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大阪高等裁判所 平成8年(う)404号 判決

裁判所書記官

泉木誠

本籍

大阪府堺市長曽根町六七四番地

住居

大阪府堺市長曽根町五一一番地

会社役員

東野喜三郎

大正五年八月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、平成八年一月二九日大阪地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立があったので、当裁判所は次のとおり判決する。

検察官 田村範博 出席

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人濱田耕一作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴趣意第一、事実誤認の主張について

論旨は、要するに、原判決は、被告人が長本こと黄永彦、尾田洋治、鈴木彰、岡澤宏及び川合陽一郎と共謀の上、架空の譲渡原価を計上するなどの方法により、被告人の納付すべき所得税額一億一八五五万〇五〇〇円のうち、一億〇六五一万一七〇〇円を免れたという事実を認定しているが、右共謀及びほ脱額全額につきほ脱犯が成立することの二点において、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある、というのである。すなわち、被告人は、当初、実際に支出した経費を譲渡所得の経費に入れる方法ないし政治関係の実力者によって税務当局と交渉して税額を減額してもらう方法で、二〇〇〇万円程度の税金を安くしてもらいたい趣旨で黄及び尾田に相談しただけであり、原判決認定のように、国税及び地方税合わせて、正規税額約一億五〇〇〇万円の半分ないし五〇〇〇万円程度を免れたいと考えて黄に依頼したことがないばかりか、鈴木及び岡澤に対し、架空の譲渡原価を計上するなどの方法により脱税をするよう直接依頼したこともなく、その後も被告人は、国税、地方税合わせて少なくとも九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円は納税されると認識していたものであって、原判決認定のように、国税、地方税合わせて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円をほ脱するものと認識したことはないから、被告人は、本件ほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円については、脱税することの認識、認容が欠けており、納付されると認識していた額と現実のほ脱額とを比較すると、認識のずれが余りにも大きく被告人の容認できないものであるから、被告人には、本件ほ脱額につき故意が阻却されてほ脱犯は成立せず、鈴木、岡澤及び川合らとの共謀も認められない。以上のように主張する。

そこで、記録を調査して検討するに、原判決挙示の各証拠によれば、所論指摘の共謀及び本件ほ脱額全額について被告人にほ脱犯が成立することを含めて、原判決認定の「罪となるべき事実」を優に認めることができ、原判決が、所論と同旨の主張に対し、「事実認定の補足説明」の項で説示するところは、のちに説示する部分を除いて正当と考えられる。

若干付言するに、各証拠によると、右「補足説明」二、1ないし10で認定した事実経過が認められる。すなわち、被告人は、当初、その所有土地の売却に伴う国税及び地方税予定額約一億五〇〇〇万円のうち、半分ないし五〇〇〇万円程度を免れたいと考えて長本こと黄永彦及び同人を通じて尾田洋治に脱税の相談を持ちかけ、その後黄らを通じて同和団体関係者の川合陽一郎にも脱税の協力を要請して、右土地売却に関する一件書類等を交付したものの、その後黄らから、川合が国税及び地方税の納税資金並びに同人に対する報酬として一億一〇〇〇万円を要求しており、黄及び尾田に対する報酬二〇〇〇万円を加えて一億三〇〇〇万円を用意するように言われたため、一旦は断ろうとしたが、結局は脱税の依頼を続行して、合計一億三〇〇〇万円を支払ったため、川合から脱税工作を依頼された鈴木彰及び同人から同様の依頼を受けた岡澤宏において、前記土地売却に関し虚偽の内容の領収書等を作成し架空の譲渡原価の計上するなどの方法で所得の一部を秘匿した上、被告人のため、原判示のととおり、正規の所得税額が一億一八五五万〇五〇〇円であるのに、所得税額が一二〇三万八八〇〇円である旨の所得税の確定申告を行い、差引き一億〇六五一万一七〇〇円の所得税を免れたこと、並びに、被告人としては、本件脱税が摘発されるまでの間、川合に支払った一億一〇〇〇万円のうち、同人の報酬を差し引いて九〇〇〇万円程度を国税及び地方税として納税しているものと思っていたことが認められる。

