大判例

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大阪高等裁判所 昭和60年(行コ)25号 判決

京都市伏見区深草新門丈町一三番地

控訴人

花田隆一

右訴訟代理人弁護士

村山晃

黛千恵子

京都市下京区間ノ町五条下ル大津町

被控訴人

下京税務署長

平木正行

右指定代理人

笠原嘉人

岡本薫

吉川一三

片岡英明

堀茂仁

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  当事者の求める裁判

1  控訴人

原判決を取消す。

被控訴人が、昭和五九年七月八日付で控訴人に対してした控訴人の昭和五四年分ないし同五六年分の所得税更正処分のうち、昭和五四年分の総所得金額が一七一万円を、同五五年分の総所得金額が一二一万円を、同五六年分の総所得金額が一二一万円を、いずれも超える部分を取消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  被控訴人

主文と同旨。

二  当事者の主張

次のとおり付加、補正するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決の補正

原判決二枚目表九行目の「本件係争年分」を「昭和五四年ないし同五六年分(以下本件係争年分という)」と、同一〇行目の「本件処分」を「所得税更正処分(以下本件処分という)」とそれぞれ改め、同六枚目裏五行目の「をするについて、」の次に「昭和五七年四月二八日及びその後二回の臨店調査に際し、」を加え、同六行目の「調査理由」を「具体的な調査理由と必要性」と改め、同七行目の「を求めた。」の次に「控訴人は、被控訴人の部下職員がこのような調査方法をとつたことに対し、経営上の理由で右各調査を断つたのであつて、」を加える。

2  控訴人の主張

被控訴人は、京都市内の同業者を選定する基準の一つとして、実地調査によつて大豆仕入数量が把握されている者であることをあげているが、どの店を調査するかは税務署において恣意的に決定しうることであり、同業者率を高めることは容易であるから、右選定基準及び右のような調査に基づく同業者率をそのまま当てはめることは不当である。

また、被控訴人主張の推計方法は、次のような事情を無視したもので妥当ではない。すなわち、控訴人が経営する「天国豆腐店」の存在する洛南トツプスーパーの中には「森豆腐店」があり、更に、同スーパーに隣接して「出雲豆腐店」があるうえ、昭和五五年には「スーパーフジタ」に豆腐部門ができたため、近隣に同業者がひしめき合い、「スーパーフジタ」がダンピングをした結果、控訴人は定価割れ、売残りが増加するなど致命的な打撃をうけることとなり、これに対処するため、控訴人は大豆の量を増やして質の向上に努めざるをえなかつた。

3  被控訴人の主張

大豆仕入数量は青色申告決算書の記載事項ではないので、実地調査によつてその把握がなされている者を選定する必要があり、かつ、実地調査は特定の人、特定の年度になされるものではなく、納税者について循環して実施されるものであるから、恣意的な調査ではない。

また、同業者の業態の類似性のみならず、酷似性、又は合致性まで必要とするのであれば、同業者率適用による推計課税は著しく困難となり、控訴人のような調査に協力しない不誠実な納税者が課税処分を免れる結果となり、不公平である。

どの小売業においても、安売りは宣伝のため多かれ少なかれ実施されるものであつて、控訴人についてのみ存するものではないし、本件同業者間において、製造条件、販売条件の個別的差異が存在するのは当然であつて、被控訴人主張の推計方法は十分合理性がある。

三  証拠関係

本件記録の原審及び当審における証拠に関する調書記載のとおりである。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。その理由は、次に付加、補正するほかは原判決理由の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決七枚目裏八行目の「時機」を「時期」と改める。

2  同八枚目表一行目の「職員は、」の次に「昭和五七年四月二八日午前一〇時頃」を、同五行目の「原告は」の次に「、民主商工会に相談してからでないと帳簿は見せられない旨述べ、質問に対して、一週間でも一〇日でも店の前に立つて見ていたらわかるやろと答えて拒否し、更に、同年五月七日にも調査に赴いた右職員に対し、そのうち会う日を連絡すると述べて店をあけたまま他出するなど」を、同七行目の「調査理由」の次に「及び必要性」をそれぞれ加える。

3  同八枚目表九行目の「事前通知」を「調査実施日時の事前通知」と改める。

4  同九枚目裏二行目から三行目の「(原告本人尋問の結果による)。「しかし」を「が」と、同四行目の「社会通念上明らかであり、」を「原審及び当審における控訴人本人尋問の結果によつて明らかであり、」とそれぞれ改める。

5  同一〇枚目裏八行目の次に左記説示を加える。

「証人盛田正昭の証言によれば、被控訴人が、京都市内の同業者を選定する基準の一つとして実地調査によつて大豆仕入数量が把握されている者であることをあげたのは、右同業者は青色申告者であつても青色申告決算書には大豆仕入数量が記載されておらず、実地調査者については調査書をみれば大豆仕入数量が判明すると思料されたためであること、右実地調査は、特定の業者、特定の年に片寄ることなく、毎年循環して全業者を対象としていることが認められ、右認定に反する証拠はない。したがつて、右調査には、税務署の思惑や恣意の介在する余地はなく、右調査によつて大豆仕入数量が把握されている者を選定基準とすることは何ら不当ではない。

控訴人は、具体的事実をあけて、被控訴人主張の推計方法は控訴人方店舗の立地条件及び大豆の量を増やして豆腐の質の向上に努めていることを無視しているとも主張するが、証人盛田正昭の証言によれば、本件同業者はいずれも控訴人と業種、業態を同じくする者であつて、類似性を有することが認められ、右認定に反する証拠はない。

およそ、平均率による推計の場合には、業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は無視することができ、右営業条件の差異が当該平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度の顕著なものではない限り、これを斟酌することを要しないと解すべきである。

原審及び当審における控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は、前記主張のような事情により、本件係争年頃は大豆六キログラムで豆腐五六ないし五七丁を作り、一丁一〇〇円で売つたというのであつて、大豆一〇キログラムに換算すると約九四〇〇円となり、前記認定の本件同業者の平均売上金額と比較すると、一五ないし二〇パーセントの差が認められるが、右程度の差は、被控訴人主張の同業者の平均所得率による推計方法を不合理ならしめる程顕著なものであるとはいえないから、控訴人の右主張も採用できない。」

6  同一一枚目表末行の「しかし」から同裏二行目までを「原審及び当審における控訴人本人尋問の結果中には右主張にそう部分があるが、その裏付となる給与台帳などの提出がない本件にあつては、右供述だけをもつて右主張を採用することはできない。」と改める。

二  そうすると、控訴人の本訴請求は失当であるからこれを棄却した原判決は相当である。

よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田次郎 裁判官 道下徹 裁判官 渡辺修明)

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