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大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)1929号 判決

控訴人(附帯被控訴人)

江若交通株式会社

(旧商号 江若鉄道株式会社)

代理人

久保寺誠夫

被控訴人(附帯控訴人)

津村忠道

代理人

酒見哲郎

主文

原判決中控訴人(附帯被控訴人)が昭和四二年二月一五日被控訴人(附帯控訴人)に対してなした解雇の意思表示が無効であることの確認を求める部分を取消す。

被控訴人(附帯控訴人)の右解雇無効確認の訴を却下する。

控訴人(附帯被控訴人)のその余の控訴を棄却する。

原判決中被控訴人(附帯控訴人)敗訴部分を取消す。

附帯控訴に基づき、控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)に対し、金一〇一五万三七八四円およびこれに対する昭和四四年一二月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人(附帯控訴人)のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審共全部控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。この判決は第五項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の申立

一  控訴(附帯被控訴)代理人は、控訴の趣旨として「原判決中、被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という。)勝訴部分を取消す。被控訴人の請求中解雇の意思表示が無効であることの確認および金一四七万二八八三円の支払を求める部分を棄却する。被控訴人は控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という。)に対し、別紙目録記載の各農地(本件農地)について、昭和二八年三月三一日被控訴人と訴外神田増吉間になされた売買予約による請求権を譲渡し、かつ大津地方法務局堅田出張所同日受付第二五三号をもつてなされた前記売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記を、同年五月一四日付控訴人と被控訴人間の譲渡契約に基づき控訴人名義に移転登記手続をせよ。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人の附帯控訴に対し、附帯控訴および請求棄却の判決を求めた。

二  控訴代理人は、控訴人の控訴に対し「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、附帯控訴の趣旨として「原判決中被控訴人敗訴部分を取消す。控訴人は被控訴人に対し、金一〇二五万三〇八四円およびこれに対する昭和四四年一二月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求めた。

第二  当事者の主張〈省略〉

第三  証拠関係〈省略〉

理由

第一解雇無効確認請求についての判断

控訴人が自動車および鉄道運送等一般運輸業(但し、鉄道営業部門は昭和四四年一〇月三一日限り廃止した。)を含む株式会社であり、被控訴人が昭和五年七月五日控訴人に駅手として雇傭され、以後業務部自動車課長、自動車部整備課長に任命されたこと、控訴人が昭和四二年二月一五日被控訴人に対し、被控訴人が控訴人の社長命令に違反して本件農地のうち前記(イ)、(ロ)、(ハ)をほしいままに自己の妻津村たけおよび弟津村計助の各所有名義に書換えたことを理由に、控訴人の就業規則一〇〇条五号に則り、被控訴人を解雇する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。

ところで、被控訴人の本件解雇無効確認の訴は、被控訴人が現在控訴人の従業員であることの確認を求めるものであるが、控訴人の鉄道部門が昭和四四年一〇月三一日限りで廃止され、従業員が全員退職となつたことは被控訴人の認めるところであり、翌一一月一日自動車部門の従業員のみが新規採用されたことに伴い、控訴人も採用されたとしても、被控訴人が同年一二月一〇日の定年により退職となることは被控訴人の認めるところであるから、いずれにしても、現在控訴人の従業員たる地位にないことは明白である。したがつて、もはや本件解雇無効の確認を求める訴の利益はないものといわなければならず、右訴は不適法として却下すべきである。

第二賃金等支払請求についての判断

一前記認定のとおり、本件解雇無効確認の訴は不適法であるが、もし解雇の意思表示が理由を欠き無効であるならば、被控訴人はその後も控訴人の従業員たる地位を有し、退職までの給料等請求権を有することとなるので、以下この点について判断する。

二控訴人は、被控訴人は実質的に控訴人の所有である本件農地を管理中、控訴人の社長命令に違反してその妻および弟の所有名義にしたものであつて、その所為は就業規則九〇条二号にいわゆる「会社の金品を横領した」、あるいは同条一九号にいわゆる「その他各号に準ずる程度の不都合な行為があつた」に該当すると主張するのに対し、被控訴人はこれを争うので、以下この点について考える。

