大判例

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大阪高等裁判所 昭和37年(う)6号 決定

抗告人 坂井タキ(仮名)

主文

原審判を原消す。

本件を京都家庭裁判所福知山支部に差し戻す。

理由

本件抗告の趣旨、理由は別紙抗告申立書および抗告理由の補充書の通りである。

禁治産の宣告は人の行為能力を剥奪するものであるから、その手続は特に慎重を期すべく、この故に家事審判規則第二四条は、禁治産を宣告するには、本人の心神の状況について、必ず、医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないと規定しているのであつて右規定は、本人の心神の状況について、医師その他適当な者の鑑定なくして禁治産の宣告をなし得ないことを定めたものと解するのが相当である。しかるに原審は坂井文子の申立により右申立人を審尋した上右申立書に添付された抗告人に対する医師小松良彦の診断書(右診断書は病名を「妄想性痴呆」とし、「一見して異状なきが如く見ゆるも、妄想を有し、この妄想に基きて行動するものである」と付記されただけのもの)、のみによつて抗告人の禁治産を宣告し、抗告人の心神の状況につき医師その他適当な者に鑑定せしめなかつたことが記録上明らかであるから、原審判は、家事審判規則第二四条に違背し、違法であるといわなければならない。よつて原審判を取消し、本件を原裁判所へ差戻すことを相当と認め、主文の通り決定する。

(裁判長判事 岩口守夫 判事 安部覚 判事 藤原啓一郎)

抗告理由〈省略〉

抗告理由の補正

一、本件の禁治産宣告をするにつき、原裁判所が事件本人(抗告人)の心神状況の鑑定をさせることなくして、その宣告をしたことは、不適法と信ずる。

(1) 裁判所は禁治産宣告をするには本人の心神の状況について、必ず医師その他適当な者に鑑定させなければならないことは家事審判規則の定めるところであるが、原裁判所はその鑑定をさせていない。

(2) 原裁判所はその宣告の理由として、「事件本人が心神喪失の常況にあることは、医師小松良彦の診断の結果によつて認められ」としているが、右診断は前記規則の要求する鑑定には当らないと思料する。

殊に右小松医師の診断書は、相手方(禁治産申立人)がその申立書に添付したものであるからこれを以て裁判所の命じた鑑定とすることは不当と信ずるのである。

(以下省略)

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