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大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)23号 判決

判  決

京都市上京区一条通七本松東入る一観音寺町四一九

控訴人

高橋津る子

同市上京区七本松通下長者町上る

控訴人

宿南雅嗣

右両名訴訟代理人弁護士

萩原潤三

同市上京区河原町通今出川下る梶井町四四七

被控訴人

田村郷

右訴訟代理人弁護士

吉村武夫

木村勉

松浦武二郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴人等が被控訴人に対し合同して金三〇〇、〇〇〇円の保証を立てることを条件として原判決(京都地方裁判所昭和三五年(ヨ)第五〇三号第五一四号併合仮処分申請事件昭和三五年一二月二八日言渡)主文第三項以下記載の仮処分(本件仮処分)を取消す。

控訴費用はこれを二分し、その一を控訴人等、その余を被控訴人の負担とする。(原判決添附別紙目録表三行目の宅地四九坪二合九勺を宅地一一九坪一合七勺に同五行目の宅地一一九坪一合七勺を宅地四九坪二合九勺と更正する。)

事実

控訴人等は、「原判決を取消す。被控訴人の本件申請を棄却する。被控訴人は控訴人高橋津る子に対し原判決添附別紙目録記載の土地に立入り又は右地上における控訴人等の建築工事を妨害してはならない。執行吏は右執行を明示するため適当なる方法を執らなければならない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決、予備的に、「保証を立てることを条件に原判決主文第三項以下記載の仮処分を取消す。」との判決を求め、

被控訴人は、「本件控訴を棄却する。」との判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、以下に補充する外、原判決事実記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴人等は、

「予備的に、つぎの理由により、民事訴訟法第七五九条による原判決主文第三項以下記載の仮処分(本件仮処分)の取消を求める。(仮処分執行解放金記載の主張は撤回する。)

(一)  被控訴人の本件仮処分の被保全権利が金銭補償可能であることは明白である。

(二)  控訴人等は本件仮処分によりつぎのとおり、異常な損害を受ける。

控訴人高橋は、本件土地に建物を建築してパチスコ店を営業すべく、控訴人宿南にその建築を依頼し、その二階建家屋の建築工事は過半を終了したが、屋根瓦及び周囲の壁未了の未完成の状態において、控訴人等は本件仮処分の執行を受けたのである。

控訴人高橋は、パチンコ店開業準備のため、已につぎのとおり、多額の資金を投入している。

(1)  建築工事費用 六、〇〇〇、〇〇〇円

(2)  設計代金 五〇〇、〇〇〇円

(3)  板塀費 二〇〇、〇〇〇円

(4)  大工手伝の待賃 一、九四〇、〇〇〇円余

(5)  ネオン看板等買入済代金 八〇〇、〇〇〇円

(6)  冷暖房機械買入済代金 一、二五〇、〇〇〇円

(7)  パチンコ機械三五〇台買入済代金 二、三四〇、〇〇〇円余

本件仮処分の執行により、未完成の本件建物は、日夜風雨に放置せられて朽廃危険に立ち、その価値を喪失しつつある。」

と述べ、

被控訴人は、

「特別事情による本件仮処分の取消は、つぎの理由により許さるべきではない。

(一)  被控訴人申請の本件仮処分の被保全権利は占有権に執く回復請求権であり金銭賠償をもつて満足し得べきものではない。

(二)  控訴人等の侵害に基く被控訴人の損害の範囲が極めて漠然たるものであり、損害額の算出、従つてその立証も甚だ困難な状況にある。

(三)  本件仮処分により控訴人等が損害を蒙ることがあつても、それは、仮処分の結果通常生ずるものである。

(四)  控訴人等は被控訴人の占有を侵奪したものである。」

と述べ、

証拠(省略)

理由

被控訴人申請の本件仮処分が相当であり、控訴人高橋の仮処分申請が理由がないことは、以下に補充する外、原判決理由記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

当審証人(省略)の各証言中上記引用の判示事実に反する部分は採用し難い。控訴人が当審で提出したその他の証拠によるも右引用理由認定の事実を動かすことはできない。

よつて、控訴人等の本件控訴はこれを棄却する。

よつて、控訴人等の特別事情による本件仮処分取消の申立について判断する。

(証拠)によれば、控訴人等が本件仮処分により受ける損害に関する控訴人等主張事実を認め得る。右事実によれば、控訴人等が本件仮処分により受ける損害は異常であると認め得る。

一方、被控訴人の本件仮処分の被保全権利は建物収去土地明渡請求権であり、本件仮処分の取消により被控訴人の受けることあるべき損害は金銭によつて償われ得るものであると認め得る。たとえ本件仮処分が取消されずに存続するとしても、被控訴人申請の本件仮処分はいわゆる現状維持の仮処分であるから、本案の訴訟において被控訴人が勝訴の確定判決を得て現存する建築中の建物を収去しない限り被控訴人は本件土地を空地として使用し得ないので本件仮処分の取消によつて被控訴人の受ける損害は差程大でない。

被控訴人は、「本件の場合被控訴人の受ける損害額の立証困難である。」と主張するけれども、本件の場合被控訴人の受けることあるべき損害は土地占有権侵害に基く損害であるから、損害額立証困難な場合と認め得ない。

被控訴人当審主張のの事実は特別事情による仮処分の取消を拒否する事由とならない。

上記事情は民事訴訟法第七五九条にいわゆる特別事情に該当するものと認め得るから、控訴人等が合同して金三〇〇、〇〇〇円の保証を立てることを条件として本件仮処分はこれを取消す。

よつて、民事訴訟法第九二条第九三条を適用し主文のとおり判決する。

大阪高等裁判所第八民事部

裁判長裁判官 石 井 末 一

裁判官 小 西  勝

裁判官 岩 本 正 彦

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