そうすると、所論のうち、被告人が、当初は、二〇〇〇万円程度の税金を安くしてもらいたいという趣旨で黄らに相談しただけであるという主張が受け入れられないばかりでなく、川合の意向を聞いて黄らに金員を交付した後になっても、国税及び地方税の予定額約一億五〇〇〇万円のうち六〇〇〇万円程度はほ脱する結果になることを容認し、うち所得税だけのほ脱額が四五〇〇万円程度(売却価格から経費等を控除した額の所得税は二五パーセント、地方税は六パーセント)になることも認識していたものと認められるから、本件のように現実の所得税のほ脱額が一億円以上になったとしても、被告人のほ脱の故意が阻却されることはなく、ほ脱額全額についてほ脱犯が成立するといわなければならない。なお、この点につき、原判決は、前記補足説明の項で、所論が指摘するとおり、「被告人が認識していたほ脱額は、国税及び地方税を合わせて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円であることが認められる」と説示しているところ、この点は証拠に基づかない認定で事実誤認というほかないのであるが、同項の他の部分の説示とも照らし合わせると、右の九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円は、被告人が納付額として認識していた額を誤って記載したものであり、「量刑の理由」の項で説示するところによれば、現実の量刑にあたっては、被告人が九〇〇〇万円程度を申告するものと認識していたことを前提にしていることが明らかであるから、右誤りは、判決に影響を及ぼすものとはいえない。所論は、被告人の納付されると認識していた額と現実のほ脱額とを比較すると、認識のずれがあまりにも大きいから、本件ほ脱額全体について故意が阻却されると主張するが、被告人がほ脱の故意に基づき黄らに脱税を依頼した結果、前記鈴木らによる本件ほ脱の結果を招来したもので、その間の因果関係が肯定され、ほ脱額について被告人の認識と結果とがくいちがっていたとしても、原判決が説示するように、同一構成要件の範囲内における具体的事実の錯誤として故意を阻却しないといえるばかりでなく、被告人は、黄らに脱税を依頼して現金等を交付した後、同人らに対し、現実の申告額を問い合わせるとか申告書を見せるよう要求するとかのことさえしておらず(被告人は、原審において、黄に対し申告書控を要求したと供述するが、信用できない)、申告額がどれだけになるかについて意に介さない態度を示しており、本件の結果が被告人にとって予見不可能なものとまではいえないから、被告人にほ脱額全額について罪責を認めても不当であるとはいえない。また、同様に、被告人が脱税を依頼した川合が、被告人の知らない鈴木及び岡澤とさらに脱税の共謀を遂げたとしても、順次共謀が成立したものとして、ほ脱額全体について、共犯としての責任を免れないものというべきである。

その他所論にかんがみ記録を検討してみても、原判決に事実誤認があるとは認められない。論旨は理由がない。

控訴趣意第二、量刑不当の主張について

論旨は、要するに、被告人を懲役八月(三年間執行猶予)及び罰金八〇〇万円に処した原判決の量刑は、特に罰金刑の額において重すぎる、というのである。

そこで、記録を調査し当審における事実取調べの結果を併せ検討するに、本件は、前記のとおり、五名の者との共謀による約一億〇六五〇万円の所得税ほ脱事案であるが、ほ脱額の多額であること、ほ脱率が高率であること、犯行の動機に斟酌すべき事情がないことのほか、本件は、被告人が他人に脱税を依頼し関係書類を交付したことに端を発するものであることなどによると、被告人の刑責は重いものといわなければならない。そうすると、確かに、本件においては、脱税の具体的工作は、前記鈴木及び岡澤がなしたもので、被告人は、同人らが架空の経費を計上するなどの方法で本件のような過少申告を行い、一億円を超える脱税をするとは認識しておらず、結局において、多額の金員を同人らに詐取されたような結果になったことが認められ、このような事情は量刑にあたり被告人に有利に斟酌すべきではあるが、原判決は、右の事情をも十分考慮して量刑したことが明らかであり(検察官の求刑は懲役一〇月及び罰金一五〇〇万円)、被告人が高齢であること、被告人が自己の不動産を売却して本件の未納の本税等の納付を続けていることなど被告人のため酌むべきその他の事情を併せ考えても、原判決の刑が不当に重いということはできない。論旨は理由がない。

よって、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井一正 裁判官 清田賢 裁判官 久我保惠)

平成八年(う)第四〇四号

○控訴趣意書

被告人 東野喜三郎

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、控訴趣意は左記のとおりである。

平成八年六月一七日

右弁護人 濱田耕一

大阪高等裁判所第五刑事部 御中

第一、事実誤認

一、共謀関係について

原判決は、被告人が鈴木彰、岡澤宏及び川合陽一郎と共謀の上、架空の譲渡原価を計上するなどの不正な方法により、被告人の納付すべき所得税額一億一八五五万〇五〇〇円のうち、一億〇六五一円を免れた旨認定している。

しかしながら、原判決も認めているとおり、被告人は、直接鈴木及び岡澤に対して本件脱税を依頼した事実はない。右の者と面識すらないのである。

原判決は、「結局、被告人東野、同黄及び同梶田並びに川合、鈴木及び岡澤は、本件脱税について順次共謀を行ったのであるから、右六名全員の間に本件脱税についての共謀が成立する」という。

原判決のいう本件脱税とは何を指すのか。「本件脱税」が、被告人が黄及び尾田に「二〇〇〇万円程度でも安くならないか」と言った程度の漠然とした抽象的な脱税であるならば、原判決がいうとおり、前記六名間に順次共謀が成立したと認定されてもやむを得ないであろう。

