形してよく馴染み、フィルムが破損したりすることがなくなる。

(二) 本件考案の構成及び作用効果との対比

原判決三四頁一行目から同四〇頁一〇行目までに記載のとおりであるから、これを引用する(但し、同三四頁一行目冒頭の「(一)」、同三八頁八行目冒頭の「(二)」を各「(1)」、「(2)」と、同三四頁二行目冒頭の「(1)」、同三七頁五行目冒頭の「(2)」、同三八頁六行目冒頭の「(3)」を、各「〈1〉」、「〈2〉」、「〈3〉」と、同九行目冒頭の「(1)」、同三九頁八行目冒頭の「(2)」、同四〇頁九行目冒頭の「(3)」を各「〈1〉」、「〈2〉」、「〈3〉」と、同三七頁二行目の「構成(二)」を「構成〈2〉」と、同三、四行目の「構成(四)」を「構成〈4〉」と、同三九頁五行目の「構成(二)」を「構成〈2〉」と、同四〇頁六行目の「構成(三)」を「構成〈3〉」と、各改める。)。

(三) 単なる設計変更ないし均等物の主張について

原判決四〇頁一二行目から同四一頁一一行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

(四) 利用関係の主張について

原判決四二頁一行目から同五行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

三  争点3(イ号物件四ないし六は、本件考案に係る食品包装パックの製造にのみ使用する物か。)について

原判決四二頁八行目から同四三頁一〇行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

四  争点4(被控訴人ミツギロン及び被控訴人新日本のイ号物件四ないし六の販売行為は、末端ユーザーの本件実用新案権侵害行為を幇助する行為か。)について

原判決四四頁一行目から同九行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。

第四  争点等に関する判断

争点等に関する当裁判所の判断は、次に付加訂正するほかは、原判決の事実及び理由「第四 争点等に関する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決四五頁五行目の「意味するものでは」を「意味するのでは」と改める。

二  同五〇頁五行目と六行目との間に次のとおり加える。

「1 イ号物件四ないし六の構成並びにこれを食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果について

イ号物件四ないし六は、『トレイ1の側壁6の内面部分に当接する二本の受止め部分とトレイ1の側壁6の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分13とからなる三本足構造の嵌着挟持部3に円弧状板4、5を連設したプラスチック製の間隔保持具(スペーサ)2』であり、これを食品包装パックに使用した場合の構成及び作用効果は、次のとおりであって、被控訴人考案の実施品の一つであると認められる(乙二四、検乙甲一の1、2、検乙四、五、被控訴人森本)。

(一)  構成

〈1〉 トレイ1内の食品を透明フィルム8で包装する食品包装パックにおいて、

〈2〉 トレイ1の側壁6の内面部分に当接する二本の受止め部分と、トレイ1の側壁6の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分13とからなる三本足構造の嵌着挟持部3に円弧状板4、5を連設してプラスチック製の間隔保持具(スペーサ)2を形成し、

〈3〉 この間隔保持具(スペーサ)2の嵌着挟持部3をトレイ1の側壁6に挟着させ、

〈4〉 食品を入れたトレイ1を透明フィルム8で円弧状板4、5の上面を押圧して包装するようにしたことを特徴とする食品包装パック。

なお、右『円弧状板4、5』は、被控訴人考案の『支え部2』に該当する。

(二)  作用効果

〈1〉 本件考案の作用効果(一)と同旨。

〈2〉 トレイの側壁の内面部分に当接する二本の受止め部分とトレイの側壁の外面を押圧するように曲成された一本の挟持部分とからなる三本足構造の嵌着挟持部をトレイの側壁に挟着する(挟持部分がトレイ側壁部分を挟持する)ことにより、トレイ側壁上において間隔保持具(スペーサ)の直立姿勢が保たれるので、トレイの底に間隔保持具(スペーサ)を据えるスペースを必要とせず、見映も良好であり、さらにトレイに溝を有する突起物や、段部を設ける必要がなく、しかも、フィルムを簡単に被せ付ける作業ができ、パック包装作業の効率もよい。