〈証拠略〉によれば、次の事実が認められる。

1  本件農地は控訴人が昭和二一年二月頃買受け、社員の食糧補給のため藷類を栽培していたところ、昭和二五年六月二四日自作農創設特別措置法によつて政府に買収され、同月二六日、当時控訴人の従業員であつた訴外神田に売渡された(右買収、売渡の各事実は当事者間に争いがない。)のであるが、控訴人は将来本件農地を再び所有したい希望を有していたため、訴外神田との間に、同人が本件農地を控訴人に無断で第三者に譲渡しないこと、および将来控訴人が必要とするときは控訴人に譲渡することを約した。

なお、訴外神田は、右買受の資金として控訴人から一〇万五七九円を借受けたが、後分割して返済した。

2  ところが、訴外神田は、その後次第に農業経営が困難となり、借金も増えたため、控訴人に金借を依頼したが、断られたので、やむを得ず本件農地を他に処分しようと考え、昭和二八年三月頃被控訴人に右事情を説明し、買受けるよう申入れた。

3  そこで、被控訴人は、控訴人の支配人であつた訴外福岡治三郎に相談し「訴外神田が本件農地を耕作せずに放置すると政府に買収されるおそれがあるし、また第三者に売却することも考えられるから、控訴人が同人に金を貸してやるか、あるいは、この際これを買取つたらどうか」と進言した。しかし、右福岡は「本件農地は、控訴人として今後何に使用するか見当がついていないし、また、採算のとれない所に金を貸しても無駄であるから、控訴人としては右の申入れに応ずることはできないが、控訴人と無関係の第三者に売却されると、将来控訴人が必要となつたときに利用することができなくなるから、よかつたら被控訴人において買取つてもらいたい。」と返答した。

被控訴人は、いろいろ考え訴外神田と相談した結果、被控訴人が自己の出捐において訴外神田から一〇万円で買受けることとした。

なお、当時、本件農地の時価は反当り二〇〇〇円ないし三〇〇〇円(すなわち、反当り三〇〇〇円とすると、公簿上の面積二町四反四畝二七歩では七万三四七〇円、控訴人主張のように実測で約一万坪あるとすれば約一〇万円となる。)であつた。

4  そして、被控訴人と訴外神田は、同年三月三一日、共に大津地方法務局所属公証人上田啓次役場に出頭して、本件農地について売買予約契約を締結し、訴外神田は本件農地および地上の果樹、農業用施設を被控訴人に売渡すことを予約し、昭和三四年一二月二日以後はいつでも売買完結の意思表示をすることができ、被控訴人が売買完結の意思表示をしたときは、双方は直ちに右所有権移転について県知事の許可を受ける手続をなし、右許可を受けたときは本件売買は有効に成立するものとし、代金一〇万円は所有権移転登記完了と同時に支払う、但し、その当時被控訴人が訴外神田に対し金銭債権を有するときは該債権と本件売買代金債権とを対当額において相殺すること等を約して、その旨の公正証書(甲第一号証)を作成し、さらに、右契約と同時に、訴外神田に対し六万五〇〇〇円を、弁済期昭和三四年一二月二日等の約定で貸与し、その旨の公正証書(甲第二号証)をも作成した(以上の事実は当事者間に争いがない。)。

右公正証書の作成、内容、費用の負担については、控訴人から何等干渉されていない。

そして、右昭和二八年三月三一日、大津地方法務局堅田出張所受付第二五三号をもつて、所有権移転請求権保全の仮登記をなし(この事実も当事者間に争いがない。)その頃控訴人から控訴人が訴外神田から預つていた権利証の交付を受けた。

5  控訴人は、その後被控訴人との間に、被控訴人は控訴人に無断で本件農地を他に売却しないこと、および控訴人が本件農地を必要とする場合は、本件農地の譲渡により被控訴人の蒙る損害を補償(但し、その額、方法については双方が協議のうえ決定する。)することを条件として控訴人に譲渡すること等を記載した覚書(乙第二号証)を作成した(この事実は当事者間に争いがない。)。