しかし、「罪となるべき事実」として認定された「本件脱税」は、右の如き漠然かつ抽象的な脱税ではなく、架空の譲渡原価を計上する等の不正な方法により納付すべき所得税額の約九割にあたる多額の所得税額をほ脱した行為である。そうだとすると、被告人は、「罪となるべき事実」において認定されている「本件脱税」をすることについて、黄及び梶田に対しても全く依頼した事実はないのである。

それとも原判決は、漠然かつ抽象的にしろ、被告人がいったん脱税を依頼した以上、被告人の不知の間に順次依頼を受けた脱税工作者間において、被告人の予想もしない悪質で不正な方法により脱税行為が行われ、その脱税額も、被告人の到底容認できない多額の税額をほ脱した結果になった場合においても、被告人はその結果に対して共謀共同正犯として責任を負わねばならないとするのであろうか。

原判決の見解が右のとおりだとすれば、罪刑法定主義の趣旨に反することになるといわねばならない。共謀共同正犯の成立の解釈は、行為者に不利益に類雑ないし拡張して行われるべきではない。罪となるべき事実は、行為者である被告人にその刑罰的非難を帰することのできるものでなければならない。また、行為者である被告人の意思に基づく主体的現実化された行為でなければならない。

ところが、原判決が認定した「罪となるべき事実」は、その最も重要な要素である脱税行為の具体的方法及び脱税額が被告人の全く預かり知らぬものであり、被告人の認識外であり、かつ容認できないものである。さらに、本件脱税工作者鈴木彰、岡澤宏及び川合陽一郎の本件所為は、単に所得税法違反のみではなく、詐欺罪に該当するものであり、構成要件的にも、実質的違法性の点においても、被告人の所得税法違反の行為とは質的に異なる犯罪行為である。

原判決は、本件共謀共同正犯とされる前記六名について、犯罪行為の内容を検討することなく、その質的差異を看過し、安易に十把一からげに処断したものであり、重大な事実誤認があり、判決に影響を及ぼすこと明らかであるから破棄を免れない。

二、ほ脱額について

原判決は被告人につき、実際のほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円全体についてほ脱犯が成立するとしている。原判決認定の右ほ脱額及び右結論に至る論理過程において、原判決は重大な事実誤認をしている。

(一)すなわち、第一に、原判決は、被告人が本件土地売却にかかる国税、地方税について、正規税額一億五〇〇〇万円から半分ないし五〇〇〇万円程度を免れたいものと考え、その旨を横に対して依頼した旨認定しているが、被告人が黄に、「税金を安くしてもらいたい」として相談した額は、正規税額の一割強である約二〇〇〇万円であり(被告人の公判廷における供述)、原判決認定の右額ではない。被告人は当初から、不正な方法により脱税することまで考えていなかった。被告人は、当該年度の実際に支出した経費を譲渡所得の経費に相入れる方法ないし政治関係の実力者によって税務当局と交渉して納付すべき税額を減額してもらう等の方法を期待していたものであり、かかる方法では、正規税額の半分ないし五〇〇〇万円という大幅な減額が困難であることは被告人としても認識できたのであるから、かかる額のほ脱を依頼したものではない。

また被告人は、国税、地方税合せて一億三〇〇〇万円程度は納税するつもりであった(被告人の公判廷における供述)のであり、他方、被告人は黄及び尾田に対する謝礼が二〇〇〇万円もかかると聞かされ、いったん依頼を断わっている(被告人の平成七年二月一五日検面調書)経緯からみても、被告人が原判決認定の前記税額を免れたいと考えていたとするのは誤りである。

(二)第二に、原判決は、被告人が国税及び地方税合せて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円をほ脱するものと認識していたと認定している(原判決書九枚目表、裏)が、原判決の右認定を裏付ける証拠は、原審記録に全く存しない。

かえって、被告人の公判廷における陳述によれば、被告人が用意した一億三〇〇〇万円のうち、二〇〇〇万円は黄及び尾田の謝礼となり、残余の一億一〇〇〇万円が川合に渡るが、このうち一〇〇〇万円ないし一五〇〇万円が川合の手数料となることが予想されることから、少なくとも九五〇〇万円は納税されると思っていた事実が認められる。さちに被告人の前記検面調書においても、「どうせ川合のほうでも長本達と同様に、私が渡したお金の中から二〇〇〇万円くらいのお金を脱税に協力したことに対する報酬及び謝礼金として取るだろうと思い」と供述しているくだりがあるのであり、被告人は、黄及び尾田に渡した一億三〇〇〇万円のうち、黄及び尾田への謝礼金二〇〇〇万円及び川合への謝礼金二〇〇〇万円合計金四〇〇〇万円以外の金九〇〇〇万円は、少なくとも納税されると認識していたことが認められる。そうすると、原判決が、「被告人が国税及び地方税を合わせて九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円ほ脱することを認識していた」としているのは、明らかに事実誤認である。

