大判例

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大阪高等裁判所 昭和34年(う)746号 判決

被告人 小林政之

主文

本件控訴を棄却する。

理由

同(弁護人の控訴)趣意第一、二点について。

道路運送法は道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序を確立することにより道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とするものであつて(同法第一条)、この目的達成のために、自動車運送事業の経営を何人も自由に為しうるところとせず、免許制とし、その免許に当つては当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであるか、当該事業の開始によつて当該路線又は事業区域にかかる輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないか、事業遂行上適切な計画を有するか、当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであるか、その他当該事業の開始が公益上必要であり、且つ適切なものであるか等公共福祉の見地から一定の免許基準(同法第六条)を定めてその許否を決することとした(そしてその不許可処分に対しては訴願ができる、同法第一二一条)のであるから、右免許制は、わが国の交通及び道路運送の実態に照し、正に憲法第二二条第一項にいう公共の福祉に反しない限りの職業選択の自由の保障の趣旨に合するものであつて毫も憲法の右条項に違反するものではない。

また道路運送法が第一〇二条で免許を受けず自家用自動車を使用して自動車運送事業を経営したときは運輸大臣(職権の委任により都道府県知事)が六箇月以内の期間を定めて右自家用自動車の使用を制限又は禁止することができると定めていることも右免許制を実効あらしめるための行政処分であつて、この処分に違反し自家用自動車を使用することは公益に反するものであり、従つてこれを処罰することは憲法の職業選択の自由を侵害するものでないことは勿論道路運送法第一条所定の目的の趣旨に反するものでもない。

神風タクシーや、高いノルマと不合理な歩合給与制のタクシー会社のあること、又は免許が個人や新設会社に与えられない事実があること等よりして右免許制は道路運送に関する公共の福祉の増進と両立しないというが、しかし右の現象は既存タクシー業者の公益のためにする自覚の欠如と、関係行政庁の免許処分の不適切や、指導監督の不十分によるものであつて、法の定める右免許制自体の不当なるによるものではない。

従つて右の免許を受けずに自家用自動車を使用して自動車運送事業を行つたことに基き右自家用自動車の使用を禁止した兵庫県知事の処分に違反した被告人を道路運送法第一三〇条第四号により処罰した原判決は正当であり所論は理由がない。

(その余の判決理由は省略する。)

(裁判官 万歳規矩桜 小川武夫 柳田俊雄)

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