6  被控訴人は、その後訴外神田から本件農地の一部の引渡を受けて妻、弟と共に果樹等を植え耕作を始めたが、残りについては訴外神田が耕作をしないので、昭和二八年一二月一三日二万五〇〇〇円を同人に交付し、前記六万五〇〇〇円の債権と合せた九万円をもつて本件売買代金の一部に充当し、残りの農地の引渡を受け、残額一万円については所有権移転登記が完了するまで支払を留保することとしたが、昭和三八年二月一〇日右一万円を支払つて売買予約完結の意思表示をした。

なお、被控訴人は、昭和二八年度以降本件農地の固定資産税を支払つてきた。また、昭和三三年三月二六日控訴人の了承を得て訴外西山春男に対し本件農地の一部を売渡す契約をした。

7  被控訴人は、右一万円を訴外神田に支払うと共に、県知事の許可申請手続について志賀町役場の農地係中川久吾に尋ねたところ、被控訴人が他に自己名義の農地七反を所有しているため、それに加えて本件農地を被控訴人名義にすると農地の所有制限面積を越え許可されないから、被控訴人の妻および弟の名義にしておくのがよいと教えられたので、控訴人に相談することなく、本件農地のうち別紙目録(イ)、(ロ)については弟津村計助に、同(ハ)については妻たけに移転することの許可申請をなし、県知事の許可を得て右(イ)、(ロ)について昭和三八年二月二五日、右(ハ)について同年一一月一二日それぞれ所有権移転登記をなし(右(イ)、(ロ)の農地が被控訴人の弟津村計助に、右(ハ)の農地が妻たけに所有権移転登記をした事実は当事者間に争いがない。)、なお、妻、弟がその所有名義であることを利用して万一他に売却することをを慮り、前記末尾記載の仮登記を抹消することなくそのまま残しておいた。

以上の事実が認められ、〈反証排斤略〉、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

三以上認定の事実関係によれば、本件農地は訴外神田が政府から売渡を受けたものを、被控訴人が自からの出捐によつて買受けたものであり、その権利証も被控訴人が交付を受けてこれを所持し、本件農地に対する昭和二八年度以降の固定資産税も被控訴人が負担していて、その所有権は、前記県知事の許可があつたときから実質上被控訴人に帰属したものであつて、その後の所有権移転登記は形式的になされたものであり、また、控訴人が主張するように控訴人のために保管していたものではないことが明らかである。

したがつて、本件農地の所有権取得について他に何等の主張、立証のない本件にあつては、本件農地が控訴人の所有に属するとする控訴人の主張は採用できない。

控訴人は、被控訴人の妻および弟の名義に所有権移転登記がなされた以上、本件農地のうち前記(イ)、(ロ)、(ハ)の各所有権は同人らに移転したものとみるべきであると主張するが、登記がなされていることによつて、これに対応する実質的権利関係の存在が推定される(いわゆる登記の推定力。)けれども、右はあくまでも推定であつて、反証をもつてくつがえされ得ることは論をまたないところである。したがつて、本件のように、他の証拠によつて被控訴人の妻および弟の所有に属さないと認められる以上、右のような登記があるからといつて直ちに登記に対応する権利関係、すなわち被控訴人の妻および弟の所有に属すると断定することはできない。この点に関する控訴人の主張は採用できない。

四また、前記認定の事実関係によれば、前記覚書は、控訴人と被控訴人の間において、本件農地について被控訴人は控訴人に無断でたに売却せず(不作為)、控訴人においてこれを必要とするときは、被控訴人が本件農地を譲渡することによつて蒙る損害を補償することを条件として控訴人の要求に応ずる(給付)ことを、対等の立場に立つて約した債権契約であると解するのが相当であつて、使用者と従業員との間の命令、服従の関係に立つものではないというべきである。

もつとも、右覚書の文言中には控訴人の主張にそうかのような記載部分があるが、前記各証拠によれば、右覚書は自己の所有に属すると誤信した控訴人が、自己の従業員に対し保管を命ずるという考えから記載したものであり、被控訴人もまた従業員である立場からいわれるままに捺印したものであることが明らかであるから、文言の一部を捉えて右覚書の趣旨を命令、服従の関係に立つものと解することはできない。

したがつて、被控訴人が控訴人に無断で本件農地のうち前記(イ)、(ロ)、(ハ)を妻および弟の名義にしても、被控訴人が債務不履行の責任を負うのは格別、使用者の命令服従義務違反の問題を生じない。

