大判例

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大阪高等裁判所 昭和35年(ネ)653号 判決

控訴人(原告) 中村亀三郎 外一名

被控訴人(被告) 国

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人等の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。控訴人中村と被控訴人との間において原判決末尾添付第一目録記載の田が控訴人中村の所有に属することを確認する。被控訴人は右田についての大阪法務局中野出張所受付をもつてなされた自作農創設特別措置法第一六条の規定による売渡を原因とする古川宗次郎への所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。控訴人坂と被控訴人との間において、右第二目録記載の田が控訴人坂の所有に属することを確認する。被控訴人は右田についての同出張所受付をもつてなされた同法第一六条の規定による売渡を原因とする古川宗次郎への所有権移転の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、被控訴人の証拠の援用は原判決事実摘示と同一であるからこれに引用する。

理由

控訴の効力は、控訴人の不服申立の限度に拘らず、原判決の全部に亙つて不可分に生じるものではあるが、控訴は原判決に対する当事者の不服申立に基くものであるから、控訴審においてその当否を審査できるのは当事者が控訴により不服を申立てた範囲に限られるべきことは民事訴訟法第三七七条第三八五条により明らかであるから、以下控訴人等の不服申立の限度において判断する。

まず、被控訴人の本案前の抗弁について考えるのに、被控訴人は控訴人等は本件農地の所有権者ではないから、被控訴人に対し右農地の所有権確認を求める利益がない旨主張するが、確認の利益があるか否かは、先ず原告たる控訴人等の主張に基いて判断せらるべきところ、控訴人等は自己が右農地の所有権者であるとして、被控訴人に対し、本件買収並びに売渡処分の無効であることを理由に、右農地の所有権の確認を求めているのであるから、右の主張事実が立証されるにおいては、控訴人等において被控訴人に対し右所有権の確認を求める利益を有することは勿論であつて、控訴人等が果して右農地の所有権者であるか否かの如きは本案において審判せらるべき事柄であるから、被控訴人の右抗弁は採用し難い。

しかしながら、控訴人等が被控訴人に対し古川宗次郎への所有権移転登記の抹消登記手続を求める部分は、登記簿上の名義人たる右古川を被告とすべきであつて、被控訴人たる国には被告としての当事者適格を有しないものと解すべきである。けだし、自作農創設特別措置法に基く農地の買収並びに売渡については、自作農創設の早期実現を期する趣旨のもとに、右法律に基く権利の異動の登記には勅令で特例を設け、手続を簡易化するために、右登記には地方長官が職権でこれを嘱託することができる等の定めをしたにすぎないものであつて、(自作農創設特別措置法第四四条、自作農創設特別措置登記令第三条、第一〇条、第一二条参照)、右登記の抹消登記手続についてはかくの如き特則はないのであるから、かくの如き場合には不動産登記法の原則に基きその登記名義人に対しその抹消登記手続を求めるべきものと解すべきであるからである。従つて、控訴人等の右請求部分は不適法として却下せられるべきである。

そこで進んで本案について考えるのに、本件農地がもと、吉村音次郎の所有に属していたことは当事者間に争がないところ、控訴人中村は昭和二二年七月七日右吉村から原判決末尾添付第一目録記載の農地を、控訴人坂は同月三〇日右吉村から買受けた山田松雄から、同第二目録記載の農地を買受けた旨主張するが、右買受けについてはいずれも大阪府知事の許可を得ていないことは控訴人等の自認するところであるから、控訴人等がその主張の如く吉村等から本件農地を買受けたとしても、当時施行せられていた農地調整法第四条第一項第三項、農地調整法施行令第二条第一項により控訴人等においてその所有権を取得するに由ないものであつて、地区農地委員会の承認の如きは農地の所有権の移動については何等の消長も来さないものというべく、控訴人等において右農地の所有権を有することを前提とする所有権確認請求は爾余の争点につき判断をなすまでもなく、失当として棄却を免れない。

しかして、控訴人等が不服の申立をしていない部分については当裁判所は原判決に拘束せられるものというべきであるから、本件控訴は理由がなく、すべて棄却すべきである

よつて、民事訴訟法第八九条第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 岡垣久晃 宮川種一郎 大野千里)

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