大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(ネ)669号 判決

控訴人 被告 株式会社赤堀勝美商店 外一名

訴訟代理人 本田由雄

被控訴人 原告 岡吉平

訴訟代理人 中原保

主文

原判決を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人両名の負担とする旨の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において本件手形には振出人の記載として単に株式会社赤堀勝美商店とあるだけでその代表者の署名も、またその記名捺印もないから右手形の振出行為は無効であると述べた外原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

証拠として被控訴代理人は甲第一、第二号証を提出し、控訴代理人は甲号各証の成立を認めた。

理由

控訴人株式会社赤堀勝美商店が昭和二六年一〇月一九日控訴人銭屋ゴム工業株式会社を受取人として金額一〇万円満期同年一二月二〇日その他手形記載要件被控訴人主張の如き約束手形一通を振出し、右受取人がその日に右手形を被控訴人に裏書譲渡したことは当事者間に争がない。

控訴人等は右手形には振出人の記載として、単に株式会社赤堀勝美商店とあるだけでその代表者の署名も、またその記名捺印もないから、右手形の振出行為は無効であつて、控訴人等には本件手形上の責任はないと主張するので考えて見るに、会社が自ら手形行為を為す場合には、署名すべき者はその代表機関であつて、適法なる代表機関によつて署名がなされたか否かが手形面の記載だけから直ちに鑑別し得べき便宜のため代表機関の署名あることを必要とするので、会社代表者が会社のためにすることを示して自己の署名または記名捺印を為すことを要し、会社の名称を記載しその印章を押捺するだけでは足りないものと解すべきところ、成立に争のない甲第一号証(本件約束手形)によれば、本件手形には振出人の記載として、単に株式会社赤堀勝美商店とあつてその名下に社長の印章(株式会社赤堀勝美商店社長之印と刻したもの)が押捺せられているだけで、その代表者の署名もまたその記名捺印もないことが明白であるから本件手形は振出人の署名を欠く不適法のものであつて、右手形の振出行為は無効といわなければならない。右の如く手形の振出行為がその形式的要件を欠くため無効なる場合には、手形行為独立の原則の適用なく、その手形上になされた総ての手形行為は無効となるものと解すべきであるから、控訴人銭屋ゴム工業株式会社の為した前記裏書行為も無効であつて控訴人等はいずれも本件手形上の責任を負わないものといわなければならない。

そうだとすれば被控訴人の本件手形にもとずく控訴人等に対する請求は爾余の点について判断するまでもなく失当とし棄却すべく右請求を認容した原判決は失当であつて、本件控訴はその理由があるので、民訴第三八六条、第九六条、第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長判事 吉村正道 判事 大田外一 判事 金田宇佐夫)

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