しかも、農地のうち本件前記(イ)、(ロ)、(ハ)の名義を被控訴人の妻および弟にした理由は、叙上認定のように、農地の所有制限を回避するためであるから、この意味においても被控訴人が恣に本件農地のうち前記(イ)、(ロ)、(ハ)を自己の妻および弟に取得させたとする控訴人の主張は理由がない。

五そうだとすれば、被控訴人の前記所為は、社長命令に違反して控訴人の財産を他に処分し控訴人に損害を与えたものではなく、就業規則九〇条二号の「会社の金品を横領したとき」に該当しないことは勿論、同条一九号の「右に準ずる程度の不都合な行為があつたとき」にも該当しないものというべく、右事由に該当するとしてなされた前記解雇の意思表示は、その理由を欠き無効であつて、被控訴人はその後もなお控訴人の従業員たる地位を有するものであることは明らかである。

六そこで、給料等の額について考えるのに、〈証拠略〉によると、被控訴人が前記解雇をされず、昭和四二年二月一六日から昭和四四年一〇月三一日控訴人の鉄道部門廃止により全員退職するまでの間在職すると、前記事実摘示第二の二の1の(一)給料のうち(1)ないし(5)、および同(二)の年間臨時給与、(三)の退職金の各欄に記載されたとおり(合計一一六二万六六六七円)支給されることが認められ、右認定に反する証拠はない。

被控訴人は、控訴人の鉄道部門廃止により昭和四四年一〇月三一日全員退職となつたが、翌一一月一日自動車部門の従業員は新規採用されたから、被控訴人も右全員退職の日まで勤務しておれば、当然新規採用となり、さらに昭和四四年一二月一〇日の定年まで控訴人に勤務し得た筈であるとして、その間の賃金合計九万九三〇〇円の支払を請求するが(右事実摘示第二の二の1の(一)の(6)。)、全証拠によるも、被控訴人が右昭和四四年一一月一日当然新規採用された筈であるとの事実は認められないから、被控訴人のこの点の主張は採用できない。

七そうだとすれば、控訴人は被控訴人に対し、被控訴人の前記本訴請求中、右理由がないと認めた昭和四四年一一月一日から同年一二月一〇日までの給料を除くその余の給料、年間臨時給与および退職金合計一一六二万六六六七円を支払う義務があり、前記請求から原審において認容された事実摘示第二の二の記載の部分を差引いた残額一〇二五万三〇八四円の支払を求める被控訴人の当審における請求は、右昭和四四年一一月一日から同年一二月一〇日までの給料九万九三〇〇円を除いた一〇一五万三七八四円および昭和四四年一二月一一日以降の遅延損害金の支払を求める限度において認容すべきものである。

第三所有権移転請求権保全仮登記の移転登記手続請求についての判断

一前記覚書によれば、控訴人が本件農地を必要とする場合、被控訴人に本件農地の譲渡によつて蒙る損害を補償(但し、その額、方法については双方が協議のうえ決定する。)することを条件として控訴人に本件農地を譲渡しなければならない旨の約定があるところ、控訴人が現在に至るも右損害の補償をしていないことは控訴人の争わないところであるから、右条件はいまだ成就せず、控訴人の被控訴人に対する本件農地返還請求権は発生していないものといわなければならない。

二控訴人は、本件農地の譲渡によつて蒙る損害補償の要求は過大であつて、そのような補償をすることは到底不可能であるから、随意条件と異ならないと主張する。

しかし、仮に被控訴人の要求が本件農地の譲渡により蒙る損害の範囲を越え過大であるとしても、右損害の範囲は、前記覚書の趣旨、本件農地の価格、本件農地の管理、耕作に要した諸費用等からみておのずから限度があるから、要求額が過大であることのみをもつて、単に債務者の意思のみにかかる条件、すなわち随意条件であるとはいえない。

