大判例

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大阪高等裁判所 昭和33年(ラ)64号 決定

抗告人 南村智恵(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は末尾添付の書面に記載のとおりである。

よつて判断するに、筆頭者南村武、同南村好吉、同井原太郎、同赤木久の各戸籍抄本に、田畑良江外七名作成の証明書、○○○村立○○保育所長広田教和作成の証明書等本件記録によると、抗告人が昭和二十七年三月○○日出生し昭和三十三年二月頃前記○○保育所へ通つていて、同年四月から小学校へ入学することになつていたこと、抗告人と同じ大字○○○の三〇〇番地の一に南村智栄美(昭和二十九年八月○○日生)、三〇七番地に井原智恵子(昭和二十三年四月○○日生)、四〇三番地の一に赤木千恵子(昭和二十四年二月○○日生)がいること、抗告人は、前記保育所で、起世子という名を使用していたこと、田畑良江外七名から、昭和三十三年二月十二日付で、申立人は、近隣に類似の子があるため、四年程前から通称名を起世子と改め、今では本人は通称名を本名と信じ、近隣の間でも通称名で呼称されている旨の証明書を提出していることが認められる。

しかし、抗告人は、井原智恵子、赤木千恵子とは、姓が違い名も同一ではない上、年令も三、四年違つているし、同姓の南村の名は智栄美で、申立人は智恵であつて、智の一字は同じであるが、他は栄美と恵の違いがある上、その各生年月日によると、抗告人は、年令で二年、小学校の学年では三年、南村智栄美より上である。そうすると、呼び名がいずれも「ちえ」であつたとしても、抗告人が小学校へ入学したときや、日常生活において、類似名があるため著しい不利不便を受けるものとは、認められない。

抗告人は、南村智栄美とは氏も同じであるから、同姓同名に類する旨特に主張するが、前記証明書のいう四年程前とは、昭和二十九年二月頃に当り、その頃には、抗告人は満二年になつておらず、南村智栄美はまだ出生していなかつたのであるから、その頃から起世子という名を使用していたとするならば、それは同姓同名類似によるものではなく、何か他の理由によるものではあるまいかと思われる。

そして抗告人が、その主張の昭和二十九年二月頃から、通名として起世子という名を使用しているとの事実は、前記証明書等だけでは認めるのに充分でないが、かりに右事実があるとしても、智恵という名は格別悪い名ではないのに拘らず、出生後満二年たつかたたないまだ抗告人本人の意思能力が充分でない時に、親が自らつけたその子の名をたやすく変更するということは、名が個人に対する同一性認識の基準であることを、忘れたものであつて、もとより改名の正当な事由とならないものといわねばならない。

以上抗告人の主張するところは、いずれも理由がなく、本件記録を精査しても、抗告人の改名申立には、戸籍法第百七条第二項所定の名の変更をする正当な事由がなく、これを却下した原審判は相当であるから本件抗告は理由がないものとして棄却し、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 加納実 裁判官 小石寿夫 裁判官 岡部重信)

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