大判例

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大阪高等裁判所 昭和31年(ラ)106号 決定

抗告人 大山コトラ(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は末尾添附別紙抗告状記載のとおりである。

よつて按ずるにその名が珍奇な名、異性の名にまぎらわしい名、又は難解難読の文字を用いた名等であるため社会生活上支障がある場合には、戸籍法第百七条第二項に所謂名を変更するについて正当な事由がある場合に該当するものというべきであるが、その変更後の新たな名に前記の如き改名について正当な事由がある場合に該当するが如き文字を用いることは許されないものであつて、かかる名に変更しようとするときは結局改名について正当な事由がある場合に該当しないものと認めるのが相当である。

ところで本件記録に徴すると、抗告人の名コトラは小虎に通じ、女性の名としてふさわしくなく、社会生活上支障があるものと認め得られないことはないけれども、抗告人は姓名判断にこつて和孝と改名を希望しそれ以外の名に変更することを望まないというのであつて、和孝という文字は訓で読めばかずたかとなり音で読めばわかうとなり男性の名とまぎらわしく、抗告人のいうごとくこれをかずこと読むことは甚だ難しく、若し女性に和孝と命名したとすれば前記の如き事由を以て名の変更許可の申立があれば正当な事由があるものとしてこれを許可しなければならない場合に当るものというべきであつて、和孝にかずこと仮名字を附して届出でても右判断に影響を及ぼすものではない。してみると抗告人の本件申立は結局改名について正当な事由がある場合に該当するものと認めることができないから、本件申立を却下した原審判は相当であつて本件抗告は理由がないからこれを棄却し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山口友吉 裁判官 小野田常太郎 裁判官 小石寿夫)

(別紙)

(抗告の理由)

抗告人は自己の名が「コトラ」であつて、現代の女性として自ら称するも亦他人に呼称せられる付ても、甚だ不適当であるので改名致したいため、所轄家庭裁判所に名の変更許可審判の申立を為し、其際「和孝」かずこと改名したい旨申立た処同裁判所は「コトラ」と云う名は「小虎」に通じ女子として不適当であることは認めるが、改名せんとする「和孝」は男子の名と紛はしいから選名は各人の自由であるが、斯る変更を正当とする事由の帯有するが如き名は、妥当でないから許可出来ないと却下した。

然し抗告人は之を自ら「かずこ」と呼び、他人に斯様に伝へて他人から其様に呼ぶ様申向け且届出に振かなを付する様にすれば、男子と紛はしくないと考えますので、何卒御審議下さいまして抗告の趣旨記載の通り御裁判を仰ぎたく抗告申立てた次第であります。

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