控訴人は、また、被控訴人が支出した本件農地の売買代金を時価相当額に換算して要求するのは買戻と変らず、右覚書の趣旨に反するとも主張するが、右要求が民法にいわゆる買戻に該当するかどうかは別として、右覚書には損害補償の範囲、内容について何等の取決めがないし、本件農地の価格をその後の物価変動を考慮して時価で定めるかどうかは、他の補償内容との関連において決定されるべき問題であつて、農地の価格だけを取上げて覚書の趣旨に適合するかどうかを云々するのは当らない。したがつて、この点の主張も理由がない。

三控訴人は、さらに、被控訴人と控訴人との間に昭和四〇年三月一四日本件農地の譲渡による損害の補償として一〇一五万六五〇〇円を支払うことに双方の協議が整つたと主張するが、〈証拠略〉によれば、控訴人は被控訴人に対し、右覚書にいわゆる損害についてその明細を提示するよう求めたところ、被控訴人は昭和三八年九月二八日付書面をもつて、土地代一〇万円、固定資産税五万五〇〇〇円等合計四九八万一〇〇〇円に達する明細を提示し、さらに、その後右金額および昭和三九年三月三一日までの支出金ならびにこれらに対する年一割の割合による金利を計算した合計一〇一五万六五〇〇円を提示したので、双方種々交渉を重ねたが、被控訴人は解決金として一五〇〇万円および本件農地が欲しいと申出たため結局交渉が打切られたことが認められ、被控訴人本人尋問の結果中右認定に反する部分はたやすく信用できず、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

したがつて、控訴人の主張する補償額決定のための協議は成立していないことが明らかである。この点の主張も採用できない。

四控訴人は、なお、控訴人が相当額の損害補償金を支払うことを条件として請求の趣旨記載の仮登記の移転登記手続を求めるが、右請求は条件の内容が不明確であるから、請求の特定を欠き失当といわなければならない。

第四結論

以上のとおりであるから、原判決が、(イ)被控訴人の給料等支払請求(原審昭和四二年(ワ)第四一号事件)中理由があると判断した部分を認容し、控訴人の請求(原審昭和四一年(ワ)第九七号事件)を棄却したのは相当であるが、(ロ)被控訴人の解雇無効確認請求(原審昭和四二年(ワ)第四一号事件)を認容し給料等支払請求を一部棄却したのは失当であるから、控訴人の控訴中(イ)に関する部分を棄却(控訴)し、原判決中(ロ)の部分を取消し、被控訴人の解雇無効確認の訴を却下し、当審における請求拡張部分は前記理由のある限度においてこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、民事訴訟法三八四条、三八六条、八九条、九二条、九六条、一九六条にしたがい、主文のとおり判決する。

(石崎甚八 上田次郎 弘重一明)

別紙目録〈省略〉

〈参考〉

覚書

土地の表示〈省略〉

上記の土地は当社が将来観光用地として利用する目的を以て昭和二十一年二月買収したもので戦後社員の福利施設として開墾し蔬菜類を栽培していたが農地法の施行により政府の買収するところとなり当時当社の責任担当者であつた神田増吉に売却せられたものである。当社は土地の権利を留保するため神田増吉と契約を結び土地の譲渡を禁止すると共に将来必要ある場合は当社に返還することを約せしめたのであるが神田増吉は土地の経営其の他のため借財を生じ当社に対して資金十万円の借入の申出があり之に応ぜないときは土地を第三者に譲渡せられる虞れがあり道義的な契約を以てしては之を阻止することが不可能であるため同村在住(物件の所在を指す=註)の社員である津村忠道に命じ左記条件に於て同人の出資金を以て神田増吉との間に別紙公正証書写による売買予約並金銭貸借契約を結ばしめた。

一、江岩鉄道株式会社(甲)は津村忠道(乙)に対し土地の保存改良並耕作のための自由に樹木をうえ必要な物件を施設し収益を取得することを認める。

二、乙は甲が要求又は承認する場合の外は土地を売却してはならない。

三、甲が将来土地を必要とする場合は乙は次の条件に於て之に応じなければならない。

イ、甲は乙が土地の譲渡により蒙る損害を弁済すること(弁済金額並方法に就いては両者協議の上決定すること)

四、乙は甲の承諾を受けて土地の隣接地に在る甲の社宅及付属建物の全部又は一部を使用することが出来る。

以上後日のため両当事者間に本覚書を交換し各々その一通を保管する。

昭和二八年五月一四日

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