(三)原判決は、被告人が認識していたほ脱額は前記のとおりと認定し、右は実際のほ脱額(国税一億〇六五一万一七〇〇円)を下回る金額であり、被告人は、その具体的金額についての認識に錯誤があったと言えるが、右はほ脱額全体の故意を阻却しないと解される旨述べている。

しかし、被告人は前記のとおり、九〇〇〇万円ないし九五〇〇万円は少なくとも納税されるとの認識の下に、共犯者に対し、一億三〇〇〇万円を交付しているのであり、本件国税分のほ脱額一億〇六五一万一七〇〇円については、全く脱税することの認識、認容が欠けていたのであるから、本件正規の納付税額において、被告人の納付されると認識していた額の割合とほ脱額の割合の差を比較すると、具体的なほ脱額の認識のずれが余りにも大であり、従って、被告人は、本件ほ脱額全体について故意を阻却するといわねばならない。所得税法違反については、ほ脱額は構成要件として重要な要素であるから、具体的なほ脱額についての認識のずれが大きい場合は、錯誤により故意を阻却すると解すべきである。

(四)さらに前述したとおり、鈴木、岡澤及び川合の本件所得税法違反の犯罪行為は、被告人に対する詐欺行為と表裏一体であることを考えると、鈴木、岡澤、川合がほ脱した約一億円の額は、被告人にとっては、被告人が右の者らに詐取された被害額に相当するのであり、そうだとすると、被告人が鈴木、岡澤、川合に詐取された右約金一億円をほ脱した額と認定するのは自己矛盾である。

三、以上、本件において、被告人が鈴木、岡澤及び川合と具体的脱税行為の内容ないし脱税額について、異時的にも共謀した事実は全く認められないのであるから、原判決はこの点に事実誤認があり、破棄を免れない。

第二、量刑不当

一、被告人は、懲役八月に併科して罰金八〇〇万円に処する旨の判決の言渡を受けたが、右罰金刑は重きに過ぎるので破棄を免れない。その理由は、次のとおりである。

二、被告人は当初、国税、地方税合わせて一億三〇〇〇万円を納税する意思であった。ところが、被告人不知の間に、黄、尾田が悪質脱税グループである鈴木、岡澤、川合に依頼して本件多額の脱税をなしたのが本件の事実関係である。被告人が本件一億円余りの脱税額を全く認識、認容していなかったことは、本件証拠上明らかである。

従って、仮に原判決認定の公訴事実が控訴審において維持されるにしても、本件脱税額に相当する刑事責任を被告に科するのは正義に反する。罰金刑を併科するにしても、原判決を破棄し、相当減額して処断すべきである。

三、被告人は、黄及び尾田から、被告人が用意すべき一億三〇〇〇万円のうち、同人らに対する謝礼として二〇〇〇万円並びに川合に対する謝礼として同額程度必要であることを知らされて、本件脱税の依頼を断っている。前述したとおり、被告人は当初、一億三〇〇〇万円は納税する予定であったのであり、黄及び尾田を通じて川合に依頼するにしても、納税額が一億三〇〇〇万円を下回ることになることは承服できなかったからである。ところが、被告人は、高齢と気の弱さから自己の意思(脱税依頼を断る)を貫徹することができず、黄及び尾田の言いなりになって本件犯行に至ったのである。被告人が脱税の依頼を一旦断った事実は、被告人に有利な情状として十二分に斟酌されるべきである。

四、被告人は鈴木、岡澤及び川合らに本件脱税額相当の多額を詐取され、納付すべき正規の納税額の準備ができず、大蔵省から不動産の差押を受けて現在に至っている。

本件における被告人の役割は決して大であると評することはできない。被告人が当初黄に対し、譲渡所得税の減額納付を相談して、本件犯行に至る機縁を作ったことは責められるべきであるが、それ以後の本件犯行に至る経緯において、被告人は終始傍観者の立場にあり、本件犯行は、黄、尾田、鈴木、岡澤及び川合によって主体的、積極的に推移された。これらの事情を考慮すれば、罰金額八〇〇万円は不当に高額である。

これに対し、黄及び尾田は本件脱税に関し、各一〇〇〇万円の不法な報酬を得ているにも拘らず、罰金額は右不法利益の半額にも満たず、その余は利得したままの状態である。この点、被告人の罰金額と黄及び尾田のそれとは不平等な結果となっている。

五、被告人は、七九才の高齢であり、本件について深く反省しており、再犯の虞れは皆無である。

以上、諸般の情状を考慮すると、罰金八〇〇万円の刑は重きに過ぎるので、破棄されるべきである。

以上

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