大判例

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大阪高等裁判所 昭和46年(ネ)116号 判決

理由

一、原判決理由一および二における説示は、原判決三枚目裏四行目の「小川隆久の証言」の次に「弁論の全趣旨」を、同一〇行目の「これをしていること、」の次に「ことに被告が不渡手形を出し取引停止処分を受けた後は、専ら新興鉄工菅志子の名称を用いて銀行取引、手形取引等をしており、」を加えるほか当裁判所の認定、判断と同一であるから、これを引用する。

二、控訴人は、被控訴人がさきに菅志子に対し本件手形金を訴求し、勝訴判決を得て強制執行により同人から一部の弁済金を取立てておきながら、未回収部分につき控訴人を被告として本訴を提起したのは禁反言の原則に反すると主張するので、この点について判断する。

控訴人は、叔上認定のとおり、当時手形を振出すについて妻の名義を自己の名称として慣用していたもので、本件手形もその一通であり、自己の手形行為の成立を否定することはできないから、振出人としての責任を負うべきものであるが(最高裁判所昭和四三年一二月一二日判決、民集二二巻一三号二九六三頁参照。)、他方菅志子は自己の名義が手形上で表示されているのであるから、同人が自己名義での手形振出を承認している本件にあつては、同人もまた振出人としての責任を負うべきものであり、いわば一つの署名から二人が責任を負うこととなる。そして、この両者の債務は合同責任関係となり、被控訴人は右両名に対し同時に請求できるし、また一人に請求した後他の者に請求することもできるというべきである。

したがつて、被控訴人が初め菅志子に対し本件手形に基づく手形金請求をなし、その勝訴判決後これが取消されないのに控訴人に対し本件手形金請求の訴を提起したことをもつて禁反言の原則に反するということはできない。

三、そうだとすれば、その余の点について判断するまでもなく、控訴人は本件手形の振出人として被控訴人に対し、受戻金から被控訴人が回収したことを自認する一万一五一〇円を控除した残額一三万八四九〇円およびこれに対する受戻日の翌日から完済まで手形法所定の年六分の割合による利息金を支払う義務があり、これを認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから棄却

(裁判長裁判官 石崎甚八 裁判官 上田次郎 弘重一明)

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