大判例

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大阪高等裁判所 昭和32年(ラ)16号 決定

抗告人 石川定治(仮名)

相手方 山中とみ代(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

申立費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は末尾に添附した書面記載のとおりである。

しかしながら、原審が抗告人の主張するように抗告人である父の子に対する愛情と相手方、母のそれとを偏頗に衡量し又は母ふみ代の現在の職業を度外視したのではなく、右双方の生活状態、未成年者山中徳二本人の学業等諸般の事情よりして右未成年者本人の利益のために抗告人の親権を廃止し相手方母を親権者として監護教育の任に当らしめる必要あるものと判断したものであることが記録により窺われ、当審における職権調査の結果によるも原審判は相当であつて、なんら抗告人主張の瑕疵のないことを認めるに足りる。

よつて本件抗告は理由がないからこれを棄却すべきものとし民事訴訟法第八九条に則り主文のとおり決定する。

(裁判長判事 松村寿伝夫 判事 竹中義郎 判事 南新一)

(別紙)

抗告の原因

一、抗告人は事件本人の父であり、被抗告人は事件本人の母であります。

一、抗告人と被抗告人とは、昭和三一年一一月○○日協議上の離婚を致し、事件本人の親権者を抗告人と定めたのであります。

一、ところが被抗告人は、抗告人を相手方として堺支部(大阪家庭裁判所)に親権者の変更の申立を為し、審判の結果昭和三一年十一月二十五日未成年者山中徳二の親権者を被抗告人と変更する旨の審判がありました。

一、然して其の審判の理由として、学業の進行及生活状態に急激なる変動を加うることなく、母である被抗告人の膝下に於て養育せられることが事件本人の幸福であるとするのであります。

一、然し乍ら右の理由は全く父親の子に対する事情を考慮されていないものであつて、余りにも一方的な審判であると思います。

一、子供の幸福は愛情を主幹とするものであつて、母のみが子に対し愛情をもつているものではありません。亦理由に言ふところの現在の生活学業の進行及其の将来の生活の為に被抗告人の膝下に於て養育され、其の親権に服することが幸福であるとする理由も納得のゆかないものであります。

一、被抗告人は現在飲食店に仲居奉公を為して居り、その生活は不規則でありその環境は最悪の状態下にあるのであります。抗告人は斯うした生活環境下に於て事件本人が真の幸福を享受し得るものであるとは断じて信じ得ることはできませんし、亦事件本人自身抗告人の膝下に育成され且その親権に服することが最も妥当適切であり且幸福であると言ふ意味の言を聞いているのであります。

然るに抗告人並に事件本人の真意を無視し親権者変更の申立を理由ありとして為した前記審判は不服でありますからここに抗告を為す次第であります。

参照

大阪家裁堺支部昭和三一家七六七号

昭和三一・一二・二八審判

申立人 山中とみ代(仮名)

未成年者 山中徳二(仮名)

主文

未成年者山中徳二の親権者を申立人山中とみ代と変更する。

理由

当裁判所は審理の結果未成年者山中徳二の現在の生活学業の進行及びその将来の生活のために従前より引続きの生活状態に急激なる変動を加うることなく同人を従前通り母である申立人山中とみ代の膝下に置きその親権に服せしめると共にその養育に依り義務教育を終了せしめ以て将来成人後の計を為さしめることが最も徳二の為に幸福を招く所以であるよつて主文のとおり審判する。(家事審判官 中尾義正)

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