〈3〉 フィルムが接触する円弧状板(支え部)が円弧状に形成されているから、フィルムの張力に合わせて円弧状板(支え部)が弾性変形してよく馴染み、フィルムが破損したりすることがなくなる。」

三  同五〇頁六行目冒頭の「1」を「2」と、同五四頁五行目の「・・・」を「第7図及び」と、各改め、同七行目の「公報(一)」の次に「第7図、」を加える。

四  同五四頁一一行目冒頭の「2」を「3」と改め、同五五頁九行目の「異にする」の次に「(従って、イ号物件四ないし六の特定表記に関し、控訴人が当審において、『・・・縦部材4を連設し、さらにこの縦部材4に傾斜板5を連設し、該縦部材4と傾斜板5を連続してトレイ1の内側に湾曲せしめた・・・』〔別紙イ号物件四ないし六目録〕との記載に改めたのは適切を欠き、『・・・円弧状板(支え部)を連設した・・・』と特定表記すべきものである。)」を加え、同五八頁四行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「また、控訴人は、イ号物件四ないし六を食品包装パックに使用した場合、フィルムの接触する支え部が円弧状を形成している(相違点〈3〉)ことから、フィルムの張力に合わせて支え部(円弧状板)が弾性変形してよく馴染み、フィルムの破損がなくなるとの、本件考案の間隔保持具にはない作用効果を奏することを争い、本件考案における間隔保持具を製造する場合において、自動包装機で食品トレイを包装する際に傾斜板と縦部材との連設部にフィルムが当接しても破れないようにするため、ここに丸み(アール)をつけて成形することは当業者にとって常識ともいうべきことであって、連設部を公報(一)の図面(第3図ないし第10図)に示す程度の曲面(アール)に成形しておけばフィルムが破損することはなくなり、イ号物件四ないし六のように縦部材と傾斜板を円弧状に成形するのと何ら実用上の作用効果における差異は生じない旨反論するところ(前記第三の二の1の(二))、甲三二の大阪市立工業研究所における性能検査の結果(本件考案の実施例A、B、C三種類の間隔保持具と被控訴人ミツギロン製造にかかるイ号物件六〔商品名ラップガードS〕を試料として、右各試料につき各一〇〇回の自動包装の試験をしたが、いずれについてもフィルムの破損は一回も発生しなかったというもの)は、これを裏付けるかにみえる。しかし、本件考案の間隔保持具の形状(構造)は、本件明細書中において『傾斜板5と縦部材との角度θは0~90度の間、好ましくは20~70度とし、透明フィルムで押圧しながらパックしたときに角度θが90度前後となるようにする。』(補正公報訂3の37~39行)と記載されており、本件実施例図(第3図、第5ないし第7図、第9図、第10図)もすべてθ(フィルムで押圧前)を45度として作図されているところ、右性能検査に用いられた本件考案の実施例A、B、C三種類の試料は、いずれもフィルムで押圧前からθが、90度前後になっており(甲三二の写真)、これでは、フィルムがそれ自体の張力の外に間隔保持具の復元力に不断にさらされることはなく、破れが発生しにくいことはむしろ当然であるから、右実験結果をもって、控訴人主張を裏付けるものと即座には認めがたいし、他に本件考案の間隔保持具にはない作用効果を奏することを認めた前記認定を覆すに足る確たる証拠もない(なお、この点に関し、控訴人は、本件考案の完全な実施品を作成し、誰からも異議を述べる余地のない性能検査を再度実施したい旨上申する〔平成四年一二月一八日付上申書〕が、仮にこれによって、この点の作用効果に関する控訴人の主張が裏付けられたとしても、前記のとおりイ号物件四ないし六の円弧状板(支え部)は、機能的には縦部材及び傾斜板とからなる本件考案の構成要件(二)の間隔保持具上部に相当するが、その形状(構造)を全く異にするものであるから、イ号物件四ないし六は本件考案の構成要件(二)の縦部材及び傾斜板を具備すると認めることはできないとの前記認定はその性能検査の結果如何によって左右されるものではない。)。」

