大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

大阪高等裁判所 昭和51年(ネ)2250号 判決

控訴人 大山軍雄

被控訴人 吉田尚弘

右訴訟代理人弁護士 黒岩利夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。被控訴人の請求(当審における予備的第二次請求を含む)を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人代理人は主文同旨の判決を求め、当審において、予備的第二次請求として「控訴人が訴外吉田千鶴子に対する大阪地方裁判所昭和五〇年(手ワ)第一五二四号仮執行宣言付手形判決正本にもとづき原判決別紙物件目録記載の動産に対してなした強制競売の売得金につき、被控訴人が金一〇〇〇万円の限度で控訴人に優先して弁済を受ける権利を有することを確認する。」旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張及び証拠関係は次のとおり附加するほか原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する(ただし原判決二枚目裏一行目の「譲渡し」の次に「占有改定の方法によりその引渡しをなし」を挿入する)。

(被控訴人代理人の主張)

仮に被控訴人が第三者異議の訴えによって本件強制執行を全面的に排除することが許されないとしても、予備的第二次請求として、右強制競売の売得金について金一〇〇〇万円の限度で控訴人に優先して弁済を受ける権利を有することの確認を求める。

(証拠)《省略》

理由

一  控訴人が、訴外吉田千鶴子に対する大阪地方裁判所昭和五〇年(手ワ)第一五二四号仮執行宣言付手形判決正本にもとづき、昭和五一年二月二〇日に原判決別紙物件目録記載の動産(以下「本件物件」という。)を差押えたことは当事者間に争いがない。

二  《証拠省略》によれば、本件物件はもと訴外吉田天信及びその妻の訴外吉田千鶴子の共有であったこと、被控訴人は右天信と千鶴子を連帯債務者として、昭和四八年六月一三日金二〇〇万円、同四八年八月一七日金一一五万円、同四九年九月一七日金七〇〇万円合計金一、〇一五万円を貸付けたこと、被控訴人は、右天信と千鶴子両名との間において、昭和五〇年九月一三日、右貸付金のうち金一、〇〇〇万円につき弁済期昭和五五年八月二六日、利息なしの約定で準消費貸借の契約を結び、その担保として本件物件の所有権を信託的に譲渡を受け、右天信、千鶴子が債務を完済したときは被控訴人は直ちに本件物件の所有権を同人らに移転するが、同人らが債務履行を遅滞したときは被控訴人は直ちに本件物件を適宜の方法で処分し、その換価金をもって前記債務の弁済に充当することができ、その換価金に余剰あるときはこれを同人らに返還する、同人らが他の債務のため財産の差押、競売の申立等を受けたときは弁済期限の利益を失う、旨を約したが、同人らの債務は未だ弁済されるに至っていないこと、被控訴人は占有改定の方法によって本件物件を右天信及び千鶴子から引渡を受け、その後同人らにこれを無償で使用させていること及び本件物件の差押評価額は原判決別紙物件目録評価額欄記載のとおり(合計金九四万五、〇〇〇円)で時価も同程度であること、以上の事実が認められ、これを動かすに足りる証拠はない。

三  そうすると、被控訴人と天信及び千鶴子の間に成立した本件物件についての譲渡契約は前記一〇〇〇万円の債権を担保させるための譲渡担保であることが明らかであるから、その債権者である被控訴人は、債務者である同人らに対する金銭債権に基づいて本件物件につき強制執行に着手した第三者たる控訴人に対する関係においても、担保権であることの実質を超えて本来の所有権と同一の権利内容を主張し実現することに制約を受けると解すべき場合もありうるが、前認定の事実関係によれば、本件物件の価額は被担保債権額の一〇分の一以下にすぎないのであるから、債務者が弁済期を徒過したときは債権者において換価後の清算を必要としない場合であることが明白であり、被控訴人は弁済期の経過(債務者が期限の利益を失った場合を含む。)によって直ちに本件物件の所有権を確定的に取得しうるものと解される(最高裁昭和四六年(オ)第五〇三号同四九年一〇月二三日大法廷判決・民集二八巻七号一四七三頁、同四九年(オ)第八一三号同五一年九月二一日第三小法廷判決・裁判集民事一一八号四三五頁参照)うえ、控訴人に本件物件に対する強制執行を許しても被控訴人がその競売の売得金全部を優先して弁済を受けることになって控訴人にとってなんら得るところのないことが明らかである。かような場合には、被控訴人に本件強制執行の排除を求めることを許し、譲渡担保権の本来の実行方法によりできる限り有利に換価することを得させるのが相当であり、被控訴人の本訴請求は結局において理由があるというべきである。

四  よって、結論において右と同趣旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 白井美則 裁判官 光廣龍夫 友納治夫)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com