大判例

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大阪高等裁判所 昭和34年(ラ)12号 決定

再抗告人 辻善昭

主文

本件再抗告を却下する。

理由

(一)  再抗告理由第一点は、原審は抗告申立費用の裁判をしなかつた違法があると主張するのであるが、抗告裁判所が抗告事件の審理をなすについては、必しも当事者の対席による口頭弁論手続によることを必要とせず、又当事者の双方審尋を経ることを必要としないことは、民訴法第四一四条第一二五条に照らして明であつて、裁判所は抗告人より提出された抗告状その他の書面に基いて書面上の審理をなした上、裁判をなし得るのであるから、かゝる場合においては、当事者の対席審理を前提とする民訴法第三章、訴訟費用に関する規定はその適用がなく、抗告申立費用は抗告人の負担に帰することは当然の事理である。而して原審は本件について、抗告人より提出された抗告状その他の疏明資料に基いて、書面審理を経た上、抗告棄却の決定をなしたものであることは一件記録上明であるから、原決定には所論のような違法はなく論旨は理由がない。

(二)  再抗告理由第二点は、原審は、奈良簡易裁判所昭和三三年(サ)第一四五号強制執行停止命令申立事件の申立人である大熊正一がなした弁済供託は「その弁済たる効力がないのかも知れない。」として、抗告人の主張を認容しながら、本件強制執行停止決定の取消を求める抗告人の申立を棄却したことは、民訴法第三九五条一項六号にいわゆる理由齟齬の違法があると主張するのであるが、原審は、奈良簡易裁判所昭和三三年(サ)第一四五号強制執行停止命令申立事件について、同裁判所が、申立人大熊正一の提出した弁済供託書その他の書面に基いて事実上の点について疏明ありと判定したことは相当であつて、同人がなした供託が果して適法な弁済供託と認められるか否かの終局的な判断は、本案訴訟たる執行文附与に対する異議事件においてなさるべきことであつて、前記強制執行停止命令申立事件としては、その疏明資料についてかゝる、終局的な判断をなすことを要しない旨を判示したものであることは、その理由の全文を通読してこれを了解し得るのであつて、右の判示は正当であり、原決定には所論のような違法はないのであつて論旨は失当である。

(三)  再抗告理由第三点は、執行文附与に対する異議の訴に附随してなされる強制執行停止決定に対しては、民事訴訟法第五五八条の規定に基き即時抗告をなし得ること明であるにかかわらず、原審が右強制執行停止決定について民訴法第五四八条の適用あるが如く判示している点は、法令の解釈適用を誤まつた違法があると主張するのであるが、本件記録に添付の奈良簡易裁判所昭和三三年(サ)第一四五号強制執行停止命令申立事件の記録によれば、申立人大熊正一は抗告人を被告とし、いまだ執行文附与の条件が存しないことを原因として、奈良簡易裁判所に執行文附与に対する異議の訴を提起し、これに附随して強制執行停止命令の申立をなしたところ、同裁判所は右申立を認容して強制執行停止決定をなしたものであることが明である。而してかかる訴に附随してなされる強制執行停止決定については、民訴法第五四五条が準用せられることは、同法第五四六条の規定に照らして明であり、従つてこれが取消または認可について同法第五四八条の規定が適用せられることは明白であつて、所論引用の判例はいずれも本件に適切でなく、所論旨は理由がない。

よつて民訴法第四一四条、第四〇一条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 田中正雄 観田七郎 河野春吉)

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