五  同五八頁五行目冒頭の「3」を「4」と改め、同六行目の「円弧状板」の次に「(相違点〈3〉)」を、同六〇頁三行目冒頭の「行)、」の次に「前記2、3で判示した諸点、」を、各加え、同七行目から同一一行目までを次のとおり改める。

「従って、その特徴的本質部分である傾斜板及び縦部材からなる本件考案の間隔保持具上部とその形状(構造)を全く異にするイ号物件四ないし六を、本件考案の間隔保持具の単なる設計変更ないし均等物に過ぎないということはできない。」

六  同六〇頁末行冒頭の「4」を「5」と改め、同六一頁四行目の「異にする」の次に「(相違点〈1〉、〈2〉)」を、同九行目の「円弧状板」の次に「(相違点〈3〉)」を、各加え、同六二頁二行目冒頭の「5」を「6」と改める。

七  同六六頁三行目の「両被告」を「被控訴人両会社」と改め、同七行目の「二五四万三六九六円」の次に「、うち昭和六二年三月三一日までの販売数一五万六二〇〇個〔六七万〇八〇〇円〕、同年四月一日以降の販売数四四万〇〇三二個〔一八七万二八九六円〕」を、同九行目の「一六一三万五八七〇円」の次に「、うち昭和六二年三月三一日までの販売数二六五万八八七七個〔八九五万八九八〇円〕、同年四月一日以降の販売数二一五万〇八〇〇個〔七一七万六八九〇円〕」を、同末行の「四二万一八六五円」の次に「、うち昭和六二年三月三一日までの販売数一万五〇〇〇個〔八万一六〇〇円〕、同年四月一日以降の販売数六万二五一六個〔三四万〇二六五円〕」を、同六七頁二行目の「二一八万八一二三円」の次に「、うち昭和六二年三月三一日までの販売個数二一万二一二九個〔八八万六八六七円〕、同年四月一日以降の販売数三三万九九四六個〔一三〇万一二五六円〕」を、同一〇行目の「よれば、」の次に「乙二五の2では、ラップガード大、ラップガード小との商品区分がされているが、イ号物件一及びイ号物件四がラップガード大に、イ号物件二と三及びイ号物件五と六がラップガード小に該当するもので、昭和六一年度(昭和六一年四月一日から昭和六二年三月三一日まで)に製造販売されたラップガード大及びラップガード小は全部がイ号物件一及びイ号物件二と三であり、昭和六二年度(昭和六二年四月一日から昭和六三年三月三一日まで)に製造販売されたラップガード大のうちイ号物件一は四九万九〇〇〇個、ラップガード小は二一五万〇八〇〇個であったこと(乙四九)からすると、」を、同六八頁四行目の「計算した」の次に「(その計算結果では、ラップガード小に関しては七月一九日中に、ラップガード大については八月一九日中に切替えされたこととなる。)」を、同六行目の「整理したもの」の次に「(乙五〇の1がラップガード小〔イ号物件二と三及びイ号物件五と六〕の分であり、乙五〇の2がラップガード大〔イ号物件一及びイ号物件四〕の分である〔弁論の全趣旨〕。)」を、同一一行目の「計算した。」の次に「〈5〉 販売額の算定にあたっては、便宜各年度のラップガード大及びラップガード小の各販売総額をその各販売総数で除し(これを平均販売単価とし)、これに当該各年度のイ号物件一、イ号物件二と三の各販売総数を乗じて算定した。」を、各加え、同行の「〈5〉」を「〈6〉」と改める。

八  同七一頁四行目の「前記二2」を「前記二3」と改め、同七二頁六行目から同九行目までを削除し、同一〇行目冒頭の「(四)」を「(三)」と、同七三頁二行目の「右算定については、」を「昭和六二年八月当時のラップガード大一個当たりの平均販売価格は四円二五銭(一銭未満切捨て)であったから(乙二五の2)、これを修正する必要がある一方、」と、各改め、同五行目の「原料代」の次に「並びに営業及び管理経費」を、同末行の「並びに」の前に「右営業及び管理費は八五銭(売値の二〇パーセント)に修正すべきこと、」を、各加え、同七六頁二行目冒頭の「(五)」を「(四)」と改め、同一一行目から同七七頁二行目までを次のとおり改める。

「(五) 前記1(一)で判示した経緯によれば、被控訴人会社両名は、右本件考案の出願公告後の各イ号物件一の販売行為(前記(二))について過失があったと認められ、また被控訴人森本も、被控訴人ミツギロンの代表者として同被控訴人の右販売業務を指揮するにつき過失があったものと認められるから、被控訴人らは、右各販売行為により控訴人が被った前記(四)認定の各損害を賠償すべき責任がある(但し、被控訴人ミツギロンの販売による損害については、同被控訴人と被控訴人森本とが不真正連帯として)。」

九  同七七頁三行目冒頭の「4」を「3」と改め、同八行目から同末行までを次のとおり改める。

「4 結論

以上によれば、控訴人の本件補償金の請求は、被控訴人ミツギロンに対し金五六万〇三八六円、被控訴人新日本に対し金七万八二九九円の、損害賠償金の請求は、被控訴人ミツギロン及び被控訴人森本に対し各自金四万一二七七円(不真正連帯)、被控訴人新日本に対し金九八七円の限度において理由がある。

(なお、控訴人は、被控訴人森本についても右被控訴人ミツギロンが支払義務を負うと同額の補償金支払義務を共に負担〔不真正連帯〕すべき旨主張し、原判決は該請求を認容しているが、実用新案法一三条の三に基づく補償金支払請求権は、昭和四五年の同法一部改正による出願公開制度の採用に伴い、右公開にょり自己の考案を第三者に実施されたことによる出願人の損失を填補するために法が特別に付与した権利であり、その額もとくに実施料相当額に固定されているなど、出願公告後の侵害に対する不法行為に基づく損害賠償とはその性質を異にし、実施者の得た利得を考案者に償還させることに重点があると思われるので、これを請求し得る相手方〔償還義務者〕も、法の文言どおり「業としてその考案を実施した者」に限られ、同人が法人であり、その代表者が右業務の指揮をとった場合においても、その代表者個人にまでその責任を及ぼすことはできないものと解すべきであり、被控訴人森本に対する右部分の請求は理由がない。)

第五  そうすると、控訴人の被控訴人らに対する請求は、被控訴人ミツギロン及び被控訴人森本各自に対し損害賠償金四万一二七七円(不真正連帯)、被控訴人ミツギロンに対し補償金五六万〇三八六円とこれらに対する各平成三年七月一一日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、被控訴人新日本に対し、金七万九二八六円(補償金七万八二九九円と損害賠償金九八七円の合計)とこれに対する昭和六三年二月二日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める限度で理由があり、その余はいずれも失当として棄却すべきである。従って、原判決中控訴人の被控訴人らに対するその余の請求を棄却した部分は相当であり、右部分に対する本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし(被控訴人森本に対する補償金五六万〇三八六円の認容部分については、同被控訴人からの不服申立がないのでこれを変更することはできない。)、控訴費用の負担について、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 山﨑杲 裁判官 上田昭典)

イ号物件四ないし六目録

三本足構造の二股部3をもうけ、中央の足部を曲成した挟持部分13とし、該二股部3に縦部材4を連設し、さらにこの縦部材4に傾斜板5を連設し、該縦部材4と傾斜板5を連続してトレイ1の内側に湾曲せしめたプラスチック製の別紙各図面記載の間隔保持具2

イ号物件四

〈省略〉

イ号物件五

〈省略〉

イ号物件六

〈省略〉

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